感覚のないTSクローンはデスゲームの才能があったみたいです。   作:ねこスマ

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ビキナーズラック

 

 

 餓死を狙った耐久勝負のあと意識を失い、その後三日かけてまともな物を食べれるようになってきた。このクローンの体は回復が早く、体調も悪くない。

 病室は牢屋と違い、明るく綺麗で安心したのだが、倉庫で出会ったロングコートの女性が果物を籠に入れて見舞いにやってきた。

 

「まずは生還おめでとう、これはその祝いの品だ」

「ありがとうございます?」

「フッ、あの作戦を行ったお前に言うことではないが、論理感などここでは必要ない、最後まで生き残っていた者が正義。そんな世界だ」

「はぁ……?」

 

 女はベッドの横の丸椅子に腰をかけ、上着の内ポケットからナイフを取り出しリンゴの皮を剥き始めた。

 

「浮かない顔だな、初めての殺しは応えたか?」

「いえ、ただ僕なんかを見舞いにくるような人には見えなかったので…」

「お前のゲームは大盛況だった。ゲスト達も熱狂し、掛け金も膨れ上がった。そんな注目株に挨拶しに来ただけだ」

「そうなんですか、金持ちが怖くなりましたよ」

「満たされた者は狂気と刺激を求める、食べるか?」

 

 ウサギカットされたリンゴを受け取った僕は、シャリと一口頬張った。

 

「退出し自室へ戻ったらスマホがベッドに置いてある、中には賞金のポイントが入っているから好きな物を買うといい」

「一億円でデスゲームを辞めれるんでしたよね?」

「そうだ、だが一億の道程は険しい。今はゆっくり休むんだな」

「はい」

「では邪魔したな」

 

 ロングコートの女性がお見舞いに来た翌日、僕は病室から狭苦しい牢屋へ戻ってきた。看守が鉄格子を閉めたあと、ベッドの上にあるスマホを手に取る。顔や指紋のパスワード設定を行ったあと、ホーム画面に『Chain Dream』という変なマスコットキャラクターが描かれたアプリが一つだけダウンロードされていた。

 

(これだよな?)

 

「じゃんっ!」「ルルとララだよぉ」

「ここ夢の鎖では毎月最終日に100万Pを皆さんから徴収していまぁーす」

「支払いが出来ない場合はデスゲームへ強制参加だから注意してね!」

「ポイントを沢山稼げるイベントも開催するからアプリは要チェックっ」

 

 アプリを起動すると道化姿の双子の動画が流れた。

 顔認証が行われ、今の少女の体をした自身の顔画像がマイページに写し出されている。おそらく身体検査の時に撮った写真であるが、白T一枚と無表情という貧乏くさい様相が漂っており、写りの良い画像に変えたくなった。

 

 

 【チュートリアル(clear)】

 勝者報酬100000P

 

 マイレージに100000というポイントの数字が表示されてある。あの一戦で10万という金が手に入ったようだ。

 

「えぇ…命を張った割には少ない気が…」

 

 闇の世界も世知辛い。気を取り直してショップ画面をタップすると、普通の買い物サイトのような内容だった。日用品からゲーム機まで好きな物をポイントで購入できるが、中には『高額』というジャンルが存在していた。

 

 

【招待券】  特定のプレイヤーをデスゲームへ招待

【身体新調】 スペアボディに脳を移植

【要望追加】 プレイヤーの意見を反映

【退会】   施設から完全退去、超過分所持1P=1円へ換金。

 

『住居変更』

(A棟1〜10)

(B棟1〜100)

(C棟1〜1000)

(D棟)

 

(部屋を変えれる!A〜C棟までランクがあって、僕がいる場所が最低のDか)

 

 これは早急に引っ越しをしたい、一億円を貯めるという目標はあるが、こんな薄汚い牢屋で生活するのは流石にストレスが溜まりそうだ。

 

(A棟は一軒家って…ここに住んでる人シャバより良い暮らししてるでしょ…)

 

 Bはマンション、Cは四畳半一間の部屋。

 

「Bの家賃は月30万、Cは10万ポイント」

 

 家賃が割高なのは賞金との兼ね合い?、一人なら一旦四畳半で妥協するべきだろうか。

 

 

【月間ランキング】

 

『報酬』

 

一位 +5000000P

二位 +2500000P

三位 +1000000P

 

【クリア回数】

一位「ミクロン」   30回

二位「黒獅子」    21回

三位「死にたくない@エンジョイ勢」 18回

 

【撃破人数】

一位「黒獅子」   75名

二位「竹の子ご飯」 43名

三位「相川育美」  39名

 

【賞金獲得額】

一位「ミクロン」 30000000P

二位「黒獅子」  21000000P

三位「neo」 15000000P

 

 プロフィールの顔写真と名前が十位まで表示してあり、月のランキングによって追加でポイントが報酬として貰えるようだ。積極的にデスゲームに参加するとランキング報酬が美味しく、月の賞金獲得額で現実で見たことない金額をデスゲームで稼いでいる人が実際にいる。ここで一億稼ぐのは夢ではないらしい。

 

(残忍性、ゲーム難易度によってデスゲームのクリア報酬が変わると)

 

「A級」 1000000P

「B級」 500000P

「C級」 250000P

 

 

「ランキング上位を狙わないと一生出られない」

 

 今日から月始めで毎月100万P徴収される。どちらにせよ生活の基盤を整える金が必要だ。ここから出るためにランキング上位を狙うか、生き残ることだけを考えるなら毎月100万ポイントだけ貯めて過ごす人も居るだろう。

 

(いきなりA級行っちゃう?ビギナーズラック狙いで)

 

 ちまちまポイントを稼いでいてもしょうがない、まずは余裕を持って部屋を変えるために僕はさっそくデスゲームの受け付け画面から、「A級」を選択して運営に送信した。

 

・・・

 

 次の日の起床時、看守から個室へ連れられると、バナナ、パン、水を朝食として与えられた。そこから隣にあるシャワー室などで朝の支度を済ませると、昏睡剤を飲んだ後に、デスゲームが始まると説明を受けた。

 

 そして冷たく硬い床の感覚で意識から目覚める。縦に長い通路の上に僕は横たわっていた、首には太い鎖が繋がれており移動範囲が決められている。

 

 透明な壁越しで隣を見ると、茶髪ショートカットで黒いパーカー、紺色のジーンズを着た少女が僕を立って見下ろしていた。首には重苦しい鎖が同様に繋がっている。

 

「君、初期アバじゃん。初心者でA級のゲームに来たの?」

「初期アバ?服はお金が出来てからでいいかなと」

「ふ〜ん、たまにいるんだよね、まぁお互い恨みっこなしで」

「…よろしくお願いします」

 

 相手はデスゲームに慣れた経験者のようだ、手加減してくれる様子がないこの人にネカマムーブをしても意味が薄いだろう。

 

「僕たち同じ姿じゃないんですね」

「同じ個体はチュートリアルでしか対戦しないけど、まさか一戦目?」

「はい」

「そ、よろしく」

 

『はぁーいお待たせ!』『ゲームの説明をはじめるよぉ』

 

 ぱぁんっ

 

 クラッカーの音を合図に、道化の双子がニコニコと手を繋いでやってきた。

 

「こんかいA級難易度なのでグログロですよぉ」

「ゲーム名は人体ダーツです!3m離れた回転するボードには1〜6の数字が振り分けられています!当てた数字の数を進むことができ、36マス目に先に辿り着いた方が勝利です!」

「ダーツは自身の身体から切り離して作ってくださぁい、パーツが軽過ぎると的に当たっても反応しないので注意ですぅ」

「ダーツを投げるまでの制限時間は一人五分です、時間を過ぎた場合は相手の投擲時間となります!」

 

 両者の隣には3m離れた位置にダーツボードが設置してあり、1〜6の数字が20枠に散りばめられていた。

 

「一枠ある金枠は大当たり!当てた場合、両者の合意でその時点でゲームクリア扱いとなります!」

「とある条件を満たしたらぁ救済措置もあるので最後までゲームを諦めないでねぇ」

 

 床にはマス目が書いてあり、近くにあるテーブルの上にはワイヤーカッター、チェーンソー、ノコギリ、鉈、救急箱が置いてある。救急箱の中には包帯、医療ホッチキス、絆創膏などが大量に入っていた。

 

「熱い……」

 

 背後からジワジワと熱気が伝わる。移動できるスライド式の床に、ジューッと熱されている鉄板が備え付けられてある。

 

「では、ゲームスタート!」

 

 ダーツボードの上には現在のマスを示す画面が備え付けれらており、『先行プレイヤー・「ホープ」』という文字と、制限時間5:00を計測している。

 

「………」

「あー初心者にはキツイねコレ、交代して手本を見せようか?」

 

 僕はワイヤーカッターをテーブルから手に取り、左手を床に付け小指の根元に鋭い刃を合わせた。

 

「指一本で的が反応しなかったら、僕が不利ですね」

「この手のゲームは指先とかじゃない限り大体いける」

「そうなんですか?ありがとうございます」

 

 バギッ

 

「ぐぁッ…」

 

 片目を瞑り、眉間に皺を寄せる。

 ワイヤーカッターに思いっきり体重を乗せて小指を切断した、ジワジワと指の断面から出血するが、根元を紐で縛り付け軟膏を塗り、絆創膏と包帯を適当に巻いていく。

 

(絵面最悪すぎでしょ…)

 

 自分の指をダーツに見立てて投げるとか気狂いだ、このゲームが終わったあとに身体の損傷が激しかったら満足に戦えなくなってしまうが大丈夫なのだろうか…。

 

 プロのようにダーツを投げる格好を真似して、何度か右腕を振ってからボードに指を投げつけた。

 

 ヒュッ

 トンッ!

 

 ボードに当たった箇所が点滅し、画面に映し出された数字は『1』

 

「あははっ、僕のビギナーズラックが…」

「ドンマイ、次はこっちの番か」

 

 こうして幸先の悪い人体を投げつけ合うゲームが開幕した。

 

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