感覚のないTSクローンはデスゲームの才能があったみたいです。   作:ねこスマ

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C級適正

 

 

 食べ物の味がしない

 他人が美味しそうに頬張っている食事

 死なないために栄養を取り入れているだけの作業とは違う。

 

 病室で食べたリンゴの味が分からないように、目の前で灼かれながら死んでいったゆうとさんが、どんな苦痛を味わったのか想像がつかない。多少の熱い冷たいの判別はつくがそれがどう痛みとして機能するのかは、自身の左腕を焼き焦がしても想像がつかなかった。

 

『痛みを感じない僕はどうやらデスゲームの適正があったようだ』

 

 最初のゲーム?

 あれは退屈な我慢大会でゲームでも何でもないです。

 

【ホープwin】

 

 振り返れば二つの道筋は血で染まり、小さな肉塊が散らばっている。一緒に移動してきたダーツボードも画面表示でしか数字が確認出来ないほど、赤色で汚れていた。

 

「なかなかのクソゲーだった……」

 

 その後、担架を持った人達に乗せられ、口にマスクを付けられると目の前が真っ暗になった。

 

 

・・・

 

 

 病室で目を覚ますと左腕左足に感覚が戻っているのを感じる。左腕を肩まで切り落とした後は左足を切って投げていたが、このシーツを捲れば手足が綺麗にくっついているのだろうか?

 

ニギニギ

 

「本当に治ってる…」

 

 

 腕と足の接合部分が赤い線のように腫れているが、手足の見た目の差異は右側と変わりなかった。動きも問題ない、手足が突然生えてきたような不思議な感覚だった。

 

(いまから部屋変えってできるかな)

 

 横に置いてあるスマホを左手で取ってアプリを開いた。

 

【勝利報酬】

「1200000P」

 

 ん?20万ポイント多いがどういう事だ…

 ヘルプ欄から目が回りそうな長文のルール項目を確認をした。

 

・撃破したプレイヤーの所持ポイント「四捨五入」した値の10%を追加報酬とする

・C〜B級は撃破ボーナスが適応されない

 

「報酬うまっ!こんなの殺す一択では」

 

 殺せる状況なら情けは不要、逆もしかりで相手を信頼する行為は愚策となる。

 

(牢屋に戻りたくないし、とりあえず部屋変えよ…)

 

 手持ちは130万P、B棟の毎月30万Pがどれだけ負担になるか分からないため、様子見で『住居変更』からC棟の一室を購入した。

 

(うーん…シャンプーとか良いのにした方がいい?)

 

 手鏡で自身の顔を確認するが色白で白い瞳の全く別人の少女。横髪から垂れる深紫の髪を手櫛で撫でるとサラサラと流れた。

 

「リンスくらいはした方がいいかなぁ」

 

 かけ離れた自分の顔に実感が湧かないが、ショップからCMでよく見かける高いシャンプーとリンスを購入した。

 

 ついでに衣類の項目にも目を通す、対戦相手に初期アバターとはもう言われたくない。

 

「え!このブランドあるのッ!?」

 

 思わず大声が出たが、ネット注文でも回線勝負で即完売、実店舗に至っては店員が怠そうに「ない」と連呼する有名ブランド。

 

「先月出てた限定モデル!?このジャケット可愛くて欲しかったやつッ!」

 

 借金生活でこんな高価な服など買えるわけがないが、手が届かない物ほど欲しい願望は強くなる。今の少女の姿に似合うかは分からないため、SサイズのTシャツ複数、ニット帽、ボトムスを購入した。

 

 机、洗濯機、ゲーム機2台、ゲーミングチェア、その他生活用品など、どんどんカートに入れていく。

 

 

「Tシャツ×3」 45000P

「ニット帽」    11000P

「ボトムス」    15000P

「机」       18000P

「ゲーム機二台」  158000P

「ゲームソフト」  40000P

ゲーミングチェア 17000P

生活用品     30000P

 

「計334000P」

 

(おぉ、こんなに欲しいものを買ったの初めて…!)

 

 欲しい物を全て買った高揚感、着たい服もあったから元の男の体だったらなお良かったが、これ以上望むのは贅沢だ。

 

(これで部屋も綺麗になるんでしょ?めっちゃいいじゃん)

 

 ただ一つ、どうしても問題なのはWi-Fiが繋がらないことだ。どこを探してもWi-Fiを繋げる項目がなかったため、命ともいえるネットが使えないのは如何なる好条件でもここから出る理由の最大の一つだ。

 

(ギルド絶対除名されてるよなぁ…)

 

 というのもソシャゲが借金地獄の中唯一の生き甲斐で癒しだった、ゲーム機を買えたのは嬉しいがオフラインだと今ひとつ味気ないことが多いだろう。

 

「543番、退出後、新居へ移動」

「あ、はい」

 

 同じ顔をした能面女性の看守さん二人が、手錠を僕にはめて移動を促した。

 目隠しをされたまま移動し、途中エレベーターに乗ってしばらく歩くとドアを開けて中に入るよう指示される。

 

「よかった、ちゃんとした部屋だ」

 

 四畳半のフローリングにはダンボールがいくつか置いてあり、机と椅子は隅に配置してあった。部屋とは別に狭いシャワールームにトイレが付いており、ここでなら人として暮らして行けそうだ。

 

「はぁ…この服は僕の…」

 

 ダンボールからブランド服を出して顔を埋めて呼吸する。澄み切った山の空気より美味しいのは間違いない。それから布団を出したり、部屋の配置を決めていって、RPGゲームを起動しその日はダラダラと終えた。

 

 

・・・

 

 

 昨日の浪費で90万ポイントを下回ったため、今日も今日とてデスゲームに参加しようとアプリを開いた。体を昨日あれだけ酷使したのに平然と動けるのはクローン体の凄さを実感する。

 それにランキングを目指すなら毎日稼働しないと難しいはずだ。

 

【警告】

『A級を2回クリアするとC級の挑戦権を失い、レート戦へ強制参加となります』

 

 レート戦って実力が同じくらいの人とマッチングするシステムだよね?

 C級ってどんな感じなんだろうか、一回くらいは参加して難易度を確認した方がいい気がする。

 

(C級の効率がめちゃくちゃ良くて損するってパターンもあるかもだし)

 

 昨日は確率がおかしいクソゲーをやらされたんだ、今日は気分転換で少し緩いゲームをやってみてもいいだろう。

 

 そうしてC級デスゲームを申し込むと、しばらくしてから案内の迎えのノックの音が部屋に響いた。

 

 

・・・

 

 

「んっ…」

 

 目が覚めると円形の広い塔の中のような場所で、籠の中に閉じ込められていた。

 下は暗く何も見えない奈落の底のようだ、空中で籠はぶら下がっており、逃げ場はどこにもない。

 

 そうして周りを見渡せば、同じように囚われた籠が15mほど離れて三つぶら下がっており、黒い壁面には巨大な絵画が4箇所に飾られていた。

 

「子供の落書きのような赤い車」

「壺に入っている青い薔薇」

「馬車で手綱を引いている商人」

「裸体の男性が平原で夕焼けの空に手を伸ばしている場面」

 

 全員同じタイミングで目が覚めたようでモゾモゾと動きだしたのが分かる、下には一枚の黒い封筒が落ちており、中身を確認してみた。

 

 

【生贄ゲーム】

 

 『4名の中に1人だけ見えている世界が違う異端者が混ざっています

 投票で異端者を当てることが出来たら正常者3名の勝利

 異端者が当選されなかった場合は正常者3名の敗北

 敗北時は床が抜け落下死

 同票は投票のやり直し、連続して同票だった場合は異端者の勝利

 スタート時、異端者は自身を異端者だと確認できない』

 

 籠の中には、『1』『2』『3』『4』と記してあるボタンが設置してあった。

 自分の籠の数字は『3』と床に彫刻してある。

 

 

「全員起きてるかぁーっ!」

 

 一番遠い対角線上にある籠の中から張った声が聞こえる。中の人物は原色に近い黄色の髪をツインテールにしており、目立つ色で見えやすい。

 

「……」

「……」

「……」

 

「とりあえず順番に自己紹介とかどうッスか?」

「あなた、ルールをちゃんと理解してる?下手な発言は自分の首を絞めるだけよ」

 

 右側の籠から聞こえてきた口調の強い人物は、ロングヘアの青髪を一つに結っており、腕を組んで立っていた。

 

「異端者は自分でも分からないってことですよね?」

 

 左側から聞こえる声優のような高く愛らしい声の持ち主は、白いドレス姿で左の籠で女の子座りをしており、髪はピンクのボブ。

 

(この人、ネカマか?)

 

 全員何かしら一言喋っている、僕も角が立たないように喋るべきだろう。

 

「そうですね、だとしたら正常者が有利な気がするけど…皆さんはどう思います?」

「それは違うわ、明らかに視点がおかしい話を二人が同意していたらその話に乗っかるだけで、異端者とバレずに過ごせる」

「な、なるほどぉ…」

 

(コレやばいのではッ!?)

 

 僕の強みは残虐性の強いゲームに有利なこと、多少の人体破壊は恐れずに行動できる。ただ今回のゲームは頭脳戦で、普通のフリーターだった僕は頭が良いわけではない。

 

(完全にC級を選んだのミスった…ここから落ちたら問答無用で即死……)

 

 二戦目のデスゲームの時よりも、すでに背中に汗を掻いてるのを感じた。

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