感覚のないTSクローンはデスゲームの才能があったみたいです。   作:ねこスマ

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クローン

 

 煌びやかなコロシアムのような会場で、仮面を付けた大勢の人達が巨大モニターを肴に美酒を嗜んでいく。

 TVでよく見る大御所有名人、大手企業の専務、有名ブランドの社長の愛人、政治家、一定の金額を使用した者だけが招待されるVIPルームでは談笑が行われていた。

 

「おじさま〜、Queenほしいぃ〜」

「ふーむ、東君、気になる銘柄はどうかね?」

「会長、インサイダーは勘弁ですよ、私は友達と久々に楽しみたいんです」

「今回は手垢の付いていない綺麗なチケットなんだがねぇ」

「会長はほんとお若いですね、それとは別に美味しい案件があったら回してくださいよ?」

「ほっほ、よかろう。肉体が若くなったら何でも出来てしまうの」

 

 女を侍らせた会長と呼ばれた者は、10代半ばに見える少年の姿をしていた。

 

・・・

 

 目が覚める、テーブルの上に頭を乗せて眠っていたようだ。他にも目を覚ましていない人と起き上がって話をしている人などで様々。右手に液晶時計が付いており、首に違和感を感じて触ってみると、何やら硬いものが装着してあった。

 

「旅館?」

 

 僕、そして大勢の人も浴衣の格好をしており、座布団、壇上にはカラオケ機器と宴会場のような場所に運ばれている。

 

 それから10分後、全員起きてザワザワと大部屋もうるさくなってきた所で、壇上に浴衣を着た双子がマイクを持って現れた。いつもの道化師の姿じゃないため普通の少女にしか見えない。

 

 ぱぁんっ

 

「はぁーい皆さんお待たせ!」「イベントの説明をはじめるよぉ」

 

「ルールは二人組を作って旅館の地下室に行ってください!分かりやすいですね!」

「制限時間は5時間ですよぉ、そしてイベント限定ルール『ポイント譲渡』を解放しますぅ」

「この施設内ではデジタルウォッチを使い、所持ポイントを他プレイヤーに譲渡出来るようになります!」

 

 ザワザワザワ……

 

「またポイント譲渡者は要望「契約」を結ぶことができ、内容に違反していると思われる行動をした場合は、首輪が爆破されるので注意してください!」

「例えばぁ、10万Pで二人で地下に進むという「契約」をした場合、裏切って他の人と地下に進んだらぁ、ポイントを受け取った者は違反で頭が飛びますぅ」

「契約は両者が承諾すれば、内容に際限はないです!」

「あとはぁ、浴衣の模様は『トレード』出来るんでぇ、好きな柄があったら交渉してみてくださいぃ」

「最後に注意事項です、施設内でのプレイヤーの殺害は禁止となります!」

「プレイヤーの心肺が五分以上停止したらぁ、死亡扱いとし、その要因に大きく関わった人の頭が飛びますぅ」

 

「「では、ゲームスタート!!」」

 

 そう双子が言い放った瞬間、平凡な浴衣にノイズが走りトランプの柄と数字が現れた。

 

(浴衣の模様は【♤9】人がカード扱い、他人には柄と数字が丸見え)

 

 二人で地下室に行き「何か」をするゲーム。

 トランプ模様を使って二人で対戦して争う、テーブルゲームは色々あるがそれで負けた方は死ぬとか。

 

(トレードは急いだ方がいい)

 

 そして柄と数字はおそらく大きな意味を持つ、この建物内に何かヒントが隠されているかもしれないがトレードを安全に行うなら今しかない。

 

(狙うは「A」テーブルゲームなら重要な役が多い)

 

 僕は人周囲を見渡して『♢A』模様の浴衣を着た座っている人に近寄り話しかけた。

 

「すみません、柄のトレードをしてくれませんか?」

「え?トレードですか?」

「ポイントを支払います、300万ポイントはどうでしょうか」

「300万…三ヶ月生きられる」

「今すぐに交換してくれるなら500万支払います、時間が必要なら他の「A」の人にも交渉するので終わっているかもしれませんが」

「お、お願いします!500万で!」

「ありがとうございます」

 

 液晶時計をタッチ『ポイント譲渡』を選択し『お互いの時計を近づける』と文字で指示され音が鳴った。

 

『ホープ』→『金城拓馬』

 

「5000000P」と打ち込み『契約』をする場合はボイスで内容を録音するようだ。

 

「500万ポイントで金城さんと浴衣の柄のトレードを5分以内に行う」

 

〜♪

 

「あ、私も契約内容を復唱しないといけないみたいです。えっと、500万ポイントを頂く代わりに、浴衣の柄をすぐに交換します」

 

 金城さんが承諾したあとに、僕のマイレージから500万Pが減った。

 

「次はトレードをお願いします」

「は、はい」

 

 トレードを押したあとに、互いの時計を近づけるとメロディが流れる。

 

〜♪

 

『♢A』=『♤9』

 

「金城さんありがとうございました」

「いえ、こちらこそ助かりました!」

 

 僕の浴衣にノイズが入ると『♢A』の模様が浮かび上がった、周りを見渡すが僕たちの他にトレードを行っている人はいないようだ。この大部屋からは退出することができ、何人かは既に出ている。

 

「♤の9ってそこまで弱くないですよね?どうしてこんな大金でトレードを?」

「安全のため、殺し以外が許されているんです。何か起こってからでは遅いかと」

「何かって、なんですかね…」

 

 誰かが部屋の真ん中で大きな声を上げた。

 

「おーい!聞いてくれ!今回のゲームについてみんなで話し合わないかッ!」

 

 声を上げた人物に人が集まっていくのを無視して僕は出口へ向かう。

 

「あのー、あそこに集まらないんですか?」

「施設の探索が先ですね、ヒントや武器が隠されていたら不利になるので」

「ほへぇ……」

「では、機会があればまたお話しましょう」

 

 金城さんを置いてスリッパを履き部屋を出た瞬間、誰かに腕を掴まれた。

 

「雰囲気変わりました?」

「雨さん!?」

「えっと、名前を教えてください」

 

 可愛らしい猫撫で声、ピンクの髪を耳に掛けて僕の手を離さないように両手で包まれた。そして雨さんの浴衣の柄は『♡5』

 

「教える代わりに僕からも質問いいですか?」

「なんでしょう?」

「雨さんって男ですよね?」

「アハハ!こんな時に面白い質問するんですね、私は女性ですよ?」

「!?失礼言ってすみません…名前はホープです」

「ホープさん、良いニックネームですね」

「ありがとうございます」

 

 本名だと言っても微妙な顔をされるだけなので、僕はあえて指摘しなかった。それにしても早くも恩人の人に出会えるなんて。

 

「あの時は…『ホープさん、今から「AA」(エーシーズ)のお話を聞いてみませんか?』

「たしか弱者でも生き残れるグループでしたっけ?」

「そうです、今回リーダーの三文字(さんもんじ)様もイベントに参加し、先ほど個室に移動されました」

 

 「AA」A級デスゲームに入り浸っている僕が加入する必要性はないし、雨さんの身なりが良かった、つまり弱者を喰いものにしている組織の可能性がある。

 

(撃破ボーナスがあるA級でも1000万Pを稼ぐのは大変。雨さんはB、C級でポイントを稼いだと言っていたはず)

 

 雨さんにはお世話になったから、リーダーに挨拶くらい行ってもいいか?

 何か理になる情報も得られるかもしれないが、危険もある。

 

「挨拶だけでもいいですかね」

「はい、三文字様も喜ばれると思います」

 

 大部屋を出た先は旅館の内装、それに高級旅館を彷彿とさせる上品で綺麗な景観だった。

 

 ダッダッダッ‼︎

 

 前方から誰か走ってくると、雨さんの前で頭を下げて膝をついた。

 

「この方はお連れです、報告してください」

「三文字様は10階108号室に移動されました」

「わかりました、交渉の方へ行ってください」

「はい、失礼致します」

 

 宴会室に戻っていく部下のような人を見送ると、歩き出した雨さんの後ろを付いていった。

 

「ホープさんは何かあったんですか?」

「何かですか?」

 

 エレベーターに乗って10階を押した雨さんがこちらに振り返りそう言った。

 

「言ってはなんですが、あのままでは生き残りそうな方には見えなかったので」

「まぁ…雨さんとか運に助けられた部分が大きいです」

「最初の一ヶ月さえ乗り切れば生存率はグッと上がります、が半数以上は最初の月を乗り越えられません。ここにいるのはホープさんの実力ですよ」

「そうだと嬉しいですね」

 

 チーン

 

 誰もいない広々とした廊下を二人で進んでいく、スリッパと床が擦れる音が響き、部屋番号を目で追っていった。

 「108号室」に到着すると雨さんが先に部屋に入り、しばらく待っていると雨さんが出てきた。

 

「三文字様がお待ちになっています、私は仕事があるのでこれで」

「あの!異端者探しではありがとうございました!」

「いえいえ、今回も手を取り合えたら嬉しいです」

 

 雨さんは腰の位置で小さく手を振って、エレベーターに戻って行った。

 

(馬鹿正直に一人で入るわけにはいかないよなぁ)

 

 重要そうな「A」持ちがノコノコ密室に入ったらどうなるか?

 答えは拘束、恐喝、拷問。

 

「そっか」

 

 僕はエレベーターに向かっている雨さんを止めて、108号室へ入った。

 

「君がホープか、私はAAの先導者、三文字だ。その椅子に座ってくれ」

「はい」

 

 黒髪を七三分けにしメガネを掛けた『♧A』の人物が足を組んで椅子に座っていた。その後ろには浴衣を腕まくりし、クローン体とは思えないほど鍛えあげられた高身長、ドレッドヘアの褐色の人『♤K』が僕を鋭い視線で射抜いている。

 

「私達「AA」は弱者救済を掲げている、先の見えない殺しあいのゲームを続けて精神が保つと思うか?」

「保たないと思います」

「そうだろう?「AA」は組織だが苦しみを分かち合う家族にもなれる、情報を共有すればどんな困難も打ち破れる」

「では今回のゲームは家族全員でどう打ち破るおつもりですか?」

「それは「AA」に加入したら教えてあげよう」

「興味ないです、雨さんのお礼に来ただけなので」

 

 5秒ほどの沈黙、三文字さんは目を瞑った。

 

「……残念だ、鬼々(きき)。【A】を縛りあげろ」

 

 グッ‼︎

 

「雨さんと先ほど契約をしました。このゲーム中に「AA」メンバーの誰かが僕に危害を加えようとしたら、雨さんが違反することになります」

「鬼々、よせ」

 

 鬼々と呼ばれる人の太い腕で握られた首元はスッと離された。

 

「雨さんは見るからに幹部ですからね」

「ホープ、君を幹部枠で採用する、このゲームの勝利と今後の資金も約束しよう。今ここで私と契約しても構わない」

「入るメリットがありません、僕はA級で戦っているので」

「フッ…なるほど、そういうことか」

 

 三文字さんは椅子から立ち上がりカーテンを開くが、外の景色は何も映らなかった。

 

「君の根底を覆す良い情報を教えてあげよう、その代わり一つ協力してほしい」

「口約束でいいなら」

「今回のゲーム中、意図して「AA」の邪魔をするな」

「わかりました、雨さんには助けられたので守りましょう」

「では問う、切断された手足、酷い火傷、これが魔法のように一日で完治すると思うか?」

「今まで治ってきましたが……」

「答えはNO、脳波で読み取った記憶が新しい肉体に移されただけだ」

「え……?」

「元の体は脳ごと廃棄され、多少の傷跡の細工を施す。A級で体を張って生きていくというのは、毎回自殺しているのと何ら変わりない」

 

 

 つまり僕は

 記憶すらもクローンだったのか……?

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