一般的には夜中と言われる時間、今頃日本では梅雨入りまじかでしょうか。
流石のロシアも少し暑くなってきましたねぇ。
おっと、今はターゲットに集中しなければ
『な、なんだ貴様っ!』
「あーらら、気づかれちゃいましたか。まあ、仕方がないですね。『おやすみなさいませ、永遠に』」
そう言って目の前にいる初老の男性の首を切り裂き、さっさと倉庫を出ていった。
いま私の頭上にある月、本来今日は満月の夜だった。
だが、空に浮かぶ月は三日月だった。
ある日、突然月の7割が蒸発し消え去ったというニュースが全国的に流れて行った。
それは日本だけじゃなく海外でも流れていた。
ん?電話?
ロブロさんからだ。どうしたんだろ。
『久しぶりだな、ナイトメア。いや、ユヅル』
電話に出ると、久しく聞いていなかった低音の男性の声が聞こえてくる。
『コードネームのままでいいですって。所で、どうしたんですか。』
『君の故郷、日本の政府から君への暗殺依頼だ。月を吹き飛ばした犯人を殺して欲しいそうだ。』
月を吹き飛ばした犯人?
いや、何言ってるんだろうか。てかそもそもなんでそんな奴が日本の政府からの依頼で来るわけ?
『は?何言ってるんですか。とうとうボケましたかロブロさん。』
『そんなわけが無いだろ。紛れもない事実だ。』
『まあ、いいですよ。受けますよ。』
なんとなく、楽しそうな気配もしますし。
楽しみですね。
日が昇る前に飛んで帰るとしますか。
日本に帰国後、その足で防衛省へと赴き、この件の担当である烏間惟臣との面談をしてすぐの話だ。
「君にはこの超生物を暗殺して欲しい。」
そう言って目の前に置かれた紙に書いてある情報を流し読みする。
どうやら信用に足る暗殺者だと認められたようだ。
来年3月には地球を消し去る超生物...か
にしてもタコみたいな見た目してますねこのターゲット。
ロブロさんから超生物とは聞いてましたが...マッハ20か。
「したがって君には、国家機密を守る義務も生じる。そして暗殺に伴い、奴にのみ聞く対先生物質で作られたナイフと弾、それを打つための銃を支給させてもらう。」
「わかりました、こちらの要望で別のを作って頂くことは?」
そう聞くと目の前に居る依頼者、防衛省から来たという烏間さんは少し考える素振りをする。
「可能だ、なんでも言ってくれ。」
「あー、やっぱりこれを対先生物質でコーティングしてくれませんか?」
そうして私が普段使っているアーマーリング付きのグローブと、篭手を差し出した。
この2つは私がよく使う武器で、ナイフなんかよりもずっと手に馴染む。
正直私はナイフ苦手ですし...
「わかった、やっておこう。コーティングだけだし1週間で返せると思う。」
少しだけその後の予定を話、私は1度自宅へと帰って行った。
ロブロさんに割のいい仕事があるとか言われて了承しましたが...だいぶめんどくさそうな仕事を押し付けられましたねぇ...。
困った。
私よりも速い相手なんて今まで居なかったからどうしたらいいのか微妙に困るんですが、まあやるって決めたらちゃんとやり切りますか。
仮にもプロの暗殺者としてのプライドもありますし。
土日は文房具等の買い出しに当て、いよいよ転入日となった今日。
転入先である椚ヶ丘中学校の理事長への挨拶を済ませたあと、自分が今日から通う場所である3年E組がある別校舎へと向かっていった。
普通に歩くのもつまらないので、日陰に入ったあと日傘を閉じて、木から木へと飛び移りながら移動していく。
こんな山奥になぜ特別学級用の校舎なんかがあるのでしょうか。
流石に本校舎から遠くないですかね。
そんな事を考えながら飛んで行くと木の下の方から人の声が聞こえてきた。
「転校生ってどんな人だろうね?」
「かっこいい人だといいなーっ」
私の話題、ですかね?
同時投入とかではないらしいですし。
最初ということもありますし少し遊んでみますかねぇ?
そして、先程の生徒の影へと溶け込むようにして消えていった。
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渚side
転校生か、この時期で律さんの後...確実に暗殺者だろうな。
「なーぎさ。」
あー、びっくりした。
突然話しかけてきた緑髪の生徒。茅野カエデ、隣の席でよく話す子だ。
「あ、茅野。どうしたの?」
「渚は新しい転校生ってどんな人だと思うー?」
「時期とかを考えると暗殺者なんじゃないかなって考えてた。」
「あー、やっぱそうだよね。みんなそれ言ってた。」
みんな暗殺者なんじゃないかって思ってたんだ。
まあでも、そうだよね。この時期の転校生はちょっと怪しいし。
「いったいどんな人なんでしょうね?」
「そもそも女の子なのか男の子なのかもわかんないしな。」
そう言って杉野も会話に混ざってきた。
「あー、それだったら私が知ってますよ?」
「え、どんな人なのー?」
「男性らしいですよ。」
「へー、そうなのか。男が増えるのかー。って、え?」
また先程聞こえた聞き覚えのない声が聞こえてきた。
このクラスでは聞いた事のない......
「「「うわぁっ!いつからっ!?」」」
聞いた事のないどころか見覚えすらない銀髪混じりの黒髪、病的なまでに白い肌、そして綺麗な青い目をした女の子?がしれっと会話に混ざっていた。
「暗殺者なんじゃないかなって所からずっとあなた方の前にいましたよ?」
ぜんっぜん気づかなかった...。茅野と杉野も気づいてなかったみたいだ。
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ユヅルside
まさかここまで気づかれないとは思わなかったなー。
普通に会話してたんですけどねぇ。それどころか目の前に立ってたんですけど。
クラスのみーんな唖然としてらぁ。
まあ突然大きな声聞こえてそっちの方見て知らない人立ってたらそうなるかー。
「どうも初めまして、小鳥遊 結弦です。今日からよろしくお願いしますね?」
そーいえば職員室に行かなきゃなんでしたっけ。
さっさと行きますか。
完全に固まっていたクラスのみんなを置いて、職員室へと向かっていった。
コンコンッ
『どうぞ、入ってください。』
入室を促される声が聞こえ、ドアを開けて職員室へと入っていった。
「初めまして先生方。今日からお世話になります小鳥遊 結弦です。」
「おや、君が小鳥遊くんですか。」
こいつがターゲット...写真じゃわからなかったけど思っていたより全然大きいな。
「あー、殺せんせー、下の名前で結構ですよ。」
「にゅや、そうですか?」
殺せんせーと少し会話をしていると、奥の方から金髪の女性が歩いてきた。
多分この人がロブロさんがこの間言ってたイェラヴィッチさんかな?
「あら、新しい子は女の子なの?」
おんなのこ?ん?
「違いますよイェラヴィッチ先生、私は一応男です。制服も男物でしょう?」
「あら、ほんとね。ごめんなさいね」
そんなこんなあって、教師陣との顔合わせも終わった。
烏間さん...いや烏間先生はどうやら体育の教師らしい。
あの人防衛省の人なのに教育免許持ってるんだ。ちょっとびっくり。
転校生だからとホームルームで挨拶をすると言われ廊下で待っていたのですが...
ババババババッ
明らかにエアガンを発砲してる音が聴こえるのですが?
集団射撃中に点呼するの...?
えぇ...まじで...?
『さあ、入ってきてください。』
呼ばれたのですぐに教室の扉を開き教室へと入っていった。
52個の瞳が全てこちらを見つめてるのを感じながら教壇の真ん中へと歩いていき、みんなの方を向いた。
「さて、先程は驚かせてすいませんでしたね。改めまして、小鳥遊 結弦です。」
そう言った後にチョークで黒板に自分の名前を書いていく。
「難しい漢字ですが、覚えてくださいね。それと下の名前で呼んでくれると嬉しいです。」
「さぁ、どうせなら質問の時間としましょうか。なにか質問ある人は挙手を。」
みんな元気がいいなぁ。明らかに不良感増し増しな子以外みーんな手挙げてるや。
「はい、茅野さん。」
殺せんせーに茅野と呼ばれた子が席を立った。
おや?先程の子じゃないか。あの子茅野って苗字なんだ。
「はいはーい、結弦くん?さん?は暗殺者なの?」
「先程気になるって言ってましたもんね。えぇ、そうですよ。私は『ナイトメア』という名前の暗殺者です。」
その後も色々な質問がきたが...
「はいはいっ!結弦は彼氏居るのか!?」だの、「好みのタイプは?」だの、暗殺とは全く関係のない色気づいた質問がそこそこ多かった。
金髪の男子とあの坊主は一旦男装した女と決めつけた上での質問をやめていただきたいところだ。
その後席へ着いたのだが...隣の生徒?は自律思考型固定砲台...通称『律』と呼ばれる大きな機械だった。
さっきしれっと会話に混ざった時に他の生徒と話してるのは見てたけど、これが生徒なのかって考えたら烏間さん相当頑張ったんだろうなって思った。
今度ケーキでも差し入れしてあげるとしよう。
キーンコーンカーンコーン
休み時間には質問責め、授業の時間はしっかりと授業をというのを繰り返していたらあっという間にお昼休みの時間になっていった。
「では、先生はイギリスへ本場のフィッシュアンドチップスを食べに行ってきます。暗殺をしたい方や用事がある方は連絡してください。」
そう言って先生はさっさと飛んでいった。
私はどこで食べましょうかねぇ。初日ですし流石に教室で食べた方がいいですかね?
と、そんなことを考えながらお弁当を出すと、茅野さんと潮田くんが近づいてきてるのが見えた。
「どうしましたか、お二人さん?」
「どうせなら一緒に食べようと思って、隣いいかな?」
「じゃあ私正面ねー。」
「えぇ、いいですよ。」
そう言うと茅野さんは私の前の席の子の椅子をこちらへ向け、潮田くんは近くの席を隣へとそのまま持ってきた。
「にしても、その量食べるの?」
そう言って潮田くんが指を指した場所には、1個あたり1kgはありそうな弁当が3つ置いてあった。
「私これくらい食べないと足らないんですよねぇ。難儀な身体です本当に。」
「それだけ食べてその体型か...羨ましっ。」
少し遠くの席からそんな声が聞こえてきた。
でも女子は体型に気を使うからそういうの羨ましいって思っちゃう気持ちはわからなくもない。
だけど仕方がないじゃん、私は半分は人間だけど半分は吸血鬼だから、普通の食事じゃいくら量があっても足んないんだ。
かと言ってこんな場所で輸血パックから血を飲み訳にもいかないし。
「ほらほら、早く食べ始めないと休憩時間なくなりますよ?」
「そ、そうだね。」
そうして2人は持参してきたお弁当を食べ始めた。
さ、私も食べるとしますか。
「あ、よろしければ唐揚げとかなにかおかず要りますか?」
「いいのー?じゃあ私卵焼き欲しいかな。」
「僕は遠慮しとくよ。」
卵焼きが欲しいと言っていた茅野さんにまだ使っていない箸を取り出し、卵焼きをあげた。
「にしても、よく初めましての人から貰う食べ物を食べようと思えますね。」
「えー、だって結弦くん悪い人じゃ無さそうだし。いいかなーって。」
「仮にも暗殺者ですよ?別に自分で食べるつもりですからなにも入れてないですけども。」
「まあまあ、てかこの卵焼き美味しいねっ!」
そう言って笑顔を見せた彼女だったが......少し表情が歪んでる?...まるで痛みを我慢してるような...。
気のせいでしょうか。
そこからは他愛ない会話をしつつお弁当を食べ進めていく。
「結弦君は暗殺しかけたりしないの?」
突然潮田くんがそう聞いてきた。
「んー、そうですねぇ。まだ頼んでおいた装備が届いてなくて万全ではないので、するとしたらそれが届き次第ですかね。」
「そーなんだぁ、じゃあ今日は仕掛けないんだ。」
「そうは言っても、割とすぐですよ。烏間先生の言う通りであれば今週中のはずですし。」
それを聞いた潮田くんは興味深そうな表情でこちらを見ていた。