いろPへの感情値がかぐやへのものよりも低い
──それはヤチヨといろPのコラボライブ
そのお知らせを見て最初に溢れたのは喜びでも涙でもなくもっと暗いものだった
「なんだよそれ──」
ああ、俺はこんなに面倒くさい拗らせたやつだっただろうか
ヤチヨのことは嫌いじゃない。むしろあのコラボライブのこともあって好きな方だった
(いろPの隣はかぐやちゃんのものだったじゃないか)
怒りや失望の混ざった鬱屈とした感情のノイズが俺の思考を掻き乱す
理性はあの子の復活を喜ぶべきだと諭していた
けれど感情があの子はかぐやからヤチヨに乗り替えたのかと騒ぎたてていた
自分の中で大切にしていたなにかが壊れてドロドロとしたもので満たされていく
マグマのように熱くてヘドロのように腐ったそれに耐えられず俺は気づけばスマホを投げ捨てあんなに大切にしていた筈のグッズを壊しゴミ袋へと捨てていた
もう見たくなかった
もう目に入れたくなかった
見ていたらこの感情がより強くなってあの子に、いろはちゃんにきっと酷い言葉をぶつけてしまうのがわかるから
なけなしの理性があの子に
それからは俺はもういろPやヤチヨ、ツクヨミに関することをなるべく目に入れないように生活をするようになった
ツクヨミのアカウントも削除しフレンドらとも縁を切ってスマコンも解約
あの壁ドンをしてしまった時から我慢していた酒を飲みただ日々の仕事だけをこなす
所謂腐った日々を送っていた
そんな毎日を送り続け10年以上が経ったある日、街の広告でかぐやの復活ライブがあるという情報が彼の目に映ってしまった
ヤチヨ、いろP、かぐや、あのヤチヨカップで優勝した時のコラボライブの3人での10年越しの復活コラボライブ
それは過去の自分が望んでいたことの筈だった
あの頃の自分なら涙をして喜んでいた筈のことだった
けれど10年、彼女達から、電子の海から目をそらし腐り続けていた彼の澱んだ目はもうそれを映しても輝きを取り戻すことはなかった
「帰ってきたのか……」
ぽつりと呟くもただそれだけ
過去を懐かしんでのものなのか、今さらになってきたのかというものなのか
自分自身にもわからないまま口からこぼれ出たその一言
けれどその一言が彼の心で波打つことはなくドロドロに固まった心にドブリと沈み消えるだけ
そうして彼は今日も変わらず仕事をし安酒を飲み10年前と変わらぬアパートの部屋で眠る
彼にとってのそこは過去から離れられない暗い檻になっていた
・壁ドンおじさん
アンチにもなれずファンにも戻れずただ仮想の世界から目をそらし現実しか見ようとしなくなってしまった
オタ歴が短いため解釈違いという言葉が出てこなかった
数年後、過労により倒れる
・ヤチヨ
彼は離れちゃったかー。でも愛憎からアンチにならないだけいい人ではあったね……ごめんね