新スタートレック(TNG)×マギクラフト・マイスター 作:転々々
「老君」
「大丈夫です。この部屋は魔力的静寂が保たれています。ここでの会話が外で知覚されることはありません。
あの、ガイナンという女性のことですね」
「幾人か、魔力的な知覚能力が高い種族がいましたが、彼女は飛び抜けています」
「エンタープライズから提供された人事ファイルによると、彼女はエル・オーリア人だそうです。非公式ですが、時空を越えた知覚能力の記述がありました」
「元の宇宙を知覚できる可能性は?」
「彼女に出来なければ、他の誰にも出来ないでしょう」
「ところで、送還計画の進展ですが、宇宙船が通れるだけの穴を開けるには、力が不足しています」
「より大きなマギクリスタルの生成と、精密な書き込みが出来れば、解決できるでしょう。しかし……」
「お父様なら、どうしたでしょうか」
「
私たちはそれを許されていませんが……」
「そうですね。
しかし、私たちへの制限の目的は、私たちを暴走させないこと、人類本来の発展を妨げないことです。今回はそれにあたるのでしょうか?」
恒星日誌、宇宙歴XXXX.X
送還・召喚魔法の第一次実験が成功した。小型の探査機を別の宇宙に送り、簡単な観測を行った後、呼び戻したのだ。
残念ながら、送り出した先は我々が知っている宇宙とは異なるものだった。
二次実験では、送り出した先にマギクリスタルを置き、それをマーカーにもう一度同じ時空へ行けることを確認するものだ。
ラ=フォージ少佐によると、そこまでならば十分に成算があるそうだが、依然、我々の宇宙は遠い。送還先を特定する方法とエンタープライズを通せるだけの穴を開ける方法に難航している。後者は規模の問題だが、前者の解決は困難を極めるだろう。
「レッジ、準備はいいか?」
「問題ありません」
「レーコちゃんは?」
「マナ・キャパシタは必要量を超過。三往復だって出来ますよ」
「よし。まずは第一次送還、カウントダウン」
探査機の姿はかき消え、数分後現れた。時計のズレは約90秒。別の宇宙での観測時間だ。
探査記録をエンタープライズで受信し、今度はマーカーのみを頼りに送還する。程なく探査機は帰還し、観測データが送られてきた。
「どうだ? レッジ」
「先の観測結果とほぼ同一です。マーカーも検知されています。
しかし、召喚と時間的には1秒強しかずれていないはずですが、マーカーが2キロ近く離れています。予想よりかなり誤差が大きい」
「天文学的規模で言えば、2キロは無いに等しいさ。まして他の宇宙だ。空間的にずれたのか時間的にずれたのか、調べる方法は無いが、観測範囲内なら上出来だろう。
艦長に報告するぞ」
恒星日誌、宇宙歴XXXX.X
二次実験も問題なく成功した。少なくとも、技術的な課題は概ね解決したと言える。
しかし、規模の拡大と送還先の特定という問題は残ったままだ。
未だ、我々の宇宙は遠い。
データは礼子とともにシャトルで探査機を曳航していた。
「礼子さん」
「なんでしょうか?」
「あなた方は、仁さんが創った以上のものの製作を制限されているそうですね?」
「そうです。性急すぎる進歩は、人類のためになりませんから」
「では、あなたがた自身の進歩も制限されているのですか?」
「私たちの進歩?」
「そうです。
私は、学び、経験を積み、自分で自分のプログラムを組み換えて進歩しています。それが父の願いでした。
では、礼子さんはどうでしょうか?
仁さんは、あなたがたに、そのまま在ることだけを望まれたのでしょうか?」
礼子はそれに答えることが出来なかった。