鉄屑ヴィラン   作:鉄子の部屋

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雄英襲撃

 

 

 昼でも夜でもない逢魔時、街の外れにある廃墟には社会の掃き溜めたちが集まっている。

 

 掃き溜め──俗に言う『ヴィラン』たちは教えられた“美味い話”を元にここへと集まっている。

 

 いじめられた、いじめてた、満足できない、満足な奴らを殺したい、捨てられた、捨てて来た、集まった理由に同じものは無い。されど今の現状に納得できている者は1人としていない。

 

「まだ来ねえのかよ!」

 

 錆びたドラム缶を異形の腕を持つヴィランが殴り飛ばす。その者以外にも明らかにイライラしていることが見て取れる。

 

 そんな暴れている異形たちを1人のヴィランが眺めている。

 

 その者の体は鉄屑だった。

 

 錆びたパイプに何のパーツか分からない部品、綺麗な場所など一つとて無い。鉄屑が人になったと言われれば納得する者が出てくる程にその者は鉄屑だった。

 

 ついに痺れを切らしその場から去ろうとした者が出ようとしていたところ突如として黒い霧が現れる。

 

 ヴィランたちが固唾を呑みながら黒い霧に対して警戒する。

 

 そして中から現れたのは身体中に手を取り付けた青年に恐らく黒い霧の個性の男だった。

 

「──明日、平和の象徴『オールマイト』は死ぬ」

 

 大きな声を出していない筈、だか誰一人として聞き逃した者はいない。

 

「ヒーローの信頼は地に堕ち、この腐った社会は混乱に陥るだろう」

 

 唾を飲む音が聞こえる。誰もが気が高まり興奮している。

 

「共に『オールマイト』を殺し、この腐った社会を壊そうじゃないか」

 

『うおおおおおおお!!!』

 

 歓声が上がる。青年のカリスマに魅了されたヴィランは失敗を考えない。誰もがこの先に待つ壊れた社会を夢見ている。

 

 鉄屑ヴィランも思わずにはいられなかった。

 

 彼なら何かを成し遂げてくれる筈だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィランたちが襲うのは、雄英高校のUSJ── ウソの災害や事故ルームにやって来た生徒たちだ。

 

 そこの生徒たちは、この場所で命を救う授業をするとのこと。

 

 ヴィランの一人が「はははっ!実践授業じゃねーか!ガキどもに命の大切さを教えてやろうぜぇ!」と笑えば周りも笑う。

 

 緊張などしていない。ただいつも通りに襲うだけ。少し規模がデカくなっただけでやることは変わらない。

 

 そして時間となり黒霧が個性を発動して霧に包み込まれる。

 

 体が少し浮いたと思えば景色が変わった。どうやら中央広場に飛ばされたらしい。少し視線を前に向ければ恐らく教師と生徒が一塊となってこちらを見ている。

 

「ひとかたまりになって動くな! あれは、ヴィランだ!!」

 

 一人の教師がすぐさま現状を把握し生徒に指示を飛ばしていく。有名ではないがヒーローだ、警戒しないことには変わりない。

 

 宇宙服を着た教師も恐らくヒーロー。でもオールマイトが居ない。これでは最初の目的が果たせない。

 

「どこだよ……せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト……平和の象徴……いないなんて……」

 

 ヴィランの親玉の青年がぶつぶつと話す。

 

「──子供を殺せば、来るのかな?」

 

 隠しきれない邪悪が青年から溢れ出し生徒に襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イレイザーヘッドが飛び出し個性を発動する。

 

 個性が使えないだけでヴィランは狼狽ノックアウトされていく。

 

 個性を消すだけで身体能力は一般人のはず。が、所詮社会の掃き溜めと常日頃から鍛えているヒーロー。差があるのは当たり前だ。

 

 捕縛布を使った動きにヴィランは次々に倒されていく。

 

「嫌だなプロヒーロー。有象無象じゃ歯が立たない」

 

 特に期待もしていないチンピラたちがやられていく。が期待していない者から原石を発見すると嬉しい気持ちになる。

 

「意外と役に立つやつもいるんだなぁ?」

 

 今の死柄木弔の気持ちはそれだった。

 

 目の前ではイレイザーヘッドが一人のヴィランと対峙していた。

 

(やりずらいな...)

 

 イレイザーヘッドが考えているのはこの一言のみ。

 

 対峙する鉄屑ヴィランは、近づかず離れすぎずの距離で攻撃をしてくる。

 

 捕縛布で拘束しようにも体に巻きつけるには隙が無く、腕や足に巻き付けようとしても鉄屑ヴィランは鉄屑をパージするように切り離し捕縛を免れる。

 

 そしてパージされた鉄屑はまたヴィランの腕と足となり復活する。

 

 さらに少し距離が空けば鉄屑を操作し攻撃をしてくる。

 

 身に纏っている鉄屑が無くなることを期待したいが攻撃に使った鉄屑も再び元に戻っている。

 

 捕縛はできないがやられることもない鼬ごっこにイレイザーヘッドは思わず舌打ちをしそうになる。

 

「おいおい、無理は良くないぜ?イレイザーヘッド」

「!!」

 

 イレイザーヘッドはすぐに死柄木弔の個性を抹消するが掴まれた腕の皮膚はパラパラと渇いた砂のように崩壊していき、下の筋肉が見える。

 

 すぐに手を振り払い距離を取るが鉄屑が飛んでくる。息を吐く間も無くイレイザーヘッドは動き続ける。

 

「かっこいいなあ、かっこいいなあ。ところでヒーロー」

 

 黒い巨体がイレイザーヘッドの背後に現れる。

 

「本命は俺じゃない」

 

 ぽきっ、まるで小枝を折るように腕が折られまるで無邪気な子供のおもちゃのように痛めつけられる。

 

 鉄屑ヴィランも鉄屑を操作し応援に入ろうとしたが、

 

「おい、お前の仕事は終わりだ。あとは脳無の活躍でも見とけ」

「...」

 

 そう言われた鉄屑は操作をやめ、まるで死柄木弔の護衛かのようにスッと横に立った。

 

 そして黒霧が13号を行動不能にしこちらに帰ってきたが生徒を一人逃してしまったようだった。

 

「はー───... 黒霧おまえ...おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ......さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ......今回はゲームオーバーだ」

 

 そして軽い口調で、

 

「帰ろっか」

 

 帰宅宣言をした。ここまでしたのにも関わらず引き際はあっさりしている。生徒たちはヴィランの撤退宣言にほっと安心する。

 

「でも、その前に平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう!」

 

 死柄木弔こ魔の手が生徒の一人に襲いかかる。イレイザーヘッドの肘をボロボロに崩壊させた手のひらが生徒の顔に覆われる。

 

 しかし、イレイザーヘッドが個性を抹消することで生徒の命は助かった。

 

「離れろおぉぉ!SMA──がはっ!?」

 

 仲間を助けるために腕を犠牲にした攻撃を繰り出そうとした瞬間、高速で飛んできた鉄板が顔に勢いよく当たる。

 

 顔を攻撃されなおかつ鉄板で視界が封じられたことで仲間を巻き込むという可能性から攻撃は不発に終わった。

 

「いい動きするなぁ...それとお前もいい働きっぷりだな?」

「...」

 

 鉄板を回収する鉄屑は依然としてダンマリ。死柄木弔は何も喋らない鉄屑に苛立つが、突如として轟音が響く。

 

「もう大丈夫、私が来た!!」

「あー....コンテニューだ」

 

 音の正体は、オールマイト。ネクタイを引きちぎりながらの登場に生徒達は歓声に沸き安堵した。これでもう大丈夫だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてとヴィラン。お互い早めに決着つけたいね」

「チートが......!」

 

 やはり平和の象徴オールマイト。脳無を遥か彼方に吹き飛ばしてしまった。その光景に死柄木弔は苛立ちを隠せないように喚く。

 

「衰えた? 嘘だろ......完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を....! 全っ然弱ってないじゃないか! あいつ......俺に嘘を教えたのか!?」

「どうした? 来ないのかな!? クリアとかなんとか言ってたが......できるものならしてみろよ!!」

 

 とここで黒霧のフォローが入る。

 

「死柄木弔....落ち着いてください。よく見れば脳無に受けたダメージは確実に表れている。あと数分で増援が来てしまうでしょうが、まだ殺れるチャンスはある。そこのあなたも私と死柄木弔をサポートして下さい」

 

 そう言われた鉄屑は身に纏っていた鉄屑を数多に浮かし死柄木弔の周りへと飛ばした。

 

「鉄屑の盾...か、いいね...ラスボス前だ、準備は万全しないとな」

 

 鉄屑を浮かす死柄木弔が走り出す。

 

「何より...脳無の仇だ」

 

 合わせるように黒霧も個性を発動させる。セカンドステージが始まろうとしたその時、

 

“ギャリンッ!!”

「!」

 

 浮いていた鉄屑に銃弾が当たる。教師の増援だ。

 

「あーあ...ゲームオーバーだ。黒霧、帰って出直すぞ。鉄屑、お前もついて来い」

 

 宙に浮く鉄屑が追撃の銃弾を弾き返す中、そう言う。鉄屑も異議はないらしく従順に従う。

 

「今回は失敗だったけど.....今度は殺すぞ、平和の象徴──オールマイト」

 

 そう宣言した後、死柄木弔は黒い霧に呑まれていく。そして死柄木弔が呑まれたことを確認しついて行くように鉄屑も黒い霧に呑み込まれていった。

 

 そして黒い霧がその場から消えたことにより雄英襲撃事件はこれにて幕を下ろした。

 

 

 

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