不老不死、自分が過去に設立した組織に加入する。 作:RGN
リーナ・ザフキエルという名を得る前の、名もなき上位種であったそれは、生と死の概念すら希薄な、意思を持つ巨大なコンピュータとでも呼ぶべき鉱物であった。
流されるままに宇宙空間を漂い、星を食らい、ただ己を存続する。
たったそれだけの行為を何の目的もなく、自らが創成されたその時から延々と繰り返し続ける存在が、リーナの本来の姿とでも言うべきものだった。
そこに生命としての営みは存在しない。
単結晶だけでも十分に永久機関たり得る鉱物の体は、当然ながら食事など必要とせず、成長する理由など微塵も無く、繁殖など行うという発想すらない。
ただそこにあるから、なんだかそうしたい気がするから、星を食べる。
しかし、それは決して食事ではない。
彼女に食い散らかされたあらゆるモノは、彼女の糧になどならない。
ただただ鉱物の体の中に消え、終わる。消滅だ。後には何も残らない。
破壊と滅亡の象徴。
宇宙を揺蕩う災害。
それこそが鉱物の正体であり、本性であった。
そんな鉱物であった存在がリーナ・ザフキエルの名前を得て、本来の役割をかなぐり捨て、人の似姿を取り、多重に融合した世界の秩序を守るような真似をしている。
間違いなくそれは異常であり、本来ならばあってはならない致命的なエラーであろう。
そうなってしまった理由は単純かつ明白。
クドウと呼ばれる、劣等種の男である。
「……へぇ、まさかとは思うが、意識があるのか?」
彼女がコンピュータであるのならば、彼はウィルスだった。
「すごいなこの星。俺たちの行動が理解できるのか。ずいぶんと賢い……何なんだろうな? 生物って言っていいのかこれ? おいお前、俺の言葉はどうなんだ。わかるか?」
彼のあらゆる言動が彼女の演算回路を焼き、記憶領域を汚染し、制御を乱す。
彼女のCPUともいえる部分は、もはやボロボロであった。
「お前良いな。気に入った。すげー気に入った。よしお前、俺の仲間になれ。一緒に世界中旅して悪い連中ブチ転がすぞ」
恋愛感情は脳のバグである、と表現されることがある。
そして、脳とはつまり生体コンピュータである。
そのことから逆説的に考えれば、コンピュータにとってバグとは恋愛感情である。
であるのなら、彼という存在に致命的なバグを吐いたコンピュータである彼女は───
「はぁ……クドウさんクドウさんクドウさん……今、どこで何をしているんでしょう。元気にしては……いますよね。だってクドウさんですし……ああでも、心配です……また何か変なことをやって死んでいなければいいんですが……すぐ壊れちゃうくらい弱いんですし……いやでも、そういうことをしないクドウさんって一体……あ゛ぁ~……また
全く予想も想像もつかない彼の行動をエラーを吐きながら演算しまくっては思考回路が解ける感覚に快感を覚えるタイプの異常者と化していた。
どうやらウィルスが効きすぎてしまったらしい。
「あはぁ……やっぱり恋っていいですねぇ……恋愛って素晴らしいですねぇ……こんなに気持ちいいことを知らずにずぅっと生きていた私って何だったんでしょうねぇ……」
まぁ、恋と言えば恋なのだろう、これも。
恋愛感情の在り方は人それぞれである、と人間同士の中でもそう言われているのだから、種族が違えば当然、その在り方も大きくかけ離れていて然るべきである。
にしては人間味に溢れすぎている気もするが。
「はぁ……会いたいなぁ、クドウさん。また会って、一緒にお話しして、どこかに出かけて……あぁでも、クドウさんの事を完全に覚えちゃったら、この心地よい感覚も消えてしまうのでしょうか……わかりません……わからない……あっ、また
彼女の自問自答は、これからも続く。