不老不死、自分が過去に設立した組織に加入する。   作:RGN

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先輩魔法少女

 面倒な書類なり何なりを片付け、正式にガーディアンズに加入……この場合、再加入か? を、果たした私であるが、まず最初に受けなければならなかったのは幾らかの講習であった。

 どうやら組織に加入しただけでは異能を用いた活動はできないらしく、そういう専門の免許を取らなければならないのだとか。

 そりゃあまぁガーディアンズは異能を用いて異常に対抗し、民衆を守るということを正式に認められた組織であるわけだから、コンプライアンスなり何なりが厳しいというのも、当然の話であろう。

 

 私がかつて居た頃の初期ガーディアンズは、普通に目に付いたヤバいヤツを殴ってるだけのヤバいヤツだったからなぁ。

 この辺の諸々がしっかりとしている事はむしろ安心だ。

 若干面倒臭くはあるが……その辺は仕方あるまい。必要なものだ。

 

 しかしまぁ、私はこれでも物を覚えるのは得意な方である。

 肉体年齢が若いままだから、脳も若いというのも大きな要因だろう。

 

「……と、そんなわけで。約一週間ほどで取得はできた」

「は、早いですね……普通なら一か月くらいかかるのに」

 

 と、若干引き気味で言うのは、エージェントの中では私の唯一の知り合いと言ってもいい魔法少女のフロス嬢である。

 なんか元々住んでいた場所が近かったらしく、何かと顔を合わせる機会が多くなりそうだったので、先に仲良くなっておいたのだ。

 

「車のそれとは違って、実技が無かったからな。それに、俺の場合は他にやることもなかったというのも大きい。大体は学校に通ったり、仕事をしながらだろう」

「まぁ、そうですね……私も学校に通いながらやってましたし」

「私としては、むしろそちらの方がすごいと思うのだがな」

 

 学校の勉強とかもある中で、色々と大変だろうに。

 

「今も通っているのか」

「え? あぁ、はい。まだ15歳ですので」

「高校に」

「はい。大学は……今のところ、考え中ですけど」

 

 ふぅむ……大学、大学なぁ……

 私が生まれた時は義務教育だの学歴だの、そういった話は一つも無かったからなぁ。

 ここ数百年もずっと農業やってるだけだし……うぅむ、何もわからんな。

 

「私からは自分でしっかりと考えて決めなさい、としか言えないな」

「そうですよね……」

「うむ。自分の人生だからな」

 

 その悩みは、もう私には得ることのできないものだ。

 是非とも大切にして欲しい。

 

「───あら、フロスさんではありませんか」

 

 と、そんな会話をしながら歩いていると、何やら随分とゴージャスな人が来た。

 いわゆる金髪縦ロールというヤツだ。まさかこんな髪型の人が実在したとは。

 しかし、衣装のフリフリ感を見るに……彼女も魔法少女なのだろうか?

 

「あ、エーデルワイスさん。こんにちは」

「ええこんにちは。お元気そうで何よりですわ。そして、そちらのお方は……」

「新入りの九道だ。よろしく頼む」

「あら、貴方が。ええ、こちらこそどうぞよろしくお願いします。魔法少女のエーデルワイスです。貴方のことは期待の大型新人と聞いておりますわ。何でも、怪獣を素手で殴り倒したとか」

「……あぁ、まぁ」

 

 事実、殴り倒したからなぁ、怪獣。

 何ならそのまま殴り殺したし。

 

「……否定なさらないという事は、どうやら本当のことだったようですわね」

「恥ずかしながら、畑を潰されて冷静さを失ってしまってな……」

「大切にしていたものを壊されて怒ることは健全なことですわ。何も恥じることなどありません。ただ、身の危険くらいは顧みるべきでしたわね。そのための私たちなのですから」

 

 ……真面目な人だ。

 見た目からは想像もできないくらい真面目でしっかりした人だ。

 

「……しかしまぁ、冷静さを失っていたというのもあるのでしょうし……何より、それで実際に勝ってしまっているのですから、私から偉そうに物は言えませんわね。釈迦に説法をするような差し出がましい真似、謝罪しますわ」

「いや、むしろハッキリと言ってくれて有難かった。謝罪は必要ない」

「そうですか。では、そのように」

 

 と、姿勢を正すエーデルワイス嬢。

 改めて近くで見ると、本当に姿勢がいい。

 一本の芯が軸に突き刺さっているようだ。

 

「……お二人とも、とてもしっかりされていらっしゃいますね……私もやっぱり、九道さんやエーデルワイスさんみたいに礼節を覚えたほうがいいのでしょうか……」

 

 私たちのやり取りを隣で見ていたフロスちゃんが、縮こまりながらそんなことを言う。

 もう既に、15歳にしてはよくやっている方だとは思うのだが。

 

「お気になさらずとも、今のままで十分だと思いますわよ、フロスさん。ただまぁ、参考にする場合は九道さんの方になさってくださいませ。私の場合は……少々特殊ですので」

「……異世界交流か」

「えぇ、その通りですわ」

 

 融合した異世界同士は、半ば地続きになっている。

 とはいってもその繋がり方はそれぞれ特殊であり、生成したゲートを通じるものや、宇宙飛行を必要とするもの、特定の手順を踏むことで移動できるものなど、様々だ。

 その中でも特に身近なのは、やはりゲートだろう。

 トンネルを抜けると異世界に繋がっている、何て場所が、この日本だけでも3か所ある。

 

 そして、その繋がった先の異世界というのも、また様々。

 剣と魔法のファンタジーみたいな世界もあれば、絵に描いたようなディストピアの世界、時代劇のような世界にスペースオペラな世界、この世界そっくりだがちょっと違う……なんて世界もある。

 

 で、そんな異世界との交易とか人の出入りとかも起こっているわけだから、当然そこには外交官的な人物も複数いるわけで。

 そういう人物は基本的に向こう側の礼節に合わせるので、我々の世界のそれとは若干異なるものであることが時としてあるのだそうだ。

 

「父がそう言った立場でして。私もいざという時に失礼が無いように、と」

「へぇー……そうだったんですか……」

「ふぅむ、大変なものだ」

 

 実際死ぬほど大変だったからな私も。

 本当に世界ごとにルールが違い過ぎて意味が分からんのだ。

 比較的感性の近い世界だったのならまだ良かったが、本当に全く違う世界だと、我々にとっては当然ともいえる行為が最大限の侮辱を示すものだったりするから怖い。

 あとは向こうの常識を知らずに歩いた結果、何かタブーに触れて殺されるなんてこともあったはずだ。カルチャーショックでショック死である。

 まぁ私の場合生き返るけど。って言うか死なないけど。

 

 あと罠なのは、言語だ。

 世界融合の影響で互いに互いの言語をほぼ完璧に理解できるようになったとは言え、そんなつもりで喋ったのではないのに、向こうの言語の都合でとんでもない皮肉とか侮辱として出力されることも決して少なくないのだ。

 特に(ことわざ)などは大体罠であるので、気をつけねばならない。

 

 そういうところで本当に大変というか、結構命がけなのだ。異世界交流は。

 だからいざという時に娘に礼節を仕込んでおくというのも、まぁおかしな話ではない。

 

「九道さんは異世界に行った経験がおありで?」

「まぁ、一応は」

「行ったことあるんですか、異世界? どこに行ったんです?」

「幾つか、とだけ言っておこう」

 

 万の異世界を渡り歩いた男だとも。私は。

 今は昔の話ではあるがね。

 

「はえー……どんな感じでしたか?」

「私も礼節だけ叩き込まれただけで、どんな場所かは知りませんの。お聞かせいただけませんか?」

「海外旅行の数倍は刺激的、とだけ言っておこう。楽しみを奪うのは酷だ。詳しくは自分の目で確かめてくれ」

 

 と、茶目っ気たっぷりに言ったはいいものの、実はほとんど覚えていないからポジティブなことが何も言えないだけだったりする。

 だって数百年前だぞ、私が異世界を渡り歩いていたのは。

 そりゃあ多少のことは覚えているが、基本的にそれは仲間との交流だとか、大変だった戦いだとか……その辺だぞ。

 この場で言えるわけがないだろう。

 

「うーん……まぁ、仕方ありませんわね。いずれ自らの足で向かうその時まで、楽しみに取っておきましょうか」

「それがいい」

 

 いや本当に。

 

「では、私はそろそろ失礼させていただきますわ。お互い多忙な身でしょうし」

「そうでもないが……まぁ、いつどんな相手が出るか分かったものではない、と言えばそうだな」

「えぇ。それでは、ごきげんよう」

 

 と、そう言ってエーデルワイス嬢は私たちが来た方へと歩いて行った。

 

「……さて、では我々も行くか」

「はい、そうしましょう」

 

 これからパトロールなり何なりのやり方を、実践形式で教わる予定だ。

 久々の仕事である。気合を入れて臨もう。

 

 

 

 ■

 

 

 

 二人と別れた数分後。

 エーデルワイスが対面するのは、大城だ。

 

「それで、どうだったかな? 君から見たあの御仁は」

「味方でいてくれる分にはこれ以上なく頼りになりそうな人物でしたわ。敵に回った時は……想像したくもありませんわね。まるで深淵を覗くような気分でした」

 

 エーデルワイスは、魔法少女のリーダー的存在である。

 少女と名はつくものの、既に20代に差し掛かっている彼女は、10年近くもの間最前線で国を支え続けた女傑だ。

 そんな彼女をして、あの九道という人間の底を測ることはできなかったらしい。

 

「貴方の達人、という評価は間違いなく正しいものでしょう。何の道具の補助も無しに魔力漏れを完全に封じるなど、人間技とは思えませんわ。魔力操作の面に関してはエルフ並ではないのでしょうか」

「ふむ、やはり君の目から見てもそれ程か……」

 

 二人の間に、ピリついた沈黙が訪れる。

 

「……君に聞こう。あの人物は、何者だと思う?」

「貴方でさえ答えられない問いに、私が回答できると思いまして?」

「どんなものでもいい。一つ、案を出してくれないか?」

「そうですわね……」

 

 エーデルワイスは顎に指を当て、暫し考え込み……

 

「……上位種の落とし子の末裔、とかでしょうか?」

 

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