もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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1999年8月2日その8

田町から出発し、お台場と海を挟んだ芝浦の倉庫街を目印に海に出た。

 

夜の帳が下りる。月明かりとともに、周辺が視野の中に薄ボンヤリと浮かんできた。霧は相変わらず濃い。海と山積みのテトラポッドのが現実の世界とは思えないような、淡い影となっていた。緑がわずかに認められる。白い霧が濛々と渦巻くばかりだ。その感覚は胸を締めつけるほど不気味なものだった。影をもたない人間を見てるように。

 

湧き上がる不安は的中した。なかなか霧が薄くなる場所が見つけられないのだ。結界が張られているとゲンナイさんがいっていたように、どこまで行っても海が広がるばかりでお台場にたどり着く気配がないのである。

 

僕らはヴァンデモンの配下と思われるデジモンに襲われては返り討ちにするを繰り返し、埒が開かないとわかってからは逃げの一手だった。

 

ジャザードモンは索敵が趣味という変わり者で、周囲の状況把握を怠らない。暗視・熱源・超音波などの機能を有しており、気付かれずに近寄ることは不可能とされる。その能力を遺憾なく発揮して、濃霧の海の中デジモンの反応がないか探した。それを空中から光線で奇襲を仕掛ける。霧が薄くなっているところを発見して、近づいてみるとすでに先客がいた。

 

高石とお台場小学校6年生の城戸丈だ。ジャザードモンをみるなり味方の守護デジモンにパートナーがいることに驚いていたが、泉から事前に連絡がいっていたようで話はスムーズにいった。

 

城戸は中学受験を控えた受験生のため塾の夏期講習に出ていて、お台場に帰ろうとしたら濃霧の障害に巻き込まれてしまい、立ち往生していたらしい。そこにたまたまヤマトのことが心配で遊覧船の船乗り場にきていたタケルと再開。城戸のパートナーは海を得意とするデジモンのため、直接海からお台場に乗り込もうとしたら、ヴァンデモンの配下と交戦。ズドモンという完全体に進化することができて、一息ついているところだった。

 

「そのデジモンは?」

 

「8人目の紋章とタグを持っていたから助けたんだ。ヴァンデモンから盗んで8人目に渡そうとしたらバレて粛清をうけたらしいんだよ」

 

「光っていってた、太一さんの妹かな?」

 

「しかもパートナーは、ヴァンデモンの手下のテイルモンだっていうんだ。なにがなんだか」

 

放っておけなくて、一応応急処置はして寝かせているところだという。僕もズドモンに降り立ち、ジャザードモンをジャザモンに退化させる少しでも体力を温存しておきたいからだ。

 

「ウィザーモンだよ、オサム」

 

「ウィザーモン?」

 

僕の傍で気絶しているデジモンを眺めていたジャザモンがいった。ジャザモンがうなずく。

 

異世界「ウィッチェルニー」からやってきた炎と大地の魔法を納めたデジモンだが、禁忌に触れたせいで姿を人形に変えられて追放されてきた。そのせいで今使えるのは雷系の魔法だけ。

 

「なにをしたんだ?」

 

「わからない。でも、ウィッチェルニーにとっては重大な案件だったみたい」

 

「そうか」

 

「うん」

 

「テイルモンとウィザーモンは友達なんだよ、きっと。だから友達のパートナーの光ちゃんに本物の光の紋章を届けたいっていってたもん」

 

高石と城戸の話が正しいなら、ヴァンデモンの手下のテイルモンが8人目の選ばれし子供のパートナーで、八神光が新たなる選ばれし子供ということになる。

 

「どのみち、デジヴァイスとタグ、紋章が揃わないとテイルモンは進化できないから、はやく合流しなくちゃいけないね」

 

「たしかにそうだな。どうする、僕たちが先導して露払いしようか」

 

「索敵が得意なんだっけ?じゃあお願いできるかな」

 

「ああ、任せてくれ。」

 

ジャザードモンが僕を乗せてふたたびお台場の空を飛び始めた。雲の中でバケモンたちが隠れているのが見えたから、ジャザードモンは一気に雲に穴をあける。一目散に逃げていくバケモンたちを一網打尽にしつつ、ズドモンの先をいく。

 

ズドモンと一緒にフジテレビに上陸した僕たちは、とりあえずデジタルバリアを展開してジャザードモンに索敵を依頼した。ウィザーモンが目を覚ます。

 

「大丈夫か?ここでじっとしていた方がいい」

 

「いや、一緒に連れて行ってくれ。私はまだやらないといけないことがある」

 

ふらふらな足取りながらなんとか立ち上がることができたウィザーモンに城戸が肩を貸す。高石も心配そうだ。

 

「フジテレビの球体に強い反応がある。見張も厳重だ。おそらくそこにヴァンデモンがいる」

 

帰ってきたジャザードモンがいうので、僕らは顔を見合わせた。

 

「フジテレビかあ、展望台まで行ったことあるけど、よく覚えてないんだよなあ」

 

「ごめんなさい、僕も」

 

「ぼくもルートまではわからないが、見張が厳重ならその経路を辿っていけば辿り着けるんじゃないか?デジタルバリアを貼りながらいけば」

 

「よし、そうしようか。みんな成長期に戻ってくれるかい?少しでも力を温存しておいた方がいいよ」

 

「わかった」

 

「はーい」

 

「承知した」

 

僕らはフジテレビに潜入することにしたのだった。

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