もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
エンジェウーモンと全ての力を合わせてヴァンデモンを倒した僕たちだったが、お台場の霧はなぜか晴れない。ジャザードモンが霧の向こうにまで飛行してみたが、いつまでたっても芝浦の倉庫街に辿りつかない。これはどうみても、まだヴァンデモンを完全に倒していない証だ。どこかで生きているのだ。
僕らが途方にくれていると、ゲンナイさんから泉のノートパソコンにメールが届いた。「うれしいお知らせ!」というタイトルを読み上げ、添付ファイルが自動解凍される。藁にもすがる思いで泉のノートパソコンに表示された内容は古代遺跡で見つかった予言の詩であった。
『はじめにコウモリの群れが空をおおった。続いて人々がアンデッドデジモンの王の名を唱えた
そして時が獣の数字を刻んだ時アンデッドデジモンの王は獣の正体を現した。天使たちがその守るべき人のもっとも愛する人へ光と希望の矢を放った時奇跡はおきた』
あまりにも抽象的な文章の羅列に僕らは顔を見合わせた。残念ながら僕たちが求めている具体的な霧を晴らす方法は、メールではわからなかった。なので選ばれし子供達はひとまず自宅へいくことになった。霧が晴れないなら電波障害も直っていないということだから、僕は田町にある自宅への連絡手段がない。とりあえず、ジャザードモンとウィザーモンと一緒にお台場の人たちが拉致されたビッグサイトに助けに向かうことにした。
「そういえば、ジャザードモンは一回退化したがウィザーモンはしないんだな」
「テイルモンがいっていたように鍛え方が違うからな」
「なるほど、長い間ヴァンデモンの手下をやってただけはあるんだな」
ジャザードモンたちの強烈な一撃で見張り役をしていたバケモンたちが一目散に逃げていくが、アグモンたちが先回りしていたおかげで一網打尽にすることができたのだった。
「これは......みんな無事なのか?」
たくさんの大人と子供がそれぞれ分けられた状態で一定の間隔で寝かされている異様な光景が広がっていた。何万人という数の人間たちがビッグサイトに集められたのだ。ヴァンデモンは食料にするつもりだったらしい。どこまでも恐ろしいやつだ。
選ばれし子供達の両親や兄弟達もこの安置されている人間たちに含まれているようで、かけつけた城戸の兄である城戸シン(医大生らしい)曰く、みんな寝ているだけとのこと。一安心だったが、武ノ内たちが呼びかけても揺さぶっても目を覚ます様子がないことから、ヴァンデモンの催眠術がまだ有効だということだ。
「ヴァンデモンはどこにいるか、探せるかジャザードモン」
「わかった、私、調べてみる」
「八神、僕たちはヴァンデモンを探してみる」
「おう、頼んだぜ一乗寺」
僕はジャザードモンに乗り込み、ビッグサイト上空にかけあがった。
「なんだあれは......ヴァンデモンのコウモリか?まだあんなにいたのか」
急に曇天がさらに暗くなってきて、空を見上げると一面真っ黒に染め上げられている。目を凝らせばたくさんのコウモリたちがひしめいていた。
脳裏をよぎる悪魔の数字という予言書。
悪魔の数字と言えばイエスが弟子の一人、ヨハネに啓示したのを書いた新約聖書の最後にある書物で、新約聖書唯一の、将来についての預言書。黙示録13章18節に、666が獣の数字として記されている「その数字とは、人間をさすものである。その数字は六百六十六である」。俗に悪魔や、悪魔主義的人間を指す数字とされる。
666とは何を意味するのか。普通に考えるなら人の数?いやビッグサイトには何万人もいるからそんな数ではない。ヴァンデモンの手下はたくさんいたが、さすがに666体もいなかった。なら666は一体......?
「オサム、今何時?」
「今?そうだな、5時50分だ」
「フジテレビの倒壊した展望台付近にあやしい反応がある。あれがヴァンデモンなのだとしたら、6時6分6秒なら666になる」
「それだ!ヴァンデモンがまた復活したらビッグサイトにいる人たちがあぶない。ジャザードモン、ビッグサイトに戻るぞ!八神達に知らせるんだ!」
「わかった」
ジャザードモンが一気に降下する。ビッグサイトの窓を突き破り、たくさんの人たちが眠っているところに戻った僕たちは、ヴァンデモンの復活の予兆があることをつげた。選ばれし子供達は一斉に集まってきた。テイルモンが話し始めた。
「予言の書には天使達とある。私とパタモンが天使に進化できるから、きっと私達のことだ。あとは太一とヤマト、フジテレビに来てほしい」
「よし、わかった。いこうぜ、光」
「うん!」
「いくぞタケル」
「わかったよ、お兄ちゃん」
「私達は?」
「みんなはこれからの戦いに備えて力を蓄えておくべきだと思う。ビッグサイトで待機してほしい」
「わかったわ、気をつけてね」
「テイルモン、私も一緒に......!」
「大丈夫だ、ウィザーモン。ここで待っていてくれ」
僕たちは祈るような気持ちで、八神達を見送ったのだった。