もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
突如として、フジテレビの方から耳をつんざくような破裂音が連続して響き、さすがに八神達が心配になってビッグサイトの入り口からフジテレビの方を確認しに集まると、太い黒煙が立ちのぼりはじめていた。フジテレビの象徴である巨大な球体の展望台が、スローモーションみたいに傾いていく。やがてもげてしまった展望台がボールみたいに飛び跳ねて転がった。
ふたたび轟音が響いた。フジテレビが完全に倒壊してしまった。そこから姿を現したのは獣の下半身と甲虫のような外殻の上半身を持つ魔獣だ。ヴァンデモンがさらに進化した姿のようだ。秘めたるパワーを解放したヴェノムヴァンデモンにあるのは破壊と殺戮の衝動だけであり、フジテレビがあっという間に瓦礫とかしてしまう。巨大なヴァンデモンは、空を覆い尽くすほどの巨体で、暴れ回っている。
「ヴェノムヴァンデモン、究極体だ」
「究極体?」
「そう、究極体。完全体のさらに上の進化形態。完全体10体分の強さに相当する」
ヴェノムヴァンデモンに2体のデジモンが果敢に立ち向かっているのが見える。
「太一のパートナーが、ウォーグレイモン。ヤマトのパートナーが、メタルガルルモン。どちらも究極体に進化したみたい」
「2体の究極体か......でも苦戦してるみたいだな。ヴェノムヴァンデモンはつよい」
なにか僕たちに手伝えることはないだろうか。ふとデジヴァイスをみた僕はひらめいた。
「ジャザードモン、デジタルバリアは結界機能の応用だったよな?2人の場合どうなるんだ?」
「その分バリアが広がる」
「4人なら平面の結界ができる。そうだ、選ばれし子供達は8人いるから、四角形にできないか?そこにヴェノムヴァンデモンを閉じ込めるんだ!」
僕の提案に八神達はうなずいてデジヴァイスをかかげた。光線が放たれ、四角形の結界となる。ヴェノムヴァンデモンは捕縛され、完全に身動きをとれなくなった。
穴のあいたところに浮かぶ不気味な顔目掛けてフジテレビの球体の展望台をウォーグレイモンが蹴り上げた。
弱点をつかれたヴェノムヴァンデモンは断末魔をあげて消えてしまったのだった。
曇天と濃霧が晴れていく。時間は朝の7時、青空が広がっているはずだった。
「なんだこれは!?」
思わず僕は叫んだ。青空がズタズタに引き裂かれていて、その裂け目から逆さまの世界がのぞいていたからだ。
その裂け目に触れた部分が謎の結晶化現象を起こし、重くなった尾翼によりバランスを崩し、墜落する飛行機をバードラモンが受け止めた。裂け目から次々にデジモンたちが降りてきてあたりを結晶にしながら暴れ出した。攻撃しようとしてもすり抜けてしまい、撃つ手がない。
「デジタルワールドでなにがおきてるんだ!?」
「行ってみよう、もう一度デジモンワールドに」
「よし、みんなのデジヴァイスを集めるんだ」
デジヴァイスが8つ円柱の光を放ち始め、虹色の柱ができあがる。その導きを信じて。巻き込まれるのではなく、今度は自らの意志で八神達は集った。
「じゃあ、行ってきまーす!」
なぜ新たな旅立ちを選択したのか。今以上の敵との対戦が待っていることは想像できたのに。それは、平穏な世界・家族との絆が決して当たり前の日常ではないと知らされてそれをどうしても守りたかったから。
敵を倒してこられた自信と仲間の力、聖なるデヴァイスと紋章の力を信じられると思ったから。たぶん選ばれし使命感というよりは、現実世界とデジタルワールドという身近な存在を守りたい気持ちが勝ったのだろう。
世界の危機に、決意をした八神達を僕らは見送ったのだった。
携帯電話にメールの着信があった。開いてみるとゲンナイさんからだ。
今、デジタルワールドは選ばれし子供達がこちらの世界に帰還してから12年という長い長い時間が経過してしまった。その間に、ダークマスターズという暗黒の力を得て強大なパワーを秘めた究極体4体が率いる軍隊によって支配されている。ゲンナイさんも選ばれし子供達のサポートに回りたいが、暗黒の力によってうけた毒がダークマスターズの暗躍によって暗黒の勢力を増しているせいか威力を増していて全く動くことができない。そのため、ゲンナイさんの代わりに泉とのメールのやりとりをはじめとしたサポートをゲンナイの隠れ家にきて行ってほしいという。
どうやっていけばいいのか返信で問い合わせすると添付ファイルが送られてきた。開いてみるとデジタルワールドから隔離された特殊な空間、ゲンナイのかくれがに繋がっているのがわかった。
「ジャザードモン、ウィザーモン、いこう。僕たちは僕たちのやり方で八神たちをサポートするんだ」
2体はうなずいた。デジタルゲートが開かれる。僕たちは光につつまれていく。気づいたら僕たちは田園が広がる日本家屋の前にたっていたのだった。
「待っておったぞい、治。こちらに来てくれるかの?色々と説明しなければならんことがあるからな」
沢山のコードが伸びたパソコンが置かれている一室に案内された僕たちは早速話を聞くことにしたのだった。