もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
本来、地球を模して8割の海と島や大陸があるはずのデジタルワールドは、12年間の歳月を経て暗黒の力により全くの異世界に再構築されてしまった。デジタルワールドの東西南北を守護するはずの四聖獣という前の選ばれし子供達のパートナーである究極体が封じられてしまった。その四聖獣を封じたエリアの真上に島や大陸を再構築して4つの山が出現した。螺旋を描くようにできあがったため、デジモンたちはスパイラルマウンテンと呼ぶようになった。
ダークマスターズによって形成された魔の山は、その頂上に究極体が1体隊長として存在しており、彼らが率いる軍隊が支配しているという。
山ひとつひとつがドリル状になっており、それぞれ山、海、森、街のエリアが統合されてできている。海のエリアはディープセイバーズのメタルシードラモン、森のエリアはウィンドガーディアンズのピノッキモン、街のエリアはメタルエンパイアのムゲンドラモン、山のエリアはピエモンが支配している。彼らを倒さなければエリアが開放されることはない。
それが今のデジタルワールドの状況であるとゲンナイさんは教えてくれた。
「この山ができる時に大地が裂け、山が崩れ、みんな海に落とされて、たくさんのデジモンたちが死んでいったんじゃ」
「酷い話だ。しかも全員が究極体なんて......選ばれし子供達は2体しか究極体になれない上に今日進化できるようになったばかりだ。ダークマスターズは12年間も究極体だというなら、勝算は普通に考えてないんじゃないのか、ゲンナイさん」
「普通はそうじゃ。じゃが、それをなんとかするのがサポート役の仕事じゃよ」
「荷が重いな。まずは選ばれし子供達をスパイラルマウンテンの頂上に転送しなくちゃいけないじゃないか」
「それはピッコロモンがやってくれているはずじゃ。やつは転移魔法やバリア魔法が使えるからのう」
「......ゲンナイ爺(おう)、その話ほんとう?ピッコロモンは完全体だ、究極体4体相手に逃げ切れるわけがない。無茶だ」
「ピッコロモンが自ら大役をすると名乗りをあげてくれたんじゃ。その勇気を讃えねばならん」
「......本当に味方は限られているんですね、ゲンナイさん」
「うむ、選ばれし子供達は最後の希望じゃ」
「僕が思っていた以上にこの世界は詰む寸前なのがよくわかりました。僕はなにをしたらいいんですか、ゲンナイさん」
「まずはこの予言の書の解析を頼む」
「これは?」
「デジ文字といってデジタルワールドで使われている文字なんじゃが、これは古代デジ文字といって50音ではなく26音で構成されておる」
「26音......英語ってことですか」
「お主の方が見慣れておると思っての。対応する音はここにあるんじゃが、英語は音と意味が連動しておらん。わしらでは解読に時間がかかってしょうがない。翻訳を頼むぞい」
「わかりました、やってみますね」
「うむ、助かる。ありがとう」
僕は古代デジ文字に刻まれた予言の書を翻訳し始めた。ゲンナイさん曰く、これは先代の選ばれし子供達が暗黒勢力と戦ったときの記録を石碑として残したもので、ファイル島のダイノ古代境というエリアに代々受け継がれてきたものであり、スパイラルマウンテンができる前にデータをゲンナイの隠れ家に移転させたのだという。
「前の戦いではセントラルマウンテンという名前だったらしいです。スパイラルマウンテンがひとつしかなかったのか」
「昔はファイル島とフォルダ大陸しかなかったからのう」
「そうなんですか。世界は広がってたんだな」
「はじまりの島とありますが、ファイル島のことですか?フォルダ大陸?」
「おそらくファイル島のことじゃ。ファイル島は一番最初にできた島であり、すべての島や大陸の参考元になったと聞いておる。ファイル島は世界の縮図なんじゃ」
「はじまりの島だった頃のファイル島が前の戦いの舞台だったみたいです。でも今回はファイル島すらスパイラルマウンテンに取り込まれてしまった。これはかなり厳しい戦いが予想されますね、前より事態はかなり深刻だ」
「そうか......ダークマスターズは前の戦いのことを覚えておるはずじゃ。それはこちらも同じこと。ダークマスターズの情報はないかの?」
「調べてみますね」
僕は必死で翻訳を進める。
「あった、このあたりに詳しく載っていますね」
僕が詳細を伝えるとゲンナイさんはうなずいた。
「やはりウォーグレイモンがキーパーソンか。あやつはドラモンキラーというドラモン系デジモンに対して必殺の威力を誇る武器を持っておるからの。自分も弱点じゃから諸刃の剣じゃが......。ありがとう、さっそく光子郎にメールで知らせておくとしよう」
「急いでください。八神達はなにもわからないままデジタルワールドに帰還してしまったはずだから、はやく情報提供しないと全滅もあり得る」
「うむ、治は引き続き翻訳を続けてくれ。頼んだぞい」
僕は頷いたのだった。
「治、麦茶が入ったから飲むといい。お饅頭もあるからどうぞ。頭を使うには糖分が必要だと聞いたことがある」
「ありがとう、ウィザーモン」
「私にできることはこれくらいだからな」
「いや、待ってくれ」
「どうした?」
「ここのくだりが古代デジ文字じゃない。別の法則でなりたってるみたいで読めない。ウィザーモンは別の世界から来たんだろう?読めないか?」
「みせてくれ。本当だ、これは私の故郷、ウィッチェルニーの高等プログラミング言語でできているようだ。先代の選ばれし子供達の仲間に私と同じ故郷のものがいたのか?」
「たぶんな。じゃあ、ここからよろしく。僕は少し休憩する」
「ああ、任せてくれ」
僕は麦茶に手を伸ばしたのだった。