もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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1999年8月3日その4

「ゲンナイ爺(おう)、大丈夫!?」

 

「ぐううううう」

 

「オサム、大変だ!ゲンナイ爺(おう)が!」

 

ぷすぷすと黒い煙を出しながらうずくまるゲンナイさんがいた。あわてて僕は駆け寄り背中をさするがつらそうだ。体が焼ける嫌な音がして、嫌な匂いが鼻をかすめる。目の前でいきなり始まった人体発火現象に目を丸くするしかない。これが暗黒の力に埋め込まれた毒か。暗黒勢力が威力を増しているせいでゲンナイさんの体内で毒の威力を増しているんだろう。僕はデジヴァイスをかざしてみる。鮮やかな光が溢れ出し、ゲンナイさんの背中あたりに光が広がっていった。やはりウイルスバスター機能は少なからず治癒に使えるようだ。完全な除去とはいかないようで、ゲンナイさんは時々発作を起こしては寝込んでいるのだという。

 

「げほげほげほ、すまんのう、治。少し楽になったようじゃ」

 

「そんなに辛いものなんですね、ゲンナイさん」

 

「いかにも。この毒は思考回路に干渉してきてのう、ネガティブな思考をしておるとそれを増幅させてありもしない妄想や幻覚を見せてくるんじゃ。劇薬といっていい。わしは本来なら青年期が本来の姿なんじゃが、今はこうしてじじいの姿になり容量を小さくすることで毒の影響を最小限に抑えておるのじゃ。瞑想に入るとしよう。あとは頼んだぞ、治」

 

「ゲンナイさんも気をつけて」

 

「うむ、なにかあったらすぐいいなさい」

 

「わかりました。しかし、いきなりゲンナイさんが苦しみ出すなんて、近くに暗黒の力を持つ誰かがいるのか?ウィザーモン、ジャザードモン、どう思う?」

 

「ここはたしかに完全に隔離されている結界の中にあるから安全だが、デジタルワールドの中にあるのはかわらない。やはりデジタルワールドの危機に陥ると、毒の威力が増すのかもしれないな」

 

「ゲンナイ爺(おう)の意識を乗っ取れたら最後、サポートする選ばれし子供達は誘導されて壊滅的な被害を受けることになるから、暗黒の力が干渉しようとしているんだと思う」

 

「そうか......なら、僕らも万が一に備える必要があるわけか」

 

「そうだ、それなんだが、治、少しきてくれ」

 

「なんだ?」

 

「予言の書にあった高等プログラミング言語は進化に関するプログラムだった。これなら私も戦える。そう思ったんだ、私にこのプログラムを、ダウンロードしてくれ、治」

 

「それほんとうか?失敗しても、恨みっこなしだからな」

 

「もちろん」

 

ウィザーモンのプログラムにあたらしいデータを転送すると、ウィザーモンが光に包まれた。そこにいたのは予言の書に掲載されているかつて先代の選ばれし子供達と共に戦ったと思われる魔導士の姿だった。携帯電話の赤外線通信で僕のデジヴァイスから携帯電話のデジモンアナライザーにデータを転送して起動してみる。データが無事更新された。

 

ミスティモン

レベル 完全体

タイプ 魔法戦士型

属性  ウィルス

別次元のデジタルワールド「ウィッチェルニー」からきた魔法戦士型デジモン。数多くの魔術(高等プログラミング言語)を使いこなすとともに、剣の使い手でもあり巧みな剣術を持ち合わせている。騎士道・魔法道どちらも深く精通しており、剣に魔力を込めて攻撃することも出来る。必殺技の『ブラストファイア』はその1つで火を剣に纏わせ威力をあげた斬撃を与える。また水晶を自在に操る『コアダート』は攻撃と防御を器用にこなす技である。

 

「これが私の新たな力。これなら、いつ誰がきても治たちを守ってやれる」

 

ミスティモンは嬉しそうに笑った。

 

「どうした、ジャザードモン」

 

「私も進化したい。紋章がないから完全体になれないなら、進化できるだけのデジゲノムを集めるしかない。私は5000年間守護デジモンをしてきて、いまだに完全体にすらなれない。おかしいと思う。どうしたらいい、オサム」

 

「いわれてみれば、たしかにそうだな。何が足りないんだろう?」

 

「ジャザードモンにもプログラムをダウンロードしてみるか。もしかしたら、経験値は足りているのに感情値や友好値が足りないパターンなのかもしれない。それなら、野生のデジモンみたいに進化する方法を採用した方がはやそうだ」

 

「うん、そうする」

 

僕はジャザードモンの次の進化ツリーを検索し、必要なデジゲノムの不足を補うためにデータをダウンロードする。

 

ジャザードモンが進化した。デジモンアナライザーが表示される。

 

ジャザリッヒモン

レベル 完全体

タイプ 機竜型

属性  データ

プロフィール

空中戦に特化し音速飛行するデジモン。ドッグファイトはお手の物で戦った敵の撃墜数は数知れない。空中戦の勝負ならデジタルワールド内でトップクラスとされ、あのウイングドラモンとも引けを取らないという。脚部を持つため、地上スレスレも障害物の多い区域も音速飛行の妨げにならない。

必殺技は、高速でスピンしながら突撃する『メッサースパイラル』と、背面を取られても尻尾からレーザーで迎撃する『N・S・B・M』。

 

「さっそくゲンナイの隠れ家内の索敵をしてくる」

 

「そういうことなら、私も行こう。治は予言の書の解読を頑張ってくれ」

 

「結界がやぶられてないか重点的に探ってきてくれ」

 

「わかった」

 

「もしなにかあればすぐ連絡しよう」

 

「頼んだぞ」

 

ジャザリッヒモンに乗り込むミスティモンを見送り、僕は予言の書の翻訳に戻ったのだった。

 

予言の書に繰り返し出てくる街の名前がある。デジタルワールドのファイル島のムゲンマウンテンの麓の森の中にある、『はじまりの街』。死んでしまったデジモンが、デジタマになって再生する所。

 

クッションのようなふわふわの地面にふわふわとした材質の建造物が建ち並び、木にはおもちゃが実っている。守護デジモンはエレキモン。

 

広場にはたくさんのデジタマがそこら中に転がっており、赤ちゃんが生まれると揺り籠が現れるというシステムになっている。デジタマの殻が一度粒子になり、生まれたデジモンの下に集まって揺り籠になる。

 

また、書き置きがあり、その書き置きに従ってデジタマを撫でるとデジモンが孵化する事がある。

 

環境は整っている一方で食料供給はされていないようで、食べ物は他のデジモンが運んでくる必要がある。エレキモンが近くの川まで魚を捕りに行っているという。

 

ダークマスターズによってセントラルマウンテンが創造された際はその力により転生システムが停止してしまったが、セントラルマウンテン崩壊及びデジタルワールド再生に伴い復活したとある。

 

選ばれし子供達が勝利すれば、ピッコロモンもまたはじまりの街でデジタマに転生することができるはずだ。

 

「デジタマってその場でできるわけじゃないのか、ジャザードモンがそうだったから、そういうものだと思ってた」

 

死んだあるいは力尽きたとしても、かならずはじまりの街で転生するわけではなく、その場でデジタマになる事があるのだろう。

 

「僕らの世界でデジタマになれなかったらどうなるんだ?幽霊か?」

 

僕の疑問に答える者はいなかった。

 

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