もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
セントラルマウンテンの反応が消えた。8つのデジヴァイスの反応が空高く登っていく。空があるべき空間に真っ黒な亀裂が入り、そこから虚空がまるで泥のように溢れ出し、8つの光を包み込んで見えなくなってしまった。8つの紋章の反応が消えた。
その時だ。
東西南北から迸る4つの円柱の光がその虚空目掛けて降り注いだのだ。少しずつ、少しずつ、光が虚空を剥ぎ取り、煌めく光の粒子がファイル島に流れていく。まるで天の川が広がっているかのようだ。
そして虚空が次第に削り取られて小さくなっていき、内側から弾け飛んだ。8つのデジヴァイスから光が放たれる。8つの光は規則正しい位置に飛んでいき、四角形の立方体が出来上がった。そしてそれは四聖獣の力によって受け入れられるその日まで封じられることになり、空から消えてしまったのだった。
8つの光がファイル島に戻っていく。彼らの到着先はファイル島のはじまりの街だ。
「..................勝った、のか?」
「セントラルマウンテンの消失、ファイアーウォールの正常化、デジタルワールドの時間の流れの正常化を確認。うむ、選ばれし子供達が成し遂げてくれたようじゃな」
「やったな、八神たち」
「わしらもファイル島のはじまりの街に行くとしよう」
「はい!」
僕たちはゲンナイさんがデジタルゲートを開けるのを確認して、たくさんのデジモンたちに大歓迎を受けている八神たちのところへ向かったのだった。
「よくやったな、選ばれし子供達よ」
ゲンナイさんのところに八神達が殺到する。
「やったな、泉」
「一乗寺さん!一乗寺さんがスパイラルマウンテンをセントラルマウンテンにしたおかげですよ!見てくださいこのデジタマの数!みんな、無事に転生することができたんですよ!」
「思いついたのは僕だが、実行したのは泉じゃないか。僕はメールすることしかできなかった。ずっともどかしかったんだ。やってくれると信じていたが」
「ありがとうございます、一乗寺さんのおかげでとても心強かったです。ありがとうございます」
「ほんまありがとうな!」
「ええと......ウィザーモンだよな?進化できたのか?」
「はい、そうですテイルモン。予言の書にかつて先代の選ばれし子供達と共にたたかった先祖のデータがあったんです。これからファイル島を守るためにも力になりますよ。ミスティモンです、よろしく」
「ミスティモンか、頼りにしてる」
「はい」
「やったな、八神」
「一乗寺もありがとうな!なにが起こったかわからなくなることもあったけど、おまえのおかげでパニックにならずに済んだよ。ありがとうな!」
僕は八神と握手を交わした。
「よくやった、本当によくやったぞ、選ばれし子供達よ。デジタルワールドとおぬしらの世界を助けてくれて本当にありがとう」
ゲンナイさんは頭を下げた。みんな嬉しそうに笑っている。
「これでデジタルワールドの時間の流れもお主らの世界と同じになっていくはずじゃ。その関係で通じているゲートを閉じて復旧作業をしなければならん。申し訳ないんじゃが、おぬしらの世界に通じるゲートも閉じなくてはならん。あと30分でお別れじゃ。申し訳ないのう」
八神達から驚きと抗議の声があがるが、デジタルワールドを正常化するためにはそれなりの時間を要するらしい。なにせファイル島以外のすべてのエリアがダークマスターズによってスパイラルマウンテンになってしまった。それを元に戻すにはファイル島という世界の縮図をもとにひとつひとつ復興させなくてはならない。ゲンナイさん1人しか生き残りがいない以上、デジモンたちの力も借りてやるしかないらしい。
「おれ達も手伝うぜ?」
「おぬしらのゲートをふたたび開くには5ヶ月ほどかかることになる。さすがに5ヶ月も行方不明というわけにはいかんじゃろう」
「あー、そっか。そりゃ困る。でもさ、5ヶ月後ってことは、お正月にはデジタルワールドにこれるって考えたらいいのか?」
「そうじゃのう、そのころにはデジタルワールドの復興も一息ついているだろうから、わしから光子郎と治にメールで招待状をおくるとしようかの」
「ほんとうですか?!楽しみにしてますね!」
「わかった、なるべく出られるようにがんばる」
あと30分といきなり突きつけられたお別れの時である。選ばれし子供達は思い思いの場所で最後の別れをすることにしたようだ。
「ジャザリッヒモンは守護デジモンだから、ゲンナイさんの隠れ家にアクセスすれば会えるんだよな?」
「復興のお仕事で留守しがちになるだろうけど、メールくれたらお返事する。約束」
「ああ、約束だ」
僕はジャザリッヒモンに乗ってファイル島を上空からぐるっと回ることにした。色々なエリアが密集しているまさしく世界の縮図だ。ようやく来ることができたデジタルワールドに僕は感無量になった。
「オサムと会えてよかった」
「僕もだ、ジャザリッヒモン。ゲンナイさんをたくさんサポートしてやってくれ」
「うん、がんばる」
こうして僕の初めてのデジモンとの冒険は幕を下ろしたのだった。