もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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1999年8月2日その3

デジタマをリュックにしまいこみ、僕は有楽町駅に向かった。光が丘駅までは7分くらいかかる。料金は200円。JR山手線で3駅先にある。デジタマだと電波障害が発生しないようでさいわいJRがとまることはなく、無事に僕は光が丘駅に到着することができたのだった。

 

空はあいからずの曇天だ。

 

テレビ局のヘリが飛んでいるのがみえる。携帯電話がノイズが走って通じない。光が丘団地に広がるのはたくさんの爆弾の破裂した痕跡。通りがかりの人に聞いたら誰かがゾウを放し飼いにして暴れた結果らしいが、普通動物園のゾウが脱走したって車を踏み潰したり、信号機を薙ぎ倒したり、陸橋を粉砕したりなんかできないはずだ。デジモンの場外乱闘がまた起こったらしく、キープアウトの黄色い規制線が貼られている。

 

カプリモン改めジャザードモンは光が丘に連れてきてくれといったはずだが、ここのどこら辺にいけばデジタルワールドの迎えが来るのだろうか。

 

途方に暮れているとリュックがモゾモゾ動き始めた。僕は近くの公園に向かう。ベンチに腰掛けてリュックを開くとそこにはカプリモンの前のデジモン、なんていうのか僕は知らないがネズミみたいなデジモンが誕生していた。興味津々でパン屋の紙袋をがさごそしているものだから、僕は紙袋ごとそのデジモンを出してハムサンドの包装を剥がして渡してやった。

 

尻尾の赤いランプが点滅してうれしそうにそいつは鳴いた。そしてハムサンドにとびつく。あっというまに平らげてしまったものだから、僕はカツサンドの包装を剥がしにかかる。すでに獲物を狙っている目でこちらをじっとみられているのだ。かじられないうちに渡さないといけない。むしゃむしゃと食べているのを眺めながら、僕は包装を紙袋に入れてリュックにしまった。光が丘テロ事件や地下鉄サリン事件が起きてから公共の場ではテロを警戒してゴミ箱が撤去されてしまったから持ち帰らなければならないのである。

 

携帯が鳴る。電波障害が起きているにもかかわらずだ。不思議に思って開いてみればインターネットにつながっていた。ミミズがのたうちまわったかのような文字列がたくさん並んでいる。やがて0と1が構築されていきぐにゃりと空間が歪み、一人の老人が画面にあらわれた。

 

「はじめましてじゃのう、一乗寺治。おぬしと会うのはもう少し後になるはずじゃったんじゃが」

 

僕は驚きのあまり目を見開いた。

 

「どうして僕の名前を知ってるんですか」

 

一応老人だから敬語は使うが警戒する僕にほっほっほと老人はひょうひょうとした顔で笑った。

 

「おぬしがカプリモンのことを4年前から知っておったように、デジタルワールドも帰ってきたカプリモンの記憶データを解析した過程でおぬしのことを調べさせてもらったのじゃよ。ま、お互い様というやつじゃ。まさか記憶があるとは思わなんだが」

 

「まさか賢の記憶がなかったのは、あなたの仕業だったんですか」

 

「いかにも。あのときはまだおぬしらと会うのが早すぎたからのう、ふさわしい時がくるまで記憶を封じさせてもらっておる」

 

「ふさわしい時?」

 

「うむ、いずれおぬしらの力を借りなければならんときがくるとデジタルワールドに代々伝わる予言の書にあるのでな。おっと、挨拶がおくれたわい。わしの名前はゲンナイ。ジャザードモンのデジタマを保護してくれてありがとう。感謝するぞい」

 

「どういたしまして。無事に孵化してよかったです。あの、もしかして、あなたがジャザードモンがいうデジタルワールドのお迎えの主ですか、ゲンナイさん」

 

「いかにも、ジャザードモンはわしのサポート役をしてくれている守護デジモンじゃ」

 

「守護デジモン?」

 

うむ、とうなずいたゲンナイさん曰く、ゲンナイさんはデジタルワールドの安寧を望むもの「ホメオスタシス」という神のような存在に仕える自律型エージェントの生き残りだという。つまり人間でもデジモンでもない自我を持ったロボットみたいなものということだ。

 

今デジタルワールドは敵の侵攻により滅亡の危機に瀕していて、ゲンナイさんの仲間は全員敵にやられてしまい、ゲンナイさんも体に毒を仕込まれてうごけない。ジャザードモンはゲンナイさんの代わりにデジタルワールドを救う選ばれし子供達という存在をサポートする守護デジモンだという。

 

4年前の光が丘テロ事件のときにデジタルワールドを救う英雄として8人子供が選ばれ、今まさにデジタルワールドからこちらの世界に侵攻してきた敵を倒すために奔走しているのだという。

 

ゲンナイさんは数年前につくられたため光が丘テロ事件のデジタルワールド側の当事者ではない。ホメオスタシスがその当事者にあたるため、ジャザードモンは5760年前から転生を繰り返しながらホメオスタシスに命じられてデジタルワールドを守護し続けている。僕の知ってるカプリモンの末裔が今のカプリモンらしい。

 

途方もない時間生きていることに驚くとこちらの世界とデジタルワールドは時間の流れが全然違うらしい。こちらの世界の1分がデジタルワールドの1日だという。1時間は60分、1日は24時間、1年は365日だからこちらの世界の4年がデジタルワールドの5760年に相当するというわけだ。なるほど。

 

「ジュザードモンは光が丘に連れて行ってほしいといってました、だから僕はここにいる。僕はこれからどうしたらいいですか。その選ばれし子供たちの手伝いがしたい。4年前僕はカプリモンを止めることができなくて光が丘テロ事件がおきてしまいました、今回はなんとか止めたいんです

 

「なるほど、そういうことならこれを受け取ってくれい」

 

携帯の画面が光ったかと思うといきなり小さくて白いデジタル時計のようなものがでてきた。

 

「それはデジヴァイス、デジモンを進化させることができる小さなパソコンのようなものじゃ。詳しい機能については携帯にデータを送っておくから後で読んでおくように。そこまでいうならおぬしにチョロモンを預けよう。4年前のカプリモンの末裔である以上、おぬしときっと縁や絆があるはず。きっと力になれるはずじゃ。途方もない時間転生を繰り返してきたカプリモンは完全体並みの強さがある。選ばれし子供たちは今8人目の選ばれし子供を探して芝浦に向かっておるようじゃ。助けてやってほしい」

 

 

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