もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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1999年8月2日その4

デジヴァイスが振動して光出す。その光を浴びたらチョロモンがカプリモンに進化した。

 

カプリモンをリュックに押し込めて、僕は光が丘駅から都営大江戸線(六本木・大門方面行)に乗り、芝浦に向かうことにした。東京タワーから探せば選ばれし子供たちが戦っている場所がわかるだろうと思い、とりあえず東京タワーを目指している。所要時間:はだいたい45分〜50分。赤羽橋口(中之橋口)から徒歩約5分で東京タワーに到着する予定だ。

 

携帯にゲンナイさんが送ってきたデジヴァイスの説明書を読んで時間を潰すことにする。まずはデジモンを進化させることができる機能。次に敵(暗黒の力という単語が何度も出てくる)を撃退したり、洗脳を解いたり、敵の攻撃を無効化したりするウイルスバスター機能。そして半径数メートルほどの周りからみえなくなる結界をはる機能。あとはデジタルワールドやこちらの世界の仲間を探知するGPS機能(こちらの世界の方が情報量が多すぎるため近距離じゃないと探知不可らしい)。コマンドの入力方法を確認しながら各駅停車の駅名を確認しつつ、目的地のエリアまで僕はニュース速報を眺めることにした。

 

昨日は選ばれし子供達が光が丘から家があるお台場までデジモンと移動するたびに敵との戦闘に陥り、いく先々で爆弾テロ事件が発生した扱いになっているようだ。バケモノの場外乱闘の目撃情報も多発している。イカの巨大なバケモノだったり、ゾウのようなバケモノだったり。さいわいデジモンを倒すと跡形もなく消えてしまうことから選ばれし子供達が勝利しているのは間違いなさそうだった。

 

リュックが少し膨らみ、モゾモゾ動き始める。僕は嫌な予感がして椅子から立ち上がると電車と電車の連結部分に向かい、人がいないことを確認してから、こっそりリュックをあけた。カプリモンと目があった。

 

「はじめまして、カプリモン。僕の名前は一乗寺治だ。ゲンナイさんからおまえと一緒に選ばれし子供達を手助けすることになった。よろしくな」

 

瞬き数回、僕がデジヴァイスを見せると大きくうなずいたカプリモンに尻尾を差し出された。

 

「よろしく、オサム」

 

握手のつもりらしい。僕は水色と白の尻尾を握りしめた。カプリモンは満足げに笑うとリュックから飛び出してくる。僕は慌ててキャッチした。

 

「おまえはぬいぐるみの振りをしてくれ、カプリモン。しゃべったら大騒ぎになるだろ」

 

「わかった」

 

声は小さい。電車の音にかき消されてしまうほど小さい。物分かりが良くて助かる。頭が悪いと何度も同じことを言わなくちゃならないから疲れてしまう。カプリモンを抱えながら僕は席に戻ったのだった。ゲンナイさん曰くさいわい成長期までなら電波障害を発生しないらしいので、カプリモンか次の成長期でこちらの世界は主に移動することになりそうである。

 

30分ほどして、またデジヴァイスが光を帯びて振動しはじめた。

 

「カプリモンじゃない、わたしはジャザモン」

 

「進化するたび名前がかわるのか」

 

「そう」

 

僕の腕の中には鳥の形をしたマシーン型デジモンがいる。

 

「飛べるなら選ばれし子供達探すのが楽になるな」

 

「ごめんなさい。わたしは翼を使って高い場所から滑空はできるけど、羽ばたかせて浮上することはできない。周囲を警戒するには向かない」

 

「そうか、なら東京タワーで探すのが一番だな」

 

 

 

 

不自然なほど真っ黒な曇天が突き刺さる東京タワーを中心に突如として雷が鳴り出した。大気をまっ二つに引き裂くような烈しい振動があり、青白い光が竿を継ぎ足すように、ジグザグと鋭く走った。

 

嵐が吹き荒れ、雷が鳴った。今まで出会ったことのないくらい激しい雷だった。あまりにも激しすぎて、最初は幻想的な夢を見ているのかと思った。真っ黒な空を短い光が何度も走り、そのたびに東京タワーのガラスが倒れ粉々に砕けるような音がした。遠くからまっすぐに響いてきた雷鳴が東京タワーの真上で破裂し、その名残りが消えないうちにもう次の雷が破裂していた。

 

ドオーン、ドオーン、ドオーンという轟音がまるで艦砲射撃みたいにつづき、それがだんだんこちらに近づいてきて、びりびりと空気を裂き、世界の終りを告げる火柱みたいにまわりに直立する。

 

明らかにおかしい雷だ。僕はジャザモンをみる。

 

「あの雲の中になにかいる」

 

「あの時のコウモリか?」

 

「わからない。でもさっきの稲光で幽霊と鎌みたいなシルエットがみえた。たぶんファントモンだ」

 

「ファントモン?」

 

ジャザモンがうなずく。

 

守護デジモンだからか、デジモンのことにとても詳しい。

 

ファントモンは巨大な鎖鎌を持った死神のようなデジモンで、有楽町でみた白い布を被ったたくさんのバケモンとは違い上級のゴーストデジモンで、ファントモンにとり憑かれたが最期、完全に死が訪れるといわれているという。

 

首からぶら下げている眼球の形をした水晶は、マンモンの紋章と同じく千里眼の力で全てを見通すことができるため、死期の近い者を見抜いてしまう。

 

体を覆う布の中身は別次元のデジタルワールドに通じていると言われ、必殺技は巨大な鎖鎌で敵の魂をも切り裂く『ソウルチョッパー』。この技を受けたものは魂ごと消滅してしまう。

 

「オサム、デジヴァイスの力をかして。進化する。このままだと東京タワーが倒壊する。たぶん中に選ばれし子供達がいる」

 

うなずいた僕はデジヴァイスをかざした。ジャザモンが真っ白な光の球体に包まれたかと思うと0と1に溶けていき、新たな姿へと変化を始める。僕の腕から飛びった体がみるみるうちに大きくなっていく。やがてジャザードモンに進化した僕の相方は曇天の中に消えていく。

 

固唾を飲んで見守っているとデジヴァイスの反応があった。近くに選ばれし子供達がいるのだろうか。辺りを見渡すと僕と同じように手の中のデジヴァイスを見つめてキョロキョロしている女の子がふたり、こちらに気付いたようで駆け足でよってきた。

 

「あの!」

 

「それってデジヴァイスよね!?」

 

「もしかして、8人目の選ばれし子供なの、あなた?」

 

僕は首を振る。

 

「僕は守護デジモンのジャザードモンのパートナーだ、8人目じゃない。君たちを助けるようゲンナイさんからいわれてここに来たんだ」

 

「ジャザードモンの!?」

 

今までの冒険で幾度もジャザードモンに助けてもらったと話してくれた二人は僕が味方だと知ってうれしそうだ。

 

「ジャザードモンは今どこに?」

 

「東京タワーに雷を落として攻撃してるファントモンてやつと戦ってる、あのあたりだ」

 

指さす先には雷鳴とレーザーが入り乱れる空中戦の断片が曇天からのぞいているのがわかる。

 

「あそこね、加勢するわ。いくわよ、ピヨモン」

 

長髪でテンガロンハットをかぶっている女の子のおす乳母車から飛び出してきたピンク色の鳥型デジモンが羽ばたきながらデジヴァイスの光を受けて進化する。ネックレスに入っている刻印が浮かび上がりさらに姿が変わっていった。ガルダモンというらしい鳥人型のデジモンが曇天に消えていく。

 

「ねえ」

 

「なんだ?」

 

「あなた、どこかでみたことあるような......」

 

「そうなの、空さん」

 

「ええと......」

 

「挨拶がまだだったな、僕の名前は一乗寺治、田町小学校の5年生だ」

 

「えええええっ!?あの天才サッカー少年の一乗寺治くん!?」

 

「......声が大きい」

 

「あっ、ごめんなさい。つい。私はお台場小学校5年の武ノ内空です。サッカーやってるの、だから」

 

「そうなのか、よろしく」

 

「ええ、よろしくね」

 

「あたしは4年生の太刀川ミミでーす。よろしくね」

 

「あたしはパルモンよ、よろしくー」

 

僕はうなずいた。

 

「ねえ、空さん。ガルダモンたちが心配だから東京タワー登らない?ここからじゃよくみえないわ」

 

太刀川の提案で僕らは野次馬が空を見上げている最中をかきわけて東京タワーにのぼることにしたのだった。

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