もし一乗寺治にパートナーがいたら(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
昨日、8人目の反応が芝浦の倉庫街に出現し、お台場小学校4年の泉光子郎とテントモンが向かったところ成熟期のレアモンと戦闘になる。偵察に来ていたピコデビモンというヴァンデモンの部下が来ていたため、敵陣営にも8人目が芝浦付近に住んでいることがバレている。そのため急いでヴァンデモンたちより先に8人目を見つけなくてはならない。
だから朝早くに海浜公園に集まり、各自光が丘に住んでいた頃の名簿を頼りに昨日芝浦にいなかったか、片っ端から電話をかけなくてはいけなくなった。その役目は6年生で中学受験を控えて夏期講習に出なければならない城戸丈が担当することになった。
残りの6人は二手に分かれて芝浦を3つのエリアにわけ、地図を頼りに子供がいそうなところを片っ端から歩き回りデジヴァイスの反応をみて8人目を探すことになった。
今のところ、東京タワー付近の公園を中心に休憩を繰り返しながらやっている捜索は全て空振りである。バツマークだらけの地図を見せながら武ノ内が教えてくれた。
「せっかく帰ってきたのになんでこんなことしなきゃいけないんだろ、あーあ」
東京タワーの展望台では曇天の向こう側で繰り広げられている空中戦がなにかのショーだと勘違いしている野次馬てごったがえしている。まさかここまで混んでいるとは思わず愚痴がでる太刀川をなだめつつ、僕らは野次馬をかきわけて展望台の真ん前に来た。
「さっきから暑くないですか、空さん、治さん」
「これだけ人が多いと仕方ないんじゃないか」
「みんな夢中だものね」
「あつーい!」
東京タワーに入れば冷房にありつけると喜んでいただけにあまりの暑さに太刀川が怒り始めた。
「だいたい、なによあの格好!冬なのにコートなんてみているこっちが暑くなっちゃうわ、なにかんがえてるの!」
八つ当たりが野次馬にむく。ギョッとした僕と武ノ内が振り返ると真夏にもかかわらずトレンチコートを着込んだ大男がこちらを向いているではないか。あわてて僕は謝り、武ノ内が太刀川の口を塞いであいまいな笑みをうかべてごまかそうとするが、ずんずんと男が近づいてくる。まずい、完全に怒らせてしまったようだ。野次馬はあまりにも異様な風貌に気押されて後ろに下がるものだから、周りに空間があいてしまう。僕らの後ろは展望台の窓ガラスだ、逃げられない。
すると男がおもむろにトレンチコートを脱ぎすてて雄叫びをあげる。全身に鎖を巻き付けて青白い炎をまとった異形の姿があらわになる。
「デジモンだ!」
僕は叫んだ。
「パルモン、おねがい!」
「ええ、まかせて!」
パルモンにデジヴァイスの光が直撃して巨大なサボテンの姿をした植物型デジモンに進化する。太刀川曰くトゲモンというらしい。トゲモンは全身の針を硬化させて高速で回転し、一斉に射出する。しかし、相手は全身火だるま状態といっていいデジモンだ、無数の棘はその高温の炎に焼かれてしまったのか、敵は微動だにしない。それどころか炎を纏った鎖を振り回しながらトゲモンめがけて投げつけた。トゲモンはすんでのところでかわしたものの、後ろのガラスが豪快に割れて穴が空いてしまう。一気に風が吹き込んできた。
「トゲモン、このままじゃ狭くて戦えないだろう。外に出て展望台の屋根に登った方がいい。ここは人が多い!」
「外に出ればガルダモンやジャザードモンが気づいてくれるかもしれないわ、いそいで!」
「だって!!トゲモン、穴開けて外に出て!」
わかったとうなずいたトゲモンはガラスにパンチを繰り出して自分が通れそうな穴を開けて外に出て柱を登り始めた。敵はそれを追いかけていき、僕らは天井でそれを見守った。
「あ、ガルダモンだわ。よかった、ファントモンに勝ったのね、そのまま戦いに参加するみたい」
「ジャザードモン、ガルダモンのサポートをするんだ。はやく!」
穴から僕らの声が聞こえてくるようで、うなずいた彼らはトゲモンに加勢してくれた。
敵の放った鎖を捕まえたガルダモンが鎖を腕に巻き付けて一気に引っ張る。ずるずると落ちていく。なんとか踏ん張ろうとするが意識を逸らしてしまう。その隙を狙ってトゲモンが後ろから敵に強烈な一撃を叩き込む。ぐらつく体。展望台の屋根が重さに耐えきれずヒビが入る。ジャザードモンが上空からレーザーで足場を崩す。倒れそうになりしがみつく敵めがけてガルダモンの旋風脚が炸裂。敵は断末魔をあげて消えてしまったのだった。
トゲモンがパルモンに、ガルダモンがピョコモンに、ジャザードモンがジャザモンに戻って穴から僕たちのところにもどってきた。
「東京タワーが傾いちゃったわね」
「とりあえず逃げるか」
「さんせー」
僕たちは、芝公園に向かって、一目散に逃げ出したのだった。
芝公園は夏休み中の掻き入れどきとあってか、いくつかの屋台が出ていた。武ノ内曰く、デジモンは進化するたびにパワーを消費してしまうため、その度に食事をとったり休憩をしたりしなければ、次に進化することができなくなってしまうという。そういうことなら仕方ないとお金を出そうとしたら、太刀川たちが困った顔で固まってしまった。
なんでも昨日、光が丘からお台場まで帰る過程で散財してしまい、交通費しか手持ちがないらしい。そういうことなら仕方ない。日陰のベンチて待つよう告げた僕は、ジャザモンを太刀川に預けて屋台に向かった。
焼きそばやからあげ、焼き鳥、飲み物をかかえてもどったら、また新顔が現れた。太刀川たちと話をしている。選ばれし子供達と合流したようだ。東京タワーが倒れそうになるのが見えたから加勢しようとしたらデジモンがいなくなったので心配して探していたらしい。
「あ、帰ってきたわ。おかえりなさい、治くん。彼がジャザードモンのパートナーで私達の手伝いをするようゲンナイさんからいわれた、あの一乗寺治くんよ、太一」
「!!」
「きみはたしか、お台場サッカー部の......5年生で唯一レギュラーだった八神だな。久しぶり。春の交流試合以来だな
「あ、覚えててくれたのか、さんきゅー」
「あんな目立つ活躍したら僕だって覚えているさ」
「へへっ」
「私は怪我で欠場だったものね......しかたないか」
「僕もサッカー部の4年の泉光子郎です。よろしくお願いします」
「昨日、芝浦で8人目の反応をみつけたっていう......ひとりでよく切り抜けられたな。さっき初めてデジモンの戦い方を見たが大変だった」
「いやあ、あはは。テントモンのおかげですよ。僕は危うくピコデビモンの注射器の餌食になるところだったし」
「わいがテントモンや、よろしゅう!」
「僕はアグモンだよ、よろしくね」
「ああ、よろしく頼む。僕にできることがあったらなんでも言ってくれ」
「そういや、なんで急に手伝いにきたんだ、
一乗寺?」
「僕は光が丘のデジモンの戦いをずっと覚えていたんだ。弟の賢は相変わらずニュースみてもおもいだせないみたいたが......。僕はあの日、父さんのパソコンから出てきたカプリモンがジャザードモンになってコロモンと戦うところを最前線でみていたからな。今日の昼頃、有楽町でジャザードモンがヴァンデモンにやられているところにたまたま居合わせて助けることができたんだ」
「えっ、あの時、ジャザードモンに乗ってたのおまえかよ!」
「ああ」
「じゃあ覚えてねーかな、ホイッスル吹いたのおれ」
「えっ、ほんとうか?!」
「そうなんだよ。うちも父さんのパソコンからコロモンがでてきてさー、そっかあ。あの時出会ってたんだな、おれたち。あらためてよろしくな、一乗寺。頼りにしてるぜ」