転生したらヒトカゲだった。しかも色違い 作:リザードン大好きマン
「おぬし、もう体を動かせるようになったのか。たった一日でここまで回復するとは、驚異的じゃぞ」
白衣の老人――オーキド博士が、感心したように顎を撫でる。
(そうだったのか。道理で、オレンのみを食べただけでやけに治りが早いと思った)
俺は今、オーキド博士の研究所の一室で治療と検査を受けていた。
研究所がロケット団に襲撃されたのは昨日。あの戦いのあと、限界を迎えた俺はその場で倒れ、そのまま研究所の治療室へ運び込まれたらしい。
博士から「ここで治療を受けていきなさい」と言われた時は、正直そのまま森へ帰るつもりだった。
だが――。
涙目のまま無言でこちらを見つめるレッド。
その圧に耐えきれず、結局俺もピチューも、大人しく研究所に世話になることになった。
「――これで検査は終わりじゃ。ううむ……やはり、おぬしは普通のリザードとは明らかに違うのう」
オーキド博士は、手元の資料を見ながら唸る。
どうやら、俺は色違いというだけでなく、身体そのものがかなり規格外らしい。
博士の説明をざっくりまとめると、こうだ。
・体の大きさ
・身体能力
・尻尾の炎の温度
・回復力
・知能
どの項目も、一般的なリザードを大きく上回っているという。
詳しい数値や専門用語まで説明されたが、この世界の教育を受けていない俺にはさっぱり分からない。
前世のゲーム知識で例えるなら、体格が大きく、個体値も優秀。さらに回復力補正までついた、いわば「オヤブン」みたいなものだろう。
尻尾の炎の温度については、リザードンの図鑑に「激しい戦いを経験するほど炎の温度が上がる」といった説明があった気がする。
……自慢ではないが、俺は転生してからというもの、かなり命懸けの戦いを何度も経験している。
そう考えれば、多少温度が高くても不思議ではない。
(検査と聞いた時は、解剖でもされるんじゃないかと内心びびってたけどな)
実際には、身長と体重の測定、筋力テスト、尻尾の炎の温度測定、簡単な知能検査など、どれも普通の健康診断のようなものだった。
研究員たちも親切で、オーキド博士も終始穏やかだった。
「ぴちゅぴちゅ♪」
隣では、ピチューが上機嫌でポケモンフーズを頬張っている。
小さな体にはまだ包帯が巻かれているものの、食欲はいつも通りだ。どうやら完全に元気になったらしい。
俺も皿に盛られたポケモンフーズを口に運ぶ。味は思った以上に悪くない。むしろ、きのみとは違うコクがあって普通に美味い。
戦いの翌日は検査や治療で慌ただしかったが、今日はようやく落ち着いている。
ロケット団の連中は警察に引き渡され、研究所の被害もほぼ復旧したらしい。
レッドも一晩休んでかなり回復したと聞いた。
(……あれだけボコボコにされて「軽傷」と言われても、正直納得はいかないが。流石はマサラ人と言ったところか)
そんなことを考えていると、部屋の扉がこんこん、と小さくノックされた。
続いて、聞き慣れた控えめな声がする。
「……入っても、いい?」
その声を聞いた瞬間、ピチューの耳がぴんと立った。
「ぴちゅ!」
扉がゆっくりと開き、レッドが顔を覗かせる。
頬にはまだうっすらと赤みが残り、腕や膝にも包帯が巻かれていた。それでも、俺たちの姿を見つけた瞬間、その表情はぱっと明るくなる。
「……リザード、ピチュー」
「……リザ」
「ぴちゅう!」
ピチューは嬉しそうに駆け寄り、レッドの足元に飛びついた。
レッドはしゃがみ込み、ピチューをそっと抱き上げる。
「……元気そうで、よかった」
「ぴちゅぴちゅ♪」
気持ちよさそうに鳴くピチューを見て、レッドの口元が柔らかく緩む。
その様子を見ながら、俺は小さく息を吐いた。
昨日の、泣きそうな顔とは違う。今のレッドは、ちゃんと笑っていた。それだけで、胸の奥の重石が少し軽くなる。
レッドはピチューを抱いたまま、ゆっくりと俺の前まで歩いてきた。そして少しためらったあと、そっと手を伸ばし、俺の頭を優しく撫でる。
「……ありがとう」
小さな手のひらの温もりが、鱗越しにじんわりと伝わってくる。
「……来てくれた時……すごく嬉しかった」
静かな声だった。
「……もう、会えないかもしれないって……少し思ってたから」
その言葉に、胸の奥がちくりと痛む。
あの時のレッドは、本当に追い詰められていた。怖くて、痛くて、それでも必死にモンスターボールを守っていた。
そんな中で俺の姿を見つけた時、レッドは確かに「来てくれた」と呟いた。
「……だから、本当に嬉しかった」
レッドは少し恥ずかしそうに笑った。
「……リザ」
(…まったく。そんな顔をされると、こっちまで照れくさくなる)
ぶっきらぼうに鳴くと、レッドは目を丸くしたあと、ふっと笑みを深めた。
「……うん」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。
――だが同時に、現実も思い出していた。
(俺は、いつまでもレッドのそばにいるつもりはない)
この町での目的は、ピチューを安心して託せる相手を見つけること。そして、それが叶えば、俺は再び一人で強くなるための旅に出るつもりだった。
……それでも。
こうして無邪気に笑うレッドを見ていると、その決意が少しだけ揺らぐのも事実だった。
「おやおや。すっかり仲良くなったようじゃのう」
オーキド博士が楽しそうに目を細める。
レッドは少し頬を赤くしながらも、俺の頭に置いた手を引っ込めようとはしなかった。
その温もりを感じながら、俺は心の中でそっと呟く。
(……この穏やかな時間も、きっと長くは続かない)
そう思うと、胸の奥が少しだけ痛んだ
――――――――――
オーキド博士が、俺とレッドを交互に見ながら穏やかな声で言った。
「さて……これからどうするつもりじゃ?」
その問いに、俺は一瞬だけ息を呑んだ。いずれ聞かれると分かっていた質問だ。ピチューをどうするのか。そして、俺自身がこれからどう生きていくのか。
(いや、答えは最初から決まっている――)
ピチューはここに残す。レッドとオーキド博士がいれば、あいつはもう寂しい思いをしなくて済む。そして俺は、一人で旅を続ける。
そう心の中で答えを出した時、俺より先にレッドが口を開いた。
「……リザードとピチューと、一緒にいたい」
(……っ!…レッド……)
小さな声だったが、その言葉にははっきりとした意思が込められていた。レッドは俺を見つめたまま、震える手をぎゅっと握りしめる。
「……ずっと、一緒にいたい」
真っ直ぐな瞳に、胸の奥が強く揺さぶられる。ピチューも嬉しそうに飛び跳ねた。
「ぴちゅ!ぴちゅっ!」
まるで、それが当たり前だと言うように。三人で一緒にいられる未来を、何の疑いもなく信じているようだった。
(…………)
俺は目を閉じ、小さく息を吐く。
本当は、俺だって離れたくない。レッドと過ごす時間は心地いいし、ピチューとじゃれ合う毎日も楽しい。だが、俺と一緒にいれば、また危険な目に遭うかもしれない。それだけは絶対に避けたかった。
覚悟を決め、俺はゆっくりと首を横に振った。
「……リザ」
その瞬間、レッドの表情が固まった。数秒遅れて、ようやく小さな声が漏れる。
「……………………え?」
信じられないものを見るように、レッドの瞳が大きく揺れる。オーキド博士は静かに目を伏せ、穏やかな口調で告げた。
「この子は……旅を続けるつもりなんじゃろう」
「……そんな……」
レッドの肩が小さく震える。隣にいたピチューも、不安そうに俺とレッドを見上げた。
「……ぴちゅ?」
俺はしゃがみ込み、ピチューの頭をそっと撫でる。
「……リザ」
お前はここに残れ。レッドと一緒にいろ。
気持ちを伝えるように優しく撫でると、ピチューは一瞬きょとんとしたあと、ぶんぶんと首を横に振った。
「ぴちゅ! ぴちゅう!?」
必死に鳴きながら、俺の腕にしがみついてくる。小さな手が離れまいと必死に掴んでくる。その温もりが胸を締めつけた。
それでも、俺は心を鬼にしてピチューをそっと抱き上げ、レッドの腕の中へと戻す。
レッドはピチューを抱きしめたまま、涙で潤んだ瞳で俺を見つめていた。唇が震え、やがて絞り出すように声が漏れる。
「……やだ」
「……行かないでっ」
ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちる。泣きながら、それでも必死に俺へ手を伸ばしてくる。その手が空を掴む前に、俺は一歩だけ後ろへ下がった。
――それでも、俺は行かなければならない。
レッドの涙を見つめながら、俺は痛む胸の奥で、もう一度静かに決意を固めた。
――――――――――
なんで……?
どうして……?
わたしの、何がいけなかったの……?
何度も同じ言葉を心の中で繰り返しながら、ベッドの上にうずくまっていた。
夕暮れの光が薄いカーテンを染めて、部屋がオレンジ色に沈んでいた。その色が、目の奥に滲んで見えた。
「……っ、ひっく……うぅ……」
枕に顔を押しつけると、布の匂いと自分の涙の塩気が混ざった。泣くたびに鼻が詰まって、息が苦しい。それでも涙は止まらなかった。
目を閉じても、頭に浮かぶのはさっきの光景ばかりだった。
勇気を出して、「ずっと一緒にいたい」と伝えた。
あの子も、きっと同じ気持ちだと思っていた。
ロケット団に襲われたあの日。あの子は傷だらけになりながらも、わたしを守るために戦ってくれた。
何度倒されても立ち上がり、最後まで前に立ち続けてくれた。
その背中を見た時、わたしは確信したのだ。
――リザードにとって、わたしは大切な存在なんだって。だから、一緒にいたいと言えば、きっと頷いてくれると思っていた。
でも――。
『……リザ』
あの子は、静かに首を横に振った。
その瞬間のことを、鮮明に覚えている。
胸の奥が、すとんと落ちたような感覚。何を言われたのか分からなくて、頭の中が真っ白になった。
そして、遅れて押し寄せてきたのは、どうしようもない絶望だった。
「……うぅ……っ、うわぁぁん……!」
枕に顔を埋めても、涙は止まってくれない。
ロケット団を追い払った時は、本当に嬉しかった。
リザードとピチューと一緒に戦って、みんなで勝つことができた。隣に立って戦えたことが、誇らしかった。
もう、守られているだけじゃない。わたしも、少しはリザードの力になれた。
そう思っていた。
クラスのみんなにも褒められた。
「レッドちゃん、すごかったね!」
「ピチューにちゃんと指示を出してた!」
「リザードと息ぴったりだった!」
みんなの言葉を聞いた時は、胸がいっぱいになった。嬉しくて、くすぐったくて、でも一番に思ったのは――。
(リザードに、認めてもらえたのかな)
そんな期待だった。でも、それは全部、わたしの勘違いだったろうか。
「……ひっく……うぅ……」
わたしは、ただの足手まといだったのだろうか。
あの子にとって、わたしは一緒にいたいと思える存在じゃなかったのだろうか。
考えれば考えるほど、喉の奥が絞られるように痛くなる。
それでも、不思議とリザードを嫌いにはなれなかった。
あの子がわたしを守ってくれたことも、一緒に戦ってくれたことも、全部本物だったと知っているから。
だからこそ、余計につらい。
「……行かないでよ……」
かすれた声が、薄暗い部屋に溶けていく。
「……もっと、一緒にいたいよ……」
涙でぐしゃぐしゃになったまま、胸元に抱きしめたモンスターボールをぎゅっと握りしめた。
その中には、ピチューがいる。
そして、わたしの心の中には、リザードとの思い出がたくさん詰まっている。
森で初めて会った日。
一緒に木の実を食べたこと。
研究所で、わたしを守ってくれたこと。
どの思い出も、大切で、温かくて――。
だから、失いたくなかった。
「……っ、うぅ……」
「……だいすき、なのに……」
泣き疲れて、手足の先がしびれるほど冷たくなっていた。それでも涙は止まらない。
窓の外で、鳥ポケモンが一声鳴いた。それだけで、部屋がより静かになった気がした。
どのくらいそうしていただろう。
涙が出尽くしたのか、いつの間にか泣き声が止んでいた。枕はぐっしょりと湿って、頬に冷たく張りついている。
ただぼんやりと、天井を見つめていた。
――そこにまるで光が差し込むみたいに。
「……もう捕まえちゃえばいいんだ」
ふいに、その答えが頭の中に落ちてきた。
あまりにも自然で、あまりにも単純な答え。
そうだ――リザードは、まだ誰のポケモンでもない。
だったら、わたしが捕まえればいい。
そうすれば、ずっと一緒にいられる。
もう離れていくこともない。
危険な場所へ、一人で行ってしまうこともない。
わたしがトレーナーになって、あの子を守ればいい。
「……ふふ、そっか」
涙で濡れた頬に、そっと手を当てる。
さっきまで胸を塞いでいたものが、すうっと消えていく。体が軽くなる。息が、楽になる。
「わたしが……リザードより強くなればいいんだ」
今のわたしでは、あの子に追いつけない。
だから、もっと強くなる。
たくさん勉強して。
たくさんポケモンのことを知って。
たくさん戦って。
誰よりも強いトレーナーになる。
そうすれば、きっとあの子も認めてくれる。
言葉で伝わらなくても、力で証明すればいい。
わたしなら、あの子を守れるって。
わたしと一緒にいるのが、一番幸せだって。
「……絶対に、捕まえる」
震える声で呟く。
けれど、その言葉には確かな熱が宿っていた。
もう、迷わない。
リザードは、わたしの大切な子だ。
誰にも渡したくない。
どこにも行ってほしくない。
ずっと、ずっと、わたしのそばにいてほしい。
そのためなら――。
どれだけ強くなることだってできる。
「待っててね、リザード」
湿った枕の上で、そっと微笑んでいた。
涙の跡は、もう残っていなかった。
「今度は、わたしが……あなたを捕まえるからね」
私はヤンデレが大好きだ。TSレッドをヤンデレにしたのは反省はしているが、後悔はしていません。ヤンデレのレッド、略してヤンデレッド。
【名前】???
【種族】リザード
【性格】おくびょう
【特性】りょうげんのひ
【持ち物】無し
りょうげんのひ:自分のHPが1/2以下になるまで、ほのお技を使えない。HPが1/3以下になると、ほのお技の威力が2倍になり、「すばやさ」のランクが1段階上る。
【技】
・ひっかく
・ひのこ?
・えんまく
・なきごえ
・りゅうのいぶき