転生したらヒトカゲだった。しかも色違い   作:リザードン大好きマン

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第十六話 「……ふふ。あは、あははははっ!!」

 

 

 

「おぬし、もう体を動かせるようになったのか。たった一日でここまで回復するとは、驚異的じゃぞ」

 

 白衣の老人――オーキド博士が、感心したように顎を撫でる。

 

(そうだったのか。道理で、オレンのみを食べただけでやけに治りが早いと思った)

 

 俺は今、オーキド博士の研究所の一室で治療と検査を受けていた。

 

 研究所がロケット団に襲撃されたのは昨日。あの戦いのあと、限界を迎えた俺はその場で倒れ、そのまま研究所の治療室へ運び込まれたらしい。

 

 博士から「ここで治療を受けていきなさい」と言われた時は、正直そのまま森へ帰るつもりだった。

 

 だが――。

 

 涙目のまま無言でこちらを見つめるレッド。

 

 その圧に耐えきれず、結局俺もピチューも、大人しく研究所に世話になることになった。

 

「――これで検査は終わりじゃ。ううむ……やはり、おぬしは普通のリザードとは明らかに違うのう」

 

 オーキド博士は、手元の資料を見ながら唸る。

 

 どうやら、俺は色違いというだけでなく、身体そのものがかなり規格外らしい。

 

 博士の説明をざっくりまとめると、こうだ。

 

・体の大きさ

・身体能力

・尻尾の炎の温度

・回復力

・知能

 

 どの項目も、一般的なリザードを大きく上回っているという。

 

 詳しい数値や専門用語まで説明されたが、この世界の教育を受けていない俺にはさっぱり分からない。

 

 前世のゲーム知識で例えるなら、体格が大きく、個体値も優秀。さらに回復力補正までついた、いわば「オヤブン」みたいなものだろう。

 

 尻尾の炎の温度については、リザードンの図鑑に「激しい戦いを経験するほど炎の温度が上がる」といった説明があった気がする。

 

 ……自慢ではないが、俺は転生してからというもの、かなり命懸けの戦いを何度も経験している。

 

 そう考えれば、多少温度が高くても不思議ではない。

 

(検査と聞いた時は、解剖でもされるんじゃないかと内心びびってたけどな)

 

 実際には、身長と体重の測定、筋力テスト、尻尾の炎の温度測定、簡単な知能検査など、どれも普通の健康診断のようなものだった。

 

 研究員たちも親切で、オーキド博士も終始穏やかだった。

 

「ぴちゅぴちゅ♪」

 

 隣では、ピチューが上機嫌でポケモンフーズを頬張っている。

 

 小さな体にはまだ包帯が巻かれているものの、食欲はいつも通りだ。どうやら完全に元気になったらしい。

 

 俺も皿に盛られたポケモンフーズを口に運ぶ。味は思った以上に悪くない。むしろ、きのみとは違うコクがあって普通に美味い。

 

 戦いの翌日は検査や治療で慌ただしかったが、今日はようやく落ち着いている。

 

 ロケット団の連中は警察に引き渡され、研究所の被害もほぼ復旧したらしい。

 

 レッドも一晩休んでかなり回復したと聞いた。

 

(……あれだけボコボコにされて「軽傷」と言われても、正直納得はいかないが。流石はマサラ人と言ったところか)

 

 そんなことを考えていると、部屋の扉がこんこん、と小さくノックされた。

 

 続いて、聞き慣れた控えめな声がする。

 

「……入っても、いい?」

 

 その声を聞いた瞬間、ピチューの耳がぴんと立った。

 

「ぴちゅ!」

 

 扉がゆっくりと開き、レッドが顔を覗かせる。

 

 頬にはまだうっすらと赤みが残り、腕や膝にも包帯が巻かれていた。それでも、俺たちの姿を見つけた瞬間、その表情はぱっと明るくなる。

 

「……リザード、ピチュー」

 

「……リザ」

 

「ぴちゅう!」

 

 ピチューは嬉しそうに駆け寄り、レッドの足元に飛びついた。

 

 レッドはしゃがみ込み、ピチューをそっと抱き上げる。

 

「……元気そうで、よかった」

 

「ぴちゅぴちゅ♪」

 

 気持ちよさそうに鳴くピチューを見て、レッドの口元が柔らかく緩む。

 

 その様子を見ながら、俺は小さく息を吐いた。

 

 昨日の、泣きそうな顔とは違う。今のレッドは、ちゃんと笑っていた。それだけで、胸の奥の重石が少し軽くなる。

 

 レッドはピチューを抱いたまま、ゆっくりと俺の前まで歩いてきた。そして少しためらったあと、そっと手を伸ばし、俺の頭を優しく撫でる。

 

「……ありがとう」

 

 小さな手のひらの温もりが、鱗越しにじんわりと伝わってくる。

 

「……来てくれた時……すごく嬉しかった」

 

 静かな声だった。

 

「……もう、会えないかもしれないって……少し思ってたから」

 

 その言葉に、胸の奥がちくりと痛む。

 

 あの時のレッドは、本当に追い詰められていた。怖くて、痛くて、それでも必死にモンスターボールを守っていた。

 

 そんな中で俺の姿を見つけた時、レッドは確かに「来てくれた」と呟いた。

 

「……だから、本当に嬉しかった」

 

 レッドは少し恥ずかしそうに笑った。

 

 「……リザ」

 

(…まったく。そんな顔をされると、こっちまで照れくさくなる)

 

 ぶっきらぼうに鳴くと、レッドは目を丸くしたあと、ふっと笑みを深めた。

 

「……うん」

 

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 

 ――だが同時に、現実も思い出していた。

 

(俺は、いつまでもレッドのそばにいるつもりはない)

 

 この町での目的は、ピチューを安心して託せる相手を見つけること。そして、それが叶えば、俺は再び一人で強くなるための旅に出るつもりだった。

 

 ……それでも。

 

 こうして無邪気に笑うレッドを見ていると、その決意が少しだけ揺らぐのも事実だった。

 

「おやおや。すっかり仲良くなったようじゃのう」

 

 オーキド博士が楽しそうに目を細める。

 

 レッドは少し頬を赤くしながらも、俺の頭に置いた手を引っ込めようとはしなかった。

 

 その温もりを感じながら、俺は心の中でそっと呟く。

 

(……この穏やかな時間も、きっと長くは続かない)

 

そう思うと、胸の奥が少しだけ痛んだ

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 オーキド博士が、俺とレッドを交互に見ながら穏やかな声で言った。

 

「さて……これからどうするつもりじゃ?」

 

 その問いに、俺は一瞬だけ息を呑んだ。いずれ聞かれると分かっていた質問だ。ピチューをどうするのか。そして、俺自身がこれからどう生きていくのか。

 

(いや、答えは最初から決まっている――)

 

 ピチューはここに残す。レッドとオーキド博士がいれば、あいつはもう寂しい思いをしなくて済む。そして俺は、一人で旅を続ける。

 

 そう心の中で答えを出した時、俺より先にレッドが口を開いた。

 

「……リザードとピチューと、一緒にいたい」

 

(……っ!…レッド……)

 

 小さな声だったが、その言葉にははっきりとした意思が込められていた。レッドは俺を見つめたまま、震える手をぎゅっと握りしめる。

 

「……ずっと、一緒にいたい」

 

 真っ直ぐな瞳に、胸の奥が強く揺さぶられる。ピチューも嬉しそうに飛び跳ねた。

 

「ぴちゅ!ぴちゅっ!」

 

 まるで、それが当たり前だと言うように。三人で一緒にいられる未来を、何の疑いもなく信じているようだった。

 

(…………)

 

 俺は目を閉じ、小さく息を吐く。

 

 本当は、俺だって離れたくない。レッドと過ごす時間は心地いいし、ピチューとじゃれ合う毎日も楽しい。だが、俺と一緒にいれば、また危険な目に遭うかもしれない。それだけは絶対に避けたかった。

 

 覚悟を決め、俺はゆっくりと首を横に振った。

 

「……リザ」

 

 その瞬間、レッドの表情が固まった。数秒遅れて、ようやく小さな声が漏れる。

 

「……………………え?」

 

 信じられないものを見るように、レッドの瞳が大きく揺れる。オーキド博士は静かに目を伏せ、穏やかな口調で告げた。

 

「この子は……旅を続けるつもりなんじゃろう」

 

「……そんな……」

 

 レッドの肩が小さく震える。隣にいたピチューも、不安そうに俺とレッドを見上げた。

 

「……ぴちゅ?」

 

 俺はしゃがみ込み、ピチューの頭をそっと撫でる。

 

「……リザ」

 

 お前はここに残れ。レッドと一緒にいろ。

 

 気持ちを伝えるように優しく撫でると、ピチューは一瞬きょとんとしたあと、ぶんぶんと首を横に振った。

 

「ぴちゅ! ぴちゅう!?」

 

 必死に鳴きながら、俺の腕にしがみついてくる。小さな手が離れまいと必死に掴んでくる。その温もりが胸を締めつけた。

 

 それでも、俺は心を鬼にしてピチューをそっと抱き上げ、レッドの腕の中へと戻す。

 

 レッドはピチューを抱きしめたまま、涙で潤んだ瞳で俺を見つめていた。唇が震え、やがて絞り出すように声が漏れる。

 

「……やだ」

 

「……行かないでっ」

 

 ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちる。泣きながら、それでも必死に俺へ手を伸ばしてくる。その手が空を掴む前に、俺は一歩だけ後ろへ下がった。

 

 ――それでも、俺は行かなければならない。

 

 レッドの涙を見つめながら、俺は痛む胸の奥で、もう一度静かに決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんで……?

 

 どうして……?

 

 わたしの、何がいけなかったの……?

 

 何度も同じ言葉を心の中で繰り返しながら、ベッドの上にうずくまっていた。

 

 夕暮れの光が薄いカーテンを染めて、部屋がオレンジ色に沈んでいた。その色が、目の奥に滲んで見えた。

 

「……っ、ひっく……うぅ……」

 

 枕に顔を押しつけると、布の匂いと自分の涙の塩気が混ざった。泣くたびに鼻が詰まって、息が苦しい。それでも涙は止まらなかった。

 

 目を閉じても、頭に浮かぶのはさっきの光景ばかりだった。

 

 勇気を出して、「ずっと一緒にいたい」と伝えた。

 

 あの子も、きっと同じ気持ちだと思っていた。

 

 ロケット団に襲われたあの日。あの子は傷だらけになりながらも、わたしを守るために戦ってくれた。

 

 何度倒されても立ち上がり、最後まで前に立ち続けてくれた。

 

 その背中を見た時、わたしは確信したのだ。

 

 ――リザードにとって、わたしは大切な存在なんだって。だから、一緒にいたいと言えば、きっと頷いてくれると思っていた。

 

 でも――。

 

『……リザ』

 

 あの子は、静かに首を横に振った。

 

 その瞬間のことを、鮮明に覚えている。

 

 胸の奥が、すとんと落ちたような感覚。何を言われたのか分からなくて、頭の中が真っ白になった。

 

 そして、遅れて押し寄せてきたのは、どうしようもない絶望だった。

 

「……うぅ……っ、うわぁぁん……!」

 

 枕に顔を埋めても、涙は止まってくれない。

 

 ロケット団を追い払った時は、本当に嬉しかった。

 

 リザードとピチューと一緒に戦って、みんなで勝つことができた。隣に立って戦えたことが、誇らしかった。

 

 もう、守られているだけじゃない。わたしも、少しはリザードの力になれた。

 

 そう思っていた。

 

 クラスのみんなにも褒められた。

 

「レッドちゃん、すごかったね!」

「ピチューにちゃんと指示を出してた!」

「リザードと息ぴったりだった!」

 

 みんなの言葉を聞いた時は、胸がいっぱいになった。嬉しくて、くすぐったくて、でも一番に思ったのは――。

 

(リザードに、認めてもらえたのかな)

 

 そんな期待だった。でも、それは全部、わたしの勘違いだったろうか。

 

「……ひっく……うぅ……」

 

 わたしは、ただの足手まといだったのだろうか。

 

 あの子にとって、わたしは一緒にいたいと思える存在じゃなかったのだろうか。

 

 考えれば考えるほど、喉の奥が絞られるように痛くなる。

 

 それでも、不思議とリザードを嫌いにはなれなかった。

 

 あの子がわたしを守ってくれたことも、一緒に戦ってくれたことも、全部本物だったと知っているから。

 

 だからこそ、余計につらい。

 

「……行かないでよ……」

 

 かすれた声が、薄暗い部屋に溶けていく。

 

「……もっと、一緒にいたいよ……」

 

 涙でぐしゃぐしゃになったまま、胸元に抱きしめたモンスターボールをぎゅっと握りしめた。

 

 その中には、ピチューがいる。

 

 そして、わたしの心の中には、リザードとの思い出がたくさん詰まっている。

 

 森で初めて会った日。

 

 一緒に木の実を食べたこと。

 

 研究所で、わたしを守ってくれたこと。

 

 どの思い出も、大切で、温かくて――。

 

 だから、失いたくなかった。

 

「……っ、うぅ……」

 

「……だいすき、なのに……」

 

 泣き疲れて、手足の先がしびれるほど冷たくなっていた。それでも涙は止まらない。

 

 窓の外で、鳥ポケモンが一声鳴いた。それだけで、部屋がより静かになった気がした。

 

 どのくらいそうしていただろう。

 

 涙が出尽くしたのか、いつの間にか泣き声が止んでいた。枕はぐっしょりと湿って、頬に冷たく張りついている。

 

 ただぼんやりと、天井を見つめていた。

 

 ――そこにまるで光が差し込むみたいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう捕まえちゃえばいいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふいに、その答えが頭の中に落ちてきた。

 

 あまりにも自然で、あまりにも単純な答え。

 

 そうだ――リザードは、まだ誰のポケモンでもない。

 

 だったら、わたしが捕まえればいい。

 

 そうすれば、ずっと一緒にいられる。

 

 もう離れていくこともない。

 

 危険な場所へ、一人で行ってしまうこともない。

 

 わたしがトレーナーになって、あの子を守ればいい。

 

「……ふふ、そっか」

 

 涙で濡れた頬に、そっと手を当てる。

 

 さっきまで胸を塞いでいたものが、すうっと消えていく。体が軽くなる。息が、楽になる。

 

「わたしが……リザードより強くなればいいんだ」

 

 今のわたしでは、あの子に追いつけない。

 

 だから、もっと強くなる。

 

 たくさん勉強して。

 

 たくさんポケモンのことを知って。

 

 たくさん戦って。

 

 誰よりも強いトレーナーになる。

 

 そうすれば、きっとあの子も認めてくれる。

 

 言葉で伝わらなくても、力で証明すればいい。

 

 わたしなら、あの子を守れるって。

 

 わたしと一緒にいるのが、一番幸せだって。

 

「……絶対に、捕まえる」

 

 震える声で呟く。

 

 けれど、その言葉には確かな熱が宿っていた。

 

 もう、迷わない。

 

 リザードは、わたしの大切な子だ。

 

 誰にも渡したくない。

 

 どこにも行ってほしくない。

 

 ずっと、ずっと、わたしのそばにいてほしい。

 

 そのためなら――。

 

 どれだけ強くなることだってできる。

 

「待っててね、リザード」

 

 湿った枕の上で、そっと微笑んでいた。

 

 涙の跡は、もう残っていなかった。

 

「今度は、わたしが……あなたを捕まえるからね」

 

 

 

 

 

 














私はヤンデレが大好きだ。TSレッドをヤンデレにしたのは反省はしているが、後悔はしていません。ヤンデレのレッド、略してヤンデレッド。

【名前】???
【種族】リザード
【性格】おくびょう
【特性】りょうげんのひ
【持ち物】無し

りょうげんのひ:自分のHPが1/2以下になるまで、ほのお技を使えない。HPが1/3以下になると、ほのお技の威力が2倍になり、「すばやさ」のランクが1段階上る。

【技】
・ひっかく
・ひのこ?
・えんまく
・なきごえ
・りゅうのいぶき
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