ヴァルキリー戦記【戦闘中行方不明になっていた父親が人型戦闘兵器になっていたので、元の姿に戻す為に戦い抜く】   作:尾松成也

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第二十四話 クラスメイト達と遭遇する

「人喰い機械を駆逐する事はママの願いでもあり、私の願いでもあるの。ここもいつか奴等に蹂躙されるかもしれない。イグニス君は私に協力してくれるわよね?」

 

 周りが家族連れで賑わう中、俺達の間にはピリッとした緊張感が漂っていた。ソフィアは俺が断るだなんて微塵にも思っていないらしく、俺の手を力強く握り締め続けている。

 

(ソフィアが地球を出た理由は分かった。だけど、俺には父さんを元の姿に戻すっていう目的がある。目的が一致するなら協力できるかもしれないけど、ソフィアの期待に全力で応えるのは難しいよな……)

 

「俺は——」

 

 ソフィアの申し出を断ろうと口を開きかけた、その時だった。

 

 背後からポンッと肩を叩かれた俺は肩を揺らして振り返ってみる。背後にはクラスメイトのリックとハヤテ、ガイアの三人がクレープを片手にニヤニヤと笑いながら、仁王立ちしていたのだった。

 

「イ〜グ〜ニ〜ス〜? ソフィアちゃんと二人きりで、デートとは随分と良いご身分になったなぁ?」

「全くだ。Re:VEIL(リヴェイル)の布教をするなら、先ず俺を挟んでもらわないと」

「転校生。近々、模擬戦を申し込んでも良いだろうか? 俺の予定はいつでも空いてるから、いつでも対戦可能だ」

 

 三人が同時に喋る中、リックの熱視線が俺の右手に注がれた。

ソフィアと手を繋ぎっぱなしだった事に気付いた俺は、慌てて手を振り解く。すると、リックは俺の隣に座り込んで、馴れ馴れしく俺の肩に腕を回してきた。

 

「で? どっちから告白したわけ?」

「ちょ、ちょっと待て。一体、なんの話だ?」

「とぼけんなよ! ソフィアちゃんと付き合ったから、市街地までデートに繰り出したんだろ!?」

「付き合ってねぇよ、バカ! 俺とソフィアは出会って間もないんだぞ!? なぁ、ソフィアも黙ってないで反論してくれよ!」

 

 助け舟を求めて視線を向けたが、ソフィアは真剣な話を邪魔されたのが気に食わなかったらしく、いつの間にか身体ごとそっぽを向いていた。頬杖を着きながら、ツンと尖らせた唇からは「真剣な話だったのに!」という無言の抗議がヒシヒシと伝わってくる。

 

「おいおい。彼女、拗ねてるじゃねぇか」

「だから、彼女じゃねぇって! 頼むから、もう黙っててくれよ!」

 

 リックが慰めるように俺の肩をポンポンと叩く中、ハヤテは持っていたデバイスをテーブルの中心に置き、ホログラム動画を起動させて、Re:VEIL(リヴェイル)のライブ動画を見始めた。

 一方のガイアはソフィアの隣に陣取り、「ヴァルキリーに乗って、何年になるんだ?」と一方的に質問し始めている。

 

(カ……カオスだ……。リック達は俺とソフィアの事情を知らないから仕方ねぇけど! 皆、頼むから空気を読んでくれ〜〜っ!!)

 

 俺は心の内で頭を抱えながら叫んだ。

 

◇◇◇

 

「つ、疲れた……。リックの奴、最後まで俺達のことを疑ってやがったな……」

 

 リック達の誤解を全力で解き、俺はソフィアと一緒にターミナルに向かって歩いていた。時刻は夕方の十七時過ぎ。白い擬似太陽光が橙色に変わり、すっかり夕焼け空に様変わりしている。

 

 俺は大量のショッパーを持ちながら、並んで歩くソフィアの顔色を伺ってみた。リック達と別れてから手持ちのデバイスと睨めっこしているようだったが、会話らしい会話もなかったので、俺は何を話そうか悩みながら、トボトボと歩く。

 

「ソ、ソフィア。今日は悪かったな……」

「何が悪かったの?」

 

 ソフィアの感情を推し量れなかった俺は、うっ……と言葉に詰まってしまう。しかし、ここで会話を途切れさせるわけにはいかず、俺は意を決して話し始めた。

 

「リック達が乱入してきたことだよ。今日はあんな調子だったけど、悪い奴らじゃないからさ。これから一緒に過ごす仲間になるし、大目にみてやってほしい」

「悪い人達じゃないって理解できたから大丈夫よ。それに貴方が謝る必要はないんじゃない? だって、あれは偶然でしょ? そんなに責任感じなくてもいいわ」

 

 ソフィアが困ったように笑うのを見て、逆に気遣われてしまった俺は「ソ、ソウデスネ……」と答えるしかできなかった。

 

「あ……そういえば、今日はどこかに泊まるのか?」

「そんなわけないでしょ。ちゃんと帰れる家は司令官が用意してくれてるわ。ここなんだけど、場所がいまいち分からなくって……」

 

 ソフィアが持つデバイスの画面には、とある地区の名前が表示されていた。

 

「ギムレー地区? ギムレーって、政治家や軍のお偉いさん達が住んでるって噂の高級住宅街じゃねぇか!!」

「そ、そんなに凄い所なの?」

「庶民じゃ一生住めないような場所だよ! くっそー、なんで格納庫で暴れ倒したテロリストがこんな良い所に住めるんだ——いてっ!?」

「私はテロリストじゃないわ! まったく、失礼しちゃうわね!」

 

 いきなり背中を思いっきり小突かれた。ドスッ! という聞き慣れない音が響き、行き交う人達の一部から視線を浴びる羽目になってしまう。

 

「いい? 私はあの時、優男や坊主頭に許可を得て格納庫に向かったのよ? それに貴方だって、自分の大切なヴァルキリーが襲われてたら応戦するでしょ?」

 

 ソフィアは恐々とした様子で自分の首を摩り始めた。

どうやら、撃たれた時の傷が気になっているらしい。表面上は何ともなっていないようだが、もしかして、傷が痛むのだろうか?

 

 あの時の事を聞くべきか迷っていると、突然、制服の胸ポケットに入れていたデバイスが震えた。俺は持っていたショッパーを落とさないように気をつけながら、画面を確認すると『マリウス先生』と表示されていた。

 

「はい、もしもし」

『あ、イグニス君? ソフィアちゃんも一緒にいるよね?』

 

 マリウス先生の言葉に思わず吹き出しそうになった。

GPS付けられていた事を思い出した俺は、もう何も疑わずに「うん、いるよ」と答える。

 

『今、位置情報を送ったからさ。ソフィアちゃんを連れて来てくれるかな?』

 

 俺は通話にしたまま画面を確認してみると、ギムレー地区の地図が表示されていた。しかも、この住所はソフィアのデバイスに表示されていたものと同じである事に気付く。

 

「マリウス先生、この住所は……?」

『ごめん、イグニス君。すっかり言い忘れてたんだけど、今日からソフィアちゃんと三人で住む事になったから——あれ? イグニス君、聞いてる?』

 

 予想外の展開に俺は持っていたショッパーを全部落としそうになってしまった。

 

(ヤバイぞ! ソフィアと一緒に住む事になったら、リックだけじゃなくて、クラスの皆から揶揄われるに決まってる! これだけはなんとしても秘密を守らねば!)

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