ヴァルキリー戦記【戦闘中行方不明になっていた父親が人型戦闘兵器になっていたので、元の姿に戻す為に戦い抜く】   作:尾松成也

31 / 31
第二十七話 メカニック科の後輩・ロイド

「イグニス君。この生徒会ってどういう意味?」

 

 次の日、学校で組まれているカリキュラムを済ませた後、俺とソフィアはメカニック科に所属している後輩に会う為に生徒会に向かっていた。

 

 ソフィアは学校に通った事がないらしく、〝ママ〟と呼んでいた人物から勉強を教わっていたらしい。だから、見るもの全てが新鮮に見える様子だった。

 

「簡単にいえば、学校で行う行事や式典の予算を決めたり、規則違反をした生徒達を先生の代わりに指導したりしてるんだ。後は生徒同士の決闘も取り仕切ってるらしいぜ」

「決闘? もしかして、何かを賭けて戦ってたりしてるの?」

「そうだな。生徒会長様曰く、昔はヴァルキリーを強化する為に行われてたらしいけど、俺達は喧嘩をふっかけられた時に決闘を使ってるな——あだっ!?」

 

 いきなり背後から頭を軽く小突かれた。勢いよく振り返ってみると、少し呆れた表情をしているヘリオスの姿があった。

 

「決闘システムはこの学校の伝統だって説明したつもりだったんだが、そういう認識だったとはな。ま、文字通り缶詰状態になってたから、記憶から抜け落ちてても仕方ないか」

 

 ヘリオスは少し嫌味っぽく笑う。どうやら、俺が長期休暇中に謹慎処分を受けていた事を知っているようだ。

 

「で? その隣にいるのが噂の転校生か?」

「あぁ、そうだよ。名前は——」

「ソフィア・ロズヴァイセさんだろ? 父から話は聞いてる。俺の名前はヘリオス・シュヴェルトライテ。イグニスよりも一つ上の学年で、第二学年だが生徒会長をやらせてもらってる。学校で何かあったら、いつでも頼ってくれ」

 

 ヘリオスは手を差し出すと、ソフィアは「あぁ、司令官の息子さんね」と手を握り返したのだった。

 

「ありがとう、ヘリオスさん。貴方のお父様にはお世話になってます。気軽にソフィアって呼んで下さい」

「そうさせてもらうよ。俺の事も呼び捨てでいいし、敬語じゃなくていいから。これからよろしく頼む」

「わかったわ、ヘリオス。ところで、この学校はいろんな事を学べるのね。驚いたのは学生なのにパイロット科の生徒の専門知識が——」

 

 俺を差し置いて二人だけで話が進んでいく。初対面同士とは思えない親し気な会話に、何故か俺は胸がザワザワしてしまった。

 

(なんなんだよ、この落ち着きのある会話は!? 俺なんか初対面の時、腹に蹴りを入れられたんだぞ!? ソフィアの奴、ヘリオスの前では猫被りやがって!)

 

 無性に腹が立った俺は、「あのさ!」と二人の会話に割って入った。

 

「俺、ロイドに用があって会いにきたんだけど!」

「ロイド? 彼なら生徒会室にいるぞ」

「もう中等部の予算会議は終わってるのか?」

「あぁ、中等部は高等部に比べて予算が少ないからな。これから入れ替わりで高等部の予算会議が始まるところだ」

 

 ヘリオスの言葉を聞いた俺は生徒会室の中へ足を踏み入れた。丁度、帰り支度をしている銀髪童顔の少年、ロイドとバッチリ目が合う。

 

「よぉ、ロイド! 久しぶりだな!」

「イグニス兄ちゃん!? もしかして、またヴァルキリーを壊したの!?」

 

 その言葉を聞いた俺はズッコケそうになった。

 

「違う違う、ヴァルキリーは壊してねぇから! 今日は別の用があってロイドに会いに来たんだ!」

 

 ロイドは安心したのか、「そうなんだ!」とあからさまに胸を撫で下ろしていた。

 

「それで僕に用って?」

「口で説明するのが難しいから、一緒に中央格納庫に来て欲しいんだけど……」

「中央格納庫? もしかして、イグニス兄ちゃんのお父さんが乗ってた噂の英雄機が見れるの!?」

 

 ロイドの表情がパッと明るくなった。俺は誇らしくなって「あぁ、そうだ!」と即答する。

 

「その件で相談したい事があってさ。この後、予定はあるか?」

「あるにはあるけど、マリウス先生に課題を提出してからでもいい? 僕だけ休暇中の課題をまだ出せてなくって……」

 

 ロイドは足元に置いていた機械人形を机の上に置いた。

全長約八十センチメートルほどの機械人形は目が赤く、銀色の毛皮に覆われた狼の姿をしていた。

 

 後ろにいたはずのソフィアとヘリオスもいつの間にか生徒会室に入ってきて、「凄いわね……」と驚きを露わにしていた。

 

「これ、ロイドが作ったのか?」

「うん! コロニーならともかく、宇宙船で猫や犬を飼うのって、結構ハードル高いでしょ? だから、動物に模した人と喋れるロボットを作ってみようと思って!」

 

 機械人形の電源を入れてみると、『コンニチワ、ロイド。キョウハ、クガツヨッカ、ゲツヨウビ。ガッコウ、イクノ?』と一人で喋り出した。

 

「学生一人でここまで作り上げるのは大変だったんじゃないか?」

「そうですね。けど、僕の夢はヴァルキリーを自分の手で作りあげることですから。でも、まだ問題もあって……」

 

 キラキラとした目でヘリオスに夢を語るロイドだったが、やがて表情が曇った。機械人形は手足をバタバタさせたまま、いつまで経っても立つ事ができなかったのだ。

 

「どうしても、一人で立つ事ができないんです。システム的には問題ないと思うんだけど、やっぱりバランスを取れるような姿にした方が良いのかなぁ……」

 

 機械人形を抱き上げたロイドは悩んでいる様子だったが、この時、俺は閃いてしまった。

 

(この人形に父さんの意識を移せば良いんじゃないか!? そしたら一緒に暮らす事もできるし、機械だから簡単な申請でいい! 全てが上手くいくような気がする!)

 

 機械人形に活路を見出した俺はロイドの手をギュッと握り締めた。

 

「ロイド、お前は本当に凄い! 天才だ!」

「あ……ありがとう、イグニス兄ちゃ——!?」

 

 俺はロイドの手を引いて、廊下を全速力で駆け抜けていった。

 

「ちょっ……。は、走るの早っ……!?」

「善は急げって言うだろ!? 早くマリウス先生の所に行こうぜ!」

 

 後ろから「ちょっと、イグニス君!?」とソフィアが機械人形を抱えて走ってきた。更にその後ろから、「イグニスッ! 廊下は走るなって、いつも言ってるだろ!」とヘリオスの大きな声が響き渡った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

そいつの開発者、俺なんだが(作者:束田せんたっき)(オリジナルSF/コメディ)

なんか学生時代の黒歴史が、未来でディストピアの管理AIをやってたんですけど。国家ぐるみのストーキングやめてね。▼《真面目なあらすじ》▼高城之男へ一致せよ。▼タカギニアでは、すべての人間が、三百年前に死んだ偉人・高城之男とどれだけ似ているかで評価される。似ている者には栄光を、似ていない者には屈辱を。▼管理番号11-F-283-D503、平野平人。彼は一致度0.…


総合評価:6385/評価:8.24/連載:40話/更新日時:2026年08月12日(水) 22:54 小説情報

「あるよ」おじさんになりたくて(作者:おっとり塩茶漬け)(オリジナル現代/日常)

「いやいや、まさかそんなのあるわけ」▼「だよねぇ」▼「……あるよ」▼「「え」」▼そんなやりとりがしたい。▼そんな願いを抱えた男が転生して、カフェを開くことにした。


総合評価:9179/評価:8.5/連載:3話/更新日時:2026年04月29日(水) 23:05 小説情報

悪役令嬢の腰巾着に転生した俺、「流石はお嬢様!」と煽てながら全力で生き残る(作者:延暦寺)(オリジナルファンタジー/コメディ)

現代日本、ダンジョン攻略が国力を左右する世界。▼九条財閥の従者の家に生まれた俺は、▼幼い頃の顔合わせの最中、ここが前世でやり込んだRPGの世界であることを思い出す。▼目の前にいるのは、金髪縦ロールを揺らし高笑いする、仕えるべき主――悪役令嬢・九条葵。▼原作の彼女は、突如現れた原作主人公に負け、最後には魔人に堕ちて討伐される、哀れな噛ませ犬だ。▼当然、その横に…


総合評価:8730/評価:7.41/完結:25話/更新日時:2026年06月06日(土) 12:28 小説情報

TS転生した元おじさん一般村娘。将来結婚相手になるだろうからと優しく接していた幼馴染が村を出た。そして十年後、立派になりすぎて帰ってきた。(作者:パンデュ郞)(オリジナルファンタジー/ノンジャンル)

やあ、おじさんは村娘に転生したよ。▼どうやら村長の一人娘みたいだから、将来子供を産んで村を存続させるのが役割なんだ。▼最初は受け入れがたかったけれど、まあ人生って諦めと妥協の産物だよねってことで受け入れたよ。▼せめて結婚相手は仲良い相手がいいなぁ、と思って幼馴染と親しくしようとしたけれど、あんまりうまくいかなくって。▼その子は村を出ちゃったんだ。▼しょうがな…


総合評価:12405/評価:8/連載:38話/更新日時:2026年06月25日(木) 06:03 小説情報

データを集めて拳で殴るダンジョン配信(作者:佐遊樹)(オリジナル現代/冒険・バトル)

計算によれば、この一撃で敵を仕留めきれる確率は30%……しかし、足りない分は気合と大声でカバーする!!!いくぞ!!!ウオオオオオオオオオオ!!!←『もうデータキャラやめろ』『そもそも確率が足りてなさすぎるだろ』『で、なんで敵は死んでんの?』▼大体こういう感じのお話です


総合評価:16238/評価:8.72/連載:29話/更新日時:2026年05月29日(金) 20:22 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>