ノーザンロード港湾。
普段なら、商船や輸送船が行き交うその港に、今だけは異様な緊張が満ちていた。停泊しているのは、商船ではない。
青葉。古鷹。衣笠。
そして、金剛、比叡、霧島、榛名。
「会議で聞いた時点で馬鹿げてるとは思ったが、実物を見ると余計に馬鹿げてる」
「必要だったので」
塩宮は淡々と答えた。
「普通ではないことを実行しなければ、私たちは勝てません」
そこで、塩宮は一度だけ言葉を切る。
「……違いますね。普通に戦っても、勝つこと自体はできたでしょう」
Yo! 曽郎が片眉を上げる。塩宮は港に並ぶ艦隊を見た。
「ですが、それでは被害が大きすぎます。勝った後に何も残らない勝利では意味がない」
「だから、戦場に河を作って、艦隊を突っ込ませるってか」
「はい」
塩宮は頷いた。
「普通ではない勝ち方をします」
Yo! 曽郎はしばらく黙っていたが、やがて低く笑った。
「やっぱお前も闇鍋だよ」
「闇鍋、ですか」
「あぁ。イベントがあるたび、その中心で問題を起こす最高にいかれた奴らって意味だよ」
Yo! 曽郎は金剛の艦首へ視線を向ける。
「闇鍋はいつもそうだ。普通の奴ならまずやらねぇ。ブレーキを踏んで止まる。でも、お前たちは違う。まるで最初からブレーキがねぇ。勝つためなら地獄にまで突っ込むし、勝てるならなんだってやりやがる」
塩宮は何も言わなかった。Yo! 曽郎は続ける。
「少なくとも俺は、お前ならもっと堅実な方法を取ると思ってたんだがな」
塩宮は少しだけ目を伏せた。
「そうしないと、あの人たちにはついていけませんから」
Yo! 曽郎は一瞬だけ塩宮を見て、それから鼻で笑った。
「言うじゃねぇか」
その声には、呆れと、わずかな感心が混じっていた。
塩宮はそれ以上、言葉を返さなかった。
「連合は、寄せ集めです」
代わりに、静かにそう言った。
「方針も違う。利害も違う。戦い方も違う。ひとつの旗の下に集まっているように見えて、実際はそれぞれが自分の目的を持って動いている」
「分かってるじゃねぇか」
Yo! 曽郎は低く笑う。
「だからこそ、今日は意味があります」
塩宮は続けた。
「この艦隊は、連合が初めて同じ方向へ進むために編成した艦隊です。小さくても、寄せ集めでも、今日この瞬間だけは、全員が同じ戦場を見ています」
Yo! 曽郎は少しだけ黙り、それから口角を上げた。
「小さいなりに、この世界で初めての連合艦隊だ」
「はい」
塩宮は頷いた。
「なら、最初の命令は景気よくいかねぇとな」
Yo! 曽郎は踵を返し、艦橋へ向かった。
「全艦、出航準備」
Yo! 曽郎の声が、金剛の艦橋から港全体へ響いた。
その号令に、艦隊が一斉に動き出す。青葉、古鷹、衣笠では先行隊形の最終確認が行われ、甲板上の人員が手早く配置についた。比叡、霧島、榛名の艦橋にも灯が入り、魔導通信の光が艦橋窓に淡く反射する。旗艦金剛では、錨鎖の確認を終えた乗員たちが声を張り上げ、機関部からは出力安定を知らせる報告が上がった。
「青葉、古鷹、衣笠、先行隊形を維持。拘束砲弾の装填準備を怠るな。比叡、霧島、榛名は金剛に続け。突撃隊形に移るまでは艦列を崩すんじゃねぇ」
「青葉、
「古鷹、
「衣笠、
「比叡、
「霧島、
「榛名、
各艦から返る声が、魔導通信を通じて艦橋に重なる。Yo! 曽郎はそれを聞きながら、前方を見据えていた。まだ、旧砦跡へ続く道は存在しない。海の先にあるべき水路も、艦隊が走るべき河も、今はまだどこにもない。だが、この艦隊はその存在しない道へ向かって進むために作られた。
Yo! 曽郎は短く息を吐いた。
「総司令」
「はい」
「出すぞ」
塩宮は一度だけ、静かに頷いた。
「お願いします」
その返答を聞いたYo! 曽郎は、艦橋の前方へ視線を戻した。ノーザンロード港湾に停泊する七隻の艦は、まだ港に繋がれている。だが、甲板の上ではすでに乗員たちが配置につき、機関部からは低い唸りが響き、魔導通信には各艦の準備完了を告げる声が重なっていた。
Yo! 曽郎は口角を上げる。
「出航用意。全係留索解け、揚錨始め」
命令が走った。
金剛の甲板で係留索が外され、岸壁と艦を繋いでいた最後の線が解かれる。続いて、重い錨鎖が軋みを上げ、水面の下から錨が引き上げられていく。比叡、霧島、榛名、青葉、古鷹、衣笠からも同じように報告が入り、港に並んだ七隻の艦が、ひとつずつ陸から切り離されていった。
「錨、上がりました!」
その報告を聞いたYo! 曽郎は、低く笑った。
「連合艦隊、抜錨だ」
短い言葉だった。
だが、その一言で、艦橋の空気が変わる。
「両舷前進半速。港外へ向かう」
金剛の船体が、ゆっくりと動き出した。港の水面が大きく揺れ、巨大な艦影が岸壁から離れていく。比叡、霧島、榛名がそれに続き、青葉、古鷹、衣笠も先行隊形を取るために進路を合わせた。ノーザンロード港湾に出航を告げる鐘が鳴り、見送りに集まった者たちは歓声を上げるでもなく、ただ息を呑んでその光景を見つめていた。
港湾を抜けた先に、広い海が開ける。
Yo! 曽郎は前方を見据えたまま、次の命令を下した。
「針路、旧砦跡近海。両舷前進強速、面舵十五度。進路を固定せよ」
「針路、旧砦跡近海。両舷前進強速、面舵十五度!」
復唱が艦橋に響く。
旗艦金剛が舵を切り、艦隊全体が緩やかに進路を変えた。港湾を抜けた先に広がる海へ、七隻の艦影が一列に滑り出していく。
Yo! 曽郎は低く言った。
「行くぞ。まだ存在しねぇ戦場へ」
その号令を合図に、連合艦隊はノーザンロード港を後にした。外海へ出た途端、港湾の内側では抑えられていた波涛が艦底を叩き、旗艦「金剛」の巨躯が重く軋む。後続の比叡、霧島、榛名、そして先行する青葉、古鷹、衣笠が白波を蹴立てて続き、七隻の艦影は港を離れるほどに隊列を整えながら、旧砦跡近海へ向けて進んでいく。
敵影はなく、海はまだ静かだった。だが、甲板では術式弾の最終点検が続き、魔法職たちは艦の回路へエンチャントを同調させ、航海長たちは針路を厳密に突き合わせていた。進む先に水路はない。旧砦跡へ至る河など、現世のどこにも存在しない。それでも艦隊は、最初からそこに道が拓かれているかのように、迷わず進路を北東へと向けた。
「針路維持。隊列を崩すな。青葉、古鷹、衣笠は先行位置を保て。比叡、霧島、榛名は金剛に続け。突撃隊形への移行はまだだ。今走っても、突っ込む場所がねぇ」
Yo! 曽郎の声が魔導通信を通じて各艦へ届くと、短い了解の声が次々と返った。余計な言葉はない。艦隊に乗る者たちは、自分たちがこれから向かう先にまだ道がないことを知っている。それでも誰も問い返さなかった。道がないなら作る。作られた瞬間に走る。そのためだけに、この艦隊は編成されている。
やがて、見張り台から声が上がった。
「旧砦跡近海、指定座標に接近!」
艦橋の空気が変わる。Yo! 曽郎は前方から目を逸らさず、片手を上げて速度を落とす合図を出した。金剛の機関音がわずかに変わり、それに合わせて後続の艦も速度を落としていく。艦隊は完全に停止するのではなく、海面の流れと船体の揺れを殺さない程度に微速で進みながら、指定座標周辺で隊列を整えた。
「全艦、減速。両舷前進微速。指定座標で隊列を整えろ。青葉、古鷹、衣笠は先行位置を維持。金剛、比叡、霧島、榛名は突撃隊形への移行準備を継続。魔法支援班、配置につけ」
青葉、古鷹、衣笠は旧砦跡の方角へ艦首を向けたまま、いつでも突入できる位置へ滑り込む。金剛、比叡、霧島、榛名はその後方で間隔を保ち、道が生まれた瞬間に加速できるよう機関の出力を調整した。艦隊の前方には、ただ海が広がっているだけだった。そこから旧砦跡へ続く河などない。戦艦が走るための水路もない。ただ、地図上で選ばれた座標だけがあり、そこに今から、世界に存在しない道を生み出す。
塩宮は魔導通信を開いた。
「渚沙さん、月詠さん。準備をお願いします」
すぐに、震えた声が返ってきた。
『うぇ……本当にやるんですねぇ……』
『ええ、やりますよ、お魚さん。ここまで来てやめる理由もありませんしねぇ』
『やめる理由はありますよぉ……失敗したら旧砦跡が沈みますし、成功しても大惨事ですし、そもそも私、またフィールドを水没させた人魚として歴史に名前を残したくないんですけど……』
『安心してください。水没させるだけなら我々が止めます』
『安心できる言い方じゃないです!』
『では、こう言い換えましょう。お魚さんが呼び寄せたものに、我々が形を与えます。あなたは入口を開く。我々はその先に、世界が認めざるを得ない道筋を刻む。それだけの話です』
月詠の声音は軽いが、その言葉の奥にある魔法の精度を知っている者ほど、笑って聞き流すことはできなかった。
「榛名」の甲板に展開された巨大な術式陣の中心に、渚沙はわずかに浮遊した状態で身を置いていた。濡れた尾びれを魔法陣の描線へと横たえ、その周囲を補助の魔法職たちが固めている。海原から奔流を呼び寄せ、旧砦跡へ続く「起点」を穿つ役目は、彼女にしか扱えぬ大魔法だった。渚沙は両手を胸の前で固く握りしめている。その顔色は白く、明らかな緊張と恐怖を物語っていたが、魔法陣へと流入する魔力はすでに限界を超え、甲板の空気を物理的に震わせるほどの圧を放ち始めていた。
その頃、月詠マキナは「比叡」の甲板に立っていた。遠く離れた別の艦にいる渚沙と、見据える座標だけを共有して。艦のシステムとは一切干渉し合うことなく、比叡の甲板上に白銀の術式陣が静かに展開する。マキナがこの場を足場に選んだのは、渚沙が開く魔力の起点へ、己の術式を寸分の狂いもなく同調させるためだ。マキナは不敵に微笑み、視線を旧砦跡の座標へと固定する。二人を繋ぐのは距離ではない。ただ、重なり合う意志の精度だけだった。
金剛の艦橋で、Yo! 曽郎が魔導通信越しのやり取りを聞きながら、深く眉間に皺を寄せていた。
「おい、塩宮。あれで本当に大丈夫なんだろうな」
「大丈夫です。渚沙さんはああ見えて、厄災の二つ名で呼ばれたフィールド破壊のプロです。月詠さんは、この世界でも五本指に入る
「そいつは重畳なこった」
Yo! 曽郎は一瞬だけ言葉を失い、それから低く笑った。
その笑いが消えるより早く、榛名の甲板から渚沙の声が響いた。
「潮汐の檻は壊れた」
震えを含んだ声だった。だが、その一節が海へ落ちた瞬間、大気が凝固する。さざ波は不自然に静まり返り、深海で巨大な質量が身じろぎしたかのような圧が、肌を刺した。渚沙の魔力は術式陣を満たし、海原へと伸びる不可視の導線を伝って、まだ見ぬ起点へと流れ込んでいく。
「これより海は膨張し、生ける大地を貪り喰らう。押し寄せるのは、天をも圧する無慈悲な暴力」
怯えた本人の声色とは裏腹に、紡がれる言葉は純然たる災害のそれだった。艦隊の前方で海面が大きく陥没し、次いで内側から爆発的に盛り上がる。それは波でも潮流でもない。形を持たない膨大な水塊が、彼女の声に応じて現実へとせり上がっていた。
「街を、森を、文明を、ただの塵として呑み込み、深い底へと還元する」
補助の魔法職たちが、必死の形相で術式陣の外縁を補強する。誰も口を挟めない。今この詠唱を遮れば、制御を失った質量がこの海域ごと全員を呑み込むことを、全員が本能で理解していた。
「逃れる術なき蒼き終焉よ、大地の全てを覆い、平坦なる水面へと書き換えよ」
海が膨張していく。戦艦・榛名の船体が悲鳴を上げ、甲板の空気が重く沈んだ。渚沙が引き起こそうとしているのは、水路の確保などではない。彼女の魔法はただ、地表を海の底へ沈めるための災厄そのものだった。だからこそ、月詠が必要だった。解き放たれた純粋な破壊に指向性を与え、艦隊が進むべき道へと変える調停者が。
「地表の全てが海の底へと沈むまで、この渇きは止まらない」
詠唱の結びとともに、艦隊の眼前で海が大きく陥没した。旧砦跡へと至る水路の入口──だが、その境界はあまりにも荒々しく、危うい。ただ呼び寄せられただけの暴力は、進軍路となる前に、周囲のすべてを濁流の底へ引き摺り込もうとしていた。
その瞬間、比叡の甲板から月詠マキナの声が重なった。
「見事ですよ、お魚さん。では、その災厄に形を与えましょう」
白銀の術式陣が音もなく広がる。月詠の声は穏やかだったが、その魔力は渚沙の呼び出した災害へ触れるのではなく、世界そのものへ指をかけていた。
「詠え」
それは願いではなかった。
「満ちては欠け、欠けては戻り、狂い狂え」
命令だった。
「蒼海を統べるものよ、地を這うものよ、汝らに選ぶ自由は与えられない。現世のものは従え。常世のものは湧き上がれ」
渚沙の魔法が呼び出した水の圧が、月詠の術式に触れた瞬間、暴れようとしていた方向を失った。いや、失ったのではない。次にどう動くべきかを、外側から決められた。海は荒れ狂うためにあるのではなく、旧砦跡へ向かって進むものとして、無理やり意味を与えられていく。
「抗うものの喉を灼き、既存の輪郭を消し去れ。ここに在るべき世界の姿は、我らの意思が形作る」
金剛の艦橋で、Yo! 曽郎が目を細める。
「……あれは、渚沙の魔法を操ってんのか」
「いいえ」
塩宮は前方を見たまま答えた。
「月詠さんは、渚沙さんの魔法を従えているのではないのです。あの理不尽な破壊を、この世界の新たな『理』として、現実に認めさせているのですよ」
「滅茶苦茶だな」
「はい」
塩宮は否定しなかった。
月詠の詠唱は続く。
「境界よ、ずれろ。座標よ、歪め。深さよ、意味を失え。淀んだ凪に、奔流の結末を刻み、道なき未踏に、踏破の歴史を刻め」
艦隊の前方で、世界が軋んだ。まだ誰も通っていない場所に、通ったという記録が刻まれる。まだ存在しない道に、存在したという結果が押しつけられる。渚沙の魔法によって呼び出された水は、その結果へ向かって流れ込むしかなくなっていく。
「乾きは彼方へ退け。低きものは奈落へ沈め。高きものは平らに削れ。平らなるものは奈落へ裂けよ。世界よ、今この瞬間だけ、己が秩序を喪失せよ」
海が動いた。
ただ膨れ上がるのではない。ただ溢れるのでもない。旧砦跡へ向かって、一本の見えない線に沿うように水が奔り始める。渚沙が呼び寄せた災害に、月詠が方向を与え、形を与え、世界へ強制的に承認させていた。
「因果は我らの後に続き、順序は我らの前に傅け。起こり得ぬ事象を『必然』として処理せよ。在り得ぬ位相を『現実』として承認せよ」
艦隊の前方に、道が生まれようとしていた。
「我らは異を唱える。此処に何も無いという、世界の虚無に。ゆえに、世界を書き換えよ。ゆえに、我らに付き従え。ゆえに、すべてを黙殺しろ」
月詠はそこで、わずかに笑った。
「これは願いではない。これは祈りではない。これは冷酷なる命令である。理よ、折れろ。事象よ、従え。世界よ、我らの魔力にひれ伏せ」
渚沙の魔法が最大まで膨れ上がる。月詠の魔法が、その一点へ寸分の狂いもなく重なった。
「満ちよ、満ちよ、満ちよ」
そして、最後の一節が落ちる。
「──蒼月の三日月となりて、戦場を貫け」
その一節が落ちた瞬間、世界が軋んだ。
渚沙が呼び寄せた膨大な水の質量と、月詠が叩きつけた理不尽な事象干渉が、同一の座標、同一の目的、同一の瞬間に重なる。別々の艦で、別々の術式陣から放たれた二つの魔法は、互いに干渉し合うのではなく、一つの現象として噛み合った。水はただ溢れるのではなく、世界はただ裂けるのではなく、そこに本来存在しないはずの進軍路を成立させるための戦場改変として、システムに認識されていく。
特殊条件を確認しました▼
起こり得る事象の干渉を確認しました。
魔法の再編を行います。
『
その表示が走った直後、艦隊の前方で海が割れた。
いや、割れたのではない。
海が、そこへ至るべき形を得た。
旧砦跡へ向かって、大地を抉るように水が走る。乾いたはずの地形が沈み、低い場所が呑まれ、高い場所が削られ、何もなかったはずの戦場へ、一本の巨大な流れが刻み込まれていく。轟音が遅れて届いた。大地が悲鳴を上げ、空気が震え、旧砦跡の方角で土煙と水飛沫が同時に立ち上がる。
榛名の甲板で、渚沙が大きく息を吐いた。
『……できちゃった』
比叡の甲板で、月詠マキナが満足げに目を細める。
『ええ。見事ですよ、お魚さん』
『褒められてる気がしないです……』
『褒めていますとも。旧砦跡を丸ごと沈めずに済みましたからねぇ』
『基準が怖い!』
魔導通信に渚沙の悲鳴が混じる中、金剛の艦橋では、Yo! 曽郎が前方を睨みつけていた。
艦隊の前に、道がある。
今までは存在しなかった道。
会議室の地図上でしか語られていなかった狂った作戦が、今、現実として海の向こうに伸びている。まだ流れは荒い。完全に安定しているとは言えない。だが、走れる。少なくとも、青葉、古鷹、衣笠を先頭に叩き込み、その後ろから金剛型を突入させるには十分だった。
Yo! 曽郎は、獰猛に笑った。
「道はできたな」
「はい」
塩宮が頷く。
「作戦、第二段階へ移行します」
「上等だ」
Yo! 曽郎は魔導通信を開き、全艦へ声を叩きつけた。
「青葉、古鷹、衣笠。先行しろ。防御魔法を張られる前に食い込め。徹甲弾、装填準備」
『青葉、
『古鷹、
『衣笠、
三隻の改装重巡が、生まれたばかりの流れへ艦首を向ける。
「金剛、比叡、霧島、榛名は後続。先行艦が穴を開けた瞬間、最高速度で中央をぶち抜く」
『比叡、
『霧島、
『榛名、
金剛の船体が震えた。
機関が唸りを上げる。
旧砦跡へ向かって刻まれた新たな戦場を前に、連合艦隊は一斉に加速を始める。水飛沫が艦首を叩き、白波が左右へ裂け、七隻の艦影が本来あるはずのない河へと滑り込んでいく。
Yo! 曽郎は艦橋から前方を見据え、低く言った。
「水があるなら、そこは俺たちの戦場だ」
旗艦金剛が進む。
その後ろに、比叡、霧島、榛名。
前方には、青葉、古鷹、衣笠。
旧砦跡に生まれた大河の上を、連合艦隊が走り出した。
戦場は、作られた。
そして今、艦隊はそこへ突入する。
戦艦はいいぞぉ、艦隊はいいぞぉ