戦略級統合兵装艦:青葉・
その
それは、通常の
二番主砲塔の
青葉は、もう大破した重巡ではなかった。
だが、安定した新造艦でもなかった。
五隻分の残骸と機能、そして戦友たちの
システム警告が、恋葉の視界を埋め尽くす。
プレイヤーを
複数艦艇由来の
通常火器管制外の
恋葉は、そのすべてを視覚に捉えていた。
見えていた、というより、
それでも、恋葉は青葉の艦首に立ち続けていた。
立っていること自体が、
そして金剛が止まれば、比叡と霧島が
「猫将軍、
艦橋からの声が、
「……だい、じょうぶ、です」
声になったかどうか、自分でも分からなかった。
青葉の艦長の声が、すぐに割り込む。
『恋葉殿、あなたはトリガーのことだけを考えてください。
『弾着観測員、光学および魔力測距の誤差修正!
『方位盤との動的同期を切るな! 濁流によるローリングの
『反動制御、
『二番主砲塔、バーベットを現方位でロック! 古鷹系統の油圧フレーム、負荷分散開始!』
『衣笠装甲材、スタビライザーへ回せ! 船体を捻じ切らせるな! 右舷へ偏るトルクを左舷バラストで相殺しろ!』
『霧島系統、
すべての
傷だらけの乗員たちは、彼女の神経系へ流れ込む莫大な
だが、それでもバレルの旋回速度だけでは追いつかない。
ヘカトンケイルの巨腕は、金剛へ向けてすでに振り下ろされている。濁流は荒れ狂い、
青葉の艦長は、その致命的な物理限界を一瞬でジャッジした。
『砲塔だけで
艦橋の空気が、破裂しそうなほどに張り詰める。
『操舵、面舵二十! 機関、右舷ボイラー出力上げ、左舷を絞れ!
『面舵二十! 右舷出力上昇、左舷絞ります!』
『──本艦、
戦略級統合兵装艦:青葉・
艦首が水を裂き、艦尾が流れに押され、蒼白いプラズマを纏った船体が半ば滑るように回頭していく。物理限界を無視した
『艦首角、あと十二度!』
『
『方位盤、
『
青葉が回る。
砲塔が追う。
恋葉の
金剛へ向けて無慈悲に振り下ろされる、ヘカトンケイルの巨腕。
その腕の付け根。
比叡、霧島の主砲撃で砕けた、外殻の隙間。
荒れ狂う濁流の水煙。大気を焦がす砲煙。すべてが歪み、揺れ、二重にぶれていた。
それでも、ただ一本の
『
『
『
『砲身熱量、
『艦長、主砲──撃てます!!』
青葉の艦長は、
『──恋葉殿』
その声は、狂気と怒号にまみれた戦場の中で、不思議なほどに静かだった。
『青葉は、撃てます』
恋葉は、感覚の失われかけた震える指で、赤熱する槌を肉体に喰い込ませるように握り直した。
足元から、
目の前には、金剛の
ここで
ここで
恋葉は、
そして、静かに、だが戦場のすべてを従えるように告げる。
「──ワレ、アオバ」
その
次の瞬間、五隻の執念を結線した超高出力の
──ズ、ドォォォォォンッッッ!!!
凄絶な蒼白い砲光が、濁流の川面を文字通り真っ二つに裂いた。舞い上がる数千トンの水煙を貫き、大気を焦がす砲煙を焼き払い、金剛へ肉薄していたヘカトンケイルの巨腕へ向けて、一直線に突き進む。
Yo! 曽郎が目を見開いた。
塩宮が息を呑んだ。
榛名の艦橋で、誰かが声を失った。
そして──。
蒼狼の放った決戦の一撃が、ヘカトンケイルの巨腕の付け根へ、ミリ単位の狂いもなく
轟音。
濁流の上で、世界が白く弾けた。
ヘカトンケイルの巨腕が根元から大きく跳ね上がり、金剛へ振り下ろされるはずだった軌道が、強引にねじ曲げられる。砕けた外殻が黒い火花を散らし、魔力で構成された肉が裂け、巨腕は金剛の艦橋をかすめる寸前で横へ逸れた。
金剛の艦体が、巨腕の巻き起こした暴風に殴られる。
艦橋の窓が軋み、計器が跳ね、乗員たちが手すりにしがみつく。だが、金剛は止まらなかった。比叡と霧島が命を削って開けた突撃針路を、榛名が囮となって支え、青葉が最後の巨腕を撃ち逸らした。その道を、旗艦が迷う理由などなかった。
「……助かった、だと?」
Yo!曽郎が一瞬だけ目を見開く。
だが、次の瞬間にはその顔から驚きが消えていた。
「金剛、針路そのまま! 今の一撃で道が開いた、止まるな!」
「
「機関科、出力維持! ボイラーを落とすな!」
「前方、ヘカトンケイル腕部密度低下! 突撃路、開いています!」
金剛が濁流を裂いて進む。
巨腕は逸れた。だが、ヘカトンケイルはまだ倒れていない。背後では百腕の巨人が苦悶するように咆哮し、失われかけた腕の断面から黒い魔力を噴き上げている。それでも、金剛の前にあった最大の障害は一瞬だけ消えた。ほんの数秒。だが、その数秒があれば、旗艦は前へ出られる。
「連盟本陣、視認!」
観測員の声が、
濁流の先、崩れかけた旧砦跡の深奥。そこには、前線指揮官の篝火が死に物狂いで立て直した第二防衛線と、召喚士たちが維持する術式陣が剥き出しになって見えた。
そこへ、金剛が肉薄する。激しい砲煙の尾を引き、濁流の白波を容赦なく叩き割り、圧倒的な
塩宮は、呼吸を忘れたように息を呑んだまま、その光景をただ見つめていた。
「届く……これで、すべてを終わらせる最後の一手が打てます」
「ああ」
Yo!曽郎は、不敵に低く笑った。
「届かせるために、自分の身を盾にして沈んだ奴らがいる。……なら、届かせねぇわけにはいかねぇだろ」
金剛は、一歩も止まらない。
その一方で、
「……っ」
声にならない息が漏れる。
視界が白く染まっていた。
青葉の
散っていったすべての残光の余波が、
頭蓋が割れるような痛みが走る。
限界負荷を告げる耳鳴りが止まらない。
足元の甲板が急速に遠ざかり、荒れ狂う濁流の轟音も、主砲の残響も、
「猫将軍!」
誰かが、必死に叫んだ。
恋葉の膝が、がくりと折れかける。だが、
喉の奥から、沸騰するような熱いものが込み上げる。
次の瞬間、恋葉の口元から、鮮血が飛び散った。
「猫将軍、
「
「
「なら一部だけでも
艦内の動揺した通信が激しく重なる。
恋葉は、血の混じった息を深く吐き出しながら、強靭な戦闘執念で顔を上げた。白くぶれる視界の端では、金剛が砲煙を引き裂き、連盟本陣へ向かって直進している。青葉の一撃は、確かに届いた。金剛は圧殺されなかった。比叡と霧島が命に代えて抉り開けた
それだけで、戦術的には十分だった。
「……まだ」
恋葉が、掠れた声で呟く。
近くにいた泥まみれの乗員が、必死に叫んだ。
「猫将軍、喋るな! 今の一撃だけで、
「まだ……終わって、ない、です」
恋葉は、感覚の薄れた指先で、再び赤熱する神の槌を握り直した。
ヘカトンケイルは、未だ濁流の上に立ち塞がっている。主腕を弾き飛ばされ、物理構造を激しく崩しながらも、百腕の巨人はその無数の傷口から不気味な黒い魔力を噴き上げ、再び再構成の術式を集束させ始めていた。金剛は本陣を捉えた。だが、ヘカトンケイルが完全に沈黙しない限り、後続の榛名も、そして満身創痍の青葉たちも、再びその巨腕の網に捕まり、圧殺される。
青葉の艦長が、静かに通信回線を繋いだ。
『恋葉殿、今は撃たなくていい』
恋葉の視界へ、艦橋からの
『金剛は前へ出ました。あなたの一撃で、突撃路は完全に開いている』
「……はい」
『ですが、ヘカトンケイルはまだ生きている。次に撃つなら、腕を削るだけでは足りない』
艦長の声は、恐ろしいほどに落ち着いていた。
『奴の
恋葉は、手の甲で血に濡れた口元を乱暴に拭った。
濁流の向こうで、金剛が連盟本陣へ迫っている。背後では、ヘカトンケイルが再び無数の腕を鎌首のように持ち上げようとしている。
そして──戦略級統合兵装艦:青葉・
恋葉は、小さく頷いた。
「……次は、完全に、止めます」
その声は、消え入りそうなほどに掠れていた。
だが、青葉の艦長は、その不屈の意思を確かに聞き取った。
『了解。では、操舵はこちらで引き受けます。恋葉殿は、次の一撃、その
金剛は、連盟本陣の喉元へ突入する。
青葉・
泥水と血の嵐が吹き荒れる濁流の上で、蒼い狼は、まだ次なる咆哮を放つ準備をしていた。
ヘカトンケイルが、動いた。
撃ち逸らされた主腕の断面から禍々しい黒い魔力が噴き上がり、再構成されかけた不完全な異形の肢体が、泥濘の濁流を強引に掴み取る。
百腕の巨人は、金剛へと伸ばしていたヘイトの一部を、明確に青葉・
「敵腕部、急速再構成!」
「主腕、本艦へ指向! 軸線を合わせてきます!」
「側面から榛名へも触肢展開! 本艦と榛名、挟撃されます!」
限界に達した青葉の
艦長は、泥水と火花が吹き荒れる前方を冷徹に見据えたまま、短く、鋼鉄のごとき声で命じた。
「榛名へ繋げ」
『榛名、通信開きます!』
すぐに、ノイズまみれの魔導通信の向こうから、榛名の凛とした声が返ってきた。
『こちら榛名、戦闘能力健在。青葉、そちらも蒼狼の名は伊達ではないですね』
「こちら青葉。──榛名、ヘカトンケイルの正面で注意を引き付けられますか」
『可能です。主砲斉射と副砲連射で引き付けます。ですが、本艦の装甲では長くは持ちません』
「長く持たせる必要はありません。こちらが側面を削り、中枢へ届く隙を探ります。榛名は、その無数の腕をこちらの射線へ流してください」
『了解。青葉、こちらの操艦を合わせます』
榛名が、激しい水飛沫を上げて濁流の上で大きく針路を振った。
高速戦艦の艦体が濁流の白波を蹴立て、ヘカトンケイルの正面へ斜めに切り込む。三十六センチ主砲が火を噴き、
その
「操舵、
「
「敵腕部、完全に榛名へ集中!」
「今だ。二番主砲、敵右側腕群の
「二番主砲、
青葉・
その機動は単なる出力任せではない。艦長が濁流の
「
「猫将軍へのリンク、最小限のまま!」
「装填班、手動補助! 自動装填のタイムラグを埋めろ!」
「反動制御、
乗員たちのコールが重なる。
恋葉は艦首で、赤熱する槌を支えに立っていた。顔色は白く、唇にはまだ血が残っている。それでも、彼女の視線はヘカトンケイルから一ミリたりとも外れていない。
艦長が、通信越しに静かに告げる。
「恋葉殿、撃たなくていい。見ていてください」
「……はい」
「
恋葉は小さく頷いた。
青葉・
その、ほんのわずかな「判断の遅れ」を、高速戦艦の牙が容赦なく撃ち抜いた。
『榛名、
巨腕の付け根で、空間を抉るような大爆炎が上がる。
「青葉、続け」
艦長の、冷徹な命令が落ちる。
「撃てぇ──ッ!」
青葉・
それは先ほどのような超高出力の
二十センチ砲弾が、狙い澄ました腕の関節部へ深く食い込む。
不気味な黒い魔力が派手に裂け、ヘカトンケイルの巨躯がわずかにバランスを崩した。
「弾着──命中!」
「敵腕部、動作遅延を確認!」
「
「……まだ足りない」
艦長は即座に、冷徹に言った。
「榛名、右へ振ってください。青葉は外側から回り込みます」
『了解』
高速戦艦の巨躯が濁流を蹴り、右へ大きく針路を振る。それに合わせて、青葉・
二隻が互い違いにヘカトンケイルの周囲を
それは、もう恋葉ひとりの力ではなかった。
青葉艦長が読み、乗員たちが動かし、榛名が合わせ、恋葉が最後の牙を温存する。
濁流の上で繰り広げられる、極限の
「敵腕部、
「青葉、榛名、敵側面を押し込みつつあります!」
「ヘカトンケイル、
その報告を聞きながら、艦長はヘカトンケイルの動きを見続けていた。
腕をいくら砕いても、止まらない。関節を撃っても、
百腕の巨人を巨人たらしめている絶対の核。
「腕ではない」
艦長が、低く呟く。
「本体は、もっと奥だ」
恋葉が、かすかに顔を上げた。
その瞬間、榛名がヘカトンケイルの
『榛名、仕掛けます』
榛名の艦首から、太い
鋼鉄の牙が濁流を裂き、ヘカトンケイルの
川面が艦体の質量に削られる。
巨大な白波が半円を描く。
榛名が、ヘカトンケイルの側面へ向けて
『榛名、全砲門、ゼロ距離一斉射』
通信機から響くその声は、恐ろしいほどに静かだった。
次の瞬間、八門の三十六センチ砲が至近距離で同時に咆哮した。
大爆炎が、ヘカトンケイルの外殻を物理的な圧力で内側から引き剥がすように捲り上げる。密集していた無数の腕の根元がまとめて吹き飛び、黒い魔力の肉が裂け、再構成中の術式が一瞬だけ完全に乱れた。ヘカトンケイルが天を衝く咆哮を上げる。怒りか、痛みか、それとも初めて自らの核へ届きかけたことへの本能的な拒絶か。巨体が大きく傾ぎ、裂けた外殻の割れ目から、黒い魔力とは違う、鈍い赤の光が覗いた。
青葉の艦橋で、観測員が叫ぶ。
「内部に規格外の高密度魔力反応!」
「位置、ヘカトンケイル胸部奥!」
「
艦長は、静かに、深く息を吸った。
「──見えたな」
恋葉の視界にも、その鈍く脈打つ赤い光が完璧に映っていた。
ヘカトンケイルの
百腕の巨人を動かし続ける、真の本体。
五隻分の遺志を宿した青葉・
だが、
「
「砲身熱量、まだ
「艦体全体に致命的な歪みが発生!
「猫将軍への
限界に達した艦橋に、計器の悲鳴とともに警告が飛び交う。
当然の物理結果だった。先ほどの一撃で、五隻の残骸を無理やり繋ぎ合わせた青葉・
それでも、今、撃たなければならなかった。
榛名の身を挺したゼロ距離一斉射によって、奇跡的に露出したヘカトンケイルの中枢術核(コア)は、長くは剥き出しになってくれない。こじ開けられた外殻は、すでに不気味な黒い魔力によって高速再構成され、塞がり始めている。うねる腕の群れが裂け目を覆い、肉とも術式ともつかない異形の物質が傷口の縁から狂気的な速度で増殖し、あの鈍い赤の光を再び暗黒の中に包み隠そうとしていた。
「破孔が閉じます!」
「コア反応、完全に遮蔽されます!」
「
青葉の艦長は、泥水に濡れたガラスの向こう側、前方を冷徹に見据えたまま、通信機へ命じる。
「榛名、今すぐ離脱してください! そこはもう、本艦の砲撃に巻き込まれる!」
『了解。ですが、
榛名は、アンカーを支点にしたあの無茶な船体ドリフトの反動で、ヘカトンケイルの
艦長は即座に
「青葉、
「二番主砲、左側腕群へ!」
「副砲群、榛名周辺の触肢をすべて叩き落とせ!」
「撃てぇ──ッ!!」
青葉・
それは決定打ではない。だが、榛名へ絡みつこうとしていた無数の腕の数本を強制的に撃ち払い、離脱するための一瞬の
『こちら榛名、完全離脱します!』
「よし。青葉、
艦長の声は、冷徹なほどに静かだった。
「操舵、
「
「砲塔、
「方位盤、
「猫将軍へのリンク、最小限を維持!
青葉・
恋葉は、ただあの鈍い赤い光だけを見つめていた。
視界は白く霞んでいる。限界負荷を告げる耳鳴りは止まらない。口の中にはどろりとした鉄の味が広がり、槌を握る指先の感覚はすでに麻痺して消失していた。だが、あの赤い光だけは、
腕ではない。
外殻でもない。
あの光る中枢を完全に断たなければ、ヘカトンケイルは絶対に止まらない。
「……ただの、砲撃じゃ、足りない」
恋葉が、掠れた声で呟いた。
限界値のコンソールにしがみつく近くの乗員が、驚愕に息を呑む。
「猫将軍……?」
「撃ち抜くだけじゃ……奴はまた
恋葉の声は消え入りそうなほどに弱かった。
だが、その言葉には、理屈を置き去りにした職人としての奇妙なほどの確信があった。
青葉の艦長が、通信越しに静かに、だが強固に問う。
『──できますか』
恋葉は、感覚のない両手で、赤熱する神の槌をもう一度固く握り直す。
その瞬間、青葉・
大口径砲の砲撃でありながら、それは空間を裂く剣閃
砲口から放たれるのは、撃ち抜くためではなく、ただ「斬る」ための一撃。
「これは、砲撃じゃない」
恋葉は、
「戦場を……根こそぎ変えるための一撃」
真紅の
通常火器管制外の術式変質を確認しました▼
収束砲撃の形状変化を確認しました▼
斬撃属性への変換を検出しました▼
恋葉は、その警告のすべてを完全に切り捨てた。
青葉の艦長が、短く、最後の引き金を引くように告げる。
『──
榛名が命に代えてこじ開けた、ヘカトンケイルの肉の裂け目。その奥に、今だけ不気味に覗くヘカトンケイルの
狂気的に再構成される外殻が完全に閉じるまで、彼らに残された時間は──あと僅か数秒。
恋葉は、神代の槌を握る両腕に、自らの全魂を込めた。
そして、物理法則をねじ曲げて産み落としたその「異形の一撃」に、真の名前を与える。
「──マルミアドワーズ」
青葉・
「マルミアドワーズ、撃てぇ」
次の瞬間、世界のすべてを白銀に変える蒼白い閃光が、荒れ狂う濁流を真っ二つに引き裂いた。
それは、先ほどのように圧倒的な質量で巨腕を弾き飛ばすための砲撃ではなかった。放たれた光は、細く、鋭く、不気味なほど冷徹に、濁流の水煙を物理的に切り裂き、大気を遮る砲煙を跡形もなく焼き払いながら──ヘカトンケイルの裂けた外殻の最深部へと、一直線に滑り込んでいく。
鈍く脈打っていた赤い
刹那。
戦場に轟き渡っていた、百腕の巨人の天を衝く咆哮が、完全に途切れた。
青葉の放った蒼白い剣閃は、ヘカトンケイルの
輝く核を。
網の目のように巡る術式回路を。
不条理な
ヘカトンケイルという神話級召喚体を物理現実に成立させていた『
そして──赤黒い濁流の上で、難攻不落を誇った百腕の巨人の巨体が、左右に綺麗に割れながら、音もなく崩れ落ちていく。
恋葉は、手の甲で血に濡れた口元を乱暴に拭った。
すべての
一度。
もう一度。
赤黒く荒れ狂う濁流の上に、世界の理を書き換えた重厚な金属音が響き渡る。
そして恋葉は、左右に両断されて崩れ落ちていくヘカトンケイルを冷徹に睨み据えたまま、喉が裂けるほどの凄まじい声で叫んだ。
「──青葉、勝鬨ッ!!」
その魂の咆哮に、限界を迎えていた青葉の
次の瞬間──
『応ッ!!』
『ワレ、アオバ!!』
『──
泥水と血煙が吹き荒れる濁流の上で、五隻の遺志を宿した戦略級統合兵装艦:青葉・
神話級の百腕の巨人は、完全に崩壊した。
連盟本陣への
戦略級統合兵装艦:青葉・
大破した青葉が、古鷹、衣笠、比叡、霧島の残したものを受け継ぎ、戦場で再び吠えた姿です。
壊れた艦を直したのではなく、沈んだ艦、傷ついた艦、なお戦場に残った艦のすべてを背負って、まったく別の形へと生まれ変わった青葉。
その中枢に立つのは、白い軍服を纏った猫将軍、彩音恋葉。
五隻分の出力を束ね、青葉の乗員たちに支えられながら、彼女はヘカトンケイルの中枢術核を斬るための一撃を生み出しました。
その名は、マルミアドワーズ。
砲撃であり、剣閃であり、蒼狼が戦場へ刻んだ勝鬨でもあります。