ダンジョンに魔虚羅がいるのは絶対に間違っている 作:パクチーダンス
第一話 誕生と出会い
その『怪物』の誕生は、『
『
一体何故、何のために生まれてきたのか。
結論は分からない。
人類にも、神々にも分からない。
様々な『奇跡』と『神秘』が重なった結果としか言えない。そう考える他、
『
そもそもの話、
『彼』とも呼べるかもしれないが、しかし『彼』と呼ぶにはあまりにも異形なるその姿。
身長は目視で3〜4mの巨大な大きさで、筋骨隆々な肉体。白っぽい肌。上半身は裸。下半身には白い腰布を巻いており、黒い袴のようなものを履いている。また、右手には剣が握られている、のではなく埋め込まれている?
ここまでの説明なら、まだ『人』と呼んでもギリ許されるかもしれない。
問題はその頭部。本来あるべき目と鼻がなく、そのあるべき部分からは翼のようなものが生えている。何を喋るわけでもなく、ただ剥き出しの白い歯を見せ、コチラに微笑んでいるよう。髪はない。その代わりに、動物の尾のようなものが後頭部から生えている。
明らかに不気味なデザイン。極め付けは天使の輪、のように見える法陣が頭上で浮遊している。
後、先程は
曖昧な表現ばかりだが、
やはり考えるだけ無駄だ。結論は分からない、だ。
あぁ、そろそろ
では、これから
何故なら、あの『怪物』を他の
あぁそうだ。肝心なことを忘れていた。今、君たちが頭の中で浮かんでいる『怪物』とこの『怪物』は少し違っているところがある。
それは、意思疎通ができるということだ。
言葉を話すことができるのかって? さぁ、それは分からない。口があるから多分喋れるとは思うけど、
無口と言うよりかはシャイなんだと思う。
なんにしろ、あの『怪物』はその無口故、色々と誤解される場面が多々あるだろうから、許してやって欲しい。
ほら、今だってあのロキ・ファミリア達から、敵意を向けられているのだから。
『
誕生を祝福する者は、この場には誰もいなかった。
『…………………………』
その『怪物』はまず周囲を見渡した。
訂正しよう。見渡したところで全てが闇。ここが何処で、何なのかは『怪物』には分からなかった。
『………………』
『怪物』は耳をすませた。声が聞こえてくる。四方から鳴り止まぬ、獲物を求める『生物』の声が。
冒険者が一人で深層に放り出されたなら、精神を病み、発狂し、自ら自殺してしまうだろう場面であるのにも関わらず、『怪物』はとても冷静だった。
まずは、この暗闇に慣れる必要があった。
ガコンッ
法陣が回転した。それが意味するところは、
『………………』
視界がとてもクリアに見えた。明かりがあるわけでない。今までの暗闇が嘘のように地面が、壁が、ハッキリと『怪物』の目には映し出されたのだ。
『怪物』は暗闇に『適応』したのだ。
過酷なこの環境に『怪物』はほんの数秒で『適応』した。目が見えるようになった『怪物』が次にとった行動は、
『………………』
歩くことだった。ズンッ ズンッ と確かな重量を地面に感じさせながら、『怪物』はただひたすらに歩いた。『怪物』はこの場所を『知る』必要があった。
何事も、全ての生き物は『知る』ことから始まり、そして『適応』するのだ。
歩く。歩く。ただひたすらに、歩く。
すると前方に、生きている『生物』を発見した。赤く光らせたこの目は、真っ直ぐ『怪物』を捉えていた。
ガルゥゥゥゥゥ!!
その『生物』は『怪物』よりも小さく、四本の足で立っていた。そして『怪物』の足元に噛みついた。明らかに噛み付かれた箇所から赤い血を流しているが、『怪物』は酷く冷静にそれを観察していた。
『………………………』
ガコンッ
そしてしばらくして『適応』が始まった。
『怪物』はその『生物』を『敵』と認識して、右手の剣で突き刺し薙ぎ払った。地面に叩きつけられた『敵』はこの生命活動を失い、灰となって消えた。
『…………………』
『怪物』は突き刺した時、何か固いものに刺さった感触を感じ取った。それが何なのかはまだ分からない。しかし、それも時間の問題だ。
ヴヴウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
聞こえる。『敵』の声が聞こえてくる。『怪物』はコチラに向かってくるのを感じ取る。
ニタァ
ここには沢山の『敵』がいる。何度でも試せばいい。そして『適応』すればいい。
『怪物』は自ら『敵』の方へと歩みを進めていく。
ガコンッ
再び法陣が回転する。一体何に『適応』したのか。
『怪物』が受けた傷が綺麗さっぱり消えていた。
「フィン、どうかしたか?」
先頭を歩くフィン・ディムナに声を掛けるロキ・ファミリアの副団長、リヴェリア・リヨス・アールヴ。先程から下を向いている彼に、心配の眼差しを向けている。
(なんなんだ、、、こ、、これは、、、)
一方のフィンは、リヴェリアの心配なぞ届いてはいなかった。自分の親指がかつてない程の疼き、痙攣していることに頭を回すのに精一杯だった。
自分達の遠征任務は終わり、これからオラリオへ帰還する際だというのに、どうしてこんなにも不安が襲ってくるのか。フィンには到底、理解することができなかった。
(一体、、何があると言うんだ、、、)
「フィン!」
リヴェリアの大声に、ようやくフィンが声を掛けられていることに気が付いた。身体を震わし、声の主であるリヴェリアへと顔を向ける。
「フィン…………何だその汗は………」
その指摘でようやく、自分が汗をかいていることにも気が付いた。
異常だ。これはおかしいとリヴェリアはフィンの容態を気に掛ける。
「フィン、一体どうしたと言うんだ」
「どうしたのリヴェリア、そんな大声出してさ〜」
「団長、大丈夫ですか?」
妹のティオナ・ヒリュテの呑気な声とは裏腹に、姉のティオネ・ヒリュテは愛しのフィンの変化に気が付き側に駆け寄る。
「フィン?」
「あぁ? どうしたんだよフィン」
他のロキ・ファミリア幹部も、フィンの様子がおかしい事に気付く。皆がフィンを囲うように集まる。
「何か、嫌な予感がするんだ………」
「!? 全隊、一旦止まるぞ!」
すぐさま後方の仲間へ指示を飛ばすリヴェリア。
フィンの親指の疼きは、皆の周知するところ。
危険を事前に察知してくれるその親指の疼きに、ファミリアは何度助けられたことか。
「皆、周囲を警戒しろ」
リヴェリアの一声で幹部はすぐに周囲を見渡すが、特に何もない。何度も遠征の際に通った道だ。変わったところも見当たらない。
「………何もねぇぞ」
皆の気持ちを代弁してベート・ローガがそう告げる。
「フィン、何が来るの?」
「……分からない。でも、親指が痛むんだ」
疼きに伴い、今度は親指が痛みだした。何か、ナニかが起きようとしている。フィンの不安は既に最高潮に達する。苦痛に顔を歪ませるフィンを見て、一同も不安が押し寄せる。危険信号が鳴り止まぬ中、それは突然現れる。
「!? 何か来る!」
最初に気が付いたのはアイズ・ヴァレンシュタインだった。それは偶然。何となく歩いて来た道を見ていた時、『何か』と目が合った気がしたのだ。自分達が通って来た道、その暗闇の奥から、生き物の気配を感じ取った。
すぐさま戦闘態勢へと移り変わる。すぐに獲物を抜いて、姿を現すのを待っていた。
カタカタカタカタカタ
(震えている? 私の腕が、、、、)
腕が震える。こんなの、一体いつぶりだろうか。強敵を前にした時現れるこの現象に、アイズは最大限の警戒を暗闇の奥に向ける。
「アイズ! 何か見えたの!?」
「分からない、、、でも、ナニカが、、、」
アイズが剣を向けるその先、彼らはジッと見つめていた。
「ヤベェ………」
聞こえるか分からない、小さな声でポツリと呟いたのはベート。獣人である彼の感覚、その暗闇の奥に何を感じ取ったのか。額に汗をかく。
「おい雑魚ども、もっと後ろに下がれ!」
しかしもう遅い。
「来た!」
ゾワァ
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」
明らかな異形なる姿をした
『…………………………』
『怪物』はただ彼らを見ていた。観察していた。これほどまで違う肌の色・髪の色・体格・武器。多種多様な『生物』が集まっている光景に『怪物』は興味を示していた。
彼らは『敵』なのか?
『…………』
瞳は赤く光ってはいない。戦って来た奴らと比べて体格は小さい。翼はない。鋭利な爪もない。強靭な顎もない。自分と同じ、二足歩行をしている。もしや、自分と同じ種なのだろうか。
(何故、、、何故、襲って来ないの!?)
アイズは待っていた。目の前のモンスターが自分に襲いかかってくるのを。今もカタカタと音を立てて震える腕。彼女の瞳孔は大きく開かれ、瞬き一つ許さない状況。しかし、一向にそれが起こらない。
(何をしている、、早く、、来い!!)
(ダメだ! 絶対に手を出してはいけない!!)
フィンはそう判断した。コイツは危険だ。
今まで会ったどのモンスターよりも、どの階層主よりも。コイツだけは、絶対に。
「皆、絶対に先に手を出してはいけないよ…………」
こんな状況に陥っているのに、いやこの状況だからこそか。団長として、フィンはとても落ち着いた優しい口調で、そう指示した。
恐怖に駆られる団員達は、フィンの声で冷静さを何とか取り戻そうとするが、それよりも先に『怪物』が動いた。
ズンッ
一歩、動いた。たったそれだけで、冒険者達は息が止まりそうになった。それが一番顕著に現れたのが、『怪物』に一番近くにいたアイズだった。
「ーーーッ!?」
彼女は息を止めていた。足が震え出した。
恐怖に駆られ、脈拍がどんどん上がっている。
(来い来い来いこいこいこいこいこいこいこい!!)
いつだ? いつ襲って来る? そんな不安と恐怖でおかしくなりそうだった。
『………………………………………………………』
『怪物』は彼女の表情を観察していた。酷い顔だ。何故そんな顔をしているのか。理由は自分だろうと『怪物』は理解した。
そして、一体何を思ったのだろうか。
その『怪物』は、わざわざ
アイズの真横を通り過ぎず、努めて壁沿いに歩いて通り過ぎたのだった。
それは『配慮』。
苦しそうだったから。怖がっていたから。可哀想だったから。自分がそうさせてしまったという
『謝罪』。それを行動に移しただけのこと。
通り過ぎて行く。ベートを、ガレスを、ティオネを、ティオナを、リヴェリアを、そしてフィンを。
そして、アイズ達が帰る道のりを『怪物』は歩いていく。すると何を思ったのか、『怪物』は振り返ってフィンを見た。
(!?)
ビクッと身体を震わせる。『怪物』に目はついていない。しかし自分を見ていると、そう自覚させられたフィンは、目を逸さず『怪物』と向き合った。
『…………………』
この小さな『生物』は声を発していた。指示を出していた。するとこの小さな、自分よりも小さいこの『生物』が、この中で一番偉いのだと『怪物』はそう判断した。
しかしこの『生物』も怯えている。『怪物』はフィンから視線を切って、再び歩き始めた。そして、その姿が見えなくなるまで、アイズ達は動く事はできなかった。
「ーーっぷはぁ!」
『怪物』の姿が見えなくなると、フィンは思いっきり息を吸い込んで、そして深く吐いた。バクバクと心臓の鼓動音がうるさい。
「何なんだ、、、何なんだあれはぁ!?」
「ベート! 静かにしろ!」
ベートの叫びに激怒したのはリヴェリア。今の声で戻ってきたらどうする、という旨でベートを睨みつける。
「こ、怖かったぁ、、、」
ティオナがペタンと地面に座り込んだ。それに続いて「もう大丈夫だ」と感じたラウル・ノールド率いる第二軍メンバーも地面に膝をつく。
「アイズさん!」
アイズに駆け寄るレフィーヤ・ウィリディス。アイズはその呼びかけに応じず、ただ下を向いていた。
(私、、モンスターに、情けをかけられた、、、)
あの行動の理由を、アイズはすぐに理解した。壊れやすい品を丁重に扱うような、そんな気遣いを。
「あれは……モンスターだったのでしょうか?」
「……………………分からない」
レフィーヤの疑問にアイズは答えられない。
けど、あれは人類ではない。もっと別の何かだ。
「フィン………」
「………あぁ、ここで立ち止まってはモンスターの餌だ。皆、次のセーフティポイントまで急ごう」
フィンが立ち上がると、団員達も呼応するようにゆっくりと腰を上げた。だが問題がある。
「フィン、アイツがまたいたらどうする?」
「……………」
ベートの問いに、フィンは答えられずにいた。今から自分達は、あの『怪物』が通った道を歩かなくてはならない。再び会う確率が高い。
あの『怪物』、レベル7はくだらないとフィンは思う。いや、更にもっと上だと予想される。アレが外に出て来たら、一体どれだけの被害が…………。
「どうして襲って来なかったのかな?」
「私達を、敵とすら認識してなかったとか?」
姉妹で考察し合っているのを耳にし、フィンは思考に耽っていた。
(あの『怪物』に目はついてなかったが、明らかにコチラを観察しているように思えた。圧倒的な存在感はあったけど、向こうに敵意は感じられなかった…………)
(普通のモンスター、とは違う。アレには知性があった。新種の、しかも知性のあるモンスター。いやそもそも、あれはモンスターなのか………)
「フィン」
「!」
リヴェリアに肩を掴まれて、フィンはハッと顔を上げる。
「……すまないリヴェリア」
「いいんだ。私達もまだ混乱している状況だから」
落ち着け。自分は団長なのだから。団員の顔を一人一人見て、フィンは団長として指示を下す。
「隊の変更を指示する。
ガレスは最前列だ。後ろにティオナとティオネ、
ベートはガレスに代わって最後尾。
………ガレス、もしヤツが襲って来たら死ぬ気で攻撃を受け止めてほしい」
「了解だ、フィン」
仲間の壁役として自分の役割を理解するガレス。
あの『怪物』の攻撃を受け止められるかは分からないが、やるしかない。
「言うまでも無いが、気を緩めるな。
安心するのはホームに着いた時だ」
無事に家に帰ること。
それが今のロキ・ファミリアの唯一の願いだった。
『怪物』の誕生にいち早く気が付いた者、神がいた。
「ぬぅ……!?」
「どうしたウラノス?」
神ウラノス。人類に初めて『神の恩恵』を授け、オラリオを創設した最初の神で『都市の創設神』と呼ばれる神。自身はギルド本部の地下の祭壇の『祈祷の間』でダンジョンに祈祷を捧げ続け、彼の神威でモンスターの地上への進出を抑え込んでいる。
「『何か』がダンジョンで生まれたようだ」
「『何か』とは、モンスターの事か?」
そう問いかけるのは、ウラノスに仕える魔術師。
実年齢800歳を超える、骸骨の姿、名をフェルズ。
「モンスター、かもしれない。
しかし、これまで感じたことの無い気配だ」
「『
「……分からない。それも違う気がする」
「貴方でも分からないことか、神ウラノス。
もしや、ダンジョンが牙を向いたと?」
「………………」
ウラノスは沈黙する。
答えられる材料を持ち合わせていない。
ダンジョンから生まれ落ちた『何か』。何故こんなにも胸騒ぎがするのだろうか。
「何も起きないことを、願うばかりだ」
ウラノスは今日も、祈りを続ける。
その後、ロキ・ファミリアは何事もなく帰って来ることができた。あの『怪物』とは会うことは無かった。
(それどころか、モンスターと交戦する回数も極端に減っていた。あの『怪物』の仕業だろうか………)
なんにせよ、今考えても結論は出て来ない。フィンはそこで考えるのをやめた。
「皆んなおっかえり〜! 待っとったでぇ〜!」
いつもの如く、門では神ロキが待ち構えていた。それをファミリアの幹部はヒョイヒョイと避けるが、ロキは避けられた先にいたレフィーヤに抱きついた。
「おかえりレフィーヤ! 相変わらず大きいなぁ!」
「キャーー!? ロキやめてぇー!?」
抱きついた拍子に、胸部をこれでもかと弄るロキに、レフィーヤは杖で頭を殴る。いつもの日常に戻ったと、団員達はホッとする。
「イ、イタタ、、頭割れるかと思ったで」
「ロキ、その辺にしろ。後、話したいことがある」
帰って来たばかりなのにフィンの真剣な表情、空気を読んでロキもふざけた態度をやめる。
「何があったんや、フィン」
細い目のロキは、そのまぶたを少し開かせる。
「新種のモンスター、と言っていいのかな、、、
まだボク達も分からないんだ」
「…………そうか。なら話は中で聞こか。
けど改めて、皆んな無事でよかったわ〜!」
主神の安堵の表情に、自分達も笑みが溢れた。
『怪物』がロキ・ファミリアと再会しなかったのには理由がある。それは、ダンジョンの階層を繋ぐ吹き抜けた穴に自ら身を投げたからだ。
何故、そんなことをしたのか。呼ばれた気がしたからだ。微かに歌が聞こえて来たのだ。『怪物』はその歌に導かれるように穴に落ちた。
何層まで落ちたのかは『怪物』には分からない。着地の際、二本の足に大きな衝撃が降りかかったが、全くの無傷であった。
そうして歩き続けると、歌が大きくなる。近い。
『怪物』は大きな広間に辿り着いた。そして小さな泉、そこから顔を出している
「ア、アナタハ、同胞ナノ……?」
『…………………』
『敵』に誘い込まれたと思った『怪物』は殺意を放ったが、人魚はそれに怯えて岩の陰に隠れてしまった。そして、先程あった『生物』達と同じような言語を発していた。『敵』ではない?
「ワ、ワタシ、マリィ。アナタハ……?」
自分は誰かと問われている。しかし、『怪物』には自分が何者なのかを答える術が無かった。
『……………………』
「モシカシテ、コトバ、ハナセナイ?」
ガコンッ
法陣が回転し、『怪物』は『適応』した。
『……ダレ?……………ワタシ、ハ……ダレ……?』
『怪物』は言葉を話した。
「ツイテキテ。同胞ニ、アワセテアゲル」
人魚は泉の中へ入って行った。自分と同じ種がいるのか。その言葉に『怪物』は従い、泉の中へと入り後に追った。
「今回の遠征、
ボクたちは見たことの無い生き物を見た」
会議室にはフィン、ガレス、リヴェリアの古参勢。
そして主神のロキがいた。
「ほう、生き物ね。モンスターとは呼ばんのか?」
「さっきも少し言ってけど、モンスターと呼んでいいものか分からないんだ。ボクには、モンスターとは全く異なる『何か』だと思う」
「…………どんなヤツなん?」
『怪物』の姿は目に焼き付いている。帰りの道中、絵が上手い団員に描いてもらっていた。それを見たロキの第一声は、
「何やこれ? 二本足で立っとるやん!
それに顔ごっつ怖!? てか上半身裸やん!」
「……ロキ、頼むから真面目にしてくれ」
諭すリヴェリアの顔は遠征帰りも相まってか、とても疲れている。
「ゴメンゴメン。ほんで? コイツと出会して、皆んなはどうなったん?」
「恐怖で動けなかったよ。逃げたくても、その場に黙っていることしか出来なかった」
フィンは親指をさすりながら事実を淡々と述べる。
ロキは驚愕する。ここに描かれているヤツは、そこまでの強者なのかと。オラリオ屈指の、レベル6の三人がそこまでの表情になるなんて。
「…………ギルドにはもう言ったんか?」
「いや、まだだ。団員達にも口にするなと伝えてる」
すぐに情報規制に入るフィンに、ロキはいい判断だと首を縦に振った。
「……分かった。
ウチは他の神達に探り入れてみるわ」
「頼んだよ、ロキ。ボク達もコイツの目撃情報がないか調べてみるよ」
「こんなヤツおったら絶対に話題に上がっとるで。今まで冒険者が出会さんかっただけか、あるいは……」
口封じに、殺されたか。
「では何故、私達は生かされた? あの時は本気で死を覚悟した」
殺されると思ったが、自分達は殺されなかった。
「何にせよ、この場では結論は出てこない。今は皆んなの命があって良かったと思うべきだ」
「……そうだな」
ロキ・ファミリアと『怪物』の出会いは、まだ物語の始まりの序章の、ほんの一部に過ぎなかった。
「リド! 同胞ミツケタヨ!」
「オウ、デカシタゾ マリィ!
コンドノナカマハ スゲェー デケェナ!」