剣と魔法のラジオ塔   作:渡久地 耕助

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お久しぶりです。

小説家になろうにも投稿しています。


新コーナー 偽勇者サトーの冒険

 4月3日

 時刻は深夜

 

 ()()()()()()を起動し、灯りを消して暗闇だけの世界に音だけが響き渡る。

 

 『オールナイトコロシアム』

 

 深夜の競技場を貸し切って、歌ったり、トークを繰り広げたのが由来のラジオ番組。

 昼間は競技者や選手の血と汗と涙が地面に染み込み、観客の声援が飛び交う場面で収録やライブが行われる人気の深夜番組だ。

 

 番組の流れは、オープニング、メールの紹介、コーナー、ゲスト、エンディングという編成だ。

 

 タイトルコー ルと共にお馴染みのテーマソングが流れ始めた事を確認しながら、ベッドに横たわり、軽快なオープニング曲が流れ、春の夜風を涼しく感じながら毛布にくるまる。

 

 週末の夜中に、ラジオなんて店や車中でも聴くが、それが流れるのは予報や交通、商売に関するニュースに、流行の楽曲に著名人のトークだ。

 

 だが、今は深夜。

 

 真面目でお堅く、口うるさい聖職者や学者、貴婦人が寝静まった頃にラジオから流れるのは、

 昼間に流れたお上品な話ではない。

 

 紳士淑女の皆様に聞かせられない深夜はお下品な笑いや、ジョーク、ちょっぴりエッチな番組も流れたりする。

 闇の中、人目の無いところでは精一杯、羽目を外すのはラジオも一緒だ。

 

 皆が寝静まる時間は、闇の中で流れるラジオも同じく羽目を外してお下品な笑いや歌が流れるのだ。

 

 ()()()()()()自前のラジオで、リアルタイムに深夜ラジオを聴く事が俺の趣味なのだ。

 

 きっと今頃、紳士淑女の皆様もこの放送を聴いているはずだ。

 その姿を思い浮かべるだけでも笑いが込み上げてくる。

 

 それに、真っ暗な部屋の中。どこか遠くの闘技場で行われている会話が流れ、、どこか遠くの知らない誰かと同じ、時間を共有しているという感覚はなんとも不思議な気分になる。

 

 オープニングトークが始るとお笑い芸人二人が彼らの身近に起きた話を面白おかしく紹介し、彼らの日常が他人ごとなのにどこか身近に感じてなんとも愉快な時間が流れる。

 

「そろそろかな」

 

 俺がこのラジオをリアルタイムで聴いている理由。

 

「では、続いてのコーナー 偽勇者サトーの冒険」

 

 これだ。

 

「早くも3週目 10週続けば正式なコーナーとして採用されますが」

 

『偽勇者サトー。 姑息だがどこか憎めないサトーくんの今週の出来事を紳士淑女紳士淑女(リスナー)が教えてくれるという事なんですが』

 

 姑息だが憎めないサトーの今週起きた出来事というお題を視聴者が考え、メール、ハガキに送って、パーソナリティーが読み上げるこのコーナー。

 

 視聴者は、自分がやらかした悪戯や体験談を偽勇者サトーがやりましたと報告したり、真剣に偽勇者サトーの冒険を想像して報告したりしている。

 

 普通の英雄と異なって偽勇者、姑息、だが憎めないというキャラなので毎週、面白い冒険譚が視聴者から送られてくる。

 

 

「ラジオネーム さる高貴な令嬢 偽勇者サトー様が 父の秘密の本棚を私と一緒に発見。

 ふくよかなお胸の貴婦人やメイドばかり登場していたのでお母さまが大激怒しました。」

 

 多分、これ、お嬢様が父親(巨乳派)のエロ本見つけたんだろうな。

 そして、つつましいお胸のお母様にばれたと。

 きっとメイドもつつましいお胸で占められていると予想できる。

 

「その後、お父様に悪いと思ったのか、自分のコレクションの本を一冊、そっと置いていきました。』 

 

『迷惑! だけど憎めないかな?』

 

『お父様には、懲りずにまた集めるんでしょうかね』

 

『勇者サトーの、探索スキルのレベルが上がった 勇者サトーのエロ本が1冊減った』

 

「ふふっ」

 

 つい笑ってしまう。

 

 そう。俺はいわゆるはがき職人としてメールを投稿しており自分のラジオネームが読まれる事を心待ちにしているしがない一般男子だ。

 

 客観的に見るとなんともほの暗い感性をしている気がする。

 

『続きましてラジオネーム』

 

 どきどきしながら読まれるラジオネームに集中する、つぎだ多分、つぎこそ読まれる――予感が

 

『ラジオ人間さん「きたぁ!」 

 

 今週の勇者サトーさんですが、

 因習村の巫女さんを“また”外に連れ出したそうです。

 

 きっかけは、村の外で突然鳴り響いた「バリバリバリッ!」という爆音。

 

 村人たちは「魔物の襲撃だ!」と大騒ぎ。

 しかし実際は、サトーさんが仕掛けた“爆竹陽動作戦”だったとか。

 

 巫女さんは「サトーさん、また嘘つきましたね」と言いながら、なんだかんだ嬉しそうに外へ。

 

その五分後、村人総出で追跡が開始され、

「サトー!!またか!!」の声が山に響いたそうです。

 

来週も二人の外出イベント、

なんとなく“良い予感”がします。』

 

「いやサトー、お前また因習村行ってんのかよ。毎週デートのために騒ぎ起こす勇者いる?勇者の使い方、間違ってんだよ。」

 

「いやでもさ、巫女さんちょっと嬉しそうなんでしょ?それもう“因習村版ラブコメ”じゃん。村人だけが毎週ガチで走ってんのよ。」

 

「村人かわいそうだろ。“魔物だー!”って全力で走ってんのに、実はサトーの爆竹だぞ?」

 

「爆竹で村を動かす勇者、聞いたことねぇよ。魔王軍より迷惑だよ。」

 

「しかも巫女さんも毎週“今日だけですよ”って言うけど、絶対楽しんでるよな。」

 

「いやもうそれデート成功してんのよ。サトーの姑息さ、愛されてんのよ。」

 

「てかラジオ人間、毎週これ投稿してくるけど、お前どこで見てんだよ。」

 

「現場にいるだろ絶対。サトーのストーカー説あるぞ。」

 

 なんだか、ラジオ人間に対して誹謗中傷を受けているが、自分のハガキが読まれたので寛大な心で許してしまう。

 

 ちなみに因習村は外界との通信や情報流通が極端に制限され、古い慣習が支配する閉鎖集落だ。

 村の存続や利益の為に特定の血筋や能力者を拘束し、労働や儀式に従事させる事がある。

 外部には伝統文化の村として偽装し、内部の異常性を隠蔽するのが特徴だ。

 

 先週の偽勇者サトーは養蚕と温泉が売りの村に滞在しているそうだ。

 

 外界との通信が制限された山奥の村

 忘れられた女神が祀られ、巫女もいる。

 村の名産が温泉と養蚕。 

 

 因習村で巫女という事から、おそらく異教か邪神が封印された村だろう。

 それを鎮める巫女や神官がいる村と予想できる。

 そんな村に巫女とデートしたいからとあの手、この手で連れ出す勇者サトー。

 

 ふふふ、今度はどんな逃避行を繰り広げてやろうか、次週も勇者サトーの冒険が楽しみだ。

 

「ところで偽勇者サトーが爆竹で村を動かすなら、本物のドラゴンスレイヤーは何で動かすんだ?」

 

「そりゃもう、ドラゴンだろ」

 

「いや動かすなよ!」

 

 この後、サトーの報告例が何通も読み上げられた、姑息だが結構愛されているようだ。

 笑ったのはラジオネームから教会関係者や、貴族令嬢やお堅い騎士と思われる人たちのハガキが読まれた。

 自分達の嫌いな上司や権力者相手に偽勇者サトーが成敗したり、ちょっかいを掛けるという内容だった。

 

 手法は笑うような姑息な方法だったが海千山千の権力闘争を続ける令嬢や聖職者の体験談や愚痴を面白おかしく紹介された。

  

 そんなサトーの冒険もこのあと、来たゲストの歌手とその新曲が流れているうちに、俺もうつらうつらと眠りについた。

 

 『災害警報、災害警報 ドラゴンが観測されました。直ちに避難してください。』

 

 ラジオから、そんな警報の鐘の音、遠くからドラゴンの地鳴りの様な咆哮が聞こえてきた。

 

 




主人公 自前のラジオをもつ少年 剣と魔法の世界の住人 次回に名前がようやく出る。

偽勇者サトー ラジオの新コーナーに出てくるお題 姑息だが憎めないキャラ 架空のキャラ 主人公より先に名前が付いた。 
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