TS転生失敗作ちゃんが頑張る話   作:cannolo

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初めて小説を書くので温かい目で見てもらえるとありがたいです。


TS転生トラック

 

周りに迷惑ばかりかけてきた人生だな、と我ながら思う。

 

高校を卒業してすぐ、俺は田舎を飛び出した。

 

こんな田舎で一生を終えたくない。俺は都会で生きるんだ。

そんな、中身のない言葉だけを抱えて。

 

両親は止めた。もっとちゃんと将来を考えろ、と。

けれど当時の俺には、それが鬱陶しくて仕方なかった。

 

売り言葉に買い言葉。

気付けば取り返しのつかない暴言まで吐いていた。

 

結局、喧嘩別れみたいな形で家を出た俺は、東京に住む従兄弟の家へ転がり込んだ。

 

彼はとても優しい人だった。

 

だから俺は際限なく甘えてしまった。

何者かになる努力もしないまま、俺はその優しさに寄りかかって生きた。

 

昼まで寝て、適当に飯を食って、漫画を読んで、眠くなったらまた寝る。

そんな生活を繰り返していたある日、とうとう従兄弟の堪忍袋の緒が切れた。

 

普段穏やかな人間の怒声は、嫌に腹へ響く。

怒鳴られて、何発か殴られて、俺は家を追い出された。

あの時初めて、優しい人ほど怒ると怖いのだと知った。

 

それから就職活動をした。

とはいえ、取り柄も資格もない高卒だ。まともな仕事なんてなかなか見つからない。

薄っぺらい求人誌をめくっていた時だった。

 

面接なし。寮あり。福利厚生充実。

 

今の俺でも拾ってくれそうな会社を見つけた。俺は喜んでその仕事に飛びついた。

そしてそこは、笑えるくらいのブラック企業だった。

 

上司は怒鳴る。

先輩は蹴る。

 

数少ない同僚たちは、気付けば次々に辞めていった。

病んで実家へ帰ったらしい、という話だけ聞いた。

 

俺も何度も辞めようと思った。

 

けれど帰る場所がなかった。

 

両親とはあの日以来まともに連絡を取っていない。

従兄弟には散々迷惑をかけた手前、合わせる顔がない。

 

友人なんてものも、気付けばいなくなっていた。

 

だから逃げられなかった。

 

いや、逃げ方が分からなかった、が正しいのかもしれない。

 

そうして何年もの時が過ぎた。

 

日々の癒やしは、安い給料で買ったヒーロー漫画と睡眠だけ。

そんな人生だった。

けれど、それも今日で終わる。

 

会社へ向かう道を歩きながら、俺はバッグの中の辞表をそっと握る。

 

先日、意を決して久しぶりに実家へ電話をかけた。

震える指で番号を押して、情けない声で「ごめん」と言った。

 

両親は怒らなかった。

 

むしろ、電話越しの俺の声を聞いて、心配そうに名前を呼んだ。

 

透也、貴方とまた話せて嬉しい。

 

仕事のことは帰ってきてからしっかり休んでから考えればいい。

 

その言葉を聞いた瞬間、涙が止まらなくなった。

 

情けなくて、申し訳なくて。

それでも、嬉しかった。

 

だから決めたのだ。

 

この機会を無駄にせずに、ちゃんと生きよう、と。

 

地元へ帰ろう、真面目に働こう。

 

今まで返せなかった恩を、少しずつ返していこう。

 

旅行が好きな両親をお金を貯めて旅行へ連れていくのもいいかもしれない。

従兄弟にも、ちゃんと謝って今まで受けた恩を返そう。

 

そんなことを考えていると、不思議なくらい足取りが軽かった。

 

空は青くて、風は涼しくて、世界が少しだけ、優しく見えた。

 

だから。

 

本当に、油断していたのだと思う。

視界の端、横断歩道を歩く少女の姿が見えた。

 

スマートフォンを見ている。

イヤホンもしているのか、周囲をまるで見ていない。

 

その向こう。

 

信号を無視するような速度で、トラックが突っ込んできていた。

 

「おい!」

 

叫ぶ、だが少女は気付かない。

 

まずい。

そう思った瞬間には、身体より先に頭が止まっていた。

助ければ俺は死ぬかもしれない。

 

せっかく、やり直せるのに。

帰れるのに。

両親に親孝行だって、まだ何一つできていないのに。

 

誰か他の人が助けるかもしれない。

少女だって、轢かれても運良く助かるかもしれない。

 

そんな言い訳が、頭の中をぐるぐる回る。

 

けれど。

 

もしここで見捨てたら。

 

俺は胸を張って帰れるのだろうか。

 

ただいま、と笑えるのだろうか。

 

──次の瞬間には走り出していた。

 

足がもつれる、肺が痛い。

 

それでも無理やり身体を前へ投げ出す。

 

少女を突き飛ばした。

 

けれど安堵する暇はなかった。

 

見上げた先には、巨大なフロントガラス。

 

眩しいヘッドライト。

 

迫る轟音。

 

そして次の瞬間、今まで味わったことのない衝撃が全身を貫いて俺の意識はそこで途絶えた。

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