四葉からは逃げられない   作:シャケナベイベー

17 / 18
深珠に好きな人ができたと聞いた時の周りの反応

龍郎→好きな人ができた?良いねぇ……え、一般人?うおおおおお!!!!(五体投地の後に深夜と共に秘蔵のワインを開ける)

深夜→良い深珠?好きになった子がいるなら何が何でも手放しちゃ駄目よ絶対に何があってもそれに無茶をするような子なら縛ってでも引き止めなさいあっちょっ真夜離し──(真夜に首根っこ掴まれて引き摺られた)

晴夜、達也、深雪、弘一、真夜→深珠が幸せそうでニッコリ

真由美→幼馴染が幸せそうで何より。その事でからかったら蹴りが飛んできたのでビビった



お久しぶりです
プロットが消し飛んで萎えまくってたので沖縄編を短縮します(ブチギレ)


愛は立証されるのか?

 何があったのか晴夜たちに聞いてみても『自分で見たほうが早い』の一点張り。達也でさえ口を閉じて目を逸らすのだから余程の何かを見たのだろう。

 

「考え事?」

 

 隣から聞こえた声に意識を戻す。深夜が怪訝そうに首を傾げていたので「何でもないさ」と返しておいた。

 

「嘘ね。その顔は何かあった時の顔よ」

「ええ……?」

 

 困惑の声を上げる。そんなに俺は分かりやすいのかと頬を触っていたら深夜が堪えきれないとばかりに吹き出す。

 

「……笑うなよ」

「ごめんなさいね。だってあまりに可愛らしいんだもの」

 

 良い笑顔を浮かべる深夜に龍郎がたじろいでいる横で、『まーたやってるよこの人…』と黒羽家当主の黒羽貢が四葉当主を呆れた目で見つめていた。良いぞもっとやれ。

 

「貢くん、そんな顔してないで助けてくれたりしないか?」

「はっはっはっ、自ら炎に飛び込む愚は犯しませんとも」

「それは遠回しに俺に死ねと言ってる???」

 

 妻の従弟の裏切りに絶望する龍郎はしかし、そんな暇など与えぬとばかりに深夜に手を万力の如き力で締め上げられた。

 

「私がいるのに他の人と話すの?」

 

 笑顔だった。深夜は輝かしいまでの笑みを浮かべている。しかし龍郎は知っている。この時の妻は顔に出さないだけで怒り狂っているのだと。だって手が締め上げられてるし痛いし泣きそう。

 

 ここまで深夜が怒った姿を見るのは一高時代に胸にカップを乗せてタピオカを飲んでいる女子たちを見ていた時以来だ…まあ、自分が横にいるのに他の女子に気を取られたのが気に食わなかったんだろう。

 『別にお前もあれくらいはできるだろ』と言ったら殴られた。グーだった。大きさ的には問題ないはずなのに。

 

「たーつーろーうーさーん?」

「痛い痛い痛い!! ちゃんと見てる! 見てるから離してくれ深夜!」

 

 龍郎の叫びに満足したのかはたまた仕方ないと慈悲の心を向けたのか、深夜はゆっくりと、指の一本一本を丁寧に龍郎から離していった。

 

「次はないわ」

「ありがとう深夜様ホントに感謝してる最高良妻賢母愛してる!」

「………ふ、ふふ。仕方ないわねぇ」

 

 ──ちょっっっっっろ

 

 澄まし顔のまま、貢は従姉の夫に対する態度を見てそんな感想を抱いた。

 

 

 

「おや、どうかしたのかね晴夜くん?」

「いえ、何でもありません」

 

 まるで恋する乙女のような顔で母が父を引っ張って会場を抜け出す姿を晴夜は見て見ぬふりをした。触らぬ神に祟りなし、だ。

 

「それにしても先日の九校戦は実に見事だった。ご両親もさぞ鼻が高かろう」

「恐縮です」

 

 つい先日行われた九校戦に於いて、晴夜はその才能を遺憾無く発揮し、去年と同じく一高に勝利をもたらしてみせた。

 

 晴夜にしてみれば終わったあとの自身の婚約者である東雲菫の膝枕が心地良かったのでよりプラスになっているけれど。

 

 そして会話もそこそこに晴夜はグラスを手に弟妹達を探しに向かう…とはいえすぐに見つかったが。

 深珠と深雪は黒羽家の文弥と亜夜子と談笑中、達也は貢と何やら盛り上がっていた。会話を聞くにどうやら父である龍郎について話しているらしい。悪い気はしないので止める気はない。

 

「……暇だな」

 

 こうなると手持ち無沙汰である。両親は今頃近くのホテルでイチャイチャ……もとい妻から夫に対する甘やかしが始まっている頃だろう。

 穂波も達也たちを見ているだろうしお偉方と話すのも疲れた。

 

 さて、こうすると残されているのは……

 

「……菫に電話するか」

 

 婚約者の声を聞くことである。

 実家の方に帰ると言っていたから寂しくはしていないだろうが、それでも晴夜は彼女のために沖縄のお土産をいくつか包んであった…龍郎にそれを見破られて暖かい目*1を向けられたのは記憶に新しい、

 

 携帯機器を取り出し、菫の欄をタップする。

 以前、普通にメールでいいじゃんと抜かしていた同級生の千葉修次のことは殴った。馬鹿アホ僕の婚約者なんだから別にいいだろ云々…と言ったら『愛が重い』とか言われたので沈めた。

 

 そして三コールもしないうちに菫と繋がった。驚きの早さである…まるで父さんの電話に出る時の母さんみたいだ。*2

 

『どうしたの晴夜。私が恋しくなった?』

「うん、声が聞きたくなって」

 

 なぜか菫からの返答が返ってこない。電波が悪いのかと思ったが、咳払いのあとに返事が返ってきた。

 

『……ま、まあ良いわ。それで? 一体どうしたのかしら私の婚約者様は。今はご家族との旅行中でしょう?』

「うん。今は黒羽家主催のパーティに来てるんだけどやることなくなったから菫の声を聞いておきたくて」

 

 ここに弘一がいれば「流石龍郎の子供。人たらしぶりがそっくり」と笑みを浮かべそうな物言いだった。

 

 電話の向こうからは何かが倒れるような音と悲鳴、『大丈夫ですか菫お嬢様!』、『ああ! 三百年前の掛け軸がグシャグシャに!?』と阿鼻叫喚の有様が届いてきた。賑やかで結構なことだ。

 

『こ、の…女誑し! スケコマシ!』

「別に僕が好きなのは菫だけなんだが」

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』

 

 菫はどうやらお疲れらしい。あんなに叫んで取り乱すなんて聞いたこともない。

 

「菫、どうしたのさ」

『うるさいうるさいうるさい!! もう馬鹿!! 好き!!!』

「ええ……?」

 

 罵倒と好意を同時に伝えてくるという高等テクニックに晴夜は目を白黒させた。

 涼やかな夜の海風が、晴夜の頬を撫でた。

 

 

 

「もう四十なのに……」

 

 さめざめと泣く龍郎はニコニコ笑顔の深夜に膝枕されながらその白魚のような指先で髪を梳かれていた。

 

「もう婿にいけない……」

「私が貰ってるから安心していいわよ」

 

 多分そういうことではない。ないのだが深夜にとってはそういうことである。龍郎は自分のもので、自分は龍郎のものという図式がこの忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)の頭の中では出来上がっているのだ。

 

「可愛いわ、龍郎さん」

「バーーーカ!!」

 

 そんな子供染みた罵倒さえ、深夜にとっては龍郎を構成する要素に過ぎない。捕食者と被捕食者の構図みたいだと思いながら龍郎は諦めたように深夜の甘やかしに身を委ねた。

 

 

 

 

 

□

 

 

 

 

 

「……まあ、そんなものが続くわけないって分かってたけどさ」

 

 平和でいさせてくれないもんか、と龍郎は転がる大亜の兵士を蹴りつけた。沖縄に攻め込んできた大亜連合の兵士たち。それに同調するように暴れ回る一部の取り残された血統(レフト・ブラッド)…最悪である。

 しかも深夜たちと別れている時にこんなことになったものだから龍郎はとりあえず目につく大亜の連中を処理していたのだ。

 

「……舐めたマネしやがって」

 

 かつても今も、大亜にはろくな思い出がない。かつてに至っては崑崙法院とかいう馬鹿で屑な連中に散々身体を好きなようにさせられたのだ、死ねばいいのに……もういないわ。

 

「龍郎さん」

 

 と、そこに第三者の声が掛かる。振り返れば馴染みの国防軍が走ってきたところだった。彼らもまた武装しており、国防の任を果たす気概はあるらしい。

 

「非魔法師の避難は」

「全員完了しております。後は大亜軍とレフト・ブラッドの鎮圧のみかと」

「そうか…なら、このあたりは任せる。俺は家族の様子を見に向かうからな」

「護衛は……」

「必要ない」

 

 男に手を振り、龍郎はその場を離れる。

 

 しばらく歩いたところで龍郎はサングラスを外し、解眼*3を晒す。あらゆる情報が視界に映り僅かに顔を顰めるが、それらを捻じ伏せて歩を進める。

 

 しばらく歩いたところで龍郎の眼は前方に立っている人影を三つ捉えた。

 

「……避難なら手伝うが」

「あら優しいのね。嫌いじゃないわ!」

 

 三つの人影のうち、真ん中に立っていた変態巨漢が声を張り上げる。龍郎はゲンナリした。

 

「はあ…で? お前らは何だ。大亜か? レフト・ブラッドか?」

「残念やけどどっちでもないねん。けど、アンタを足止めするために立っとるっちゅうことは理解してほしいんやけど」

 

 茶髪に狐目の腰に刀を帯びた胡散臭い男が肩を竦める。だが龍郎にとっては充分な情報だった…足止め要員。つまり敵だと。

 

「無論、ヌシを倒せるなどと驕っているつもりはない…出来うる限り足止めさせてもらおうか」

「ハッ、俺に倒されるって可能性は考えてないところが傲慢だな」

 

 黒髪の古風な喋り方をする男の言を鼻で笑い、龍郎は一歩踏み出す。それだけで、場を支配する空気が龍郎に渡った。

 

「お前らに構ってる暇はないんだよ…退け」

「連れないわね。ダンスに付き合ってくれても良いじゃない!」

 

 巨漢が移動魔法で龍郎の側面に回り込み、魔法で強化した拳を叩き込む…が、それは龍郎から数センチのところでピタリと停止した。

 

「ッ、重力による攻撃の鈍化…本当に厄介ね…!」

「ぺちゃくちゃ感想を並べ立ててる余裕があるのか?」

 

 巨漢の拳を払い、逆に龍郎が拳を見舞う…が、視界の端に閃く銀がその隙を潰した。しかしそれも重力に絡め取られる。

 

「ホンマ化けもんやろアンタ!!」

「失礼だな。ただの会社員だよ」

「な訳あるかい!」

 

 狐目が舌打ち交じりにそう叫び、その隙に二人は龍郎から距離を取った。

 

「……で? そこのお前は突っ立ってるだけか?」

 

 龍郎の目が未だ動いていない黒髪の男に向く。その視線を受けて、男が口を開いた。

 

「──“剥がれろ”」

 

 その声が耳に届いた瞬間、パリン、という甲高い音が龍郎のすぐ傍から聞こえた。

 

「……重力バリアを剥がした……ああ、言霊の類か」

 

 先の言葉には不思議な力があった。古式魔法の一種だろうと当たりをつけ、笑みを浮かべる。

 

「……ちょっと。彼全然動揺してないんだけど」

「しゃーないやん。化け物やし」

「然り。しかも我の言霊をこうも容易く見破ってくるとは。我、驚愕」

「ふざけてる場合じゃないんだけど「おいそこの変態コ〇ンドー」誰が変態よ!?」

 

 龍郎が巨漢を指差す。指名された巨漢は声を張り上げるが龍郎はどこ吹く風で二の句を次いだ。

 

「──まずはお前から片付けてやる」

 

 冷酷に、涼やかに、まるで明日の天気でも告げるような軽さでそう言ってのけた魔王は、その口端を歪めた。

 

 

 

 

 後に沖縄海戦と呼ばれる出来事は、こうして火蓋を切ったのだ。

*1:
どこぞの青狸が恐竜映画の際にしていたのと同じようなもの

*2:
ギクッ

*3:
精霊の眼の亜種。模造魔法




多分次回かその次あたりで沖縄編は終わります←プロットが消し飛んだので展開を早めた作者の図
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。