青い世界に赤い世界の燃え殻一つ   作:嗚呼田鋼多

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今回からアズレンのお話が始まります。
ザイレムさんはあと2話くらいでない予定です。
どうぞよろしく。


特殊計画艦

「特殊計画艦…ですか?」

アズールレーン陣営、とくにユニオンのとある母港。

セイレーンやレッドアクシズとの戦闘の最前線の母港であり、最も戦力と資源が必要な母港。

そこの指揮官であるとある青年:アレクサンダー・アンダーソンは、自分の上官であり海軍元帥でもある、目の前に座っている人物 -リチャード・"ディック"・グレイソン -が告げた単語に違和感を感じた。

「特別計画艦ではないのですか?」

そう、彼は以前、同じような状況で説明を受けたことがある。

それが、”特別”計画艦。端的に言ってしまえば、完成しなかった、そもそも建造がされなかった艦船などを、現在の技術で再現する、というもの。

「そうだ。今回の計画は、以前の特別計画艦とは違う。」

「これまでの特別計画艦は、従来のKAN-SENとは明らかに違うが、それでもそんな馬鹿げたような性能はしていなかった。「よって、単騎でセイレーンやレッドアクシズとの均衡を揺るがすようなことはできなかった。「しかし、KAN-SENの戦闘データをかなり蓄積しなければ、特別計画艦は建造できない。「だから、今回はこの戦闘データを人工的に作成、建造を実施する。「これは特別計画艦とは全く違う計画。だから、」

「特殊…計画艦。」

特別計画艦に必要な戦闘データには、戦闘のデータだけではなく、KAN-SENの思いや考え、果ては思想までもが含まれる。それが除外される可能性があるが、今アレクサンダーに、いやアズールレーン全体に余裕はない。

相も変わらず、強大なセイレーンの脅威、日に日に戦力を増強するレッドアクシズ。

それらに対抗、果ては征服するためには、より強大な力が必要になる。

アレクサンダーは平和を好むが、場合によっては戦闘も辞さないような性格をしている。だからこそ、答えは一つ。

「わかりました。お受けします」

「そう言ってくれると思っていたよ、アレクサンダー君。これが計画の詳細を書いた書類だ。よく確認しておいてくれ。必要な資材は、後日送る。」

「了解しました。」

敬礼をして、書類を抱えながら退室するアレクサンダー。その背中を、期待と心配が入り混じった視線を向けるリチャード 。

 

 

リチャードにとって、アレクサンダーは息子や孫に近い存在だった。

アレクサンダーは、リチャードが中佐だったころに軍に入ってきた青年だ。そして、人類が突如出現したセイレーンとの今に至るまで続く長い戦いを最初から、最前線で体験し、常に新しい情報を得て、生存した稀有な人間でもある。

それらの戦績によって、今の位に立っている。

しかし、リチャードはこの昇級に疑問を抱いていた。

(何度も情報を得て生還しているとはいえ、セイレーン艦隊を撃破したわけでもない。彼と同じくらい優秀で年も上の軍人も減りはしたがまだまだいる。なのに、なぜ彼が艦隊の司令官になっているのだ?)

リチャードは勘がいい。かつてはその勘の良さで数多くの死地を乗り越えてきた。

その勘がささやく。

(この件は―――)

「―――裏がある」

その瞬間、どこからか視線を感じる。

「ーっ!!」

前線にいた時の癖で、机の中の拳銃―――マテバm2006―――を持ち、安全装置を外しながら机の下に隠れる。

(どこだ?この部屋ではない…外か?ならば狙撃…いや、私を撃って得をする人間なんていないだろう…ならば誰が?何のために?いや、今のは…窓の方から…まさか、海から?)

 

視線を感じなくなってから十分後、ようやくリチャードは身を起こす。

そして、誰もいない自室の、業務の書類しかなかったはずの机の上に見慣れない紙片が落ちているのを見つける。

(誰もいなかったはずだ。こんな紙切れ、なかったはずだ。おかしい。何か、重大なことに巻き込まれている気がする。)

そんなリチャードの予想を裏付けるように、紙片には、

『深入りしてはいけない。あなたも、軍の闇に葬られたくはないでしょう。』

と書かれていた。

「なるほどな…」

窓の外を眺めると、ちょうどアレクサンダーが書類を入れているであろう鞄を持ち、歩いていく様子が見える。

紙片を机の中のライターで燃やしながら、リチャードはアレクサンダーの行く末を心配する。

(彼は、おそらく大きな波に巻き込まれかけている。私はすでにその波に巻き込まれているだろう…それでも、彼が波にのまれず、その波を超えていけるようにするのが私の役割だろう…そのためには、)

「まずは彼の母港に資材を運搬するように指示を出さないとな」

リチャードは書類業務に身を投じた。




KAN-SENも出てきませんでしたね。
ナンカごめんなさい。
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