助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件   作:萩月輝夜

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【四葉継承編】みて叔母上のファンになりました。
なので純愛青春二次創作書きたくなったので書いてみた。

5/12文章変更しています。
主人公のスパダリ感を出してみたかったがうまく書けてなかったらご免なさい…。
一話を上げ直しているのでコメント投稿していただいた皆様申し訳ございません。



プロローグ

「……何処だ、ここ?」

 

男が目を醒ますと広がる景色は黒一色に覆われた世界であった。

夜なのか?と言われればそれは違うのはくっきりと自分の手足が日中のように見えているからだ。

 

「…………あ」

 

不思議な世界だ。夢か?と思っていると頭に、脳天に稲妻が直撃するような衝撃が走るのはここに来るまでの自分が何をしていたのかを思い出したからだ。

 

「俺、今日魔法科の映画を観に行って…途中で…」

 

不意に甦るのはここに来る前の出来事。

アニメ”魔法科高校の劣等生”の劇場エピソードである【四葉継承編】が公開されると聞いて元より原作ファンだった俺は田舎の民であるため遠方に遠征し映画館に向かっていたのだ。

ワクワクしながら向かった映画館そして上映をこの目でみると当然ながら劇場作品であるため映像のクオリティと演出、そしてキャラクターに声を吹き込む声優さんの熱演も相まって作中屈指の”熱”の入りようで見た後話へ繋がる終わり方をしていて次の【師族会議編】も楽しみしていた。

映画館で正直深雪の着替えシーンとリーナのセクシーサンタ、そして真夜叔母上のドレス姿等を見た時隣が女性客だったので少し恥ずかしかったが…それを置いておいても真夜叔母上が最高に狂ってて可愛くて…そもそも俺が元々魔法科では四葉真夜が推しであり第一印象で好きな見た目であったがストーリーで彼女が受けた仕打ちを見て正直…泣いた。そして今回の真夜が”正気の中に狂気を孕んでいる”姿は魅力でもあり悲痛な姿であった。

…俺結局アクリルスタンド三つも買ってしまったのだが。

と、それはさておき俺がここにいる理由は簡単で劇場アイテムを購入しウキウキで自宅に帰宅するために搭乗する電車を駅のホームで待っていると子供が線路に落ちそれを庇うために…といった感じだ。ここに居る、ということは自分が”死んだ”ということになる。

 

「助けた子供無事だよな…無事だと良いけど……つかあれって事故起こした場合親族が補填するんだよな。っど、どうしよう…」

 

しかし、自分が死んだ事よりも助けた子供の事と死んだ後の両親の事を心配していた。

 

”死んだ自分よりも相手や残された家族の事を心配するとは…不思議な男だ”

 

「…ッ!だ、誰だ…?」

 

この真っ黒な空間に自分以外の声が響きビックリし声のする方向へ頭を向ける。

そこには人…の輪郭がうすぼんやりした光が象られた”謎の人物”が立っていたのだ。

困惑する男を尻目に言葉を続けた。

 

”驚いた、って顔をしてるね。まぁ、その事に関して説明しようと思うんだが良いかな?”

 

「あ、ああ…」

 

フランクな物言いに困惑しながら頷く。

 

”それでは…まぁ一言で言うと俺は神様。ここはあの世とこの世の境界線上さ。質問はある?”

 

「軽くね…?でもまぁ、俺死んだのか」

 

”ああ。それはもう見事に電車に引き潰されて…”

 

…どうやらミンチより酷いことになったらしく吐き気を覚えた。既に死んでるけど。

 

「いや、もう、いい…それよりも男の子は?」

 

”君のお陰で無事さ。彼の両親が泣きながら感謝の言葉を述べていたよ。それにご遺族に関しての損害賠償は君が助けた子供の夫婦が金持ちでそっちが補填する形になったから路頭に迷うことはない。君は立派な人間だ。誇ると良い”

 

「そ、そっか…」

 

世辞ではない心のからの言葉に少しだけ気恥ずかしさを覚えた、が死んだらその名声は死後の世界までは持ってはいけないのだ。少しだけ残念に思っていると目の前の”神様”を名乗った輪郭が提案した。

 

”そこで、だ…俺は君を異世界へ飛ばし第二の人生を謳歌して貰おう、と思っているんだが…どうかな?”

 

「は…?異世界、転生?」

 

”ああ。最近流行りの【異世界転生】だ。今なら好きな世界へ飛ばしてやろう。それに転生特典もつけよう。君、そう言うの好きだろう?無双したり…例えば()()()()()()()()()()()()()()()とかな”

 

「!?」

 

異世界転生…といえばトラックに退かれるか誰かに刺されるかというある意味そんなの起きねーよ!と言うフラグで発生するレアイベントを自らが体験することになるとは思わず一瞬フリーズするが目の前の神様が告げたそのチャンスに思案する。

 

(好きな世界に転生して無双できる…って言うなら”あの人”をあの不幸から救い出せるんじゃないか…?)

 

”あの人”…昨日今日見た作品の人物で悲惨な結果を受け歪んでしまった少女の未来を変える…とんだ二次創作になりそうだが正直そんなのどうでも良いぐらいに惚れ込んだ彼女を救えるのなら…一度死んでるし生きてたときはうだつの上がらない人生だったし一度ぐらいは人助けあの人の心から幸せな笑みを見れるのなら…やる価値はあるだろう。と直ぐ様判断した。

 

「…わかった。するよ」

 

”そうかい。ではどこが良い?あまり特異な世界に向かうとギミックで殺されるからな。注意しろ”

 

神様の忠告を受けつつ淀み無く、告げた。

 

「…俺を【魔法科高校の劣等生】の世界へ。そして転生特典は…………くれ。あと可能なら彼女に釣り合う位のスペックと見た目にしてくれ。転生時の時間軸はここに…」

 

我ながら我が儘、だとは思うが命を張って…これが目的で助けたわけでは無いがこのぐらいのお願いは良いだろう。

全ての用件を告げると”神様”は愉快そうにクツクツ、と笑いを浮かべる。

 

”ククク…面白い…良いだろう。では直ぐにその世界へ転生して貰う。…だが世界の干渉が入るからその時間には居られない…目的が終われば君は物語の冒頭へ飛ばされる。良いかな?”

 

「ああ。…あの人を幸せな笑みを浮かべられるように出来るのなら大丈夫だ」

 

そう告げると”神様”はその顔に当たる部分が笑みを浮かべたような錯覚を覚えたが気のせいだった。

 

”では…転生は一瞬だ。戦い方は直ぐ様思い浮かべられるように調整しておく。いくぞ…!”

 

そう告げ”神様”は指を鳴らす。

次の瞬間に男の視界は薄暗い研究所、寝台に寝かせられた少女へ魔の手を伸ばそうとする場面を目撃し”少年”となった彼は神様より与えられた”天恵”を発動した。

 

◆ ◆ ◆

 

西暦二○六二年…台北にて国際魔法協会アジア支部主催の少年少女魔法師(マギフラフトチルドレン)の交流会が開かれていたその最中、出席者である一人の少女が誘拐される。

その少女の名は”四葉真夜”…彼女は大漢の魔法研究機関である崑侖方院に魔法人体実験の目的の為誘拐されたのだ。

 

「んんッ~~~~っ!!んんッーーーー!!」

 

薄暗い照明の光しか届かない実験室の寝台に手足を固定され猿轡を嵌められ声を上げることすら許されない彼女の視界には目元が隠れ口元がグニャリ、と歪んだ三日月にしか見えず彼女は怯えた表情で近づく男にその女性としての発展途中である華奢な閉じられた股ぐらを無理矢理開かされて女性としての喜び…そして尊厳を陵辱される未来が訪れる…()()()()

 

(…え?)

 

自分の股ぐらを開く筈だった男の手はその身体ごと吹き飛び近くに居た魔法師と研究員を巻き込み機材を破壊していった。

 

(え?…え?、一体何が…?)

 

突然の事に呆然としていると聞き馴染みのある言語が耳に入ってきた。

 

「間に合った…待ってて。今拘束を外す」

 

「え…?」

 

安堵するような少年の声は混乱し不安な自分へ落ち着きを取り戻す音色であった。

その事に気を取られていると拘束を外し猿轡を外してくれた。

心配する声色を聞けば自分と同じような年頃の少年だと理解する…がその風貌はこの危機的状況下であっても真夜の視線を釘付けにしてしまうほどに整った顔立ちだった。

 

「……ッ大丈夫?まさか…何処か怪我したのか…!?」

 

呆けていた事で「怪我をしているのか?」と慌て声を掛けられたのに気が付き我に返る真夜。

 

「ッは、はい…大丈夫…あの…貴方は…?誰、なの…?」

 

しかし同時に何故彼が助けてくれたのかが理解できず困惑する。目的はなんなのか、と。

前髪の隙間から覗く濃い…紫色と深紅の(オッドアイ)は先程の男達のように邪悪さなど無い、自分を本当に案じている優しさが感じられた。

が問いかけられると少し困ったような素振りを見せた後返答した。

 

「自己紹介は後だ。それよりも早く脱出しましょう。今の騒ぎでここに居る連中が集まってきてるみたいだ。さ、手を…」

 

「…あっ」

 

そう言って手を伸ばすが私はこの状況下に置かれ人を信用できなくなっていたのか一瞬逡巡してしまうがこの悪魔の巣窟を脱出するには彼の力が必要だ、と恐る恐る手を伸ばすと少年は私の手を少し強引に取り歩き出そうとするが…

 

「…あれ、どうして…?」

 

踏み出す足がぎこちない。まるでそれは…

 

(ちっ…ここの連中真夜さんに薬剤投与したのか…!?外道め…!)

 

恐らく逃げられないように薬剤を投与したのだろう。その事を思い怒りがこみ上げるが一先ずはここからの脱出のために彼女には安全な場所に居て貰わないといけないので多少強引ではあるが彼女を()()()()()事にした。

 

「ひゃっ!?貴方何を…!」

 

「歩けないんでしょう?我慢してください…後で幾らでもお小言頂きますから…行きますッ!」

 

抱き抱えられ腕を首に回す真夜を片手で抱き抱えると所謂【お姫様抱っこ】の状態になり左足で地面を蹴り踏み出すと突風が吹き荒れ凄まじい速度で崑侖方院の廊下を駆け抜ける。

 

「きゃああああああっ!?」

 

「ッ!(うぉっ?!急に密着されて柔らかいのが…ってそんなこと気にしてる場合じゃねぇ!そりゃ叫べば寄ってくる、よな!)……掴まって!…さぁ来いよこの変態達がッ!」

 

邪念を振り払って駆け抜ける。

一方で真夜は振り落とされないように必死にしがみついた。

通路からやってくる顔を隠した法衣のようなものを着た魔法師達の攻撃が私たちに迫るのを確認して咄嗟に、反射的に魔法を使おうとするが監禁されていて十分な魔法行使の為の体力が無くなっていた為起動式すら立ち上げられなくなっていたことに絶望する。

 

(う、そ…!いやッ…!)

 

迫る魔法に思わず目を伏せ身を固くしやってくる痛みと衝撃に耐えようとしたがそれはやってこなかった。

 

「…え?」

 

恐る恐る目を開くと驚愕の光景が広がっており自分…少年の居る場所を中心にまるで瓶からあふれでる水のヴェールのような障壁が守っており一切の攻撃を通していない。

 

「数だけ揃えた所で俺に勝てるかよッ!(神様ギフトのチートだけどな!)」

 

一切の攻撃をシャットアウトしながら視界に存在する魔法師に対して少年は懐から特化型CADをホルスターから抜き狙いを定め引き金を引き絞る。

次の瞬間に炎の矢が数百、と出現し降り注いで魔法師達を焼き付くし無力化していく。

 

「…すごい。こんな魔法見たこと無い…」

 

自分を抱えたままの戦闘をこなしあまつさえ複数の魔法を展開し一騎当千の動きを見せる少年に完全に意識が集中しており敵の事など眼中になど無く突如現れ助けだしてくれたこの少年へ自分が()()()()()()事に気がついた。

 

見惚れられていることに気がつかない転生者は迫ってくる魔法師の攻撃に内心ビクビクしながら対応していた。

 

(うぉおおおおおおおおッ!?めっちゃ怖ぇえ!!当たったら死ぬ…!)

 

しかしそんなことを言うほど余裕は無いし今近くには守るべき対象である”四葉真夜”が居るのだ。

例え命に代えても彼女を無事に家族の元へ戻す、という使命に燃えている彼は恐怖心を吹っ飛ばし人殺しの罪悪感など既に”いたいけな少女を玩ぶ変態達”と手加減する必要はないと認識を変えていた。

 

(与えられた転生特典…早速有効活用させてもうぜ…神様!!)

 

与えられた転生特典として先ず一つは”魔法の発動スピード(クイックスペル)”。

そのスピードは最早”神速”というべき速度であり反撃する隙を与えずに対峙する魔法師を只の炭へ変えていく。

二つ目は”魔法の威力の向上(オーバーブラスト)”。

発動する魔法は少年が生前に記憶していた某カードゲームの十三のカテゴライズされた魔法でありその全てが必殺級の威力を誇り領域干渉を貫通していた。

そして三つ目…”魔法の複数展開(マルチプルキャスト)”。

攻撃と防御、そして移動魔法を三つ展開し敵の攻撃を防御し反撃、そして脱出地点まで最速を選び目指していく。

そのまま脱出を…と思ったが大陸の魔法技術の中心地であるここの技術を全てロストさせなければ再び彼女を危険な目に会う可能性があるからだ。

 

「…ご免、少し寄り道する」

 

「ど、何処に寄り道する気なの?」

 

「ここの施設の魔法に関するデータを消し飛ばします。もう貴女が危ない目に遭わないようにするために」

 

「わ、わかったわ…」

 

炎の鏃と白銀の咆哮、そして深緑の豪腕が敵を薙ぎ払い施設事破壊していく作業に集中していた。

外へ続く出口へ付近の守衛室のような場所に到着する頃には大漢の魔法研究の施設はほぼ壊滅状態となっていたが戦闘に巻き込まれた監禁されていた事も相まって疲弊しており休憩させるべきだな、と施設図を確認し最短で出口へ向かい外へ出るとまだ夜明け前の時刻だった。

後ろを振り返り確認すると追手は一人もいなかった。自分の手で人殺しを初めてした、というのに恐怖が沸き上がってこないのはアドレナリンが出ているからかもしれない。

 

「…もう大丈夫。追ってくるものは全員倒したので。少し、休憩しましょう」

 

「…ええ。分かりました」

 

施設から炎が吹き上がり爆発しているのを背後にしながら踊り場のような場所へ出た少年は抱き抱えていた真夜を降ろす。

少年から提案され彼女は頷く。実際に戦闘に巻き込まれ自分でも疲れていると感じていたためだ。

 

久々と思えるほどの外の空気を吸う。

埃っぽくじめじめしていたあの空間より空気は澄んでいたが気分が晴れないのはここがまだ自分を拐い想像もしたくない実験を実行しようとしていた施設の近くだからだろう。

 

「へくしっ…あっ」

 

「あ、寒いよな…これ羽織って」

 

「ありがとう……あっ」

 

山の奥で標高が高い場所にあるのか肌寒く手術着のような薄布一枚であることを思いだし摩るように肩を抱き締めるとふわり、とローブのようなものが被せられる。白く薄い燐光を放つ不思議なローブだ。

何処から用意したのか少年が被せてくれたのだろうそれは身体の暖かさを感じると同時に心がジワり、と暖かくなっていく。

 

(不思議な人…)

 

視線が横顔に向けられ見惚れていた真夜はハッとして我に返る。

そのとき彼の頬に赤い線が走っている事に気がついた。

 

「は、はいっ…!あ…貴方怪我して…」

 

「え?あ、ホントだ…でも貴方が受けそうになった被害を考えればこんなのかすり傷ですからこんなの放っておけば…」

 

「だ、ダメッ…しっかり手当てしないと…!」

 

「いや、大丈夫ですから…(魔法で回復できるし)」

 

「い、良いからさせてください…!今は私、これしか出来ないから…」

 

そう言って断ろうとするが真夜は泣きそうな表情を浮かべるので根負けして少年は頷き神様からなぜか渡されていた救急ポーチを開き消毒液と傷バンドを手渡す。

 

「そ、それじゃあお願いします…」

 

「…ええ。まかせて」

 

応急セットを受けとる真夜による手当てが始まり当然ながら直ぐ治療?は終了した。

美しい貌にキズバンドが貼られたという何ともアンバランスな状態だ。

 

「…………(うわぁ…真夜さんこの頃から本当に可愛い…ホントにザ・美少女って感じで…こうしてみると若い頃は亜夜子ちゃんに似てるんだな…つか何時迎えが来るんだ?)」

 

「…………(綺麗な瞳…宝石みたい。………って私はしたない…殿方の顔をじろじろ見るなんて。あ、そうだ彼の名前の目的を聞かないと)」

 

「「…あの」」

 

「あ」

 

「あ」

 

燃える悪の本拠地をバックに二人は黙ってしまった。一方は目の前に無事な真夜がおり見惚れ一方も少年の顔から目を離せず問いかけようとしていたことを思い出し声が被さり両者の視線がぶつかり合ったときに互いに気恥ずかしさが込み上げ顔を朱くしてプイ、と視線を逸らしてしまう。

 

「ど、どうぞ…」

 

少年は生まれてきた年齢=彼女居ない歴であると同時で少女は少年の顔をずっと見つめていたことによる恥ずかしさで顔を逸らした。

さっきまで鬼神のごとき勢いで敵を殲滅していたと言うのに目の前でおどおどし始めたのを見て真夜はクスり、と笑みを浮かべた。

 

「クスッ…さっきまであんな勢いで戦っていたのに貴方、変な人ね?」

 

「…それは言わないでくれ」

 

「ふふふっ…」

 

苦笑するその姿が可笑しくて再び笑みを浮かべる。

 

「あ、やっと笑ってくれた…やっぱり笑ってる顔の方が可愛い」

 

「ッ!あ、貴方よく初対面の女性にそんなことを言えるわね…」

 

「え?だって事実じゃないか」

 

「お、思ったことを口に出すのは良くないことなの。気を付けなさい?勘違いする子がいるわよ」

 

「?本当に可愛い、と思った子にしか言わないよ?」

 

真夜は目の前の少年と会話をしても自分の中の真っ直ぐな言葉を信じているのか全て返してくる。

口論は強い方だったが彼には勝てない、と自然に思ってしまったその流れで問いかけた。

 

「こ、こほん…!あ、貴方…どうして私を助けてくれたの?何が目的なのかしら?」

 

純粋な疑問だった。拐われもうダメか、と思ったその時()()()()()()()()()()()()()で現れたのだ。何処かで拐われた、と言う情報を手に入れ家の者達よりも先に救出し四葉に取り入ろうとしている無名の魔法師か、再び私を拐い金品目的で拐いに来た野蛮な魔法師なのか?幼いながらも権力闘争の中にいる彼女はその視線を鋭く向ける。

しかし目の前の彼はそのどちらでもなかった。

 

「……えーと(あぁ…そうだよな。疑うのは仕方の無い事だし…『未来を知ってて可哀想だからその未来を変えるために転生して助けに来ました』ッては言えない…それっぽいことを言うか。間違いではないからね!)」

 

そう問われ少年は頬を掻いて視線を逸らしていたのはやましいことがあるから、ではなく純粋に恥ずかしいと言う感情で頬を朱色に染めていた。

そして想像だにもしない返答が返ってきた。

 

「……一目惚れ、だったんだ(原作から)。…初めて貴方を見たときから一目で」

 

「えっ…?」

 

一目惚れ。文字通り一目見て惚れたと言うことだ。

突然の事にフリーズした真夜にド直球ストレートに言葉を重ねた。

 

「見た目(キャラデザ)も声(CV的な意味)もその振る舞い(キャラ設定)も全部が愛おしい。貴方を守れるなら俺は全部を敵に回しても助けに行きたい、ってそう思ったんです」

 

「え、えぇ…?ちょ、ちょっと待ってください一目惚れ?」

 

少女は困惑した。私はこの人と会ったことがあっただろうか?と考える。先日の交流会?それとも昨年の舞踏会だったか、と考えたが思い当たる人物はいない。がそんなことが些細な事だと思えるくらいに胸がドキドキしていた。危機的な状況での吊り橋効果と少年の神様より与えられた外見的な特長がそうさせていた。

そして彼の真っ直ぐに真夜の瞳を見つめ歯の浮くような台詞を淀みなくぶつけたのが原因でその言葉は少女には劇薬だった。

 

(つ、つまり私が好きでこんな危険な場所に助けに来てくれたってこと…?!)

 

惚れたから、と言う理由で助けに来るとは正直常軌を逸している。戦場に生身でやってくるものと同じだ。

可笑しい、と思うのに心が熱くなっていくのが分かる。

一介の魔法師ならば”十師族”の魔法師に対して畏怖と憧憬を持つものだが彼は家柄など見ていなかった。

 

「あ、貴方は怖くは無いの…?”四葉”が…」

 

そう問い掛けると少年は迷うこと無く紫と赤の眼で見据えた。

 

「怖くないよ。だって俺は……貴方の未来が色を失ってしまう方が怖いんだ」

 

「…ッ!(そ、そんな真っ直ぐな目で見られたら…)あっ…」

 

そう告げた後少年は微笑を浮かべ私の手を優しく手を取った。

 

「…君が無事に家に帰れるように守らせて欲しい。…ダメかな?」

 

「ッ…!は、はい…お願い、します…」

 

顔を真っ赤にして真夜は俯き握られた手を見つめていた。その温もりは囚われて冷たくなっていた心と体を暖め一目惚れしたと告げた少年に心を許し始めていた。

 

◆ ◆ ◆

 

崑侖方院のある山から掛け降りる最中、追手や襲撃者が現れたが今の二人を止めることは出来なかった。

想子を回復する魔法を掛けられ本来の力を行使出来るようになった真夜のサポートによって八面六臂の活躍を見せる。

 

山を掛け降りる際に再び真夜は少年に抱き抱えられながら周囲を警戒しつつフォローする。

 

「流石は…四葉の魔法師…!」

 

「当然よ。でもまだ本調子ではないから…敵の排除は宜しくお願いするわ」

 

「任されました…!お嬢様!」

 

抱き抱えながら急斜面を下り降りることが出来ているのは神様による贈り物のお陰だ。

転生前のスペックならきっと明日は筋肉痛になっているだろうな、と考えながら敵を排除していると漸く拓けた場所へ到着する。付近にはボートのような船舶が複数存在していた。

抱えていた真夜を降ろすと振り返り此方を見つめていた。

 

「…貴方がいなかったら私、きっと酷いことをされていたと思うわ。死ぬまでずっと心が死んでいるようなそんなことを…あいつらにされていた…貴方がいなかったらきっとあの施設から逃げ出せなかった…だから、その…あり」

 

少女が言葉を言い掛けたその時岸川のボートから声が聞こえる。

視線を向けるとこちらへ掛けよって来る複数の人影が見えた。

 

”真夜ッ!”

 

「…ッこの声は…お父様!」

 

それは自分の父親である四葉元造が来てくれたのだ、と一気に張り詰めていた緊張の糸が解れそうになりその場にへたり込む。

 

「…もう、大丈夫かな」

 

人影が人の形と視認できるまでの距離に近づいてきたとき逆に少年は立ち上がりへたり込む少女へ慈しみの表情を浮かべているのを理解した、と同時に足元に魔法陣が展開し彼の身体が光の粒子に変わっている事に気が付く。

 

「ッ!あ、貴方…身体が…!」

 

「…俺の役目はもう、終わりみたいです。そろそろ行かないと(原作開始地点へ)」

 

「そ、そんな…私を守ってくれる、ってのは嘘だったの?」

 

光の粒子が重力に逆らって上がっていき薄幸な笑みを浮かべるのを見て真夜はその表情に翳りを付けた。

安心させるように告げた少年の言葉は…良くなかった。勘違いに勘違いを重ねてしまう。

 

「…また、きっと会えるさ。直ぐに(体感的には瞬間だしな)」

 

「…ッ!本当に、(日本へ戻って直ぐに)逢えますか…?」

 

少年はクソボケだった。

双方に認識の違い、ズレがあるのとそれを言葉にしなかったのが良くなかった。

しかし、それを指摘するものは誰もおらずアンジャッシュしていた。

助けに来た人物が真夜の近くに人影がいることに気が付きこちらへ手にした短剣を引き抜こうとしているのを見て撤退を選択した。

 

「(やばっ…こっから離脱しないと元造さんから”死神の刃”食らうぞ!?)じゃあ、また」

 

「ま、待って!名前を教えて…!」

 

手を伸ばす真夜を見て少年は少しだけ思案した。

 

「(そう言えば名前を名乗ってない…生前の名前でも良いけど折角だし格好良い名前にしようかな)…”俺は…紫ノ宮朔也(しのみやさくや)”宜しく!」

 

紫ノ宮朔也(しのみやさくや)…あっ…」

 

サムズアップして笑みを浮かべ朔也へ真夜が手を伸ばす…がその身体は光の粒子となって霧散し空を切っていた。

 

「真夜!あぁ…良かった………無事か!怪我はないか!?」

 

程なくして駆け上がってきた父が私を抱き締める。

痛いほどに抱き締められてそれが本当に心配してくれたのだろうと心が熱くなる。父の近くにいる四葉の戦闘魔法師も無表情だが私の事を心配してくれていると感じ取った。

 

「ええ。私は大丈夫です…」

 

「お前の近くに人影が居たが…そのものがお前を助け出してくれたのか?」

 

「はい…でも朔也さんが消えてしまって…」

 

娘は悲しそうな表情を浮かべているのを見て元造は思うところがあったのだが短く告げる。

 

「そうか…だが彼は一体何処の魔法師だ?…一先ずここには居ては行けない。さ、家へ帰ろう真夜…皆お前の帰りを待っているよ」

 

真夜は守られながらボートに乗り込んだ。こうして真夜は一人の少年によって守られた。

しかし、彼女の中に彼の存在が強く焼き付き男性観を壊した。

 

その後の事を語ろう。

全ての原因となった崑侖方院、そして大漢殲滅後、真夜は助け出された。その壊滅を行った四葉家は「触れてはならない者達(アンタッチャブル)」と恐れられた。

そして崑侖方院の壊滅も四葉家が娘を誘拐された報復として破壊した、とされるがその真相を知るのは真夜当人と父元浩と一部の親族だけに留まった。

 

「彼を…探してください。名は紫ノ宮朔也…オッドアイ(紫と赤)の瞳を持つの男の子を。まだ有り難う、と伝えきれてないのです」

 

「分かった…四葉の総力を上げて調べ上げさせよう」

 

娘に懇願され元造は四葉家の総力を挙げて少女を救いだし悲劇の切っ掛けとなろうとした施設を破壊した少年を探したが四葉の捜索網を持ってしてもついぞ”影も形も見当たらなかった”。

しかし、少女は待ち続けた。彼の言葉を信じ再会できることを信じ続けた。

少女から女性へ変化し彼女は一途に待ち続ける。

自分を救ってくれた物語の英雄の如く活躍をした彼女が救われたことで物語は大きく変化する。

少年は知らない…助け出した彼女の男性観を破壊し責任を取らなければならぬことを。

 

大漢崩壊から三十数年…日本某所にある屋敷の一室にて妖艶な色気を放つ美女が物憂げに名を呟く。

その手には未だに大事にされている燐光のローブが膝に掛けられておりその表情はまるで…恋煩う少女のようだった。

 

「…朔也さん」

 

季節は春。

止まっていた物語が動き出したのは西暦二○九五年四月…それは”魔法科高校の劣等生”本編が動き出すのと同時だった。

 

真面目な戦闘描写よりも真夜様の乙女ムーブがみたい!

  • 戦闘描写は無くて良い
  • 戦闘描写はあっても良い
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