助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件   作:萩月輝夜

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毎回最新話投稿するとすごい勢いでお気に入り登録外されるのは何故なのか…
それはそうとしてコメントとお気に入り登録ありがとうございます。

書きたいことを書いてたらまた1万文字越えた…。
それと今回の術式の理論が結構がばがばだったりするので申し訳ない…。
真夜さんとのイチャイチャを描きたいんだけどメインに関わらないから余りに九校戦が進まない…新人戦の部分飛ばしても良いかと思う今日この頃。

それではどうぞ


九校戦編④

「すぅ…すぅ…すぅ…」

 

「朔也さん…可愛い…」

 

早朝起きたのは真夜だった。一緒のベッドに入り共に抱き合って寝ていた両者で何時もなら朔也が真夜よりも早く起きるのだが今日は彼女のターンだった。

同じ顔の位置にある寝顔を眺めるのも真夜のルーチンだったりする。何時も寝ているのはその寝顔を見て寝落ちしてしまうからだ。

 

「起きてる時は格好いいのに寝ている時は少し幼くなるのね…ふふッ……」

 

その寝顔を眺めながらどんどんと目蓋が重くなっていき眠りに誘われる。

暫くして朔也が起きて眠る真夜の横顔を彼女が起きるまで眺めていた。

 

「あ、起こしちゃった…?」

 

「んにゅ…しゃくや…しゃん…」

 

起きる真夜は少し寝ぼけ眼でうにゃりながら朔也の胸に顔を埋める。

 

「…ん」

 

顔を埋める真夜の顎をくい、と持ち上げ顔を合わせ微笑み二人の視線が合わさって暫くの間惰眠をむさぼった。

九校戦二日目を迎えた。が、特に変化はないので割愛。

 

が試合を観戦している朔也と真夜は仲睦まじく「魔法のあれが…」や「あの場面だとこっちが有効だったかな?」と会話を繰り広げながら観戦していたのだが周囲の人間からは「リア充爆発しろ!」と妬みの視線を向けられていた。

 

ただただ二人がイチャイチャするだけで終了した。

 

◆ ◆ ◆

 

九校戦三日目。

男女”アイス・ピラーズ・ブレイク”と”バトル・ボード”の決勝までが行われる九校戦における前半のヤマと言われている。

そして摩利が出場する準決勝…事故が発生する日も今日である。

 

(水路に精霊魔法…だったかを仕込むんだっけ…?他の試合だとそんな仕込みをやっている暇はないから仕掛けるなら渡辺先輩のこの”バトル・ボード”…ここが起点となって九校戦で色々なことが…何事もなければ良いんだが)

 

心配はしていたが正直真夜に被害が及ばなければ無視するのが朔也のスタンスでありその辺りの事件は達也が解決すれば良いと考えていた。もし仮に起こってしまったら摩利には悪いとは思うが。

 

(まぁ…何もないことに越したことはないんだがな)

 

そんなことを思いながら”バトル・ボード”の会場へ到着し観客席に着席する朔也真夜。そして少し離れたところに達也達何時もの面々。距離を取っているのは親切か、それとも青春恋愛空間に巻き込まれるのを恐れたか。

一先ず達也にはそれとなく「試合運びを見ておいてくれ」と伝えておいた。

幹比古は人の波に当てられホテルで休んでいるようだったが無理にでも引っ張ってくるべきだった、と後悔するがそこまで話したことの無い人物を引っ立てるほど友好関係を結んでいないことを思い出し内心で苦笑した。

 

(神様に達也みたいな”特殊な目”でも要求しておくべきだったか?だけどあれあると余計なことに巻き込まれるしな…)

 

達也の”精霊の眼”でもあればな、と思ったがあれは余計なものまで見えてしまいそうで本能的に却下していたことを思いだしたがそれでも一発で見抜けなかった為この時の達也と古式魔法とは相性が悪いのだろう。

 

(やっぱり幹比古をつれてくるべきだったか?)

 

そしてここに来る前に摩利や真由美に呼ばれて釘を刺されていたことを思い出した。

 

『応援してくれるのは嬉しいんだが…そのもう少し真夜とのスキンシップを押さえてくれないか?此方にまで甘い雰囲気が漂ってきて試合に集中できんのだよ』

 

『朔也くん…応援してくれるのは嬉しいんだけどその…抑えてくれない?』

 

仕舞いには一昨日助けた七草双子に再会し言われた。

 

『見てるだけでお腹一杯になっちゃうくらい甘々空間だよ…朔也さん』

 

『非常に仲が睦まじいのは良いことなのですが…朔也さん、ご自重くださいませ…』

 

(酷くない?甘い匂いが漂ってくるってどう言うことだよ…アロマディフューザーか何かなのか俺たちは…別に迷惑を掛けるほどイチャついていないんだが………つかなんでみんな揃って俺に言う?)

 

それは本能的に真夜に口答え、もとい意見するのを本能的に躊躇っているからだろう。となればその文句を言えるのは隣にいる、その原因となる朔也になる…がそんなことを知る由など無いのだが。

 

そんなことを思っていると遂に準決勝が始まり摩利と七校の生徒が接戦し始める奇しくも前年の決勝戦の様相を呈し始め手に汗握る一進一退の攻防を繰り広げていた。カーブに差し掛かったその時に朔也が「頼むから何も起こってくれるなよ」と願っていたが裏切られた。

 

◆ ◆ ◆

 

既に”毒”は仕込まれていた。

大会運営委員会に紛れ込まれた工作員が選手のCADにウイルスを紛れ込ませていたが…それとは別にとある男は別の”毒”を仕込ませ自らの野望のため動き出そうとしていた。

 

『時間だ…行動を開始しろ』

 

人工波が激しくうねる水上コース。

その水上を疾走する一高の渡辺摩利に食いつき抜いては抜き返される七校の選手。

奇しくも昨年の決勝カードと同じでありその光景に観客席の誰もがその手に汗握る攻防に興奮冷めやらぬ状況に夢中になっていた。その光景を会場…ではなく敷地内の車両内部で見て指示を出していた。

指示を受けた一人の男が客席を立ち上がり通路へ足を運ぶのを隣にいた観客が怪訝な表情を浮かべるが直ぐ様目の前で繰り広げられる試合へ意識が流れていった。

 

「………………」

 

移動し男子トイレに入り個室の扉を閉じた一般客に紛れた無頭竜の工作員…だがその顔色は幽鬼のようでありただ命じられるがままの()()である彼の動きなど誰一人として試合に夢中で彼の動きなど気にも留めない。

袖口に隠した指輪型の多目的補助CADと…その術式を動かすための”機材”でしかなく証拠が残らないのは彼は文字通り術式を起動すれば()()()()()()()()

 

”無頭竜”の目的は一高の独走を止めること。そして、この晴れ舞台を最悪の惨劇に変えること…ではあるがこの男の目的は自らの魔法のデータを取るためにある。

 

”コア”が嵌め込まれた”蠍”の意匠が備えられた指輪型のCADが刻印型複合魔法の起動式が発動した。

次の瞬間に男の足元に幾何学模様の青白い魔方陣が出現し青白い炎に包まれ消失しこの世から存在を消した。

直ぐ様”怪物”が”バトル・ボード”の会場に出現するがその実体はなく陽炎のごとく揺らめきその場から跳躍し音もなく水路へ潜り込む。

一瞬、ほんの刹那であったが変化に気がついたのは達也でも朔也でもなくその友人の一人だった。

 

「いたっ…!」

 

「美月、どうしたの?」

 

目を押さえた美月の異変に気がついたエリカが声を掛ける。

 

「想子の揺らめきの衝撃が…今、メガネ越しに……あれっ?」

 

先程までずくり、と鈍痛がしていたのだが綺麗さっぱり無くなっていることに疑問に思っているとエリカが「大丈夫?」と声を掛ける。

 

「ま、今は魔法が飛び交ってるから瞬間的に感じちゃったのかもね」

 

「え、ええ…そうですね(今の水路に青白い…禍々しい燐光が…なんだったんだろう…?嫌な、予感が…)」

 

疑問に思いながらも視界には摩利と七校選手が抜いては抜き返される光景が広がっており先程の鈍痛の事など忘れ去ってしまいそうだった。

 

『…………ッ!』

 

工作員の命を代償として召喚された青い燐光を放つ”怪物”は静かな水面の下で息を潜め機会を伺う。

その者のターゲットは、激しいデッドヒートを繰り広げる二人の選手…いや、正確には彼女たちが展開している「魔法式」そのものだった。

 

術者の手を離れたこの魔法の真髄は、肉体を蝕む毒ではない。情報空間におけるエイドス(構成情報)の脆弱性を強制的に暴き出し、書き換える領域干渉魔法だ。

水上を滑走する摩利のCADから放たれる、高度な複合術式《マルチキャスト》。

そして七校選手が展開する、波を制御する移動魔法。工作員は、二人の魔法式が重なり合い、干渉し合う一瞬の”隙”を冷徹に見定めた。

 

『………ッ!』

 

そのタイミングがやって来た。

水面の下で息を殺しもたげるように構えた尾の先の不可視のサイオンの針が、二人の情報体に突き刺さる。

痛みも不快感もないそれは次の瞬間、摩利のCADが感知したことのない「情報ノイズ」に汚染された。

それは、加重系魔法による妨害のような力任せの破壊ではなくサイオンの塊をぶつける”術式解体”のような直接的な妨害ではない。

魔法式の構造的な弱点を内側から暴露し、演算領域をジャミングし狂わせる「遅効性の毒」である。

それを見た美月が呟く。

 

「蠍の針…?」

 

もたげ構えられたサイオンの針がするり、と二人を通り抜けたのを美月が目撃したが蜃気楼のように消えてしまい目の錯覚か?と目を擦る。次にはなにもなかった。

水路のカーブを減速を終えて加速を始めようとする摩利へ制御を失った七校選手が突っ込んでくるのを肩越しに見て驚くべき反応で対応し魔法式を構築する。

 

「(……!? 起動式が、歪んでいる……だと!?)しまっ…!」

 

しかし摩利の優れた魔法知覚が、エイドスの変異を察知した。しかし、時すでに遅い。

制御を失った波が、牙を剥く。

加重系・慣性中和魔法を発動させていた摩利のボードを狂わせ、加速術式を()()()()させると同時に七校の選手の魔法制御の「最も防御の薄い部分」から強制的に自壊させた。まるで糸が解れたマフラーのように崩れ去る。

七校選手は魔法の制御を完全に失敗し驚愕の表情を浮かべながら摩利へ直進するコースを選ばざる得なかった。

コントロールを失った二人の身体が、時速数十キロの速度で正面衝突の軌道へと乗る。だが、この魔法の恐怖はここからだった。事故の瞬間、七校選手の魔法が完全に消失した。

その慣性の消失をトリガーにして、”怪物”が放つ魔法を自動で次のフェーズの割り込み(インターラプト)を発動させる。プロセスをスキップ、固定化(定着)する…しかし、本来なら事故の衝撃波やサイオンの暴走で、術者の位置が達也たちや会場を警備する魔法師達に露見するはずだった。

 

「なんだ…故障か?」

 

警備し監視していた魔法師のサイオン計測器が故障されてしまう出来事が発生していた。

この魔法は術者(工作員)の消失を糧に、発動の痕跡を完全に隠蔽・消去するカウンター性能を持っており逆探知する機器を破壊するという性質を持っていた。そして事故の衝撃という莫大なエネルギーの影に隠れ、魔法の残滓(想子痕)は一瞬で戦場から消え去る。

ドガッ、という激しい衝突音とともに、水しぶきが舞い上がった。

 

「がはっ…!?」

 

ボードが直撃し苦悶の表情と共に摩利と七校の選手は大きく飛び出しコース外へ弾き出し地面へバウンドして転がっていく。

 

「か、カメラを止めろ!」

 

その光景を見てライブ配信をしていた放送局のプロデューサーが直ぐ様カメラマンのスタッフへカメラを止める、映像を中断させるように指示したことでお茶の間へ衝撃映像を流出させることは阻止できたが現地では起き上がらない両名と臓腑を傷つけたのか口から赤い筋を垂らす摩利の姿が大画面に映し出されてしまう。

 

現地ではそれを見て観客席から悲鳴が上がる。その中で救護するために人の波を掻き分け辿り着こうとする達也。

その混乱の渦中で、会場を監視していた男は何食わぬ顔で車両から降りて会場を離れ誰にも気づかれず雑踏の中へ消る。

 

「…『蠍毒(スコルスピア)』は規定通りに動いた。ふむ、提供された魔法師(素材)は中々に上質だったらしい…良いデータが取れたな。しかし、一高の”優秀な”魔法師(劣等種)といえど、エイドスの底にある弱点を突けば…ただの肉塊に過ぎない、か…」

 

嘲笑うような独白が清々しいまでの青空へ消えていった。

 

◆ ◆ ◆

 

覚醒は穏やか…とは言えなかった。

無意識に靄がかかったように現状が把握できなかった摩利は自分がどうしているのか…?意識が覚醒してから最初に浮かび上がった疑問がこれだった。

 

「摩利!気がついた?私が誰だか分かる?」

 

「真由美、何を言っている?そんなこと訊くまでも…ッ」

 

このタイミングで自分が置かれている状況を把握した。

 

「ここは…病院か」

 

「ええ。裾野基地の病院よ。よかった…意識に問題はないようね」

 

「私は…どのくらい気を失って…ッう…!?」

 

「ダメよ摩利ッ。おきあがっちゃ…まだ貴女は重症なんだから寝ていないと…」

 

「…す、まん…」

 

検査を受け脳へのダメージはないが身体が受けたダメージは原作よりも酷いものでありまず時速数十キロで走行していた七校選手の体重を乗せた慣性が直撃し水路に水没したことで肋骨と庇った際に左腕も複雑骨折。右足も庇ったせいで折れていた。そして折れた肋骨が臓腑を傷つけた。危うく折れた肋骨が心臓に突き刺さりそうになったが奇跡的に逸れていた…しかし重症であることには変わらずまだ全治二ヶ月程度で済んでいるのは魔法による治療が優秀だからだ。ただくっつけているだけなので痛みは当然あるのだが…介助なしで動き回れるまでは二週間は必要であり当然競技に参加できる筈もなく肩を落とす。ギブスで固定されている姿はとても痛々しいものだ。顔と体に大きな傷がつかなかったのは不幸中の幸いか。

 

しかし、意識がはっきりしている摩利でさえこの状況であるのだが七校選手の方が被害が大きいものだった。

怪我はもちろんだが仕込まれた魔法により魔法に対する不信感を覚え魔法師としては再起不能になっている…聞かせられて「これでは庇った甲斐がないな…」と偽悪的な態度を浮かべる摩利を見て真由美は悲しげな表情を浮かべた。

そしてここに運び込み適切な処置を施したのが達也だと聞かさせ顔を赤くする摩利だったが直ぐ様真由美は彼女が被害を受けた魔法の不正使用について質問する。

 

「ボードに…いや私自身に対して魔法が歪んだ気がしたんだ…それに…ボードに勝手に加速術式が掛かっていた…」

 

「摩利の魔法式に対して…歪んだ?ボードが独りでに…」

 

摩利ほどの魔法強度が高い選手に対してそんな妨害が出来るのか?と疑問を浮かべる真由美。

妨害するにしてもアンティナイトのようなキャストジャミングの波動や対抗術式のような魔法は現場では探知できなかった、と聞かされていたからだ。ボードに対して魔法をそれも摩利が発動しているものに上書きして発動させる、というのは現実的ではない。

しかし、受けた本人がそういうのならば事実かも知れない、と考えていた。

この件に関して達也と五十里が運営本部から試合データを預かり解析する運びとなっているそれは有意義な結果をもたらしてくれるだろうと確信を持って言えた。

 

「そろそろ戻らないと…摩利、安静にしているのよ?」

 

「私は子供か…分かっている。どのみちこの怪我では動き回る事は出来ないよ。大人しくしておくさ」

 

「そう…お大事にね。また見に来るわ」

 

「ああ」

 

真由美は病室を出て一人になる摩利は真剣な面持ちで天井を見つめた。

 

「…ままならないものだな」

 

◆ ◆ ◆

 

摩利が事故に巻き込まれたその後大会運営から試合のログと映像データを預かり達也が解析をしていると扉がノックされたのを深雪が気がつき扉へ近づき開けるとそこには二人の上級生がたっていた。

 

「お兄様、五十里先輩と千代田先輩がお見えになられました」

 

先程の事故の解析のために達也が同じエンジニアである五十里を呼び花音が着いてきたのは摩利が事故に巻き込まれたと知ったからだろう。「手伝えることがあれば言って!」と告げる花音が彼女をよく慕っているのを理解したところで達也は優勝した事へのコメントを投げて早速ではあったが啓へ検証のため卓上ディスプレイ(画面は二分割されており通常の録画データとワイヤーフレーム化したシミュレーション映像)を操作するための視線操作ポインタを装着しシミュレーション画面を確認し五十里の操作で実際の録画データとシミュレーション映像が連動し動き事故の瞬間でスローダウンする。

シミュレーション映像の上部には事故が発生した際の周辺、水面や選手、ボードの接触時の諸数値が表示される。

そして問題のシーン…摩利達が接触と回避する場面で『unknown』と表示されていたのは選手とボードに対してでありこれが外部からの自然とは言えない”力”が発生していたことを示していた。

画面を止めて五十里が振り返り「難しい問題だね」と苦い顔を浮かべ振り返る。

何かしらの加重魔法が加わったか、と考えたがそもそも試合の際に不正が発生しないように外部の魔法師が監視しており外からの妨害は不可能、それであれば水中に…という言葉が花音から出たがそちらにも異常を検知する監視装置が設置されており魔法を発動させるのも無理、水中に工作員を仕込ませるのも不可能、という判断が出た。

実際に会場を警備していた魔法師のサイオンチェッカーに異常は見られていない、という報告を受けている。

その際に千代田が「解析が間違っているのではないか?」とよく考えない失言をして深雪の眉間がピクリ、と動いて達也が動こうとするが五十里が「いや、司波くんの解析は正確だ」とフォローし事なきを得る。

 

「……」

 

「……」

 

そう言われ花音も黙ってしまい啓と共に見つめ合い考えるが答えはでないまま時計の秒針が二週したところで再びノックをされ深雪が動くと今度は友人である幹比古と美月を呼び出していたのだった。

大概に簡潔な自己紹介を終えて達也は事故解明のためにここに来てもらったことを説明し話を続ける。

事故を起こした七校選手と巻き込まれた摩利…その原因は水中にいる工作員…人間ではなく”別の存在”ではないかという仮説を達也が告げると美月は驚き幹比古は目に強い光を宿していた。

 

「司波くんは…SB魔法の可能性を考えているのかい?」

 

啓の言葉に達也は頷く。

身を隠せる場所もなく会場を警備している魔法師にも見つからない、となれば精霊を使役するSB魔法ではないか、と達也は考えていた。

その筋…古式術式…古式魔法を得意とする幹比古とサイオンを色の違いで判別できる美月はある意味で”助っ人”であり助力を求めた、と言えるだろう。

達也は幹比古に問いかけ「事故を起こすことは可能か?」と問いかける。

しかし、幹比古の返答は達也達が求めるものには程遠いものであった。

 

「可能だよ。…だけどあのボードに掛けられた魔法の自己強化の改編、となると現実的じゃない」

 

「というと?」

 

「時間が掛かりすぎる。最低でも半年以上は必要になるしその場で数時間、と言うのは不可能に近い。やったとしても猫だまし程度の魔法で渡辺先輩レベルの魔法師が発動させている魔法強度に介入するだけの魔法力を一体の精霊で改竄するのはそれこそ数十…数百体の精霊が集まる必要がある…そうすれば活性化し警備に引っ掛かってしまう。それこそ偶然が偶然に重なって渡辺先輩が体勢を崩して七校選手が突っ込んでくるぐらいの”奇跡”が起きなければ無理だ。…悟られず渡辺先輩を負傷させるには精霊よりも上位の存在…”神霊”を呼ばなければ…」

 

幹比古の言うとおり一体の精霊では猫だましをするレベルで二人に被害を与える事は出来ない。

”神霊”という言葉を出したとき幹比古が一瞬苦しい表情を浮かべたが…達也の脳裏に廃工場(あの場所)での出来事を思い出す。

 

(まさか…あんな怪物が関わっているのか…?)

 

達也の【精霊の目】を持ってしても解析することが出来なかった”怪物”…幹比古の言う”神霊”なのかもしれない。

馬鹿馬鹿しい、と言って切り捨てるのは簡単だったが無視する事も憚られた。

 

「あれも単なる偶然であれば、な…」

 

「えっ…?」

 

「いや、なんでもない。それよりもだ…」

 

達也の言葉に幹比古が反応を示すがその場では答えずに直ぐ様別の話題に切り替え隣にいる美月へ言葉を掛ける。

 

「美月、渡辺先輩の事故の時、SBの活動を見なかったか?」

 

「そうですねメガネを掛けていたので……」

 

申し訳なさそうな表情を浮かべる美月に深雪が「気にしないで…」と声を掛けようとしたとき美月が思い出したかのような声を上げた。

 

「…はっ!?」

 

「どうしたの美月?」

 

そう問われ思案する美月。少ししてハッとなって口を開いた。

 

「…そう言えば渡辺先輩がカーブに差し掛かって減速、加速するときに水面の下の方に青白い…禍々しい燐光が見えました。その直後に事故が発生して…」

 

「青白い」

 

「禍々しい燐光…?」

 

啓と花音が口を揃えて疑問を浮かべる。そんなものは自分達が見えなかったが彼女が霊視過敏症の副産物でそれが見えているのだろうと納得していると達也は質問を重ねた。

 

「美月、それを見た時にどの様なイメージが見えた?」

 

「ええと…サイオンの針…まるで蠍の尻尾のような物が蜃気楼のように見えましたけれど…」

 

「(蠍の尾…?一体渡辺先輩達の魔法式を狂わせた存在が何なのかはまだ分からないが…足掛かりは手に入れられた)…ありがとう美月。先輩達の魔法式が狂わせた存在の足掛かりになるかもしれない」

 

「達也さんのお役に立てたのなら幸いです。犯人が見つかれば良いですね…」

 

「ああ。必ず見つけて見せる(深雪の試合もある…もし被害が及べば…)」

 

そう達也に言われて美月はホッと胸を撫で下ろす。まだ事件が解決したわけではないが足掛かりになる、と言われれば協力した側としても嬉しいのだろう。

 

「だが、それだけではない、と俺は思っている。さっきの話だがこいつを見てくれ」

 

そう告げ改め幹比古達をモニターの前に移動させ操作しシミュレーション映像を再生させた。

モニターに映るフレームワイヤーが七校選手の動きを示しているが減速せずそのまま摩利へ突っ込んでいる進路を取っており本来ならば有り得ないミスを犯している。

その事に花音が「九校戦に選ばれる選手がこの程度のミスをする筈がない」と言うと全員が肯定した。

その事に達也が全員の表情に驚愕を浮かび上がらせた。

 

「恐らく七校選手は使用するCADに細工を施されていたのだと思います」

 

「でも…そんなことが可能なのかい?もし細工できたとしたら何時…」

 

「七校の内部スタッフに内通者…もとい裏切り者がいるとか?」

 

達也の言葉に啓と花音が思案するが達也は小さく振りかぶる。

 

「残念ですが確証はありません。七校へCADを調査させてくれ、と言っても一蹴されてしまうでしょう。ですが細工するチャンスは一度だけあります」

 

「やっぱり裏切り?」

 

「いえ…その可能性は否定しきれませんが…俺は大会運営委員会に工作員が紛れ込んでいる可能性が高いと思います」

 

その発言に会話が途切れ幹比古達は絶句したのは一様に「信じられない…」という表情を浮かべる。

 

「しかし、お兄様…大会運営に工作員が紛れ込んでいるとして一体何時、CADに細工を施したのでしょうか?競技用のCADは各校によって厳重に保管されている筈ですが」

 

「…CADは一度各校の手を離れて大会運営の手に渡る」

 

「あっ…!」

 

その事を失念したことに深雪が声をあげると啓と花音、美月と幹比古は絶句したままだった。

 

「問題は手口が分からない…そこが厄介だが…」

 

万が一の事があったとしても警戒を怠ることは出来ない。

これから試合を控える大事な妹とそのCADを調整する達也は心に刻む…だが問題はそれだけではないことを思い浮かべていると裾野軍病院にいた真由美から連絡が入り摩利から訊いた話を伝えてくれた。

その情報を元にそれを知っているであろう人物へコンタクトを取った。

 

◆ ◆ ◆

 

「んで…俺が呼ばれたって訳ね」

 

「済まないな…それに叔母上も申し訳ございません。」

 

事故の経緯とここに呼んだ理由を達也に告げられ苦笑しながら受け入れる。

一方で頭を下げる達也を見て真夜は優しく微笑む。

 

「良いのよ達也さん。それにしても…達也さんの”目”をもってしても解析できない、となれば厄介ね。此方から圧を掛けて事故を引き起こした選手のCADを此方で回収依頼を掛けましょうか?」

 

「宜しいので?」

 

「ええ。”解析”は得意でしょう?あまり時間の猶予は与えて上げられませんが…しっかりとね」

 

「はい」

 

「それに…朔也さんは大会運営が怪しいと考えているのですね?」

 

「ええ。達也の考察は正しいでしょう…大会運営のメンバーに一人紛れ込んでいる筈だ。誰かは分からないが恐らくはCADに遅延用のウイルスを注入している。…大陸系の術式だろうな…となれば動きを見せているのは国際シンジゲートの”無頭竜”…だろう。裏で賭け事でもしてるんだろうさ」

 

「どうしてそれを…知っている?」

 

「俺は知っていることしか知らないよ…(原作をみてる、とは言えないしな)…まぁ隣にいる人が情報源さ。真夜さん、さっきの件お願いしても良いですか?」

 

そう告げると達也は「なるほど…」と納得してくれた。

そして真夜の表情が”四葉当主”としての側面を見せる。

 

「分かりました。此方で手を回しておきます。大亜連合が動いている、となれば無視は出来ません」

 

「ありがとう。迷惑を掛けるね…」

 

「いいのよ。可愛い甥達と朔也さんのお願いだし…それに」

 

「それに?」

 

「せっかくのデートをめちゃくちゃにされたお礼をしなくては行けませんので」

 

満面の笑みで怒りを現す真夜を見て朔也は苦笑し達也と深雪は少し、恐怖で震えた。

調査する手段と何故か九島老師の対話を取り付ける事に成功した達也は話題をのちほど連絡があった摩利達の証言を交え達也と朔也は考え始めた。

 

「なる程な…魔法式が歪み…ボードが独りでに…か。美月が見たサイオンが青白く禍々しい燐光を放っていた…」

 

「ああ。七草先輩と美月はそう言っていた。俺はあの廃工場で見た拉致外(怪物)の存在が関わっているんじゃ無いか、と思っている」

 

「そうか…」

 

「どうなんだ?」

 

達也に言われた状況証拠を言われ朔也は思案する。

 

(確かに…原作であったような事故内容じゃない。水面に潜ませた精霊が引き起こせる程の想子の活性化が起これば監視網に引っ掛かるだろう…監視網に引っ掛からないとなれば最小のサイオン出力…だがそれではあの規模の事故は起こらない…となれば()()()()しかない。だが…状況が少なすぎる)

 

「達也。他には美月からなにか訊いていないか?例えばイメージとか…」

 

「イメージ?…そう言えば美月が”蠍の尾”のようなものを幻視した。と言っていたな…」

 

「ッ!そうか…」

 

ビンゴ。そのイメージならば朔也が持つ魔法でも隠密性が高い魔法…というか類似する()()を知っている。

摩利の事故を見逃した罪滅ぼしではないが助言はしておかなければならないし…この世界にその”力”があるということだから無視することは出来なくなった。前もって神様より渡された”設定”を告げた。

 

「知っているのか」

 

「ああ。だが俺が直接見た訳じゃないから違っているかもしれないが…それが本当なら渡辺先輩達を妨害した魔法…達也の言う通り”関わっている”だろう」

 

「では姿が…」

 

「恐らく能力だけ使って別の場所に潜んでいるだろう。だがこの世に降臨させるには術者の膨大なサイオンが必要になる。今は動かせない筈だ」

 

「文字通り”神の顕能”を再現するため…大昔に作られた、が権力者達がその能力を恐れ魔法の歴史から闇に屠られた系統外魔法(エックスナンバー)…”神星・光導魔法”だ」

 

「「系統外魔法(エックスナンバー)…”神星・光導魔法”?」」

 

聞き馴染みの無い言葉に達也と深雪は怪訝な表情を浮かべていた。

一方で真夜は朔也から魔法の概要を聞いているので隣で静かにしている。

 

「達也達があの廃工場で見たのは文字通りの”神様”だよ。あれは山羊座の魔法…”魔羯邪神(シュタインボルグ)”だ。あの時どう言ったプロセスで召喚したのか分からんがあれは現代魔法師の天敵だ。実際そうだったろう?現代物理学、魔法学には当てはまらない…あれはこの世に存在していない。輪郭はあるが実態はない…だろ?それを産み出したのが”光導魔法”だ」

 

「…ああ」

 

実際に達也の異能力と魔法が通用しなかったのをつつかれ珍しく答えに窮していたのを見て先程の真剣な表情を崩さぬまま言葉を続ける。

 

「…山羊座?つまり魔法は星座…光導十二宮をモチーフに作成されているのでしょうか?」

 

ふと、朔也が発言した言葉に質問を投げ掛けると先程まで張り詰めていた空気が少しだけ弛緩する。

 

「お、流石は博識だな深雪。十二の星座からなる魔法の名前と特性を借り受け作成された魔法だ。俺が使う精神干渉系統(セフィロ・アリエス)や”領域干渉防御(アクア・エリシオン)”も同じ”神星・光導魔法”は星座をモチーフに作られてるんだ…と言っても俺も詳しい作成経緯は祖父から少し聞いた程度なんだけど。今回仕掛けてきた相手も俺と同じ魔法を使える、ってのは厄介なんだがね」

 

ま、俺と比べると大分劣化してるし恐らく、十全に使える人間は片手しかいないけどね、と二人を安心させるために補足した。

 

「とまぁ…話は逸れてしまったが。今回渡辺先輩達に使用されたのは恐らく…」

 

少し俯いていた朔也が顔をあげる。その表情に何時もの笑みはない。

 

「尤も情報強度の低い魔法師の脳に狙いを定めた不可識の毒をもって魔法式の脆弱を内部から破壊し強制的に暴き出し干渉させる領域干渉魔法であり…決して見破れず逆に噛みつかせボードに魔法を実行させる…」

 

厄介なその魔法式(スピリット)はその毒を持ち戦場を支配する神をも屠り無機物へ命を与え隷属させる青き神騎。

 

「領域干渉系統外魔法…蠍座”スコルスピア”。それが正体だ」

 

「”蠍座”…か」

 

「ああ。ま、それは良いとして…一先ず”光導魔法”を使う工作員に関しては俺に任せろ。お前は深雪達一年生の試合に集中していてくれ」

 

「分かった…頼む」

 

「ああ。将来の甥に良いところを見せないと。勿論、真夜さんの為に、ね?」

 

「ふふふっ…朔也さんったら。そんなことをしなくても良いところは沢山ありますわ」

 

「ありがとう。それを言ったら真夜さんの良いところ沢山あるよ…言いきれないぐらい」

 

「あははは…」

 

「ふふふふ…」

 

朔也は真夜の手を取り密着する。

再び甘々な空間を作り出しそれを見せられる甥と姪達は苦笑してその光景をみていた。

 

((また始まった…!))

 




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宜しくお願いします。

九校戦から真夜様を参加させるとしたらどの年代が良いですか?

  • 十二歳ぐらい(中学生ぐらい)
  • 十六歳ぐらい(主人公より少し上お姉さん)
  • 本編(よりは若二十代それで制服を…)
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