助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
真のいちゃいちゃは夏休み編とかになるかも知れませんね…
甘々な空間を作り出していた朔也に対して、と言うよりも真夜に対して申し訳なりながら質問した。
「…それはそうと朔也。まだ詳しく聞いていなかったが…他にどんな魔法が使えるんだ?」
「お兄様、それは…」
兄の直接的な質問に深雪は苦言を呈した。
実際、この世界に置いて個人所有の魔法についての質問は御法度というか暗黙のルール…「質問、又は探ってはならない」というものがあるからだ。直接的な質問に思わず苦笑してしまう。
「率直だな…まぁ良い機会だし少し説明しておくよ。俺自身も上手く説明出来ない部分もあるが…」
真夜と指を絡めていたのをほどき朔也は達也達に向き直った。
「そもそも”光導魔法”はあらゆる状況に対応させるために作られた魔法で応用性は現代魔法の比じゃない。さっきも言ったが”神の力”を再現する為に作られたからな」
「神の力…まさかとは思うが”戦略級””戦術級”に匹敵すると?」
「そこは想像に任せるよ。俺の口からは…今は言えない…ただ
「どうした?」
「いや、なんでもない」
そう一旦区切り真夜の方を見る。真夜は「気にせず続けて」と促され言葉を紡ぐ。
「…しかし。俺が崑侖方院の魔法師達を相手に戦えたのもその魔法の力が大きい。そもそも俺が過去に飛んで真夜さんを助け出す事が出来た”光導魔法”の応用だ(まぁ…”バトルスピリッツ”の設定なんだけどね。そこまで説明すると複雑になっちゃうし)今は使えなくなってしまっているんだが…」
その言葉に達也と深雪は成る程、と納得する。
五月に顔を合わせた際、朔也の情報を聞いていた達也達。家族が事故で亡くしているのは事実であった。しかしそれでは彼が生きた時代と年代が合わなくなってしまうのだがそこは真夜…”四葉家”が情報を操作しているからである。
「”蠍座”の魔法の兆候を捜索するために丁度良い…これは”光導魔法”の中にある”星魂魔法”と呼ばれる補助魔法…その一端をお見せしようかな?…さぁ来い!」
そう告げ朔也は徐に左手を掲げる。極小のサイオンの奔流が凄まじい速度で複数が展開されていく。
『
『
『
『
魔方陣から出現する掌ほどの大きさの生き物…だがその見た目はどれにも当てはまらない”幻獣”という言葉が当てはまる生き物…精霊達が産み出された。其々が鋭利な爪や尻尾に鉄球をつけた物々しい武器を身に纏う”恐竜”のような見た目をしている…が現物よりもかなりデフォルメが効いている30センチ程度のぬいぐるみのような見た目に変化している。
(そもそも本来コイツら”スピリット”だからな…凶暴だし。此のくらいはアレンジ効かせておかないと)
本来はもっとでかくて人間サイズぐらいあるがな…と心の中で補足した。
「これは…?」
「クルル…」
達也と深雪の周りに付き従う。”カメレオプス”は達也の肩に飛び乗り目をキョロキョロ、と動かし”ブレイドラ”は必死に羽を動かし浮き上がるそれを気づいた深雪が手を差し出すと掌にぽふん、と乗るようして鳴き声を上げる。
まさか肩や掌に乗るとは思わず朔也も「お?」と驚いていた。
「お、どうやら二人が気に入ったようだな。使ってやってくれ」
「ピィ!」
「まぁ…ふふふっ可愛らしいですね。これが…星魂魔法?」
ちょんちょんぷにぷに、と深雪は”ブレイドラ”のお腹をつつく。くすぐったいのか震えていたが嫌がってはいないらしく深雪の指先を受け入れていた。ぷにぷにとした感覚に顔が綻ぶ。
「コイツらは”星魂魔法”…まぁ対象を
そうすると四体の使い魔が「任せろ!」と言わんばかりに鳴き声を上げる。
「”幻獣”…現象ではなく呼び出しているのか?これが朔也の魔法…無駄が無いな。これも古式魔法なのか」
達也の発言はバカにしているわけではない。体系が違う魔法を現代魔法に通じる技法を用いて構成されている此の魔法は両方の良いとこ取りをしている所に感心を寄せていたからだ。
「古式は古式だけど実際に”呼び出している”からな。無駄は殆ど無い、と言っても良いだろう。現代魔法を凌駕するのが”星魂魔法”の特徴さ。とりあえず此方も動くからお前達は明日の新人戦に向けて頑張れ。”蠍座”に関しては此方で対応するから気にするな。万が一お前達が狙われるようなことがあったとしてもそいつらがなんとかしてくれる」
「ああ。…頼むぞ”カメレオプス”」
「クルル…」
「はい。お願いね”ブレイドラ”」
「ピィ!」
二体は達也と深雪のフォローに入り残る”モルゲザウルス”と”ヴェロキハルパー”は九校戦会場へ散って索敵へ当たることとなった。一先ずの”蠍座”に関しての捜索が始まろうとしていた。
そこで話は終わったかに思えたが続きがあった。
「あ、そう言えば…」
「「??」」
「これは俺の予想なんだが…達也。さらに忙しくなると思うからしっかり休んでおけよ?深雪もな?」
「ああ、分かった」
「分かりました」
「それじゃ話は終わり…真夜さん。帰りましょうか」
「ええ。それでは二人とも頑張ってね。明日からの競技も応援していますから」
そして二人は再び手を取り合って借りていた会議室を出ていく。
その日の夕方、達也達は真由美達首脳陣に呼び出された二人…深雪が”ミラージ・バット”本戦に出場しそれに付随する形で達也もエンジニアを担当することとなり明日からの忙しさを加速させた。
「朔也は未来予知者なのか…?」
「そうかもしれませんね…」
部屋に戻り明日以降の新人戦と本戦の事を考える。
自分達の実力を鑑みての登用なのだろうが…裏で暗躍する者達がいる中でそれが精神的な負担となっているのは無視できないファクターだった。兄ですら欺く”魔法”の存在が不安を煽る。
「…不安かい深雪?」
「いえ…お兄様がサポートしてくれると言うのならこんなに心強いことはありません…それに小さな応援者もいますから」
「ピィ!」
そう微笑み掌の”ブレイドラ”を抱き締めると「応援してるぞ!」と言っているように鳴き声を上げた。
「それに朔也と叔母上もいる…心配するな」
「はい…」
「さ、もう夜も遅い。部屋まで送ろう」
「ありがとうございます。お兄様」
その日の夜、深雪は部屋に戻り就寝時”ブレイドラ”を抱き締めながら寝たら安眠出来たという。
「ピィ…」
(モチモチぷにぷに…少しひんやりしてて気持ちいい)
◆ ◆ ◆
「貢さん。夜分に御免なさいね」
「…如何されましたが真夜様」
「?顔色が宜しくないけどどうされたの?」
達也達が眠りに入ろうとしている時、別のホテルにて真夜が貢へ連絡を取っていたのは先程提案した七校の使用したCADの回収依頼をしようとしていたのだが…。
画面に映る貢の顔色は宜しくない…それに画角では分かりづらいが胃の辺りを押さえている。それを見た朔也が苦笑…と言うか申し訳なさそうな表情を浮かべる。
(貢さん…これ胃腸やってるぞこれ…本当に申し訳ない)
「いいえ。なんでもありませんぞ?それでこの夜更けに一体どうされましたか」
「貢さんにお願いしたいことがありましたので連絡を…」
にこやかだった会話だったそれは四葉本家当主と分家当主のぴりつく会話へと変化する。
「この九校戦の背後に国際シンジケート”無頭竜”の日本支部…恐らくはスポンサーに大亜連合が関わっているようです」
『…!』
「私が直接的な被害を受けている訳ではないのですが今日、第一高校の生徒が被害を受けこの後もちょっかいを掛けてくるかもしれませんの。未だ相手は選手のCADだけを細工してくるだけで可愛いものですがそのまま、というのも面白くないので細工したCAD…に関して少し情報が欲しいのです」
『成る程…それでしたらその会場に文弥と亜夜子がおりますので直ぐ対応できます』
「あら…亜夜子さんと文弥さんが?」
『ええ。観戦目的でしたが都合が宜しいかと。』
「御免なさいね貢さん…では目的のものを入手出来たら報告をお願いするわ」
『畏まりました。では…』
通信を切ろうとする貢に真夜の隣にいた朔也が待ったを掛けた。
「貢さん。度々申し訳ございません。今度
そう告げると貢は苦笑しながら返答した。
『いや、気にしないでくれ。これも仕事だ。それに…』
モニター越しに貢の視線が真夜に向けられる。視線の先にいる真夜の表情は柔らかく女性…少女らしい微笑を浮かべているそれは彼が出現するまでは暗く物憂げな表情を常に浮かべていたのを知っているからだ。
他分家は彼の存在をあまり快く思っていない者も多い。彼の実力の一端を見せて貰ったが好意的なのは黒羽と津久葉ぐらいなものだ。真夜からの口から彼の人となりと魔法力を聞いているだけだが…それが真実なんだろう、と貢は思っている。彼もまた真夜を愛している。従兄として従妹の幸せを願うのは良いだろう…しかし三十年も待たせたのだから責任は持てよ?と思うのだが。胃痛は勘弁して欲しいが。
「?」
『いや、なんでもない。待っているよ。君が持ってくる
「俺の魔法なんかが参考になるのなら喜んで」
そう告げると貢の表情が少しだけ和らいだ。
『では真夜様。明日までには報告が出来ると思いますのでお待ちください』
「ええ。宜しくお願いしますね」
『それと…朔也殿。そちらへ滞在中の真夜様を頼みます』
「ええ。お任せを」
モニターが落ち静寂が広がる。明日から忙しくなる、と互いに確信していた。
◆ ◆ ◆
九校戦四日目。本戦は一旦休みとなり五日間は新入生で競い合う新人戦が始まる。
今現在第一高校がリードしておりその次点が第三高校…という並びになっており点数いかん次第では新人戦も優勝できるし総合優勝が可能であった。
出場する一年生達の気合いの入り様は本戦の比ではない。(熱量という意味では同等)
新人戦で妨害が入るのは”モノリスコード”だけだったが予想外の妨害が入る可能性もあるので朔也は気を抜くことが出来ないのだが。
達也が裏側で様々な女子生徒にアプローチ(恋愛面と技能的な意味で)されておりそれを”カメレオプス”と”ブレイドラ”を通じて報告を受けていた。
「あらあら…達也さんったらモテモテね。北山雫さんに専属技師にならないか…って正体を知ったらビックリするんじゃないかしら?」
「まぁね。まぁ雫の事だから正体を知ったところで関わりを変えようとはしないと思うけど」
「それもそうね。企業家北山潮と振動系魔法師北山紅音の娘…血縁としては申し分無しだわ。それに光井ほのかさん…光のエレメントね。少し…というよりも達也さんに好意を寄せるのが他の人から見ればバレバレね」
ほのかのイケイケ押せ押せのアピールを報告を受けておりその事に苦笑する真夜。
達也の魔法…サイオンの無駄の無さに惚れ込んでしまったのは彼女は原作通りの依存癖を持っている。
(この世界だと達也は誰と結婚するんだろうか…?やっぱり深雪?でも最近の深雪達を見てると原作程…と言うか普通の兄弟の…よりは距離が近いけど改められてる気がするし…うーん)
頭を悩ませる朔也。その兄妹達の距離感の改善に自分達が関わっている事を毛ほども思っていないのだが。
実際にこの世界の深雪も達也のために産み出された完全調整体ではあるのだが実の兄に異性に対する程の好意を抱いているわけではなくめちゃくちゃ兄妹仲が良いだけの女の子だ。
距離感のその辺りは真夜と深夜が教育していたらしく問題無いようだが…感情の情動が深雪…と言うより”家族”に向いているらしい、とその事を春頃に聞かされて頭を悩ませた。
(でも達也って性欲無い訳じゃないよな?)
ぶっちゃけると達也も性欲が無い訳じゃないので高校生ぐらいの女の子に裸で言い寄られる(ほのかやリーナ、そして真由美…というか【横浜騒乱編】で達也が学校の図書館?だったかで真由美に耳元で据え膳、的な事を言っていた)ような事になれば普通に行けるんじゃないか?と思っている。
(最悪、感情を全部、とは行かないが取り戻す方法もある。”誓約”に関しても”星魂魔法”で抑えられる。俺を殺すようなことでもしない限り解除はされない……真夜さんに提案してみるか。あと達也がラブコメしてるのはちょっと見てみたい…と俺もまぁ自分勝手だな。真夜さんと俺に火の粉が降り掛からなければ放置しても良い、って思ってるんだから)
とは言え達也達の友人関係の構築に全く口を出さない、と言うのもそれは違う。既に”友人”で”家族”なのだから。
この作品の主人公が”達也”なのだから問題ごとを引っ張ってくる、巻き込まれるのも彼だ。近くにいる自分達も無関係ではいられない。備えが必要だろう。
そうこうしていると新人戦”スピード・シューティング”は終了。一位から三位まで第一高校が独占する形となり一位は雫となった。
競技時に使用した新魔法”能動空中機雷”は魔法大全に登録が打診されたが達也はそれを辞退し雫が最初の使用者として選ばれることとなった。達也としても名前が乗るのというのは好ましくない、と思ったからか。
同日予選までだがほのかの出場する”バトルボード”は彼女の得意魔法の特性と達也の策と上手く嵌まり危なげなく通過していた。”ブレイドラ”達からの報告は無く”蠍座”の魔法反応は見られない…警戒しながらほのかの”バトル・ボード”を観戦した。隣にいる真夜は楽しそうに試合の流れを見ている。
(まさか、とは思うが光導魔法を使う度に”代償”…”生命”を使って召喚してるんじゃあるまいな…)
一方で自分の廃工場の光景が再生される。昨夜、達也達には告げなかったが”シュタインボルク”が召喚する際に足元に出た魔方陣…あれは”転召”時のエフェクトであり術者…である司一の命をコストとして召喚しているように見えた。
戦闘後に司一は体のあらゆる成分が吸い尽くされ尤も行動不全となり顕著なのがサイオンがゼロになっていた状況から判断して”蠍座”も同じ様に召喚されたと判断して良いだろう。
(俺の場合召喚…いや発動する際の
だとするのならば非常に回転率の悪い”魔法”である。
しかしそのリターンに見合うほどの能力があるのも間違いない。
(それを前提にするのならは発動するために魔法師を生け贄にしなくちゃならない…だが回転率は悪い。今回の”蠍座”は維持できるほどの召喚コストを確保出来なかった…俺が表に出れば引っ張れるか?と言うより何故俺以外が使用できている?神様余計な敵を連れてきたのか…)
敵が”光導魔法”を使っているのなら同じ”光導魔法”を見せれば食いついてくる可能性はあるが…出来れば隠しておきたい能力だ。真夜を危険に巻き込みかねない。転生させた神様に感謝しつつ恨み節をぶつけたくなった。
(全く…俺はただ真夜さんと一緒に高校生の夏の思い出を作りたいだけだってのに…余計なことを考えなくちゃならないのは面倒だな)
「そろそろ決着だ!」
誰かの声が思考を打ち切らせ試合の経過を見るともう試合は終了間際だった。
ほのかは最終ラップを走りきり他選手と一周差を着けてゴールしコースから上がって来たほのかずぶ濡れのまま達也へ抱きつき泣き始める。
その光景を眼下に見て朔也と真夜は「あらあら」となっていた。
「未だ予選突破しただけなのにねぇ…」
「嬉しかったんでしょう」
ほのかが感極まって泣き出そうとしているその際に「いつも緊張して試合に勝てなかった」と小学生の頃の思い出思い浮かべ近くにいる雫があきれながら「小学生の頃の話…」と補足しているのだろう。
「これからが大変ね。有力選手はマークされやすくなるから」
「でも達也の事だから策は講じているでしょう」
◆ ◆ ◆
四日目の時計の針が十二時を回る前。
朔也達が宿泊するホテルのレセプションルームを貸しきり向かい合う二人掛けのソファーへ腰掛けル複数の男女が密談していた。
一組は双子の男女であり女装…もとい変装をしていないカジュアルなスーツを着用する黒羽文弥と赤と黒のサマードレスを身に纏う黒羽亜夜子である。
対面するのは隣り合って座る真夜と朔也だ。
「突然のお願い御免なさいね二人とも。折角の九校戦の最中なのに」
「ご当主様お気になさらないでください。私たちに姉弟にとっては簡単な仕事でした」
「文弥くんも亜夜子さんも突然すまないね」
「いえ、気になさらないで下さい。丁度朔也さんに教えていただいた魔法を使うには良い機会でしたので」
「そうか…上手く使いこなせているのなら此方としても教えた甲斐があったね」
お互いに仕事への労いと感謝の言葉を掛ける。朔也は文弥へ柔らかい普段通りの笑みを向けるとキラキラと目を輝かせている(幻視)のを見て真夜が笑みを溢す。
「ふふふっ…朔也さん。もう文弥くんの心を射止めたのですね。すっかりと好かれて…」
「ご、ご当主様っ」
「文弥くんに好かれるのなら嬉しいことはないな。達也と同じく俺を慕ってくれると嬉しいかな?」
「えっ…あっ…その、また模擬戦をお願いします…」
恥ずかしそうに顔を赤くする文弥を見て微笑む朔也。
「うん、良いよ。今度達也も交えて話をしようか」
「は、はいっ」
その光景を見ていた真夜と亜夜子は口を揃えて「「人誑しだわ」ですわ…」と呟いた。
何故ここまで黒羽姉弟に好かれているのは春先まで遡る。
四葉本家へ朔也を送り届けた後少し滞在している最中彼がどうして呼ばれたのか?と言う事実を真夜の口から聞かされ驚くと同時に魔法師として実力を確認したくなった二人は魔法による模擬戦を挑んだ。
朔也も快く受け入れ一対一…ではなく一対二で大丈夫、と言う舐めてたわけではないが…が手も足も出ずに二人は四葉家の大地に転がった。
「何て…魔法力なの…!」
「手も足も…出ないなんて…」
亜夜子の疑似瞬間移動と”極致拡散”はその性質上
決定打を与えられず二人は纏めて
その光景を紅茶を飲みながら見ていた真夜が一言。
「大人げないですわね朔也さん。二人は四葉の中でも優秀な魔法師ですのに」
強さと人となりを知ってそこから関わりを持つようになり潜入や隠密に使えそうな”星魂魔法”を教えたり相談に乗ったりしていると黒羽姉弟に特に文弥に好かれたのだった。亜夜子に関しては達也との恋愛相談に乗ったりと(神様知識より抜粋)して連絡を取り合っていたりする。
「一先ずこれが件のCADになります。七校の保管庫には同じものを設置してきましたので交換してきた、とバレる可能性はまずありません」
そう告げ応接セットの机に置かれたのは小さな包み…そこに目的の物が入っている。
「俺が教えた”インビジブルクローク”は使いこなせているみたいだね」
「ええ。まさかサイオンレーダーや熱感知や赤外線装置に引っ掛からないなんて…恐ろしいです」
朔也が亜夜子に教えたのは”インビジブルクローク”と言う複合系統魔法であり彼女が得意とする”極致拡散”を応用したものだ。対象の「存在感」と「光学的・魔法的な特徴」を空間に霧散・透過させ対象を完全な不可視状態へ移行させ
この魔法をもって更に亜夜子は優秀な諜報員として成長していた。
「亜夜子さんは優秀だからね。使いこなせると思っていたけど…達也とコンビを組ませたら四葉家で無双出来るんじゃないかな?お似合いだと思うよ?能力を無視にしても」
実際に達也の能力と亜夜子の実力を考えると手がつけられなくなってしまうのだが。
「そ、そんな事は…」
「お似合い」と言われ少し恥ずかしそうに顔をうつむかせる亜夜子をみて微笑を浮かべる。
実際達也も亜夜子に対しては好意を持っているだろうし少なくとも嫌いではない筈だ。
「ともかくありがとう。この九校戦を無茶苦茶にしようとしている連中の足掛かりが着く筈だ。夜分遅くに呼び出してごめんね」
「ご武運を」
礼を告げ部屋を後にする。朔也は真夜を部屋に戻し達也が宿泊するホテルのレセプションルームの一室を借りた。
受け取った品物を直後に達也と連絡を取って仕込まれたとされるCADを手渡した。
サイオンを流し起動させると規定した魔法が上手く発動せず不発、制御が出来ない状態になったのを確認することが出来のだった。
「どうだ?」
「特定の魔法を発動すると不発、または不能になるな…それに今”精霊の目”で確認したが何かが紛れ込んでいる…これが大陸側の術式なのか…朔也は分かるか?」
何かが紛れ込んでいる事が判明したがその首謀者を確保するためには現行犯でなければならない。
その名前を知るのは本来九島烈が検査テントに偶々騒ぎを聞き付けてやって来るところから始まる。
タイミングを考えると”ミラージ・バット”で深雪のCADに仕込みが入るのだが…
(あのタイミングで達也が四葉の直系だと気がついて声を掛けてきたんだっけ…?知識として知っていれば工作員を追い詰める口実に出来るが…別の邪魔が入る可能性もある…うーむ)
動きを見せない”蠍座”が厄介である。今の段階で取り押さえられると別の動きをされてしまう可能性があるため達也には釘を差しておかなければならない。
「…少し、達也には約束して欲しい」
「なんだ?」
「その術式の名前をもし見つけた場合検査場で言わないでくれ。それに相手を殺そうとするな。…それに恐らく次の仕込みは今度のミラージ本戦だ。」
「ッ…!その理由は」
達也の表情が険しい物へ変化する。当然だろう深雪に危害が加えられる、と宣言しているようなものだからだ。
「渡辺先輩が本戦のミラージを棄権した。その代役で深雪が参加したとなれば狙われる確率は高くなる。同試合に出る小早川先輩も同様…新人戦は達也が調整したCADの選手が上位を占めるだろうからな。相手としては快進撃を止めさせたいんだよ。まだ一年生のポイントは本戦の半分だからな。最後の優勝阻止は”ミラージ・バット”しかない」
ある意味でそうさせるのは”お前の技術が高すぎるから”と言われ達也は変化の乏しい表情に複雑な色が浮かんでいる様に見えた。
「……」
「その犯行現場を抑えてくれ。今見た反応を記憶しただろう?その時に間に合うように手を打つ。約束する」
朔也を見る達也の表情は感情の変動は無いように思えたが葛藤している様に感じた。逆に達也を見る朔也の表情は普段と違い笑みは無くと力強く見つめる。
「……分かった。朔也を信じる」
「ああ。ありがとう達也…今日はもう遅い。明日に向けて休もう」
そう告げ達也を先に退出させる。残った朔也は達也へ手渡した件のCADを回収し一校選手の宿泊するホテルを後にした。
◆ ◆ ◆
九校戦五日目。メイン、というか注目競技は”アイス・ピラーズ・ブレイク”だ。
試合の流れが本編と同じであり工作員が動く姿や”蠍座”の兆候は見られない。
”アイス・ピラーズ・ブレイク”に出場する明智英美が大胆な戦法を用いたり雫が共振破壊で破壊し深雪が圧倒的な魔法力で相手選手の氷柱を蹂躙して決勝トーナメントに三名が独占すると言う快挙を成し遂げていた。
”クラウドボール”は女子は準優勝と入賞と言うまぁまぁな結果を残している。
その結果を話し合う夕食会で悔しさや喜びを分かち合うテーブルは男子と女子で明と暗で分かれており男子が暗、女子が明と分かりやすいぐらいに。
男子の結果は振るわず全ての競技で予選落ち、と言う女子に比べると明らかなテンションの低さが示されている。
それに拍車を掛けているのが二科生である達也がエンジニアを努めた試合が全て決勝リーグや優勝を果たしており今までの魔法を評価する声が上がり達也を女子生徒が取り囲み褒め称え評価していた。
その光景をみて深雪は嬉しいと思いつつ複雑な心境のまま使い魔として使役している”ブレイドラ”を食事が乗せられたテーブルの上に置いてハムを上げながらみていた。
(お兄様が認められるのは嬉しいけど遠くに行ってしまいそうで…複雑ね)
(ピィ?)
ハムをかじっていた”ブレイドラ”が見上げ首?を傾げた。その姿を見て微笑み頭を撫でる。
(ふふふ…なんでもないわ。今日も警戒ありがとう)
(ピィ!)
一人の競技に参加して入賞した女子が「司波くんに担当してもらえば優勝できたかも」とポロリ、と漏らすと男子のエリアが一段と静かになった気がした。
それに気がついた達也が深雪に目配せしフォローし謝罪の言葉を告げボリュームを下げるが男子のテンションはさがったままだ。
その中の一人男子生徒…森崎が苛立ちながら食堂を後にする。
立ち去った森崎が取り巻きの生徒から追いかけられ立ち止まり”モノリスコード”で優勝することを決意して後にしていた。
◆ ◆ ◆
時を同じくして横浜・中華街。
色とりどりの食事が並ぶテーブルを複数の男性が苛立ちながら取り囲んでいた。
「新人戦は第三高校が優勢ではなかったのか?」
「折角渡辺選手を棄権に追い込んだのにこのままでは第一高校が優勝してしまうではないか」
会話は全て英語で行われており全員が東ユーラシア混血の人種であることが伺わせる。
「本命が優勝すれば、我々胴元の一人敗けだ」
「今回のカジノは特に大口の客を集めた。支払い配当は決して安くない。今期のビジネスに大きな穴を開けるだろうそうなれば…」
男が呟き室内の上に掛けられた竜の刺繍が施された掛け軸を見上げると沈黙が降りた。
「ここにいる全員が本部の粛清対象となるだろう。損失額によってはボスが直々に手を下すかもしれない…」
「死ぬだけならまだ、良いが…」
重い呟きが頭上から降りてくる。頭を下げていた男の一人が苛立つように顔を上げる。
「本部より遣わせられたあの男は何をやっているのだ?渡辺選手を棄権させた後なんの動きもないではないか。しかも此方が貸し出した”ジェネレーター”一体を失うとは…ボスは何を考えているのだ」
苛立ちを含ませるその言葉にこの場にいるリーダーらしき人物が口を開いた。
「…ボスの友人だ。我々がどうこう出来る相手ではない。ボスも”その男の要望を聞け”としか仰られない。逆らえば此方が余計な心労を受けることになるぞ。仕事はしてくれたのだ…今は被害を被っていないのだから好きにさせておけ。此方は手筈通り事を進ませるのだ」
男達の目的は一校を優勝させないこと。その目的のためならば他人の熱意や努力を踏みにじることなど動作もないのだから。
感想&お気に入り登録&高評価ありがとうございます。励みになっております
九校戦から真夜様を参加させるとしたらどの年代が良いですか?
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十二歳ぐらい(中学生ぐらい)
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十六歳ぐらい(主人公より少し上お姉さん)
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本編(よりは若二十代それで制服を…)