助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
新人戦モノリスコード決勝は第一高校対第三高校の対戦カードとなった。
各校の生徒がステージのゲートから登場した。
ワアアアアアアアアアッ………
双校の選手が登場すると客席と関係者席が大きく沸いた。草原ステージに立ち周囲の状況を確認していると、達也がの歓声に反応し呟いた。
「凄い歓声だな」
「…それだけ注目されてるってことだろうな」
「……(え、他人事??)」
まるで他人事のように感じている達也と朔也は苦笑し、それを感じている幹比古は装備したマントで顔を隠すようにしていた。突如として黙ってしまったチームメイトの存在に気がついて視線を向ける。
「…ん?緊張してるのか?吉田」
「当たり前だろう…君たちは緊張しないのかい?相手はあの”クリムゾン・プリンス”に”カーディナル・ジョージ”が相手なんだよ?緊張しない方が可笑しいよ…それにこの装備…本当に必要なのかい?」
幹比古は歓声に萎縮してしまっているようで、尚且つ今身に付けているマントの存在が恥ずかしいのか、少し顔が紅潮している。恐らくだが、今ごろ観客席でエリカが笑い声を上げているだろうが、笑われるだけで勝利を掴めるのなら安い代償だろう…幹比古たちには悪いが。
「…今さらじゃないか?というか今まで他選手と戦ってきた…それが相手が格上であったとしてもここでビビって気持ちでまけたところで何が始まるわけでもあるまいし。なんなら相手の顔がジャガイモやボンタンになるような精神干渉系統の魔法でも使うか?」
「いや…大丈夫。うん、大丈夫だよ」
「それに相手が十師族だと言っても、本気の殺し合いじゃないんだ。気楽にいこうよ?」
落ち着かせようと声を声を掛けると、達也が顔色を変えずに声をかけた。
「いや、そう思えるのはお前だけだと思うぞ…」
「うーん?そうかな。こんなのはただの試合だよ。……相手にしてみればどうかは知らないが」
確かに相手はネームバリューも戦績もこちらからしてみれば”強者”だろうが、それはここにいる朔也たち全員は観客からしてみれば、無名からこの決勝戦を勝ち残った”強者”だ。
そんなことを朔也が思っていると、向こうの会場入り口から人影が向かって定位置に着くのが見えた。
「……おっ、噂をすれば…来たな」
「ああ」
更に大きな歓声が上がった。
対戦相手は「一条家」の御曹司である将輝。圧倒的なその力でモノリス予選を蹂躙してきた実力者でありその参謀である「カーディナル・ジョージ」こと吉祥寺も実力も知名度は将輝に引けを取らない…とそんな実力者達が一同に介する新人戦モノリスコードで盛り上がらないわけがなかった。
「さて…その前に作戦をおさらいしておくか」
試合開始のブザーがなる前に一同は集まり、フォーメーションの内容と使う魔法の手順を説明すると、幹比古は「君は何でもアリだね」と呟き、達也は何も言わずに此方を見ていた。
「んじゃまぁ…事前にも話したが俺がアタッカーで達也がディフェンスに変更。幹比古は変わらず遊撃…基本的には殲滅。出来なきゃモノリス打ち込みで勝利だな。」
「モノリス入力は現実的じゃないかもな。でも可能なら両方のタスクをクリアしたいものだが…こればっかりは状況が許してくれたら、ってことで。んで隙を作るって意味じゃ取っておきがあるが相手が使わせてくれる隙があるかどうか…だが前者は正直色々な政治的な要素を含ませると
十中八九自分達が勝利すれば尻拭いをさせられるのは先輩たちだが…気にしないことにする。
其よりも真夜の前で膝を着くことが一大事なのだから。
その事を言われて達也の変わらない表情が少しだけ渋面を作っていたのは、朔也の気のせいでは無かった。
「ああ。だが行けるのか?」
「やろうとすればこの低出力CADでも行けるが…(むざむざやられるわけにはいかないし。それに…俺が将輝と対峙する、ってことはあのレギュ違反の空気圧縮弾を食らう確率が高いってことか…防ぐ策はある。俺の好みの戦いかたじゃないが…真夜さんを心配させるよりマシ、か…)まぁ、どうにでもなるよ。頼むぞ達也、幹比古」
原作で達也が食らった光景を思い出して、苦い顔を一瞬だけ見せ脳内で戦法を組み立て使う魔法のセットを決めてから、準備の整った二人へ声をかけた。
「ああ」
「(いったい二人は何を話しているんだろう…)ああ。分かったよ」
「さて…行くぞ!」
鼓舞するようにわざと語気を強めて宣言した。
一方。草原ステージの三校陣営では。
「想像していたけどフォーメーションを変えてきたね…それにあのマントは?」
「ハッタリじゃねぇのか?」
メンバーの一人がそういうと将輝は否定した。
「いや。あの司波が破れかぶれの戦法…意味の無い装備を持ち出したりはしないだろう。それにしても…やはり紫ノ宮が表に出てきたか」
陣地で前方数百メートルに位置する同じく競技用のプロテクターアーマーを装着する一校生徒…三名のうち二人はローブかマントを纏っているは一人が前に出て此方を見据えている姿は普通のプロテクター…紫ノ宮朔也はポジションチェンジしたのかアタッカーになっていた。
その姿を見て将輝は不敵な笑みを浮かべ呟いた。
「面白い…その策どうであろうが俺が正面から叩き伏せる」
策を講じようが意味はない…此方が正面から叩き伏せるまでだ、と息巻いていた。
そんな盛り上がっている中スタンドが違う意味でざわついていた。
それは思いがけない来賓達にあった。
「九島先生!このようなところへ如何なさいましたか!?」
いつもであれば、大会本部のVIPルームにてモニター観戦している九島老師が突如来賓席に姿を見せたのだ。
「たまには此方で見せてもらおうと思ってな。それと…気になる学生がおってだね。ここで観戦した方がよく見える」
「は、はいっ畏まりました…すぐにお席にご案内します」
九島老師にこう言われてしまえば断ることなど出来る筈もなく、大会関係者は頷くしかない。
『間も無く新人戦モノリスコード優勝決定戦開始です!』
烈の視線は三校…ではなく第一高校の朔也へ向けられていた。
◆ ◆ ◆
『モノリスコード新人戦決勝スタート!』
開始のブザーが鳴り響き、戦端が拓かれた瞬間に朔也の口元が少しだけ
次の瞬間にフィールドが刹那の一瞬だが、紫掛かった靄が広がったが両チームメンバーは気がついてない。
唯一を除いて事前に説明していた達也は知っていた…がやはり実物を見るのとでは感じ方が違う。
(その魔法は…やっぱり使えるのか)
(よし…仕込みは完璧だな…行くぞ!)
次の場面では全員が想定していた通り朔也は汎用型CADを装備した右手を突きだし、将輝は特化型CADを構え魔法による遠距離砲撃戦を開始した。
『
振動・加速・移動の三つが合わさった光の矢、又は光を帯びた弾丸の形をした複合魔法だ。
本来であればA級魔法に分類されるが…今回は威力をダウングレードして使用しているため問題はない。
使用形態に関して今回は対人・対物対象に限定されている。
発動した空間(又は対象物)荷の分子振動を急速に高め”超高温”を産み出すと同時に加速系魔法で、そのエネルギーを矢の形にして音速を越えさせる術式である。朔也はこれを詠唱破棄によりコンマ二秒で発動し通常で発動させた場合、放たれた光と炎の矢が敵防壁や機動兵器を貫通し内側から爆発・融解させることが可能な魔法であり、天より放たれた炎の鏃はフィールドを焼き尽くす…迄にはいかない。光によってそう見せているだけだ。
両者陣営からゆっくりと歩き始めてCADを構えながら前進し、魔法によるぶつかり合い衝撃が広がる。
両者拮抗した魔法のぶつかり合いを繰り広げていき、押しも押されぬ攻防戦を繰り広げた。
朔也が展開した複数の炎の鏃が上空から降り注ぎ、一条達へ襲いかかる。
(こ、これはっ…!ッ!)
将輝は空気圧縮弾を放ちながら突き進むが全て朔也の『
(やはり前試合で見せた『領域干渉装甲』を使ってきたか…!だがこの炎の鏃はなんだ?熱は感じるが実際に燃えてはいない…これは……幻影!手数が多いっ)
(…予想よりも速度と威力が高いな…流石は”十師族”と言ったところか)
ファーストアタックは朔也が先取した。
手数は将輝の方が多いが領域干渉装甲によって防がれダメージを与えられずにおり、逆に詠唱破棄による『サジッタフレイム』の速射上がった攻撃で将輝が処理しきれず防御に回らなければならないと言う事態に陥っていた。
しかし、此方が優位に立てているのは試合開始に発動した魔法のお陰でもあった。
(さて……作戦開始だ!)
魔法を切り替える。
手にしている競技用の銃型CADを引き抜き、途中で自分と将輝の地点へ振動系統の魔法を叩き込み、地面が捲られた衝撃と爆発で将輝が後ろへ押し込まれた時に、朔也が仕掛けた魔法が発動し、将輝が踏み込んだ瞬間天高く土煙が舞い上がって目眩ましを始めた。
◆ ◆ ◆
土煙が舞い上がり、将輝は思わずCADを握っていない手で顔を覆ってしまう。
(くっ…!なんだ今の魔法は?見たこともない…加重系統の魔法か?)
決して威力は大きくなく戦闘不能に至るまでの性能はない。
しかしそれは的確に将輝の足元で爆発し仲間との距離を開いていく。視界を覆う砂煙を風の流れを魔法を利用し、簡単に消し飛ばされないように細工し、舞い上がる土の中にある結晶を光を用いて乱反射させた。
対峙している一条将輝ほどの魔法師ならば、相手の魔法起動式の兆候を察知しカウンターを仕掛けるには不十分だが、一瞬の隙を突くという点なら十分すぎた。
「目眩ましか…だが!」
案の定、程なくして放たれた空気圧縮弾は土煙を貫き此方へ殺到するが、朔也を捉えることは出来ない。
その光景を確認しながら意識を後方へ向けると、幹比古が動き出したのを確認する。
同時に狙い定めた空気圧縮弾が襲いかかるが、朔也も『サジッタフレイム』で打ち落とす。
(これも戦術だ。
直撃コースだった魔法を『領域干渉防御』で防ぎタイミングを見計らって走り出す。
「逃がすかっ」
動いたことに気がついた将輝が反応する。まだ試合は始まったばかりだった。
◆ ◆ ◆
互いに魔法を撃ち合い走りながら防御し、土煙から飛び出していたのを現在進行形で観客席にいる真夜達は観戦していた。
「今の炎の矢は一体…」
「朔也さんが今使ったのは振動・加速・移動三つが掛け合わさった複合魔法。速度が速くて威力が高い…まぁ彼の得意技、と言ったところかしらね」
「得意技…あの無数の炎の鏃が飛んでくる、と考えると恐ろしいですね」
「それにしても…やはり朔也さん随分とお優しいわね。一撃で仕留めにいかなかったのは、ワンサイドゲームにして観客のブーイングを回避したかったのかしらね?」
「どう言うことですか?」
深雪がその言葉の真意を確かめるべく疑問を持って問いかけると、真夜は試合中の朔也から視線を逸らさずに返答した。
「競技用の低スペックCADでは朔也さん本人の本来の魔法の威力が発揮できないのよ。彼は自らにリミッターを課している状態…今の魔法の威力は十分の一程度でも十分ね。当たれば気絶するぐらいで済む。それに今『
”シュタイン・ボルク”と聞いて少しだけ顔を渋める深雪。
「朔也さんはあの魔法も使えるのですね…ですが幾ら朔也さんでも一条家の嫡男を相手取るのは」
「大丈夫よ。ふふっ…本人は『紫は趣味じゃない』って言っていたけれど彼は手にした札で勝負するのが好きだから」
「札?それに紫…ですか?」
”札”というのは何かの比喩?と思ったが深雪はそれよりも四月のあの廃棄工場での戦いを思い出していた。
あの兄ですら手も足もでなかった”怪物”と同じ能力…いやそれ以上の魔法力を持ち一撃で仕留めて見せたのだから。
確かにあの怪物が発していた想子のオーラは紫色だったが…と思い返していたが正直あの地獄からの怨嗟のような唸り声の主の姿は心理的に身の毛のよだつ存在…正直トラウマになってしまいそうだった。
次に真夜の放つ言葉は朔也に絶対的な信頼があった。
「例え政治的な動向で…彼の魔法が封じられようともこの試合、彼が勝つわ」
一方、観客達は草原ステージでの光景に大喜びで観賞していた。
『開始早々激しい砲撃戦です!お互いに陣地から歩き出し魔法による撃ち合いが行われております!』
魔法同士がぶつかり合い砕けて散り、ステージでは爆発が鳴り響く。
さながら特撮番組のような演出の爆発が発生する。
『想子可視化処理が施されたディスプレイには、激しく輝くサイオンの砲弾が空中に顕現した魔法式を打ち砕く様と爆発の様子が映し出されています!炎の矢が飛び交っておりますが、燃え広がるようなことは御座いません!ルール的な違反は無いことが確認されていますので試合続行です!』
観客席の子供がその光景に目を奪われていた。
「すっげぇ…」
「きれい…」
『なんと幻想的でダイナミックなスペクタクルなのでしょうか!?』
鳴り止むことがなさそうな両者よる砲撃が続いていた。
誘いに乗って分断されていく将輝の姿を見て、朔也の狙いを漸く感じ取った吉祥寺はハッとする。
「っ…!紫ノ宮選手の狙いは将輝を孤立させることか…!」
遠距離からの砲撃を仕掛けようとするが、魔法が掻き消されてしまう。
何事か!と思い無力化した者がいる方向を見てみると、吉祥寺はそれがモノリスにて防衛を担っている達也が二丁のCADを構え放った魔法を『術式解体』で無力化しているのが視界に入った。
「くそっ!厄介な…!」
将輝の援護をしつつ、一校のモノリスを開ける為に砲撃戦を行っている将輝の背後を迂回して目指す。
吉祥寺が動いたのを朔也と達也は視界に捉えていた。
将輝の背後から一校のモノリスを開ける為に行動を起こすのは想定内…いや奏せざるを得ないのだから。
撃ち合いをする最中朔也の動作を見た将輝は魔法を使いながら疑問を覚えていた。
(攻撃に紫ノ宮選手は試合が始まっても何故まだあの魔法を使っていない…一体何が狙いなんだ?)
(おっし…まだ此方に意識を割いてくれているな…気がつくなよ?)
意識を割いてくれていることを確認し意識が向けられていない左手に特化型CADを持ち後ろへ魔法を発動した。
一方で、その動き始めた吉祥寺と三校選手が打ち合わせ通り丁度達也がモノリスから数十メートルは離れたところで接敵しており、戦闘を開始していた。
その進行方向に達也が特化型CADをもう一丁引き抜き対峙する。
(やっぱり吉祥寺が動き出したか…朔也の予測通り《《こう動かざるを得ない》か…流石だな)
「此処で君が出てくるのか…だが此処で!」
吉祥寺の方が優勢であったが、達也の持ち前のポテンシャルとフィジカルと培った戦闘スキルで応戦し、吉祥寺の『
モノリス本体に魔法を撃っても機材が壊れる訳ではない…であれば達也の『術式解体』は最硬の盾となる…が無論無敵ではなく防御にリソースを振っているため反撃的な行動をとることが難しい…という点もあるのだ。
(流石は”カーディナル・ジョージ”…一筋縄では行かないか。だが…)
「くっ…!」
合間を見て達也も冷静に振動系統の魔法を放つが吉祥寺の領域干渉によって阻まれる。
防御は一級品だが、達也には相手を仕留めるほどの威力を放つ魔法を打てないのも事実であった。
引き金を絞りながら達也は心の中で呟く。
(やはり…俺の今の能力とこのCADでは吉祥寺にダメージを与えられない…しかし、ヘイトは俺に向けられる。倒す必要はない。此方に
再び始まる撃ち合いに吉祥寺の魔法が達也へ襲いかかり派手な爆発音が草原ステージに鳴り響く。
吉祥寺は目の前の達也と背後にあるモノリスへ集中していたが…誰もがこの戦闘に夢中、というか集中しており存在を失念していた…いや、
式神による視覚共有による達也の視線が幹比古に共有されているこの状況は、正に仕掛けるのは絶好のタイミング。
(今だ…”幹比古”!)
(了解…!)
達也に集中していた吉祥寺は直前まで向けられていた想子波動に気が付いたのは、直撃を食らったその後だった。
手にしたCADを操作し放たれるは雷鳴の一撃。
「『雷童子』…!」
稲光が降り注ぐと同時に吉祥寺の体を貫き地に伏した。動かなくなったのは、感電し少しのショック状態になったからだ。
当然ながら、撃破判定を受け数的優位は第一高校へ傾く。
「がぁッ…!?(ば、かな…!いつの間に…!?)」
「はぁ…はぁ…はぁ…やった…僕が…吉祥寺選手を…倒した…のか?」
(幹比古が吉祥寺を仕留めたか…流石だな。後は…俺が確りしないとな)
古式魔法の隠匿性とその威力…それらは強力だが発動までに時間が掛かる為、中断されてしまうリスクは高い…だがしかし、相手の目につかなければそれはまさに必殺の一撃となる。
先程朔也が特化型CADを引き抜き後ろに魔法を放ったのは、認識阻害と
『
存在そのものを
「ジョージ!?くっ…!」
信頼する副官が落とされる…という事実に動揺するものの狙いは確りと朔也へ定められており、殺到する圧縮空気弾。しかし殺到する前に起動式が全て放たれた想子の塊が展開式を吹き飛ばすのを確認し驚愕する。
「なっ!!? 『
(使えない、とは言ってないからな。そろそろ決めるとするか…がこのまま行けば俺がレギュレーション違反威力の空気圧縮弾を食らう羽目になる…は勘弁したいからな…そろそろトドメを刺させて貰う…!)
突如として放たれた『術式解体』に驚く将輝…だったが事実それは『術式解体』にあらず、ただ豊富な想子の塊を力任せにぶつけているだけの技能…言うならば『
それはさておき。
朔也は自己加速術式を二重詠唱し、数百メートルを一気に詰めながら草原フィールド…将輝周辺に魔法を発動するのは、ホンの小さな想子反応に当然ながらかけられた本人は気が付かない。
その一方で将輝も朔也が凄まじい数の魔法式を撃ち落としたことに気を取られてしまい、加速術式を使わずに接近してきていることに気がついたのは、間合い5メートルに入ってきている時だった。
(今の一瞬で距離を詰められた!あと5メートルもない…こいつの実力なら一投足で詰められる…!)
将輝の顔には動揺が走っていた。
そして朔也という脅威が接近してきたことにより恐怖が発生し、レギュレーションを越えた威力の空気圧縮弾十六連発を発動させてしまったのだ。
(しまった…!)
十六連発の高威力の空気圧縮弾が迫る朔也に襲いかかる。一つでも当たれば大ケガは免れない。
しかし、朔也は回避を選択せず突き進む。迫り来る空気圧縮弾は『領域干渉装甲』によって防がれる…レギュレーション違反の威力を減衰させているのはフィールドに施した魔法が原因で、着弾しても違反にはならないのは怪我の巧妙である。
「やばっ…!」
しかし、遂に目前に迫った朔也に対して決定打を与えられない将輝は、ルールで直接的な打撃を封じられた最後っ屁か…今のタイミングで放たれたのは、此方もレギュレーション違反の空気圧縮弾が朔也へ直撃しようとする。
そして、今の朔也は突撃する際速度を上げるために『領域干渉装甲』を解除していた。幾ら『想子減衰魔法』で威力が低下していたとしても、直撃してしまえば重症は免れない。しかし朔也は臆せず突っ込んでいく。
「なっ…!?」
回避を選択せず突貫してくるのを見て驚く将暉と観客席と天幕で悲鳴にも似た声が上がったが、真夜だけはその光景を身じろぎもせずに見つめていた。
「………」
(悪いな…一条。これも後ろで見てる真夜さん前でね…敗けられないんだよ…!)
勢いのまま身を屈め、汎用型CADを装備した右手を構え突きだし、詠唱破棄により発動した魔法が炸裂する。
『
「がっ…!?」
深緑の豪腕が将輝の身体に突き刺さり、くの字を描くように後方へ吹き飛ばす。
大きく吹き飛ばされた将輝は白目を向いて地面へ落着し、白目を向いて気絶していた。
「一条…!?こいつ…!」
残るモノリスを守る最後の一人が攻撃直後の朔也を仕留めるために魔法を発動しようとする。
「がっ…!?」
その直後に最後の三校選手の背後に人影が迫り、突きつけた特化型CAD二丁から放たれる魔法によって身体がぐらつき、膝を着き地面へ倒れ込んだ。
その背後にいたのは達也であり何時ものような感情の薄い表情で特化型を突きつけている。
三校全員が戦闘不能になったのを確認されると、瞬間試合終了のブザーが鳴り響きアナウンスが入る。
『新人戦モノリスコードは第一高校の優勝です!』
事前に打ち合わせしていた達也は、三校モノリスのディフェンダーを戦闘不能にするために気配を消して近づき、排除するために動いていたのだ。
勝利宣言がされたが呆然とする観客席で、ほのかと雫が呟く。
「えっ…勝った?」
「勝ったの…?」
それが合図になったのかもしれない。
誰かが歓声を上げ、それが伝播していき大きなうねりへと変化し、歓声の大瀑布が形成された。
第一高校の生徒達の無邪気な喜びの叫び声が観客席を埋め尽くす。
次第に拍手の輪が広がっていき、互いの高校の健闘を讃える暖かい拍手になっていた。
「よかった…」
「当然ね。朔也さんならどんな状況でも、ね…(でも厄介ね…”十師族に勝った”というのはこの世界じゃ肩書きとして”強すぎる”わね。まぁその事に関しては私が手を回しておきましょう…)なにかしら?深雪さん?」
「あ、いえ。なんでも御座いません(叔母様、朔也さんの事となると途端に過保護になりますね…)」
「そう?なら良いのだけど(はぁ…それにしても朔也さんカッコいい…)」
安堵する深雪にさも当然、と良い放つ真夜。しかし、その言葉の節々に”心配”の気配を漂わせているのを見て、少しだけ笑みを浮かべる。深雪を見て真夜は少しだけ表情を変えたが、すぐさま切り替えた。内心では朔也へうっとりした表情を向けているが、気が付く者はいない。
そして天幕でもその光景を見ていた生徒会役員と他多数も喜んでいた。
しかし一方で第一高校新人戦優勝、という名誉ある称号に複雑な胸中を抱えたままの首脳陣がいたことを他生徒は気がついていない。
「…本当に勝っちゃった」
「ああ。本当に勝ってしまったな」
「…本当に彼は一般の出の魔法師なの?あの領域干渉の強度に展開速度、威力…百家に名を連ねているといわれたら信じてしまうわ。まさか
「お前がその話題を出すのは不味い。心に秘めておけ。………奴が十師族の流れを組む魔法師であったらどれ程有り難かったか…大変なことになるぞ」
「ええ。そうね。ごめんなさい十文字くん」
真由美の問い掛けに実際に膝を突かせられた克人はその返答を誤魔化すことしか出来ず、その後の事を考えると喜びよりも苦悩の方が勝ってしまっていることに気がつき、苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
◆ ◆ ◆
「いやぁ…上手く嵌まってよかったよ。足止めありがとうな二人とも」
「よく言う。お前だって一条を相手してよく無事だったな」
試合が終了し、ステージに観客席の歓声が未だに広がっている。その中で入り口へ戻ってくる三名はお互いの健闘を労っていた。
「こっちは防御マシマシで向かったからな…なんとかなったが。それに達也。最後の選手に向けて撃った魔法って服部先輩に撃ったアレだろ?」
「ああ。ある意味で試合を見ている先輩への当て付けだが…同調律の高い特化型で助かった。」
「いや、お前が調整した…って土壇場で”ループキャスト”するとか心臓強すぎない?まぁでも助かったよ」
「実際出来たからな」
「それにしても…」
達也と会話してた朔也の視線は幹比古へ注がれる。
「よくやってくれたな。今回のMVPは幹比古だな。今回一撃で吉祥寺を撃破出来たのは古式魔法の奇襲性があってこそだ」
「いや、朔也の魔法があったから成功したんだよ。それを言ったら達也だって…」
これ以上は良い意味での水掛け論になってしまうなと悟った朔也は、その話題を打ち切った。
「ハイハイ、一先ず全員”頑張りました”で良いんじゃないか?誰か一人でも欠けてたらこの勝利は無かった…そうだろ?」
そう言って会話を中断させるとその点には同意できたのか、二人とも表情を柔らかくして同意する。
かくして新人戦モノリスコードの優勝は第一高校が勝ち取った。
朔也は第一高校がいる応援席に向かって振り返り天高く右手を突き出す。
すると、先程の歓声はより大きくなって波の如く拡がる…視線の先には柔らかい笑みを浮かべ此方を見つめている真夜の姿を捉え、朔也もふと、優しげな笑みを浮かべるのだった。
九校戦から真夜様を参加させるとしたらどの年代が良いですか?
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十二歳ぐらい(中学生ぐらい)
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十六歳ぐらい(主人公より少し上お姉さん)
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本編(よりは若二十代それで制服を…)