助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
ほぼ事後処理的なお話。
朔也達が”モノリスコード”優勝を飾り喜びにうち震えている第一高校のメンバーを尻目にその日の夜にとあるタワーの最上階に設けられた一室で円卓を囲む男達が苦悶の声を上げている。
その内容は先の新人戦モノリスコード優勝に端を発していた。
「第一高校の優勝はもはや確定的だ…」
「奴らが優勝したら我々の敗け分は1億ドルを越える…ステイツドルでだ…!」
「バカな…!このまま座して死を待つと言うのか!?」
「これだけの損失…楽には死ねん…よくて生殺しの”ジェネレーター”だろう…」
恰幅のよい男がこの部屋を護衛しているサングラスを掛けた屈強な男に視線を向ける。
自分達があのような成れの果てにはなりたくないと意見が一致していた。
我慢ならん、と声を上げる。
「こうなってはもう手段を選んではいられない…!」
「そうだ!多少手荒になっても躊躇う必要はない。客に不信感を持たれたとしても証拠を残さなければ問題ない…!」
スーツの男がそう言いきると細身の男が頷いた。
「それならば使いに指示を出そう」
「明日の”ミラージ・バット”の第一高校の選手には全員
リーダー格の男…ダグラス=黄が不敵な笑みを浮かべた。
「運が良ければ死ぬことはあるまい…さもなくば…運が悪かった、ということだ…」
ダグラスの言葉にこの場にいる全員が同意したのは九校戦に参加している魔法師達の命など自分達の賭け事の駒でしかなく自分達の命が大切だった。
「…ん?なんだ?」
しかし、世の中というのは上手く出来ているようで因果と言うものは回ってくる。
ニヤリと笑みを浮かべたその直後だった。
「ーーーーーーーーッ!?!?」
男達が集まっていた部屋の中は阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わっていた。
◆ ◆ ◆
大会九日目。本戦の”ミラージ・バット”が開始されており天候は前日の快晴と打って変わって今にも雨が降りだしそうな厚い雲に覆われた曇天であった。
もっとも眩しい日差しでは”ミラージ・バット”に参加する選手達にはプレイしづらいフィールドになってしまうので日中であってもこの厚い雲に覆われた天候は望まれていたものだった。
視線の先には健全に汗を流しライバル達と切磋琢磨して優勝を目指す魔法科高校生の姿がある。
その中には自分の動きの結果次第で直ぐにでも一校の総合優勝が確定すると言うプレッシャーに飲まれぬように飛翔する小早川の姿があった。
「…なーんて言うモノローグが始まっているだろうけど。無駄足だろうね」
「…彼処で証拠を押さえたのですからこれで起こるようなら大会運営が無能、ということになりますわね」
「あの人がそれを許すとは思わないから大丈夫でしょう。来年から運営の人たち大変だなぁ…」
そう呟くと隣に座る真夜が反応してくれた。
「人事考査していないからこういうことになるのですよ」
「ははは…全くもってその通りで。でも大事にならなくて良かった」
そう、本当ならばこのままでは優勝が第一高校で確定してしまうため後がない”無頭竜”達が動きだし最初の犠牲者となる小早川のCADに電子金蚕が仕込まれて事故が発生…そこから大会運営のCAD審査の一人が裏組織と繋がっていたのがバレる…という流れであり色々と因果があって先輩のCAD担当をしていた平河小春の妹である平河千秋が大亜連合に利用されて”横浜騒乱編”の発端が始まる……がその懸念事項は意外にも簡単に解決してしまい拍子抜け?してしまっており今は小早川が競技を行っている。
「二人には悪いことをしたかなぁ…」
実の事、調査は”九校戦”の最中に進められていた。
遡ること九校戦で七校の不正が疑われていたCADの入手まで遡る。
『二人とも申し訳ないんだけど少し、調べてほしいことがあるんだ…大会運営のCAD検査員の中に不正を行おうとしているものがいる。裏付けを取って欲しい。…出来れば九校戦九日目の”ミラージ”本戦前に分かると助かります』
『は、はい。分かりました朔也さん』
『全く…人使いが荒いですわね…畏まりました』
少し年下の美少女にそういわれると妙なものが沸き上がってくるだろうが朔也は真夜一筋なのでそんなものは沸き上がってこない。呆れた後に小悪魔な笑みを浮かべる。
『ははは…ごめんね。優秀な二人だと見込んでなんだ。お願いします』
丁寧に頭を下げると文弥は慌てていたが亜夜子は「仕方ないなぁ…叔父様は」と言った感じのニュアンスを漂わせてに了承してくれた。
◆ ◆ ◆
「(亜夜子ちゃんに『叔父様っ♪』と言われるのはなかなかに犯罪臭がする気がする…まぁ同い年なんだけど…中身はおじさんだからアウトなのでは…?)…あれは中々無茶な矢を投げちゃったな」
「でも二人は嬉しそうでしたよ?お陰で裏付けが取れて内通者を捉えることが出来ましたし」
CADに電子金蚕を潜り込ませようとした内通者の存在(朔也が原作で仕込ませていた本人の顔を覚えており尚且つ達也が”バトル・ボード”で事故があった七校のCADを調査。そこから裏取りするために再び黒羽姉弟に依頼し調査して貰い其を
しかし。
本来であれば達也が前日に小野遥に本拠地の居場所を調べて貰う算段だったらしいが流れが少しだけ変わった。
”ミラージ・バット”本戦開始前に達也に知らされたのだが公安と国防軍…壬生先輩の父親と達也の上官である風間少佐が事態を重く見て共同調査し居場所を突き詰めたようで今ごろは達也含む独立魔装大隊で強襲作戦が行われる。
本編と同じならば”無頭竜”日本支部のメンバーは全滅しリーダーのリチャード・孫の本名も判明して壊滅と逮捕も時間の問題だろう。
そうなると同じ時間帯に達也が二人いることになるが……。
それは朔也の魔法で解決していた。
今試合を控える深雪の隣には朔也が発動した『
しかしこう文字にして見るとあっけないほど【九校戦編】が終わったことに思わず拍子抜けしてしまったがこれ以上真夜とのデートを邪魔されない、と言うことには大手を振って納得できた。
「まぁ…これ以上俺たちに関わってくれなきゃ良いかな…」
「一先ずは解決、ということで良いのかしらね…例の件はまだだと思いますけれど…」
「そうなんだよね…そっちに関してはまた貢さん達にお願いするしかないかな…また迷惑をかけるけど」
「仕方がありません。それが彼女達の仕事ですから」
脳裏には摩利に怪我を負わせた”蠍座”…その術者と利用目的がまだわかっていない。それだけが今後の不確定要素だった。
またしても便利に使われる貢と朔也から頼まれれば喜んで引き受ける姉弟の二人の仕事量に真夜は少しだけ同情し苦笑する。
「お、試合終了みたいだね…流石にぶっちぎっての勝利、って訳じゃなさそうだ…」
「…総合優勝が確定したわけではないですね。小早川選手も中々に実力のある選手ですがこの”ミラージバット”ではその気迫も意気込みも飲まれるほどに他選手の実力が高い、と言うことですか…」
会話が終わるか、と言うところで小早川の試合が終了した。
結果としては総合優勝に到達するには点数が足りていないようだ。
競技に参加する三年生達は今年が最後となるのでその気迫は凄まじいのだろう。事実押されておりステージから降りていく選手は悔しい顔を浮かべていた。
「深雪であっても苦戦は逃れないだろうね。練習はしてきていると思うけど…」
摩利の代理として出場する深雪。幾ら優れた選手と言っても本選に出場する選手達はそれにのみ特化した魔法を使うことに慣れたもの達ばかりであり”畑違い”と言うべきだろうが…
「ですが…深雪と達也のコンビに勝てる選手を探す方が骨が折れるでしょう。達也がこの状況を座して見ていると言うのはあり得ませんでしょう?恐らく…”あれ”を使うでしょうし」
「(学生の競技で今後の軍事的な画期的技術をお披露目するとは思わないよな…)まぁ深雪の地力だけでもいけそうな気がするけどね。そこは場の盛り上がり的にね」
そう告げると真夜は如何に自分の甥と姪が規格外なのかと言うことを改めて認識した。
◆ ◆ ◆
予選第二試合。ついに深雪の番が回ってきた。
深雪の実力が高いと言えどその競技の特性上苦戦を強いられていた。妹相手に点差つけを獲得する選手を見て感心する素振りを見せる達也。
(流石だな…”ミラージ”に参加する選手達はレベルが高い。上級生の意地、と言うのもあるんだろうが)
第一ピリオドから戻ってきた深雪が自分に近づいてくるのを確認し意識をそちらへ向けると最愛の妹が口を開くその表情は真剣そのものだ。
「お兄様。”あれ”を…お使いしても宜しいですか?」
「…ああ。お前の望むままに使うと良いよ」
そう告げ達也は”奥の手”の使用を許可する。
程なくして第二ピリオドが開始されブザーが鳴ると同時に選手達が
一拍遅れ深雪は上を向き手元を操作し
それに驚く選手と観客席は深雪が縦横無尽にフィールドを飛び回るのを驚愕と感嘆の声を漏らして見つめていた。
妹が自分の作った『飛行魔法』を優麗に可憐にお披露目してくれた事に嬉しさを噛み締めながら無事に試合が出来ていることへの感謝を朔也へ向けていた…同時に”策がある”と約束していたその内容を思い出していた。
(”無頭竜”の関係者を炙り出すために亜夜子達に協力を頼んでいたのは知っていたが…まさかの人物が協力してくれていたとは思わなかった…お陰で九校戦は無事に終わるだろう)
安心は保証されている、と言っても良いだろう。
現在進行形で今ごろ”無頭竜”のアジトへ独立魔装大隊と分身である自分が突入し制圧しているだろう。
意識を深雪が活躍する”ミラージバット”へ集中しているとふと…続々と人脈を紡いでいく未来の叔父の人徳がどれ程広がっていくのだろうか?と少しだけ気になった。
◆ ◆ ◆
”無頭竜”崩壊が原作よりその時間を早めたその理由は少し時間を遡る。
熱気冷めやらぬ九校戦の会場…つい先ほど新人戦モノリスコードが終了したばかりだ。
面白い魔法を使う少年達がいる、とこの九校戦に招かれた来賓である九島烈は代理で出た一校モノリスコードのメンバーに注目していた。
吉田家の神童と呼ばれた少年、嘗て師事したこともある深夜の息子である達也…そして。
「…まさか、この目で見ることになるとは…長生きはしてみるものだ」
烈がポツり、と呟くのは件の少年…紫ノ宮朔也が発動させた”光導魔法”をこの目で目の当たりにするとは思いも寄らなかったのだ。
京都方面を守護する九島家は古式魔法にも関わりが深く文献や伝承でしか知られておらず更に極一部の者しか知らない魔法を目の当たりにすればそんな感情を覚えてしまうのは無理もない。
神の力を再現しようとしたそれは太古の昔に数多のいさかいを鎮めた…とされた魔法であり目の当たりにし烈は感動していた。
ここに集う多くの者はただ凄い魔法と認識するだけだろう。だが、此を知る者からしてみればそれは喉から手が出る程に魔法と術式を欲しがるだろう。
(嘗て…失われた伝承によれば死者を蘇らせ病魔に蝕まれた朽ちた肉体を健康的な肉体へ若返らせる術式があると言う…それが出来れば光宣の治療も…)
烈もその伝承を信じている一人であったのは彼の孫が抱える病と魔法師が抱える因果を持つものがいたからだった。
現代の治療技術では治す事は出来ない、となれば伝承にすがりたくなる気持ちも…しかし、伝承は伝承である。
確実に癒すことが出来る、と決まったわけではないが烈が彼と話す機会を望んでいた。
「……崑…方…で私…け…した…時の…」
「あ…の…時…めだ…った…」
「(彼とコンタクトを取る必要がある…丁度モノリスコードが終了した時間帯だ未だ会場におるだろう…)…ん?…ん
ん…?」
スクリーンで覆われた来賓用の観覧席を立ちすぐさまコンタクトを取ろうと部屋を出て直ぐの曲がり角で自分の目を疑うと同時に聞こえてきたワードに耳を疑った。
『崑侖方院』
年若い魔法師達の話題で”崑侖方院”が出てくること等無いに等しい…そして反対方向からやって来る高校生…制服の色から第一高校の生徒であることがわかりそちらへ視線を向けるとそこには件の少年であり一校天幕へ向かうその途中だったのだろうそれを見て気を取られたがその隣にいる
(な…?何故彼女がここにいる…?)
烈が想像している嘗ての教え子は滅多なことでは表に出てこない事で有名だ。
しかし、其が嘘に思えるほどその男女が此方の視線に気がついていないのか仲睦まじく会話していた。
その会話の内容は先程の”モノリスコード”での魔法の使用制限について移り変わっていた。
「…運営も捩じ込んだ第一高校が優勝してしまうのを阻止したかったのでしょうけど…無駄でしたわね」
「いや、そこまで言うほどかな……?まぁ確かに使えてたらもっと楽に戦えてたけど」
「それどころか貴方を一人弱体化させたところで達也やあの吉田家の次男を止められなかった…いや逆に際立たせましたし?逆に朔也さんの凄さが極まった感じがしますから。一つの魔法に頼らずに満遍なく扱えるのですからね」
「そこまで言っちゃう?俺の魔法って特殊だし…でもまぁそうでなくても確かに達也の実戦力と幹比古の古式魔法は心強かったからね。今回二人がいなかったら面倒な試合だったよ。まぁ…巻き込まれるとは思わなかった。楽しかったけど。」
「むぅ…(私は”貴方が凄い”って褒めたいだけなのだけれど…妙なところで謙遜するのよね朔也さんって)…仕方がないのではなくて?達也は貴方の実力を知っていますから選ばれます。ましてや勝利が必要な場面では」
「うん、まぁ…信頼されてると思えば…いいのかな?」
「その認識で間違いないと思うわ…学内考査で手を抜いた意味が無かった様ですけど?」
「……って達也から焚き付けられて俺を推薦したのは何処の誰だったかな?」
そう告げ少年が隣にいる少女の腰を抱くとクスクスと笑みを浮かべながら反論する。
「さぁて?存じませんわねぇ…その口車に乗って試合に出てくれたのは何処の誰だったでしょうか?」
抱き寄せられ朔也の胸に手を当て自ら密着する。
「む、痛いところを突いてくるなー。…でもまぁ…実力を示しておくには必要だったかもね」
腰を抱く朔也の表情が一瞬だけ真面目な表情へ変化したのを見てドキリ、と何度見てもしてしまい思わず顔を赤らめた。
二色の瞳が姿を映していた。
「(そ、そうやって直ぐに格好いいのを表に出すの禁止っっ!!あっ…)朔也さん…貴女の実力は疑い様のないものだと私は理解しているわ。でも…」
「(本当に顔と性格が良すぎる…)ああ。分かっているよ。真夜さん。正直、本家…と言うか分家の人間達に俺は嫌われているからだろうからね。俺を認めてくれてるのは二つのご当主様だけさ。今回の件が丁度良い、って訳じゃないけど…君の期待と分家の皆に認めて貰えるように頑張らないと」
「朔也さん…」
「真夜さん…」
じゃれあいお互いの距離は殆ど”ゼロ”に近い状態であり何かの拍子にキスしてしまいそうだったがふと人の視線が向けられているのに気がついた朔也は真夜を止めてふと視線と意識を向けると声が上がり合わさった。
「……」
「「あ」」
外で観客、雑多なイベント事をやっているのに関わらず一瞬静寂が支配し空気が凍ったのは気のせいではなかったとそのときこの場に集った三名のはそう思ったことだろう。
永遠にも思えた其を切り崩したのは烈だった。
「…真夜、真夜なのか?何故ここに…?それにその姿は一体…」
困惑する烈。大慌てする真夜。そして苦笑する朔也と言う妙な光景が広がっていた。
「(お、お…お、思いっきり先生に見られてるー!っというか視線私に向けられてる!?『お前…真夜だよな?真夜だろ?』って目で見てらっしゃるーー!?お、落ち着くのよ真夜。そう冷静に対処すればこの場面を切り抜けられる筈よ…!)……大変お見苦しい場面をお見せいたしました九島閣下」
ばっ、と朔也から離れすぐ様平常を取り繕う表情は微笑を浮かべ内心は直ぐ様凪のよう、がしかし内心は大慌てだ。
その内心を知ってか隣にいてその状況を見ていた朔也は何時ものような微笑から苦笑へ変化していた。
(いや、無理があるよ…明らかに老師「いや、お前四葉真夜だろ…!」って目で物語ってるよ…!くそっ…来賓観覧席から離れてるから大丈夫だろうと踏んでいたのが間違いだった……って良く考えたら良いタイミングなのでは?)
困惑している烈と混乱する真夜の間に立つ朔也は極めて冷静になって向き直った。
「大変お見苦しい場面をお見せいたしました………と老師も聞きたい話もありますでしょうし如何でしょう?場所を変えてのお茶などは…」
自分を前に取り乱すことのない件の少年の姿を見て烈は目を細める。
ただ者ではない、と感じ取り混乱から解放された烈は頷いた。
「良かろう?此方としても話を聞きたいところであったのでね……其に君には目を掛けていてね。
(あぁ…私のうっかり者…!)
真夜は恥態を見られて恥ずかしいやら悔しいやらの心情となっていた。
◆ ◆ ◆
「ははは!随分と遅い青春を謳歌しているようではないか真夜」
好好爺の笑い声が響く。
「せ、先生ご勘弁を…」
「閣下。お手柔らかにお願いします。…真夜さんが困っていますので」
「いやはや失礼…年甲斐もなく大笑いしてしまった。しかし、そうか…元造もあの世で喜んでいるかもしれないな。
漸く再開できたと…」
烈が手配した来賓様のレセプションルームにて男女二人が隣り合わせで座り老人が向かい合い少女は顔を赤くして俯き其に寄り添うように少年は追撃の手を緩めるようにお願いすると老人は声を上げて笑っていた。
入室し烈からの問い掛けに答えていた朔也と真夜。
最初こそ目の前の少女が真夜だとは信じられずに困惑していたが自分と彼女しか知らないことを知っていたり彼女の父親である四葉元造の話題が出たことにより確信した。彼女は四葉真夜なのだと。
そして目の前にいる朔也が嘗て師事していた際に話題に出ていた彼女の想い人…そこから彼が三十数年前に単身で真夜を救い出すべく大漢の”崑侖方院”へ乗り込み壊滅させた魔法師であると結び付いた。
「しかし…」
「?」
「人は見た目によらない、とは良く言ったものだ」
「はは…恐縮です。時に閣下お耳に入れていただきたい事項が御座います」
「む、なにかね?」
先程の柔和な雰囲気から真面目なモノへ変化した朔也の表情を見て真夜から朔也へ視線を向ける。
「はい、今年の九校戦での一連の事故…あれに国際シンジゲートに関わるものが選手の競技用CADに不正な悪性システムを仕込ませているものです」
「話には聞いていたが…続けてくれたまえ」
「此方をご覧ください」
端末を操作し烈の前に差し出す。
今しがた調査依頼をしていた亜夜子達より怪しい大会運営のメンバー(CAD検査員)のPDの一覧が乗っておりその中の一人が国際シンジゲートとの関わり…主なものは金銭授受の流れがあることを示しているものだった
「良くここまで調べたものだな…」
「そこは四葉、と言うことですわ先生」
漸く立ち直った真夜からそう告げられ烈も納得するしかない。
朔也は言葉を続ける。
「一連の第一高校への妨害…恐らく、と言うより確実に彼らは第一高校の優勝阻止のため明日の競技事前チェックで仕込みをしてくるでしょう」
「なる程…其で君は私に何をして欲しいのかね?」
試すような視線を向ける烈の圧を朔也は飄々として受け止めた。
「”ミラージ・バット”では第一高校の生徒が出ます。事故を引き起こす要因を私は其を看過することは出来ません。見逃せば連中は増長するでしょう…閣下には第一試合の直前のCAD検査の場面…第一高校の選手の持ち込み調査の場面を目撃して欲しいのです。閣下はご存じでしょうが此までに事故を引き起こしていたCADに仕組まれているのは”電子金蚕”です」
そう告げると烈の表情が懐かしみと忌々しさが混ざった表情へ変化していた。
「ほう?あの厄介なものをか。確かに今の技師では見抜くことは不可能だろう。九校戦内に賊が紛れ込んでいる、となれば威信に関わるだろう…そちらに関しては任せなさい。其とその情報を送ってもらっても良いかね?此方でも確認しておきたい」
「承知しました」
「所で君はどうして其を知っている?」
「昔に”崑侖方院”で似たようなモノをみたことがあったからです。実際には使われたことはないですが」
半分本当で半分は嘘だったが烈は信じてくれたようで頷いた。
「そうか…うむ、確かに預かった」
烈へ対象者のデータを手渡す。これで一先ず会場を押さえる手筈を整えたので達也との約束を果たしたことになる。
(後で平河先輩に同行するように伝えておかないとな…)
”無頭竜”崩壊速度が早まったその後に烈は神妙な雰囲気を纏った。
何故君は若いままなのか?何故行方不明だった人間がここにいる?そして真夜は何故若い姿に戻っているのか?
その理由を確認したい烈が自らの希望する答えを所望するために朔也へ問いかけた。
「確認したいことがある。真夜の見た目が高校生ぐらいの年齢になっているのも…君が過去からこの現代に戻ってきたと言うのも…あの伝承がある”光導魔法”の使い手だからだろうか?」
「(伝承…?ああ。この世界じゃ”伝説の魔法”として伝わってるだったな)…ええ。自分は”光導魔法”を使うことが出来ます。自分が真夜さんをあの地獄から助け出せたのはこの力が大きいですね。
「ッ…そうか…そうなのか」
「???」
「紫ノ宮朔也君……君に聞きたいことがある」
先程の好好爺の雰囲気は鳴りを潜めた。”最巧”と呼ばれた魔法師ではない…一人の孫のいる悩みのあるお爺さんの表情だった。
「その魔法の中に”どんな病でも治療する”というものはあるだろうか…?」
その問い掛けに朔也は頭を悩ませた。
(其を聞くって事は光宣の治療をしたいってことだよな……うーん。あれってたしか血が近すぎるが故の弊害…だったよな。病気…?でもないし…だけど『乙女座』の魔法概念は”完成された美を保持し続ける”だったからな…行けるか?)
健常体を若返らせることは『乙女座』で可能だが細胞異常をきたしている人物に使ったところで回復するか?と言われれば…と言ったところである。
しかし、朔也の中で”恩を売る”とか”借りを作る”といった打算が浮かび上がらなかった訳ではないが”ぬか喜びさせたらどうしよう”と言った不安の色が大きかった。其でも黙ったままでは話が進まないので考えを纏め口を開く。
「閣下…”どんな病も治療する”という魔法は存在しません」
「そうか…」
落胆する烈を見て用意していた回答を矢継ぎ早に言葉にした。
「ですが…病の状態によりますが治療することは可能です」
「ッ!そうか…そうなのか………」
そう告げ烈は両手を組んで考え込み顔を伏せる。室内の時計の針がちょうど一周した所で顔を上げた。
「……朔也君。君に頼みがあるのだが…」
その問い掛けに予想をしていたとは言え朔也は少し困惑しつつ切実に返答した。
◆ ◆ ◆
”ミラージ・バット”の決勝戦の第一ピリオド。五時間ほどのインターバルをおいて開始された。
「あら…他校も『飛行魔法』を?」
「…どうやら公正を期す為に達也のCADのデータをリークしたんだろうね。あれは…うん。まぁ…」
「そうですわね。ですが使いこなせるかどうかは選手本人次第だとおもいますが」
「そうだね…結構いい勝負してるみたいだよ?」
深雪の番となった”ミラージ・バット”の予選第二試合は深雪の他選手への圧倒的な点数への差をつけていた。
そして時間をおいた”ミラージ・バット”の決勝戦第一ピリオドは予選で使っていた『飛行魔法』が全校の選手に配布され星輝く夜空の中を飛び回っていた。煌びやかなユニタードの衣装を纏う少女達が点数を稼ぐために飛び回る。
その中で観客席か関係席の誰かの悲鳴が木霊した。膨大な想子消費に耐えきれず一人、また一人と脱落していく。勿論墜落などという下手を打たず安全装置が起動しゆっくりと降下し支柱へ着陸する。観客席からは感心の声が響いていた。
「其より先の話ですが…」
「うん?」
「先生のお孫さん…確か光宣くんでしたか。治療をしに奈良まで行かれるのですか?」
「俺は医者じゃないよ。”治療”、というか確認…かな?まぁ治療できるかどうかは分からないけど。ここでお孫さんを”治療”出来れば九島閣下は俺や真夜さんへ返せない”借り”を作ることになる…お互いに無視できなくなる関係値になるだろうね。其が出来れば御の字、と言ったところだし…期待はあまりしてないけど」
そう告げ天を舞い他他選手を圧倒する深雪を応援しながらこう告げた。
「少し早い二人での”婚前旅行”だと思えば良いんじゃないかな?旅費は全部閣下が持ってくれるみたいだし。二人で行こう。
少しだけ冗談交じりに朔也が告げると真夜は愉快そうにして手をそっと握った。
「ふふふ…良いですわね。早速この九校戦が終わったら旅行プランを組み立てませんと。其に…きっと貴方の魔法なら”治療”など容易いと思いますわ」
「随分と高く買われたものだなぁ…」
「事実ですので」
疑いようもないその視線に朔也は苦笑した後二人は視線を前に向ける。
視線の先では深雪の独壇場となった夜空で最後の得点となる光珠を伸ばした手が掻き消すと同時に試合終了のブザーが鳴り響く。
星達が空を舞う優麗な少女達を照らす”ミラージ・バット”決勝戦は深雪の圧勝な実力と美しさで幕を閉じたのだった。
九校戦から真夜様を参加させるとしたらどの年代が良いですか?
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十二歳ぐらい(中学生ぐらい)
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十六歳ぐらい(主人公より少し上お姉さん)
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本編(よりは若二十代それで制服を…)