助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
真夜様ヒロインなんだけど立場上直ぐに絡ませられないのでちょくちょく出していくスタイル。
思い付きで書いてるので途中で連載終わらせるかもしてませんがよろしければどうぞ。
主人公に男性観破壊されてるのでクソ雑魚恋愛メンタルで少女になる真夜叔母様…アリだと思いませんか?
「ここが俺の新しい新居か…」
光の本流が収まるのを確認し周囲を見渡すと可もなく不可もない家賃7万ぐらいの都内アパートの2DKワンルームに居たここは神様が用意してくれた生活拠点であると理解した。
「…そういう設定で行くのか」
程よく荷物が置かれたアパートの一室の勉強机兼ダイニングの机の上に神様からの置き手紙がありこういう戸籍情報で登録しておいたと書き記されている。
名前は”紫ノ宮朔也”年齢は十五歳男性で今年の春二○九五年四月に魔法大学付属第一高校に一科生として入学。
家族構成は父、母、妹の四人家族であったが両親と妹は既に他界し一人で残された莫大な遺産をちびちびと切り崩しながら生活している何処にでもいる普通の魔法師、という設定らしい。
無事に生き残れることを祈る…とのことだ。
不自由なく暮らせる…と書いてあったがどのくらい入っているのだろう?入り用ならバイトを探さなくてはならないが
電子クレジットを確認すると気絶しそうなほどの金額が入っていた…気が大きくならないように気を付けなくては。
「これが俺の特化型CAD…なんか玩具みたいだな。某仮面ヒーローの召喚器っぽい…」
机の上には専用のCAD…と言う名の”デッキケース”を装填できるようになっているハンドランチャーが置かれているこれは神様に特典として”魔法”を発動させるための触媒として頼んだものだ。これがなかったらきっと真夜様を助けられなかっただろう。まさか生前に遊んでいたカードゲームを魔法式で再現するとは思わなかったけど。
そして視線を壁に移動させると衣紋掛けには真新しい白と薄緑の第一高校の制服がおろしたてで掛けられていた。
「………」
絶句した。
掛けられている制服の隣にある姿鏡に映る自分の姿は当然ながら生前とは違うがその見た目は自分の想像を逸脱していたからだ
「神様…やりすぎだよ」
鏡に映る自分の姿は広い肩幅に引き締まった体に長い足、凛々しい顔立ちに柔らかい微笑を感じさせる顔つきであり紫掛かっている夜空のように艶やかな黒の頭髪は男性らしく短く清潔感が溢れている。
見た目は完全に”中の上”だろうそれは九島光宣には劣るだろうが一条将輝に匹敵する程だった。
前世ではモサッとしたフツメンだったのだが…。
「それにしても本当に入学するとは感慨深い…きっと二科で入学するものと思っていたけど」
既に入学試験は終了し目立たない程度の結果で一科で入学が決まっていた。
ざっと用意されているものを確認した後真夜様を助けた後の”魔法科世界”の歴史をネット等を利用し確認する。
やはり、と言うか崑侖方院は四葉によって殲滅させられたらしく大漢は滅び大亜連合に吸収されたようで日本にちょっかいを掛けているようだ。
そして起こった”沖縄開戦”…きっと達也が”マテリアル・バースト”を使い守りはしたが失うのも多い出来事だっただろうと少しだけ後悔した。
「不味い…そろそろ寝ないと」
少し…といいつつ深く調べものをしていると時刻は既に深夜に差し掛かっており明日は魔法科の記念すべき開始話数だ
と思い返し遅刻しないように就寝しようとベッドに潜る。
登場人物である達也や深雪達に出会えることを楽しみにしていると暫くして。
「…ッ!!!」
ハッとなって毛布を撥ね飛ばす。
「…やってしまった」
過去に真夜に対して「また逢える」と宣ったが今は西暦二○九五年…彼女と出会ったのは二○六二年…既に彼女の時間では三十三年が経過していた。
自分の体感時間は一瞬だったが彼女の時間にして見れば三十三年と…時間の経過は残酷である。
直ぐ逢える、と自分で言っていたが四葉家の場所なんて当然知らないしそれに繋がる人物とコネを作るのは容易ではないことを思い浮かべ肩を落とす。
「君を守らせてくれ、て言ったのにこれじゃあ俺屑男だよ…」
ふて寝して…翌朝、目覚ましの時間と部屋の時計を見間違えて
◆ ◆ ◆
春。
新社会人、新学生…など全てに新が付くこの時期この学校でも”新学生”が期待に胸膨らませ学校の門を潜る。
しかし、其は一ヶ月もせずにクラスカーストや現実と理想にギャップに心をやられ自分で作ったキャラを放棄し一人ぼっち飯を食べるか誰とも喋らずに三年間の学生生活を終えるものも少なくないだろう…学校とは社会の縮図だ、と夢も希望もないモノローグ昔なら呟いていたろうな、と苦笑した。
「目覚ましの時刻間違えた…」
入学式が始まる講堂へ続く桜並木に設置されたベンチに腰かけるのは一人の少年が呟く。
ここは魔法大学付属第一高校。
二十一世紀も終わりに差し掛かった2095年…”魔法”というお伽噺は”現実”と化した。
魔法を学ぶためのこの特殊学校は既に設置されてから数十年の時を経過していた。
今日はその入学式なのだが開場まではあと二時間ほど時間があり少年は遅れない、でも少し寝ていたい時間帯で目覚ましを掛けていたのに時刻を見間違え本来よりも二時間ほど早く到着してしまい暇を持て余しベンチに腰掛け欠伸を噛み殺す。
「こんなことだったら二度寝したらよかったかなぁ……?」
このまま腰かけているベンチに横になって眠っても良かった。
春先である程度の暖かさが担保されておりこのまま…と思ったが不特定多数の生徒にみっともない姿を見せるのは非常に宜しくない。
この時間では未だ喫茶店もやっていないだろうし戻って家でコーヒーでも淹れようか…でも其したら入学式を耽ることになるな…と思い諦め近くにある自販機へ向かい缶コーヒーでも煽りながら持ち込んだ小説でも読もうかな…と思った矢先に似つかわしい声が響いた。
「…?」
「納得できません!」
一人…二人というか男女が往来で言い争っているのが見えたので近づいた自販機から気がつかれないように気配を薄く視線を向けた。
(ッ!このイケメンボイスと愛らしいボイスは…!)
やはりか、と待ちに待った会話を聞いて人知れずテンションを上げる少年。
その二人は会話を聞かれていないと思って会話を続けている。
「未だ言っているのか…?」
同じ新入生。だが其は微妙に違う。
スカートとスラックスの違い、男女の機能の違いではない。
女子生徒の胸には八つ花弁のエンブレムがあり男子生徒にはない。
「何故お兄様が補欠なのですか?ペーパーテストではお兄様の方が上でした…本来であればお兄様が答辞を読む筈新入生総代を努めるべきですのに!」
お兄様、と聞いてあの言い争っている二人が血縁関係の”家族”であることを聞いて成る程、となった少女は自販機のボタンを押しながら会話の続きを聞いていた。
「お前がどこからペーパーテストの結果を手に入れたかは置いておくとして…魔法科高校なのだから紙面よりも実技の結果を優先するのは当たり前だろう?俺の実技で魔法科高校に良く合格できたものだ…と自分でも驚いているが」
兄妹とは言うが全然似ていない。秀麗という点ではなく。
少女の方は誰もがすれ違えば振り返る程の美しさを誇り少年の方も整っているものの普通…背筋をピンと伸ばし目の鋭さが一般人ではない雰囲気を漂わせているのを感じ取った。
そんな少年へ少女が檄を飛ばす。
「そんな覇気のないことでどうするのです!勉学も体術なら誰にも敵うものなどいないというのに!魔法なら本当は」
「深雪」
少女が弱気な兄へ発破を掛けようとして魔法、と言い掛けたところに待ったを掛ける…というよりも其より先を告げることを許さない、と言った感情で強く言い咎める。
言い咎められた深雪と呼ばれた少女はハッとして口を閉じる。
「分かっているだろう?だが、其を口にしても仕方がないことなんだ…でもお前が俺を思ってくれていることが嬉しいんだ」
そう告げ深雪を頭を撫でてやると先ほどまでの感情が嘘のように霧散している。
このまま言いくるめようとしているのだろうな、とその光景を少女は見ていると深雪がとんでもないことを口にして思わず買った缶コーヒーを落としそうになった。
「そんな…お兄様が私のことを”想ってる”だなんて…」
その言葉に少年達の考えがリンクした。
(あれっ?言葉違うくないか…?)
(…言葉が違う気がする)
何かしら無視できないような齟齬が発生している気がしたが少年も少女もその事を指摘することは出来ずにそのままにするしか出来なかった。
話題をそらすように少年が入試に関して続けた。
「しかし、幾らお前が答辞を辞退しても俺が選ばれることはない。むしろ辞退してしまったらお前の評価が損なわれてしまうのは避けられない。分かるね、深雪」
そう詰められ深雪は諦めたような表情を浮かべる。分かっているからこそ言わずにはいられなかったのだ。
「それは…」
「ダメな兄貴に妹の晴れ舞台を見せておくれ?」
「お兄様はダメなお兄様ではありません…仕方がありません。行って参ります」
「ああ、行っておいで本番を楽しみにしているからお前はリハーサルを頑張ってきなさい」
「はい、では…」
そう告げ深雪は講堂へ向かっていく。
其はまた少年も彼女に付き合わされ開場までの二時間の時間潰しをしなくてならないということが確定した。
少年がベンチに腰かけるのを確認し少年は気紛れ、というか
◆ ◆ ◆
俺の中の彼の第一印象は不思議な少年だ、と。
いつ近づいてきていたのか分からないほどに近くに居たことで警戒したのは足音がなかったがそれが
「隣、良いかな?」
そう問いかけられ「別のベンチに座れ」と言えるほど心が狭い訳ではなかった。
「…どうぞ」
同席を許すと少年は暖かな笑みを浮かべ一礼しパーソナルスペースを取りながらベンチへ腰かけた。
同時に片手に持っていた筒状のなにかを差し出した。
「じゃあ失礼して…あ、これ良かったら受け取ってくれないか?さっき当たってしまって二本も飲めないからさ」
差し出された手に缶コーヒーがに握られており其が自分に渡そうとしているものだと理解し困惑しながら受けとる。
「…いただくよ」
缶コーヒーを受け取り視線は再び少年へ戻る。
身長は自分と同じぐらいであり日本人男性の平均より高い。
紫掛かった黒髪に流行り廃りの無い普通の髪型であり顔は世間一般で言われる”イケメン”だ。
だがそれよりも目立つのは二つの眼が赤と紫に彩られていることだ。
「…大変だね。さっきの彼女さんの付き添い?」
そう問いかけながら缶コーヒーのプルタップを開け「カシュッ」と空気が抜ける音が響きコーヒーの炒った匂いが広がるが彼女のような芳しい匂いではない。
「違う。さっき会話していたのは妹だよ…会話を聞いていたのか?」
「?遠目で見ていたから会話は聞こえなかったけど…女の子の方が少しだけ怒っていたのは見えた」
惚けている様子は無いようで本当に聞こえていないようで安心したがさっきのやり取りを見られていたと言うのは少しだけ「しまったな…」と思うが後の祭りだ。
「…そういえば自己紹介をしていなかった。俺は
「…俺は司波達也だ。宜しく」
◆ ◆ ◆
「紙媒体か?珍しいな」
「端末で見る方が楽だけど…俺は紙の方が好きだからね。匂いが良い」
「なるほど…ナニを読んでいるんだ?」
「サスペンス小説。2000年代の作家の作品さ。面白いよ?そういう達也は?」
「魔法論文を」
「真面目だねぇ…」
短く言葉を交わし互いにベンチに座り缶コーヒー片手に持ち込んだ端末と紙媒体の小説を閲覧しそれぞれの世界に没頭していると無自覚な悪意が飛来する。
”補欠なのに張り切って…”
”
”所詮、スペアなのにな…”
「……」
その言葉が達也の耳に入り少しだけ表情筋が微弱な痙攣を起こしたのを朔也は感じていたがわざわざ指摘してやる必要はなかったが呟かずにはいられなかった。
「…下らないな(達也と比べれば今言った君たちはゴミみたいな魔法しか使えないのに…井の中の蛙大海を知らず、ってこういうことか…)」
ぼそり、と独り言の声量で呟いたそれは達也の耳に入る。まるで自分の存在を肯定するような温度を感じ思わず声のした方向へ視線を向けるが隣にいる少年は小説に夢中になっているのを見て暫し見ているとこちらの視線に気が付いたのか首を傾げながら見つめ返してきた。
「…ん?どうかしたの?」
単純に疑問、と言わんばかりの表情に達也は思わず「なんでもない」と短く告げ読書へ戻る。
この男は底が知れない…とただの優男ではない、と警戒しながら読書を再開することを選択した。この男から意識を逸らしては行けない、とそう思うのだった。
◆ ◆ ◆
「新入生ですね?開場の時間ですよ?」
読書に熱中していると腕の端末に時刻が表示される。開場三十分前になったのだと気が付き開いていた小説を懐に仕舞うと同時に一人の女生徒が近づき声を掛けたのを確認し顔を上げるとソコには見慣れた…いや初対面だが見慣れた顔がソコにあり朔也は内心でテンションを上げた。
左胸には八枚花弁のエンブレムにケープのような薄手のヴェールを纏い身長は自身が百八○、達也が百七八あるので声を掛けた少女は三十センチほど小さく突如として壁が現れた状態になるが少女の視線は男子生徒の胸元に当たる。
少女の視線は胸元のエンブレムに注がれるが軽蔑の色はない。むしろ興味津々と関心の色が多大に含まれていた。
「関心ですね。スクリーン型と…わっ!紙媒体の小説?珍しいものを読んでいるのね」
「動画は目が疲れますから。それに読書の方が脳への栄養を与えてくれます。活字は栄養ですから」
「活字は栄養…うん、良い言葉ね。私も映像媒体よりも読書の方が好きだから…なんだか親近感が湧いちゃうわ」
それらしいことを告げると少女は嬉しそうな表情を浮かべる。そして距離を縮めてくるその行為は彼女が好かれ勘違いされるげんいんなんだろうなぁ…と内心苦笑いした。
「あっ…ごめんなさい。申し遅れました。私は第一高校で生徒会長を務めております。七草真由美です。ななくさ、と書いて七草よ。宜しくね?」
「自己紹介ありがとうございます。俺は紫ノ宮朔也。でこちらが同じ新入生の司波達也くんです」
「俺は…いえ自分は司波達也です」
達也は彼女に対し「十師族か…」と警戒しているのだろうそれを真由美は毛ほども知らずに目を丸くして俺たち二つの名前を興味深げに呟き面白いものを見つけたようなニュアンスへ変わった。
達也にとってはそれが嘲りではなく純粋な興味であると伝わった。
「そう、貴方達が紫ノ宮くんと司波くん…なるほど教員達の間では君たちの噂で持ちきりよ?勿論良い意味でね?」
彼女の言葉を聞いて達也は隣にいる少年の警戒を引き上げた。
「朔也くんは実技と小論文含めて七教科百点満点中七十点。当校の平均点でまるで
そう真由美に言われて朔也は困ったような笑みを浮かべながら首を振って否定する。
「いや、本当に偶々ですよ…」
困ったような反応を浮かべると真由美は更に砕けたような言葉遣いになり笑みを微笑を浮かべた。
「ほんとにぃ?…でもまぁそれは置いておくとしてそれに司波くんは筆記試験は百点満点中九十八点…筆記トップクラスで両小論文では文句無しの満点前代未聞の点数よ?」
「…ペーパーテストでの結果です。情報システムだけの内容ですよ」
魔法科高校での成績は実技で判定される。いくら倫理ができていたとしても優先されるのは”実技”だ。
真由美に誉められはしたが達也の関心は今朔也に向けられていた。
(全てが七十点…?狙ったかのような点数か。目立ちたくない、と…何かのカモフラージュなのか?紫ノ宮朔也…注意深く見る必要があるな…)
ナニかを隠すために点数を平均で取り上がってこないようにしているのは自分達の”秘密”に近づこうとしているのか?と”勘違い”していた。
(絶対疑われてる…害することなんか絶対無いのに…トホホ)
生の真由美に出会えたことに喜びを感じていたと同時に達也に警戒されてしまったことに少しだけ悲しくなったが必要経費と割りきった。
◆ ◆ ◆
入学式が開始されとう当然ながら前の席に座りやはり、というかほのかと雫が近づいてきて一緒に着席したのは俺の見た目が人畜無害な見てくれだったのが功を奏したかもしれない。
そして深雪の生演説…と言う名の答辞…と言うか早見さんの声に心奪われていたのだが文章の端々に「皆平等に」「一丸となって」と言う言葉を使用されていたが聞いていた生徒達は深雪の美貌と声に心奪われていたみたいだった。
その実俺も奪われそうになっていた。やはり深雪は可愛い。
式が終わりクラスを確認するとやはりAクラスでありほのか達とクラスメイトになることが確定し二人は一緒のクラスであることに喜んでいる姿は微笑ましくてついつい笑みが溢れてしまう。
そんな反応を見せていると雫が疑問を浮かべていた。
「どうして微笑んでいるの?」
「二人が嬉しそうにしているから釣られてね。仲が良いんだな」
「…朔也は変わってるね」
仲が良い、と言われ雫の表情がフッと柔らかくなる。
「よく言われる」
「朔也さんとも同じクラスだなんて!宜しくお願いします」
「うん、こっちこそ宜しくねほのか」
会話をしていると達也達が近づいてきてその後ろにエリカ、美月が近くに追いて来ており両者互いに自己紹介を終えてエリカが声を上げる。またそれが達也に疑われるようなコメントだった。
「それにしても…司波に千葉に、柴田に紫ノ宮なんて…なんかすごいじゃない?」
音が似ているだけだろう…と思うものが多いだろうが達也は違った。
(まさか朔也は数字持ちの家系なのか…?紫ノ宮なんて家名は聞いたことはないが…紫ノ宮…四ノ宮、数字落ち?…調べる必要がある)
(ひぇえええ…!達也がめっちゃ見てくるこわぁ…!)
一人だけ戦々恐々していた。
因みに深雪とのファーストコンタクトを手応えありだったのは助かった。
もしかすると真夜さんと会う可能性もあるから親族の二人とは可能な限り友好的な関係を築いていきたいが…俺が無害であると達也に理解してもらう必要があるが…性急に動く必要は無いだろう。
その日は明日からの授業に向け断りをいれて自宅へ帰宅するのだった。
◆ ◆ ◆
「…達也さん、今なんと仰いました?」
手にしていたティーカップが中身を溢しながら砕け散った。
ガシャン、とモニター越しに響き渡り隣にいて聞いていた深雪が驚きそれを見ていた達也もその光景を見て何があったのか、と困惑している。
事の発端として達也達は自宅に戻り真夜からの入学祝いの言葉を受け取っていた最中達也が早朝に近づいてきた紫ノ宮朔也なる人物の事を調べて欲しい、とその名を告げると先程まで大人の余裕たっぷりにしていた四葉家当主の真夜は目に見えて慌てていた。その光景を見て達也は思案した。
(叔母上がこの慌てよう…まさか紫ノ宮は俺たちの背後関係を探すために送り込まれた敵勢力の一員なのか?)
「お、叔母様ッ大丈夫ですか…?」
慌てて声を掛ける深雪の声にハッとした真夜は直ぐ様当主としての威厳を取り戻す為に小さく咳払いしてモニター越しの二人へ”指示”を出した。
「こ、こほんっ……少し手元が狂っただけですわ?お気になさらないでくださいな。達也さん?」
「はい」
「紫ノ宮朔也さんに関しては絶対に敵対してはなりません。むしろ好意的に接してお友達になりなさい」
「…それはどういう意図でしょうか?」
あれ程の慌て様を見て達也は怪訝な表情を浮かべる。仲良くしろとはどういう事なのだろうか?とその意図を理解できずに聞き返すと顔を赤くして黙ってしまったがそれも一瞬だった。
「彼は非常に優秀な人物です。
複雑な言い回しだった。叔母が今日入学したばかりの少年を知っている?と言うことに引っ掛かりを覚えたがつまり、情報収集を行えと言うことにあながち間違っていない指示に達也は四葉家からの
「了解しました」
「…二人とも申し訳ないのだけれど今日のお話は終わりにさせて頂くわ?達也さんと深雪さんも初日で疲れたでしょう?ゆっくりと英気を養って明日からの学生生活を頑張ってちょうだい」
「畏まりました、叔母様」
二人で画面向こうへ恭しくお辞儀すると室内を照らしていたモニターが色を落とし真っ黒になるが直ぐ様室内の電気が付いた。達也が口をひらく
「…紫ノ宮朔也。一体何者なんだ…?」
「それにしても叔母様は…どうして嬉しそうだったのでしょうか…?」
「嬉しそう?」
深雪の言葉から真夜へ意外な言葉を指した。
「はい…所々声色が喜色を帯びていておりまして…まるで恋している少女のような笑みを浮かべられておりました」
「そうなのか…」
感情の機微、というのものに達也は疎い。
そういった点では深雪の方に軍配…いや同じ女性という所がそう感じさせたのだろう。
一先ず、此方の方でも情報収集をするべく明日九重寺へ向かい師匠へ調査して貰おうと考えた。
(叔母上が興味を示す紫ノ宮朔也…一体何者なんだ?)
達也の中で朔也は正体不明、だが悪意を感じさせない不思議な…雲のような人物になっていた。
◆ ◆ ◆
「葉山さん、貢さんへ調査をお願いさせて頂戴」
手を滑らして落下したティーカップをメイド達に片付けさせた後執務室には真夜と執事長である葉山が残っていた。
指示を受け承諾する葉山、顔を上げるとその表情は一人の執事、ではなく孫娘を優しい笑みで見つめる好好爺のような表情を浮かべていた。
「畏まりました。奥さま…しかし…」
「…なにかしら?」
「漸く、奥さまに”春”がやって参りましたな」
「は、葉山さん…あまり、からかわないでくださいな」
通信を終了後に近くに置いていた燐光のローブを愛おしそうに撫でているその表情はいつもより柔らかく葉山から指摘され顔を真っ赤にしているそれは”極東の魔女”と恐れられる最強の魔法師とは程遠い恋する少女の表情だった。
「ま、まだ彼がそうだと決まったわけではありませんし…それに…彼はもう…」
「奥さま…」
そう告げると真夜の気持ちが少し沈んだ。
”紫ノ宮朔也”が自分があの崑侖方院であった”朔也”と同一人物であるとは限らないのだ。
まだ調査を開始したばかりで結果は上がっていない…彼女が想像しているのは既に彼は結婚し所帯を持ち子を成し其が達也達と同年代…となっている可能性があったからだ。
だからこそ彼女は達也に”お願い”し彼が本人であるという確証が欲しいのだ。
仮に自分の想像が現実だとしたらショックで寝込むかもしれないが其が外れた場合狂喜乱舞するだろうと真夜は確信していた。
(好きって言った!…守るって言った!私の手を取って…!絶対に責任を取って貰うんだから…!)
自分の男性観を破壊しあまつさえここまで待たせたのだ、少し…いやもっと我が儘になっても良いだろうと自分に言い聞かせた。
◆ ◆ ◆
入学二日目にして早速問題に巻き込まれた。
その日の登校すると直ぐに座席に深雪がやってきて「一緒に回りませんか?」と提案してくれたお陰でひとりぼっちにならずにすんだ。
俺と深雪、そして雫とほのかのメンバーで授業を見学したりして俺魔法科ライクしてる…と感動しているとやっぱり、というか食堂にて森山?森川…じゃない森崎達一科生が達也達が利用しているテーブルを明け渡すように命令しているのをみてなんと言うか…正直みていてやっぱり気分が良いものではなかった。
大人で妹がいる手前騒ぎを起こしたくなかった達也は自ら移動を選択したが案の定手に入れた座席を用いて深雪達のグループを食事に誘うが断られ結局売店で食事を取ることになった。許すまじ森崎。
そしてなんやかんやあって放課後。
一緒に帰ることを誘われた俺は四名で正門へ向かう途中で達也と合流し下校しようとしていたのだが森崎達が深雪と相談したいと一方的に突き付け言い争いへ発展したのだ。
(どう考えても向こうが悪いよなぁこれ…)
その言い争いを他人事のように見ていた。
「なんの権利があって深雪さんと達也さんの仲を引き裂こうと言うんですか?」
今もあの物腰柔らかで優しい美月が一科生に対して一歩も引かずに雄弁に語っている。語っているのだが…
「引き裂くと言われても…」
「美月は何を勘違いしているのでしょうか…?」
呟く兄の発言に賛同している深雪。渦中の兄妹は混乱していた。そんな困惑している兄妹を尻目に心優しい友人達は対峙している一科生徒と壮絶な舌戦を繰り広げていた?
「僕たちは彼女に相談したいことがあるんだ!」
「そうよ!司波さんには悪いと思うけど少し時間を貸してもらうだけなんだから!」
深雪のクラスメイトの男子、女子その一その二の言い分をガタイのいい達也と同じクラスのレオが笑い飛ばしていた。
「はん!そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間をとってあるだろうが」
「相談だったら予め本人の承諾をとってやったら?深雪の意思を無視したら相談もなにもあったものじゃないじゃないの、それがルールなの。なに?高校生になってそんなことも知らないわけ?」
相手を煽るようなエリカの台詞に男子生徒が噛みついてきた。
「うるさい!他クラス、ましてやウィードが僕たちブルームに逆らうな!!」
この暴言に真っ先に反論したのは(達也達はやっぱりと思った)美月だった。
「同じ新入生じゃないですか。あなた達ブルームが一体どこまで優れていると言うんですかっ!」
決して大きな声ではなかったが美月の声は不思議と校門前に響いた。
「…あらら」
その発言に達也は不味いと思ったことが言葉になり出てしまった。
「…どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやる」
「ハッ!おもしれぇ、是非ともみせてもらおうじゃねぇか」
まさに売り言葉に買い言葉、レオが挑戦的な大声で応じた。
「だったら教えてやる!」
特化型のCADを男子生徒が引き抜いてレオの眉間に照準を合わせ深雪が達也の名前を叫ぼうとした瞬間。
達也の隣にいた一人の男子生徒の口元が動いた。
『
十三ある魔法の一つである《セフィロ・アリエス》は精神干渉系魔法で相手の闘争心を静めさせる。
周囲の空間が緩やかに…いや荘厳な空気へ変化し
「なんだ…?これは…(まさか、精神干渉系統…?!)」
その魔法が発動したが学内に設置された想子検知計に観測されない。達也しか関知できない微弱な魔力の流れが関知された。CADは操作していない。詠唱…それも高速詠唱という短い小節で発動していた。聞いたこともない魔法だ。
「なに、これ…」
その魔法を発動を形成していたのはあの紫ノ宮朔也だった。
「確かにそこにいる女子生徒の言い分が正しいね」
一歩前に出て口をひらく。紳士的でありながらその一言は相手の心を崩すに十分な力を持っていた。
「既に下校時間だ。彼女と話をしたい、というのなら彼女に本人確認をすべきじゃないか?それも確認せずについかっとなって魔法を使い実力に出ようとするなんて…魔法師としての自覚が足りないんじゃないか?ボディーガード一家の森崎君?」
そう指摘され
「あ、ああ…そうだな…すまない、どうかしていた。申し訳ない司波さん。此方の我が儘で貴方に迷惑を掛けてしまった…許して欲しい。」
「え、ええ…気にしないでください」
素直になった森崎に困惑したが受けとると踵を返し校門へ向かう森崎を追いかける生徒達。
「では…」
「お、おい森崎ッ…紫ノ宮お前ッ」
「俺はなにも…ただやめておけよと言っただけだぞ?相手の事を考えないやつは嫌われるぞ」
「うるさいッ!一科生が
謝罪し立ち去ろうとした森崎の後に続くものがいたが一部が一歩前に出た朔也へ気にくわない魔法によるちょっかいをしようとしていたのを達也が《術式解体》で破壊した。魔法を発動しようとしていた生徒を止めようとして魔法を発動したがサイオン弾丸によって破壊される。
「そこの生徒!自衛目的以外で魔法を使用するのは、校則以前に犯罪行為よ!」
声がする方向へ振り返ると生徒会長である真由美と渡辺摩利が此方へ向かっているのが見えた。
朔也は自らが魔法を使ったことを察知されなくて安堵している
「おまえ達、1ーAと1ーEの生徒達だな。事情を聞くからついてこい」
冷たい硬質的な声で手元にあるCADは既に起動準備を終えている。抵抗すれば即座に実力で制圧されるだろう。風紀委員会の権限において実力を行使する!と言ったところか。その威圧にレオも、エリカも、深雪のクラスメイト達は黙ってしまったが案の定そこからは原作通りであり達也が誤魔化し摩利に狙いを付けられてしまった。
その後解放された俺たちはほのかの提案で一緒に下校していると達也が近づいた。
「朔也…お前魔法を使ったな?」
「あ、ばれた?本当だと全員を沈静化させたかったんだけど…まだまだ甘いや(詠唱破棄で使用したから荒かったな…まぁあれ本気で使うと無気力状態になって死んじゃうんだけど)」
「…気を付けろよ。あの状況で精神干渉系を使ったら只ではすまないぞ」
「…あれだけで魔法を見抜くとは…達也って何者?」
「魔法式を読み取る目は良い、と言ったはずだぞ?」
「そうだったね。…それとありがとう。魔法を無力化してくれたんだろう?」
「深雪をあのいざこざから救ってくれた礼だ」
「そういうことにしておくよ」
その後の下校の最中に達也達と深雪達のグループが仲良く会話するのを見ているとエリカが苦笑している。
「なんだか紫ノ宮くん親戚の子供を見るおじさんみたいだよ?」
そう告げるとドッと笑い声をあげたのは全員がそう思ったからだろう。
本人的には納得が行かない部分だが実年齢は彼らより二回りほど上だから否定はできなかった。
「千葉さん酷いな…まぁでも一科も二科も分け隔てなく楽しそうに会話しているのは良い光景で笑みも溢れるものでしょう?」
柔和なその表情がその言葉に説得力を持たせていた。
その会話を聞いていた達也は朔也の行動を見て早朝に師に依頼した結果が敵対するものではない事を心の何処かで祈った。”友人”となり得る人物だったが故。
思い付きで書いてる。