助けた女の子に「責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
真夜とのデートを終えた後に戻ってきた際にマンションの通信端末に黒羽貢の着信が入っていることに気がつき二人でソファーに腰かけるとモニターに貢の姿が映し出され報告を受けた内容が関係していた。
情報収集をしている黒羽家としてはこの情報を無視できなかった。
『はい。本日都内の附属病院にて暴対警報が発動した模様。その場に現れたのは呂剛虎…大亜連合特殊部隊の戦闘魔法師のエースが出現し千葉家の次男である修次氏と対峙した用です。多少の物損被害はありましたが施設の事務員や医師等には被害は無かったようですが…』
「他に、被害があった。ということですか?」
真夜が貢へ問い合わせると小さく頷く。次の言葉は正に”寝耳に水”だった。
『入院患者が一人、行方不明となっております。名前は”平河千秋”。精神操作を疑われ精神鑑定のために入院していた第一高校の一年生です。恐らく誘拐された、と見るべきでしょうが…しかし』
「しかし、何か気になる事が…?」
『はい。本来病院内で暴対警報が発生した場合に施設内の出入り口のドアを電子と物理両方でロックが掛かるのです。此方がその時間帯の通路と部屋に面した外側のカメラですが出入りした形跡がありません。居なくなる、と言うのであれば扉や窓を使って移動するのは分かりますが実際に暴対警報が解除される前に…少女は姿を消しています』
「…魔法的な揺らぎや監視装置に手は加えられていたのかしら?」
『はい。監視映像は一部差し替えられていたようです。想子関知も作動しないようにされていました』
即ち、顔も分からなければ追いかける手段がない、と言うことになる。
「そう…煙に巻かれた、というわけね」
ソファーへ腰かけた真夜が冷徹な声色で呟いた。その可憐な貌に浮かぶのは隠しきれない当主としての鋭利な冷徹さを漂わせる。
そして、貢からの報告は原作の歴史を知っている朔也にとっては予期せぬイレギュラーであった。
「想子関知を欺き、カメラの監視映像をリアルタイムで差し替える…大亜連合の『鬼門遁甲』だけでは、そこまでの鮮やかな芸当は不可能だわ。ねえ、朔也さん。これは件の組織が関わっていると思いますか?」
朔也はソファーの背もたれに身体を預けながら二色の瞳を険しく細めた。
「…だろうね。平河千秋が言っていた”ギデオン”と名乗った人物が周公瑾と手を組んで事を起こしたんだろう。連中なら精神干渉、いや認識操作なら簡単にやってのけるだろうね………だけど、何故平河千秋を誘拐したんだ?こういっちゃあれだけど…旨味も何も無いと思うんだけど…」
身代金…とも思ったがあり得ないだろうと一蹴する。
彼女に魔法的な優位的な素質はない。有るとしても彼女の魔法工学の知識と技術ぐらいであり物語の根幹に関わらない一般生徒だ。
画面向こうの貢が誘拐されたデータを確認しているのだろう。視線が別の画面に向かっていた。
程なくして視線は此方へ向けられる。
『朔也様の仰る通り、不可解なのはその誘拐の目的です。平河千秋は、第一高校の生徒に過ぎません。軍の機密も協力な魔法や特許の有る魔工学を保有していない。大亜連合が呂剛虎を用いて彼女を辿ってその存在を察知されるのを恐れて排除に向かうのはリスクが高すぎます。それに排除なら未だしも回収するなど価値の無いことをする必要は無い筈なのですが…』
そう貢に言われて思案した。
たしかにそうだ、と納得する部分と心の何処かで何かが喉のつっかえのように引っ掛かりを覚えていた。
何かを”決定的”な事を忘れている、そんな気がしていたのだ。
「……現時点では奴らの本当の狙いまでは読めない」
朔也は小さく首を降った。展開を知っているとはいえ、千秋がこの段階で誘拐されるなど想定外だ。
恐らく…というよりも十中八九九校戦で暗躍していた”ギデオン”と名乗った男の組織…今だ素性も人となりも分からぬ男が、一体彼女へ何に利用価値を見いだしたのか、その目論見までは掴むことは出来ない。
「…ですが、その男が関わっている以上は碌な事に使われませんわね」
真夜が妖艶に微笑むが、その瞳は一切笑っていない。
彼女も幼い頃に身を持って経験しているからだろう。言葉の重みが違っていた。
細い指先がソファーの肘置きにトン、トンと規則的に叩く度に、部屋の空気が凍るような錯覚を覚えた。
その少女の面影から四葉家当主としての表情が覗かせていた。
「不愉快ですわ。大亜連合がこの地に足を踏み入れている、という事実だけでも五月蝿いというのに。私たちの日常に入り混み羽音を立てる害虫は駆除しませんと…貢さん?」
『はい』
「ギデオンという人物と【カーディナル・サイン】という組織を調べてください。論文コンペ当日に何が起きても対応できるように。その背後で手引きしている周公瑾の同行を厳重にマークして。恐らくは中華街で下らぬ謀を企んでいるでしょうけど…対応お願いします」
『御意。直ちに手配いたします。』
「よろしくお願いします」
『それと朔也殿、このタイミングではございますが以前より調査依頼された結果が出ましたのでご報告をさせていただければと…』
朔也が頷くと端末にデータが転送される。
それを真夜と確認すると地図データと人員構成が記されたそれは潜伏しているゲリラ要員までは不明だが作中でも蜂起と同時に動き出すのを見れば計画的な犯行だったことが窺える。その目的も魔法師という戦略的な価値を奪取(主に女性)や魔法論文が納められた関東魔法支部の襲撃…だ。
「…ゲスね」
真夜は不快そうに顔を歪めた。同時に朔也も顔をしかめる。
一方、末端はあくまでも扇動であり金で雇われている可能性があるとのこと。兵士はともかく末端のゲリラは対処しきれないが拠点と武装や人員を溜め込んでいる前線基地が割れているのならば
しかし、この段階で横浜中華街を強襲する手段がとれないのは彼処は日本人の店を構えていたり何の罪もない市民が生活を営んでいるのだ。それは大亜連合という国に嫌気が差し帰化した人々もまたいることを無視は出来ない。
(強襲は、出来ないか…国内に膿を溜めるって言うのはよくないんだが…殺戮者になりたい訳じゃないし)
それは一端置いておく。それよりも不確定要素が有る。想像を働かせた。
(それに…やっていることがゲスだな。…何故歴史から学ばないのか。しかし、【カーディナル・サイン】…”ギデオン”という人物、そして誘拐された平河千秋…どう転がるか。出来ることなら論文コンペの前に襲撃で壊滅させたい…が、大亜連合の侵攻を止められるか、だな)
横浜騒乱は確かに作中の分岐路となるエピソードだ。物語が大きく進むし魔法師の在り方が改めて問われる。
…同時に達也が世界から狙われる切っ掛けでもあるが。
それにしても多い、と朔也は苦笑する。
総勢数百名を越える大亜連合の兵士、と一般市民を巻き込む非合法武装の数々とその目論見は決行日である論文コンペを前にして完全に四葉の前に暴かれ曝されていた。
(
原作を見る限りゲリラ戦闘を行っていた大亜連合の部隊は魔装大隊と方面軍によって駆逐されていた…筈だがそれでも関東魔法支部や市機能を乗っ取ろうとしていたのは大亜連合の本隊であることには変わり無い。そこを押さえてしまえば局所的な小競り合いで終わるだろう。それに真っ当に学校行事をやって欲しい、という願いもあった。
「真夜さん。この貢さんが手に入れた情報を四葉経由で風間少佐の部隊や公安に流すことは出来る?もちろん
「横浜周辺に潜伏している潜在的な大亜連合の兵士の情報ですか?勿論可能ですが…」
「重要な物資や兵器、兵士達の兵糧が集められた集積所へは論文コンペの前日に俺の方で強襲を仕掛けます。反撃する暇も与えないほどに徹底的にね。」
(まさか…朔也殿はこれを一人で壊滅させようというのか…?!)
そう告げると画面向こうの貢は驚いた表情を浮かべる。
横浜周辺の地図にマーキングされた大亜連合の集積拠点となっている印は”四つ”を越えていた。
これを一人で攻略しようというのか、と呆れよりも驚きが勝っていた。その表情を見た真夜がクスり、と笑みを浮かべていたのにも気がつかないほどだ。
「情報を流すのは”保険”です。指示を出す本隊が瓦解すれば末端はまともに動くことすらままならないでしょう…これも想像ですけどね」
逆に危険なのは頭目を失って暴走する”末端”の存在だ。それこそ無差別破壊テロを起こされたら堪ったものではないからだ。
「それに…勝手に四葉が動いたと知られるのは後々面倒でしょう。小言、と言っても味方になる人たちに足を引っ張られるのは後々に凝りを残します。軍に話を通さずにこれだけの軍勢を殲滅した、となれば政治的な問題に発展しかねない。何より、万が一の大規模な市街地戦に備えて、公的な防衛戦力をあらかじめ横浜に配置させておく必要があるでしょう。計画的抑止ですよ。軍が展開している、と知れば大亜連合も身動きが取りづらいでしょう?問題なのは素直に動いてくれるかどうかですけど……あ」
そこまで言って朔也は弾かれたように思い出した。
いるじゃないか、と。このように軍にアドバイスが出来る権力者と最近メールでやり取りをしていた年上の”お知り合い”の存在を。
「どうしたのですか?」
「軍を動かせる、というかアドバイスできる人物一人いた…あ、でも陸軍だから海軍とか空軍に話伝わるかな…」
そう告げた後におもむろに立ち上がってポケットにいれていた端末を操作し電話を掛けた。
「?」
『?それは一体…』
コール音がなると同時に室内とモニターに映る貢に届くようにスピーカーモードにして通話をすると繋がる。
『…はい。もしもし?』
その声を聞いて真夜はピンと来て微笑む。
「あらら…そういった”軍を動かせる”というのであれば最適なお人でしたわね」
「ご無沙汰しております。お元気でしたか?」
『おお。朔也くんか。久しいな元気だったかね?』
「ええ。勿論です。お声を聞いて元気そうで何よりです」
その事に貢が感づいてギョッとする。電話の主それは。
「九島老師」
それは九校戦の際にふとしたことで知り合った”世界最巧”の異名を持つ九の家系…九島烈その人だった。
◆ ◆ ◆
画面に映し出されたのは好好爺とした笑みの奥に、底知れない老獰さと覇気を隠した老人…九島烈だ。
『して、一体何用かな?』
朔也は画面向こうの烈にたいして、自然な態度で一切の物怖じをすること無く、淡々と、して極めて重大な事実を告げる。
「閣下。突然の連絡申し訳ございません。……現在、横浜にて大亜連合の特殊部隊、及び九校戦の裏で暗躍していた”無頭竜”に協力していたとされる反魔法組織が潜伏していると見られます。騒ぎを10月に行われる論文コンペティションの開催と同時に蜂起を開始するものです。その数は数百名の兵士とゲリラ、そして武装は軍用の機甲兵器を用いての目的は論文コンペに集まった若い魔法師の拉致、関東魔法支部に秘蔵されている魔法技術の奪取です」
『…それは確かかね?』
烈の視線が鋭く突き刺さる。さしものの烈もその具体的な数字と規模、目的を知らされて好好爺の表情を消し去って鋭利な”技巧使い”と呼ばれた魔法師としての側面を見せる。
「はい。四葉家の諜報が入手した情報の為確かです」
『それで?どうしてこの私に連絡を取ったのかね?』
「ええ。既に入手したデータは四葉の情報網を通じ、及び匿名で公安や独立魔装大隊の風間少佐の部隊へ、《ある程度》》のデータを送付する予定です。ですが、公的な機関がこれだけ大規模な情報を元に即座に動くには、手続きや政治的なしがらみがあると思いまして。だからこそ、閣下のお耳に通しておくべきかと」
真夜と朔也の意図を烈は瞬時に理解した。
どれ程に正確な情報であったとしても、警察(公安)や軍が市街地に重武装の部隊を事前配置するには時間が掛かるし周囲の民間人に不安を煽るような形になってしまう。だが、国防軍に大きな影響力を持つ烈が裏から手を回せば煩わしい手続きを一瞬で飛び越え、軍や警察を臨戦態勢に移行させられる。が烈の中で引っ掛かっていた部分があったのは提示している情報の中に敵拠点が無いことだ。これでは強襲を掛け一網打尽にすることが出来ない。しかし次の真夜の言葉でその意図を理解した。
「私どもは、論文コンペの前日にこれらの拠点へ
烈は真夜と朔也の関係性を知っている。
真夜は彼に自分と相応しい立場になって欲しいのと朔也は真夜に相応しい
『ははははっ…恐ろしい若者たちだ。この私を利用しようとは。四葉の威光を巧く使っておる。真夜、よい伴侶を見つけたな?』
「恐縮です」
『味方には最小の情報を。そして事情を知る私には”協力者”として全容を…とこれも朔也くんの入れ知恵かね?流石だよ。よかろう、話を通しておくとしよう。孫娘を通じて風間少佐の部隊へ通達しよう。それで佐伯の方にも伝わるだろうしな。公安や警察に関しては伝を使って警戒させる。無論、後の事は任せたまえ』
「感謝します。閣下。近い内に真夜さんと共にご自宅へお邪魔させていただきます」
『楽しみにしているぞ?存分に暴れたまえ』
そう言葉を締め括ると端末とリンクしていたモニターが切り替わる。
烈と通信していた端末をポケットに納めるとその一部始終を目撃していた貢は驚きその一部始終を隣で見ていた真夜は嬉しそうに微笑んでいた。
九校戦から真夜様を参加させるとしたらどの年代が良いですか?
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十二歳ぐらい(中学生ぐらい)
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十六歳ぐらい(主人公より少し上お姉さん)
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本編(よりは若二十代それで制服を…)