助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
魔法大学付属高校にとって夏の九校戦対抗は秋の論文コンペティションと並ぶ一大イベントだ。
参加生徒の選考は生徒会が行うことになっている。
その選考会を主導で行う者達が集まる生徒会室にて。
「…だからと言って、各クラブの選手を無視するわけに行かないし、選手を決めるだけでも一苦労なのよね」
「未だに選手選抜が未だ決まっていないんですか?」
うーん、うーん。と唸っている真由美を見かねた達也が声を掛けた。
「選手の方は十文字くんが手伝ってくれてなんとか決まったんだけどね…問題はエンジニアなのよ」
「エンジニアですか…」
その単語に深雪がピクリ、と反応する。
「なんだ、未だ決まってないのか?」
渡辺先輩の問いかけに真由美はいつものような明るさはなく力無く頷いた。
「二年生の方だと五十里くんとあーちゃんとか優秀な人材が居るんだけど、今年の一年生や三年生はどうしても魔法師希望の子が多くてね。まだまだ頭数が足りないわ」
「五十里か…あいつはどっちかというと調整はあまり得意ではなかった筈だが…」
「現状はそんなこと言ってられる状況じゃないの…私と十文字君がカバーすると言ってもね。限度があるわ」
真由美が他の選手の分も見ると言う台詞に渡辺先輩が反応していた。
「お前達は主力選手じゃないか。他人のCADにかまけていて疎かになるようでは本末転倒だぞ」
「せめて摩利がCADを自分で調整してくれるとありがたいんだけどな~?」
「…うん、本当に深刻だな。どうにかしなければ」
疲労ゆえに真由美の妙に据わった眼差しで摩利を見ると若干冷や汗をかき目を背けていた。
「ねえ、リンちゃん。エンジニアやってくれない?」
「無理です。私の技能では中条さん達の足を引っ張ってしまうかと」
既に何度か真由美は市原先輩にアプローチをしていたのだろうか、失敗しているようだ。
轟沈し泣きそうになり机に顔を伏せる。
「…朔也君。なにか良いアイディア無いかな?」
「え、俺ですか?」
机からがばりと頭を上げ顔をこちらに向け意見を求めてきた。
そもそも何故ここにいるのか、と言われればあの事件以降生徒会…真由美と摩利のお気に入りとなってしまったせいで委員会室と生徒会室に入り浸る事を許され?毎日というわけではないが昼食をここで取っていた…しかしそれが逆によかったのは隣にいる真夜が不躾な視線に晒されるを嫌った為防護してくれる意味合いも兼ねていたので助かってはいたが。因みに部外者である真夜をこの場に連れてきているのは許可を得ての事であり問題はない。
「うん。朔也君ならいい答えをかえしてくれるんじゃないかなーって」
「そうですね…」
「では俺は教室に戻ります…」
真由美はこの状況の打開策が無いことに行き詰まったのか意見を求めてきた。
「特にないですね」と言えばそこまでだが話が進まないだろう…仕方がない、とここは深雪に助け船を出してやるとするかという理由付けで隣にいる真夜に確認の意味を込めて視線を向けると薄く笑みを浮かべ頷く。
同時に深雪へ視線を向けると期待するような表情を浮かべていたと同時に達也は「不味い…」と思ったのか片付け生徒会室室を出ていこうとする。
本来であれば目立たせないようにしなくてはならないが恐らく達也がいなければ一校の優勝はなくなってしまうだろう…向こうには三校のエースである一条将輝と吉祥寺真紅郎が出てくる。
達也に表での箔をつけてもらうためにもモノリス参加してもらわねば…俺?俺は其を真夜さんと一緒に観戦して楽しむだけだから関係ないけど。其に真夜さんがノリノリなので恐らく無理だぞ。
「(すまん達也。お前を売るようで申し訳ないんだがいないと盛り上がりに欠けるんだよ)…達也とか良いんじゃ無いですか?深雪のCADだって調整しているのは達也って話らしいですから」
その事を話題に出すと達也がこちらを睨み付ける…まではいかないが此方を鋭い視線で見ていた。
振った話題に中条先輩が食いついてくる。
「ッ!確かに、司波くんの調整は一流のクラフトマンにも負けずとも劣らない仕事でした」
「盲点だったわ…!」
その返答に真由美の瞳に生気が宿り摩利は普段の達也の行動を思いだし頷く。
「そうだった…!達也くんはうちの備品のCADを調整して使っていたの忘れてた。使っているのが本人だけだからな」
達也の逃げ場がどんどん潰されていく。達也は俺を向ける視線が睨みに変わったが目を見ないようにしていた。
しかし達也、横見て欲しい。深雪が目を輝かせているのだから。
(朔也さん…それに叔母様も…有り難うございます…!)
そのアシストに深雪は感謝したのはこの世界でも達也は四葉家でも”出来損ない”扱いされており達也本人を評価してくれていたのは執事の葉山と母深夜、叔母の真夜…そして同級生兼将来の叔父となる朔也の四名は味方だった。
しかし、達也も三人の期待の眼差しを受けていたが戦わずして負けるのは自分の主義に反するのか最後の抵抗を試みていた。
「CADエンジニアの重要性は重々承知していますが、一年生それも二科の自分には務まらないですし、過去に事例が無いのでは?」
「なんでも最初は初めてよ」
「前例は覆すためにあるんだ」
(達也、諦めろ…最大の障害は俺たちでは無くて近くにいる人達だぞ?)
抵抗して見せる達也。しかしその隙を突き隣にいる達也の超重要人物にアイコンタクトをすると頷き思いもしない援護射撃…もとい艦砲射撃が飛んできた。
「わたしは九校戦でもお兄様にCADを調整していただきたいのですが…ダメでしょうか…?」
達也は深雪の援護射撃に思わす氷付いてしまった。もうこれは詰みだな。
今ごろ達也は心のなかで「深雪!?」となっている筈だ。
すかさず真由美が追撃を掛ける。
「やっぱり、いつもCADを調整している人が担当してくれれば選手としても心強いわよね!ね、深雪さん!」
「はい!その通りだと思います。兄や朔也さんがCADの調整を受け持ってくれるなら光井さんや北山さんも万全の状態で試合に望めると思います」
達也は二名のラッシュ、特に深雪の兄がやってくれると信じている汚れ無き美しい笑顔を見せられた事により詰んでしまった。
其に対抗しようと朔也をメンバー入りに提案しようとするが隣にいる真夜に笑みという名の圧力を掛けられて言い出せずに終わった。
◆ ◆ ◆
放課後に達也をメンバー入りさせるかどうか最終的に決定させることが決まった。
俺が仮にメンバー入り…となれば問題無さそうなんだが達也をメンバー入りにさせるときは荒れるんだろうなぁ…と少しエンブレムが無いことに恨みそうになるが意地でも会長を焚き付けて達也をメンバー入りさせてやろうと決意した。
友達の為か?と言われれば半分はそうだと答える。何故なら俺が見た中で一番の知識と技術を持っているからである。実際に自分のCADを整備したことがあるんだがこれがまた面倒で…本当なら使いたくないレベルだった。
所持しているのは威力を出すためであり普段使いなら器具無しでも魔法を扱えるので要らないのだが…。
(
あの廃工場で出現した”
何処かで産出された”アンティナイト”と同じく軍事物資の可能性がある。
「(そこら辺を真夜さんの”フリズスキャルブ”で探って貰う?いや、ログが残って顧傑に知られる可能性もあるし…レイモンドも論外…あの愉快犯め…それに大亜連合…大漢の生き残りが復讐してくると考えると笑えないな。
思いの外転生というものは不自由だな、と朔也は思った。自分の知っている世界観が流入してくる可能性が高くなり対応がしにくくなるからだ。
予想外の攻撃…隣にいる真夜は確かに強い魔法師で”極東の魔女”や”夜の女王”と呼ばれ魔法科世界で屈指の実力を誇るだろう。
廃工場に出たあいつは”パラサイト”より厄介な存在であり対抗できるのは自分の持つ魔法か”分解”か”コキュートス”ぐらいかも知れない。
(まぁ”パラサイト”…に近い”スピリット”に対抗できる術式はもう既に用意してあるからな…”デッキ”に入れておかないと。其よりも真夜さんが俺一人しかない、と知れば襲ってくるだろうし…嘗められるのも考えものだな)
若返ったと共に彼女が四葉真夜と知られれば狙う組織も多いだろうし特にもし戦闘になった際に”流星群”を使わせるのは不味い為俺が神様から貰った…”獅子座”の魔法を渡して偽装しておかなければ。あれは真夜と非常に相性がいい。
(俺が…彼女を守らなくては)
そんな思いを真夜に視線を向け身を削っても守り抜かなければと決意していた。
どんな強敵すらを屠る切り札である”射手座”の解禁…一度訓練と称して転生特典として”ゲートオープン解放!出来るようにしてくれたようで”ゲートを解放して”バトルフィールド”にてダミーの標的を置いて練習してみたが…あれは現実世界で使うには
「(達也の”マテリアルバースト”よりヤバイんじゃないか?あれ…でも場合によっては、だな…解禁されないことを祈ろう)……」
真夜が傷つけられた場合は自制が効かなくなってしまう可能性があるが…ないことを祈り真夜を見つめていた。
「(朔也さんのお弁当美味しいすぎてもう私、朔也さんのお嫁さんになる……ってもう決定事項だったわ。それよりも深雪さんが淹れてくれた紅茶も美味しいのですが…やはり、葉山さんの淹れてくれた紅茶でなければ物足りませんわね…)あら、朔也さん。どうしたの?考え事かしら」
一方で注がれる視線を朔也お手製のお弁当を食べ終え食後の紅茶を味わっていた真夜が気がついた。
「(あ、不味い)…うん?ああ単純に見惚れていた、ってだけだよ」
問われた朔也は咄嗟に誤魔化し微笑を浮かべ心には思っていた素直な返答する。
「ふふっ…でもここは生徒会室なのだからそういった情熱的な言葉は部屋に戻ってからにして頂戴?(えっ…ちょっと…こんなところで!?ひ、人が見てるのに…!)」
冷静で余裕の言葉で返答するが内心バクバクであり手にしているティーカップが一瞬揺れていた。
その甘酸っぱいような…青春空間がこの生徒会室にいる少年少女の持つ飲み物に練乳と砂糖をコンクリートミキサーでかき混ぜぶちこんだ。
(なんだ…ブラックが一瞬にしてチョコモカになったぞ…?)
(奇遇ですね…こちらは練乳入りコーヒーになりました)
「はわわわ…///」
(叔母上…というか朔也、場所を考えてくれ…)
(朔也さんは本当に掛ける言葉がキザっぽくなくて自然で…って自重してください…!)
その光景を見てそれぞれが反応を見せる。達也は頭を抱え深雪は納得したが我に返った。
「と、ところでなんだけど…朔也さんと狐坂さんは…やっぱり恋人同士だったりするの?」
甘々空間を展開される前にはっとなった真由美が問いかける。その問いかけは達也達を除く生徒の気を引くには十分な問いかけだった。
「はい。付き合ってますよ」
隠すことなく告げると恋多きティーンエイジャー達は食いついた。特に真由美は目を爛々と輝かせ摩利は面白いものを見つけたといた風に興味を向けるのを見て「不味い…」となったが後の祭りだ。仕方がない、と一言だけ告げた。本当のことは語れないのだから。
「出会いはなんだったのかしら?」
「俺の一目惚れですよ」
「私の一目惚れよ」
声を合わせて返答した。特に打ち合わせをしていないのだがタイミングバッチリだった。
しかし、それが妙に気恥ずかしかったのかお互いに顔を見合わせ朔也は微笑み真夜も微笑…を浮かべるが内心は心臓ばくばくである。
「……(ニコッ)(あ、真夜さん可愛い)」
「……(ニコり)(ほぁああああああッ…///)」
((((なんなんだこの…甘酸っぱい距離感は…!))))
彼氏のいる摩利や鈴音はともかくとして居ない者達にとっては二人の距離感がじれったくて仕方がなかった。
さてそれはさておき、学校競技のエンジニアに「トーラス・シルバー」が出るのは禁止カード級であるが…致し方ない事である。残り半分は…その光景を真夜と見ていたい、という願望が有るからだが。
昼食を取り終えて暇をもて余していた達也は自分のホルスターからCADを取り出して調整していたのだが、それを中条先輩が目敏く見つけ瞳を輝かせながら頬擦りする勢いで『シルバー・ホーン』もとい『トーラス・シルバー』を誉めちぎっていた。
同時に朔也も手慰みにホルスターから引き抜いて専用の特化型CADである『ブレイヴ・ホライゾン』のストレージを抜いたり刺したりしていると真夜が紅茶を飲みながら見ていた。すると中条先輩が近づいて来た。
「そういえば…朔也君のCADは見たことのない形ですが…オーダーメイド品ですか?其ともハンドメイド?」
こうもキラキラとした表情、そして小動物的なちょろちょろ動く雰囲気を持った先輩はどちらかと言うと高校生ではなく女児的な可愛さがあって撫でたくなったが自重した。
「オーダーメイド……だったかな?あ、持ってみます?」
「いいんですか?わぁ…それじゃあ失礼して…」
CADを渡してあげると彼女の手には少し大きいのか両手で持って細部を確認している姿は先程の女児感は薄れ其を専門とする職業の色が同居していた。
手にとってストレージを外し中身を見ると見慣れないものが入っていることに気がつく。
「珍しいストレージですね…ん?データカード、ですか?」
紙…ではなく磁気インクで印字された様々なプロテクトが掛けられた”カード”だった。
「(こうして見るとただのCADマニアじゃないんだよなぁ…九校戦で誰かが言った言葉で達也を”トーラス・シルバー”だって見抜いてたし…目は確かなんだな)ええ。俺が使う魔法が少し特殊でして。そのカードのイメージを魔法式に書き起こして発動してるんです。まぁ其を発動させるのに最適化している特化型ですので」
その”カード”は様々な物理、魔法的な破壊・無力化する”
洞察力に感心していると自分のCADを持ちながら達也へ声を掛けていた。
「司波くんはどの魔工師が作ったか分かりますか?」
達也はあずさが持つCADを恐らく《精霊の瞳》で視ているんだろうが解析は出来ない筈だ。
その殆どが”ブラックボックス”と化しており故障もしなければ破壊もされない物体だからだ。
「…さっぱりですね。見たこともないデザインと機構だ…サイオンを通すルートと術式構築が最適化された逸品だ…これほどのモノを何処で?」
(ああ。やっぱり気になるか…まぁ神様から貰いました!って言うと頭のおかしいやつ扱いされるからな…適当に誤魔化させて貰おうかな)
朔也はその問いかけに予め用意しておいたストーリーを提示するが…それが好奇心で聞いたその問いかけが空気を微妙にするものだと知らずに。
「…俺も詳しい出所は分からないんだ。それ俺が五歳の誕生日に送られたんだ。それをオーダーした両親はもうこの世に居ないから聞きようがないんだけどね」
「「……ッ」」
「「「「えっ…」」」」
「居ない、ってどういう…」
摩利がその流れで口にした返答に質問するのを誰も止めなかったのは驚いたからか好奇心からか。
そのとき達也と深雪が視線を朔也から逸らす。
「…俺が五歳ぐらいの時かな?交通事故に巻き込まれたんですよ…その日がちょうど誕生日でそのCADを取りに行く…って道中で対向車線の車が突っ込んできて運転席と助手席、その後ろに座っていた両親と妹が亡くなったんです。俺は運良く難を逃れましたが…意識不明の重体で。その時から父方の祖父に引き取られて生活していてそのCADがあるのもこの学校に入学する時に知ったんで使ってるんですよ。だから制作者は不明で俺も分からないんです。…形見って訳じゃないですけど…それしか残るものがなかったので…」
柔和な笑みを浮かべている筈なのにその表情に影が落ちている…と
その言葉を聞いて何故朔也が持つ特化型のデザインが男児向けなのかを達也は
「ずびっ…!紫ノ宮く゛ん゛…どうぞ大事になさって下さいねぇ゛ッ゛!」
「え、あ、はい…(なんか逆に申し訳なってきた…)」
ずびび…と涙と鼻水を流しながら借りていたCADを返すあずさを見て若干引き気味に受け取りストレージを格納しホルスターへ仕舞う。
達也達もその偽造された情報が本物だと勘違い…いやそれが”事実”だと思っていることに申し訳無さを感じていたが自分が”転生者”であることを知られるよりはましだろう…と判断して微笑と苦笑を混ぜたような笑みを浮かべるしか出来なかった。
この設定失敗では?と神様を恨みたくなった。
◆ ◆ ◆
生徒会室ので会話が終わり授業に戻りその放課後。
達也と深雪(雫とほのか)達は選考会に参加している頃だろうそれに関係のない朔也も真夜と共に下校し家への帰路へ着こうとしていた。
「達也は選ばれるかしら…」
「問題ないよ。七草会長が激推ししてる生徒だし…それに達也のファンは着実に増えてきているから」
二人並んで下校する。
会話の内容的には友人を心配するものではないが…それに聞き耳を立てる同級生も居ないのだから心配する必要はない。
「くすっ…」
「?どうしたの」
「いえ…我が甥ながら色々な女の子に視線を向けられているのを見ていると…ね?」
「ああ、そういうことね…」
この二ヶ月間で達也が様々な生徒に好意や敵視されているのを目の当たりにしており今回の九校戦の抜擢も人徳と能力、積み重ねがあったからだろうと理解していた。
「仕方がない、とは言え達也の魔法をコントロールするために感情を抑制、排除してしまったのは悔いても悔いきれないわ…」
悲しそうな表情を浮かべる真夜に同情ではない声を掛ける。
「苦肉の策でしょそれは…そうじゃなきゃ達也は世界の破壊者になるかも知れなかったんだ。間違いじゃないよ。お義姉さんだって苦悩して………さ、この話はまた今度にしよう?」
そういって暗い話題を打ち壊す。朔也は俯いている真夜へ声を掛けた。
「真夜さん?」
「そうですわね…この話はまた今度にしましょう…でも、せっかく二人っきりで帰っているのですからすることがあるのではなくて?」
そう告げそっぽを向く真夜。隣り合っている左手がぷらぷらしているのを見て躊躇いなく手を取り指を絡ませ引き寄せられるとぶつかった拍子に朔也の肩に真夜は頭を乗せた。
「ん…部屋に着くまで間に…手を離したら許しませんからね」
朔也の部屋と真夜の寝室…つまり”四葉家”本邸は魔法によって繋がっており寝泊まりは朔也のアパートか真夜の寝室という…半ば同棲状態になっている。
精一杯の強がりを朔也に囁いてみせるがその当の本人は囁かれて撃沈した。
「頼まれても絶対に離しませんよ。…君の苦しみは俺の苦しみでもあるんだから。抱え込まないで」
「ッ!(うぅ…ッ!真顔でそういうことを平然と…本当に…もうッ…!)…そう、私も離してあげません」
二人並んで肩を寄せ合って距離を密着させて下校した。
真夜の顔色は空の茜色に紛れて何時もより朱く見えていた、という。
◆ ◆ ◆
その日の深夜。朔也のアパートにて。
その日一日を開けておくわけには行かない真夜は一度四葉本家へ戻り”引き継ぎ”を行っていた。
「本当に朔也さんの魔法は見たことないアプローチが多いわね…どれも戦略級に匹敵しそう」
「………」
”引き継ぎ”と称して書斎にいるのは自分自身…瓜二つの”分身”であり鏡合わせのように向かい合い掌を合わせると今日一日の業務が”記録”として流れ込む。
「お疲れさま。明日もお願いするわね」
「……」
もう一人の自分自身へ声を掛けると”分身”がにこりと笑みを浮かべ頷く。2ヶ月前は驚いたが今では慣れたもので便利なものだな、と思っていた。
『
朔也が用いた魔法で真夜の余剰想子を用いた情報体の残像を瞬時に実体化させる魔法であり非系統…または精神干渉と振動系統の複合魔法であり分類が曖昧となっているがその効果は群を抜いて実用性が高くこの分身はただの幻影ではなく実体と精神…情報を共有した実像であり真夜と同じ魔法を使用できるのである。
本質としては世界が『こちら側』と『あちら側』に分かたれてるのならばその境界線に立つ”本体”をイデアにおける術者の情報構造を”複製”し現実世界へ投影するある意味で”禁忌”の魔法だが特段朔也は其を気にせずに使用している。
引き継ぎ(魔法関係とか表でやっているホテル経営の収支報告等)を終え朔也の部屋のベッドに腰かける。
既に湯浴みは四葉本邸で終わらせていた。
「ふう……そう考えると朔也さんも随分と覚悟が決まっているわね…///」
『?其聞く必要ある?真夜さんだからやってるんだよ…君以外ならそんな面倒なことしないで放っておくよ』
つまりは君以外に興味がない…私だけを愛している…
「…んもぉおおおおおおおおおおっ~~~~!!」
朔也のベッドにごろごろ、と転がり悶えている真夜。心を掻き乱されており朔也の使っている枕を抱き締めた。
顔を埋められた少しして今日こちらに泊まる理由を思い出した。
「(思い切って新調したけど…この年齢でこれ着たらただの痴女じゃない…!?あ、なんだか恥ずかしくなってきた)~~~~~~ッ///」
「ごろごろ転がって何してるの真夜さん?」
「はうわぁ!?…さ、朔也さん…」
悶え転がっているとシャワーを浴びていた筈の朔也が上がって寝巻きに着替えていた。
シャワーを浴びた直後なので湯気が上がり髪が未だ湿っているがその色気はかっちりと制服を着用している時と変わって…いや増していた。
微笑を浮かべ転がっている真夜の隣へ腰かけると少し乱れてしまった御髪に触れる。
「……ぅ///」
真夜は顔を赤くして口元を枕で隠し抱き締め這いながら自然とベッドに腰かける朔也の隣に移動した。
「…なにか、言うことはないかしら?」
「え?………ッ!」
「………///」
ぼそり、と呟くのを聞いて視線をそちらに向けると何時もと寝巻きが違う”…”ジェラピケ”だった。
「えと、その…ずっと見られているのは恥ずかしいのだけれど」
朔也の視界に入る真夜のジェラピケ姿。
その衣装の本来持つ可愛さは消し去られている理由は朔也の魔法で若返ったといってもその積み重ねた年齢の”色気”を誤魔化すことは出来ず纏っている”ネグリジェ”は真夜の暴力的な身体を包み込むには些か…いや圧倒的に防御力が足りていなかった。特に胸部装甲と腰つきが。
前世では年齢=彼女いない歴でありそんな場面に遭遇したら慌てるか言葉が出なくなるがこのスペックボディはそんなことは無く思った言葉が直ぐ出力された。
「…凄く似合っているよ真夜さん。抱き締めたいくらいだ」
「…んっ…もう抱き締めてるじゃない…言葉より先に手が出るのね…」
真夜を抱き締めると彼女本来の匂いとシャンプーとボディソープの匂いが鼻腔に広がり支配する。
「抱き締めない、という選択肢はでないよ…?」
「んふっ…あっ…あっ………ひゃっ」
抱き締め艶やかな御髪をすくと甘い声が耳に届くお互いに視線を合わせてベッドへ倒れ混む。
「…真夜さん」
「…朔也、さん………今日は…その…」
このまま二人は一つに…となるかと思ったが真夜が目を閉じプルプル、と震えている耳元で囁く。
「今日も…抱き締め合って眠りましょうか」
そう告げると真夜は安心したような…でも少し残念そうな表情を浮かべる。
この2ヶ月間で朔也と真夜は”行為”に至っていない。
お互いに”そういった行為”に及びたくない、というわけではなく身分的に今は学生であるため健全な関係を続けているのだ。自制心が働いているといえば其までだが内心では…という感じだ。
少し手狭なベッドに抱き合って肩を寄せ合い眠りに落ちるまでの時間を楽しむ。
「離れちゃ…ダメ…」
「勿論」
お互いの温もりに浸りながら幸せな時間を共に過ごすのだった。
九校戦から真夜様を参加させるとしたらどの年代が良いですか?
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十二歳ぐらい(中学生ぐらい)
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十六歳ぐらい(主人公より少し上お姉さん)
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本編(よりは若二十代それで制服を…)