◇月#日
ファブリケーター完成から三日
俺は地下研究室の中央でAR画面を眺めていた
目の前には巨大な三つの設計フォルダ
【Hugh】
【Diana】
【Walker】
青白いホログラムが宙に浮かぶ
ファブリケーターの低い駆動音が研究室全体に響いていた
最近この音を聞くと安心する
たぶん数か月ずっと聞いていたせいだと思う
「さて」
「始めるか」
<開発プロジェクト開始>
<対象 ヒュー>
<対象 ディアナ>
<推定開発期間 長期>
「分かってる」
まず最初に問題になるのはボディだ
ウォーカーなら簡単だった
作業用だからな
頑丈
安価
量産性重視
骨格作って 金属の皮膚や簡単な動きと精密性があるだけでいいから
それで終わり
だがヒューとディアナは違う
完全に俺の趣味が入ってるからな
むしろ九割趣味だ だから完璧に作りたい
俺はARで二人の骨格の立体モデルを表示した
並んで立つ二つの人影
「うわぁ…… これは大変だな」
思わず声が漏れる
まずヒュー
身長は190㎝くらいで見た目はプラグマタで出てきた作業用スーツを参考に
巨大な宇宙作業服みたいなシルエット
肩部は大型
胸部は厚い
腕も脚も太い
人間を守ることを前提に設計する
「行動、射撃、移動、判断を担当するから装甲が必要だな」
今日は装甲と骨格の設計をした
素材はある程度ファブリケーターでナノレベルで製作、化合ができるため楽にはできる
ARに設計図を書き込む
複合装甲で
一層目が炭化ホウ素と炭化ジルコニウムとセラミックによる複合装甲 素材はホロウに落ちてた切削工具よ防弾チョッキから
二層目がバンブルビーのタイヤに使われてる非ニュートン流体とそれを覆う鋼
三層目がナノファイバーマットの層
手や足の布みたいなところにはナノスーツのナノマシンを浸透させて柔軟性を生み出す
胸や頭などのもともと固い部分はマキシマムアーマーの機能を応用
衝撃分散、熱遮断、エーテル完全耐性
この組み合わせ思いつくのが大変だった 一日中調べ物したりアイさんにだめだしされたりした
骨格の構造ははターミネーターシリーズのエンドスケルトンを参考にして
素材は半有機的自己修復ナノカーボンとコバルト合金とタングステン合金を混ぜた複合素材で
その上に薄くプラチナと銀による伝達回路を張る
高強度、耐腐食、自己修復する素材
「金額見たくねぇなこれ……」
<試算>
<ヒュー一体分>
<小型装甲車購入可能>
「やめろ」
<事実です>
「やめろって」
財布と精神にダメージが入った
だがここで妥協する気はない俺のロマンのため
一切妥協なしだ!!
次に動きに関してだが
普通のモーターだけだと
人間みたいな滑らかな動きができない
そこで採用したのが電気活性高分子人工筋肉
さらに内部へナノマシンを混入
収縮補助、自己修復、負荷分散を担当させる
ARモデルで動かしてみたARモデルのヒューが拳を握る
(ギュッ)
滑らかだ
実に滑らか
「いい感じだ」
<反応速度推定>
<人間平均の四・三倍>
「おぉ 想定以上だ」
<なおコスt>
「やめろぉぉぉぉ」
アイさんは容赦がない
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背部と脚部に小型推進器を設置して..........
メインカメラにはサーマルカメラを.................
全身の金属にナノマシンによる思考を可能.............
自立型学習型aiを作って、俺やシーザーの記録とインターノットでの学習を..........
疑似的に感情を再現..........
動力はエーテルと太陽光発電、伝導率80%.............
各種基盤と演算機構を作ってっと.........
バッテリーの作成...............
ファブリケーターによって各部位製作............
金ないなった 依頼を受けなければ..........
水冷式冷却法でかすかに発生する熱を......
2週間分の日記が記録されている
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&月●日
二週間
本当に長かった
研究室の床には工具が散乱している
空になったエネルギーパック
飲みかけの栄養剤
書きかけの設計メモ
失敗した人工筋肉
焦げた制御基板
その中心に
それは立っていた
高さ約一九〇センチ
白と黒を基調とした人型機械
ヒュー
まだ未起動
だが完成している
俺は少し離れた位置から見上げた
「……マジでできた」
思わず呟く
肩部は大型
胸部は重装甲
腕部は太く
脚部は強靭
まるで宇宙作業服と戦闘兵器を融合したような姿
AR表示が起動する
<機体番号 H-001>
<開発コード Hugh>
<組立完了>
<最終点検開始>
「よし」
最後の確認だ
俺は胸部装甲を開く
内部には心臓の代わりに大型エーテル炉
周囲には冷却機構
制御コア
演算ユニット
エネルギー伝達回路
全部問題なし
人工筋肉も正常に稼働
自己修復ナノマシンも待機状態
推進器も問題ない
完璧だった 少なくとも今の技術でできる範囲では
だが問題はここからだ
知能コア
俺は中央制御ユニットを取り出した
銀色の球体
内部には演算機構が入っている
ここに人格データを投入する
もちろん本物のヒューにはならない
そんなことは不可能だ
だが少しでも近づけることはできる 俺はため込んでいたデータを投入した
原作資料
戦闘記録
性格分析
会話パターン
人間行動学
心理学
シーザーの会話ログ
俺自身の記録 それらを統合する
<人格モデル生成開始>
<推定時間 二時間>
「長いな」
<短縮不可>
「ですよね」
待つしかない
二時間後
研究室に静寂が満ちていた
ファブリケーターの駆動音だけが響く
するとアイさんの声が流れた
<人格モデル完成>
<起動可能>
俺は立ち上がる少しだけ緊張していた
これだけ時間をかけたんだ失敗だったら泣く
本気で泣く
ヒューの胸部へ人格コアを接続する
固定ロック 接続完了
<起動シーケンス開始>
低い駆動音
(ヴゥゥゥゥゥ……)
胸部の青い光が点灯する
人工筋肉へ電力供給
関節ロック解除
演算コア起動
視覚センサー起動
次の瞬間
ヒューの指が動いた
(ピクリ) 俺の心臓が跳ねる
肩が動く、首が動く
そしてゆっくりとバイザーが光った
ヒューは数秒無言だった
周囲を見回す、研究室を見る、俺を見る
そして低い声で言った
「……起動確認」
俺は固まった うわ声までそれっぽい
「お、おう」
ヒューは周囲を見回す
「現在位置を確認中」
「地下研究施設」
「了解」
短い、実に短い
だが落ち着いている冷静だな
そのあと俺を見た
数秒
分析するように見つめる
そして
「あんたが製作者か」
「そうだ」
「……そうか」
再び沈黙
沈黙長いなこいつ 俺は少し焦る
ちゃんと動いてるよな? これもしかして俺の会話データ入れたからこんなに短いのか!
するとヒューが周囲を見回した
散乱した工具
焦げた基板
空き容器
栄養剤
全部見る
そして一言
「無理をしたな」
俺は固まった
「え?」
「睡眠不足」「栄養不足」「研究時間過多」「作業環境劣悪」「改善を推奨する」
「…………」
なんだろう少し嬉しかった
アイさんは言わないからな するとアイさんが割り込む
<同意>
<以前から推奨していました>
「言い方の問題だろ!」
<理解不能>
ヒューはそのやり取りを見ていた
数秒後 ほんの少しだけ首を傾げる
「賑やかだな」
「いやお前が来るまでは全然賑やかじゃなかったぞ」
「そうか」
短く答えるだがその声はどこか安心感があった
俺は完成したヒューを見上げる
まだ武装もないまだ調整も必要
まだディアナもいないだけどゼロではなくなった
研究室にはもう俺一人じゃない ヒューは静かに立っていた
巨大な体、重装甲
そして俺の趣味の完成形 ロマンの塊 その姿を見ながら
俺は次の設計フォルダを開くAR画面に表示される
【Diana】
ヒューもその名前を見る
「次の開発対象か」
「ああ」
「俺の相棒だ」
ヒューは数秒沈黙したあと
静かに頷いた
「了解した」
「完成を支援する」
研究室の青白い光の中
ディアナ開発計画が動き始めた。
次回予告 日記7 ディアナ開発
地獄の開発編 小さな体に入りきらない大量の技術
日記編でどっちを開発してほしいですか
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PURAGUMATA ヒュー&ディアナ
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APEX MRVN