第12話 空席の王座
――葛城康平視点
潮風が、思ったよりも強い。
甲板の手すりに片手を置き、俺は眼下に広がる海を見下ろしていた。
白い波が船体に砕け、遠くには水平線が見える。
夏の日差しは容赦なく照りつけているが、海風のおかげで暑さそのものは多少和らいでいた。
もっとも、周囲の生徒たちは暑さなど気にしていないようだった。
水着姿ではしゃぐ者。
デッキチェアに寝そべる者。
高級そうな料理を前に歓声を上げる者。
スマートフォンを片手に、海や仲間を撮り合う者。
誰もが、これをただのバカンスだと信じている。
豪華客船での夏季特別プログラム。
教師からそう説明されていれば、浮かれるのも無理はない。
だが、俺にはどうしても引っかかりがあった。
この学校が、学年全体をただ遊ばせるためだけにここまでの舞台を用意するだろうか。
答えは、考えるまでもない。
あり得ない。
高度育成高等学校は、そういう場所ではない。
入学してからの数ヶ月で、それは嫌というほど思い知らされている。
表向きが穏やかであればあるほど、その裏には別の意図が潜んでいる。
今回も同じだ。
必ず何かある。
「葛城さん」
背後から声をかけられ振り返った。
戸塚弥彦が、やや落ち着きのない様子で立っていた。
本人は平静を装っているつもりなのだろうが、視線が船内と甲板の間を何度も行き来している。
「何かあったか」
「いえ。ただ……周りが浮かれすぎているように見えまして」
「同感だ。この学校が、ただ生徒を遊ばせるためだけに船を出すとは思えない」
俺がそう返すと、戸塚は分かりやすく表情を明るくした。
「ですよね!さすが葛城さんです。俺も、ただのバカンスなんてあり得ないと思ってました」
得意げな口ぶりだった。
戸塚は、俺の側につく数少ない生徒の一人だ。
能力が突出しているわけではない。
視野が広いとも言えない。
だが、俺に従う忠実さはある。
少なくとも、指示を出せば動く。
それはこの学校では一つの価値だ。
「下位クラスの連中ならともかく、俺たちAクラスはそのくらい警戒して当然です」
「戸塚」
「はい?」
「余計なことは言うな。下位クラスを軽く見るな」
戸塚は一瞬、不満そうに眉を寄せた。
「ですが、実際に――」
「相手を見下した時点で、判断は鈍る」
「……分かりました」
分かってはいないだろう。
言葉では頷いているが、納得している顔ではない。
戸塚の悪い癖だ。
Aクラスへの自負が、そのまま他クラスへの侮りに繋がっている。
だが、この学校ではその侮りが命取りになる。
「おいおい、相変わらず固いなあ」
横から軽い声が割り込んできた。
橋本正義だった。
いつもの軽薄そうな笑みを浮かべ、片手をひらひらと振っている。
「せっかくの船旅だぜ? 海、料理、女の子。楽しまないともったいないだろ」
「楽しむためだけに来たわけではない」
「先生はそう言ってたぜ?夏休みのご褒美。豪華クルージング。最高じゃん」
「お前も本気でそう思っているのか」
橋本は一瞬だけ笑みを深めた。
「さあ?どうだろ」
曖昧な返答。
それだけで十分だった。
橋本は坂柳側の人間だ。
こちらの腹を探りに来たのか、ただ茶化しに来たのかは分からない。
どちらにせよ、信用する理由はない。
戸塚が露骨に眉をひそめた。
「橋本。葛城さんの邪魔をするなよ」
「邪魔? 俺、まだ何もしてないけど」
「その態度が邪魔だって言ってるんだ。葛城さんが考えている時に、横から軽口を叩くな」
「うわ、怖い怖い。葛城の番犬かよ」
「誰が番犬だ!」
「いや、今のはかなり番犬っぽかったぞ」
戸塚の顔が赤くなる。
「橋本、お前……!」
「戸塚」
俺が名を呼ぶと、戸塚は慌てて口を閉じた。
「す、すみません、葛城さん」
「感情的になるな」
「はい……」
橋本はそれを見て、楽しげに口角を上げる。
「ほんと忠犬だな。いや、嫌いじゃないぜ、そういうの」
「黙れ」
「おっと、また怒られる」
橋本は肩をすくめる。
その仕草は軽い。
だが、その目は笑っていなかった。
こいつは、こちらに協力する気などない。
少なくとも、俺の指揮を支える立場に立つつもりはないだろう。
「なあ葛城」
「何だ」
「もしこれから何か起きたら、どう動くつもりだ?」
「答える義理はない」
「つれないねえ。同じAクラスだろ?」
「同じAクラスだからこそ、軽率に話す必要はない」
橋本は一瞬だけ口角を上げた。
「ま、それもそうか」
そう言うと、橋本はあっさり踵を返した。
「じゃ、せいぜい頑張ってくれよ。頼りにしてるぜ、葛城リーダー」
冗談めかした言い方。
だが、その響きにはどこか引っかかるものがあった。
戸塚が不快そうに吐き捨てる。
「相変わらず信用できない男ですね。ああいう奴がAクラスにいること自体、俺は納得できません」
「橋本に多くを期待するな」
「はい。ですが、坂柳側の人間を好きに動かしておくのは危険では?」
「今は泳がせておけ。下手に拘束すれば、こちらが派閥争いに固執しているように見える」
「……なるほど。さすが葛城さんです!」
戸塚は大きく頷いた。
理解したというより、俺が言ったから受け入れたという反応だった。
俺は小さく息を吐き、甲板の端へ視線を向ける。
そこには白峰奏がいた。
白いシャツを潮風に揺らしながら、手すりに軽く寄りかかっている。
周囲の喧騒から、少しだけ切り離されたような横顔。
海を見ているのか。
それとも、海の向こうにある何かを見ているのか。
相変わらず読めない男だ。
「白峰も相変わらずですね」
戸塚が言う。
「あいつ、最近Dクラスに関わっていたとか。須藤の件で」
「噂だ」
「ですが、完全な出鱈目とも思えません。Aクラスの人間がDクラスなんかに構う必要があるんでしょうか」
「戸塚」
「……すみません」
「その見方は危険だと言ったはずだ」
戸塚は不満げに唇を引き結んだ。
白峰奏。
あの男は坂柳派ではない。
かといって、俺に従属しているわけでもない。
常に一定の距離を保ちながら、必要最低限のことしかしない。
それでいて、必要な時には妙に的を射たことを言う。
目立つわけではないのに、妙に視界へ入る男。
扱いづらい。
それが今の評価だった。
「白峰は無理に動かそうとすれば、かえって読みにくくなる。今は放っておけ」
「分かりました…」
戸塚は短く頷く。
その時だった。
船内放送が鳴り響いた。
『全生徒に連絡します。これより指定された準備を済ませ、順次上陸してください』
甲板の空気が、わずかに変わる。
「上陸……?」
前方へ視線を向けると、視界の先に島が見えていた。
緑に覆われた島。
観光地のように整備された場所ではない。
自然のまま残された土地に近い。
嫌な予感が、胸の奥で強まる。
周囲では、まだ大半の生徒が「島だ」「泳げるのか」と無邪気に騒いでいる。
俺にはそうは思えなかった。
この学校が、ただ海で遊ばせるために全生徒を動かすはずがない。
何かある。
そう考える方が自然だった。
上陸後、その予感は確信に変わった。
照りつける太陽の下、全クラスの生徒が砂浜に整列させられる。
目の前には、各クラスの担任教師たち。
真嶋先生が一歩前へ出た。
その表情に、休暇を楽しませる教師の柔らかさはない。
「これより、無人島での特別試験を開始する」
一瞬、波の音だけが聞こえた。
次の瞬間、周囲が一斉にざわつく。
「は?」
「無人島?」
「聞いてないんだけど!」
「どういうことだよ!」
当然だろう。
つい先ほどまで船上で浮かれていた連中の顔が、一斉に青ざめていく。
教師たちは構わず、試験の概要を説明していった。
期間は一週間。
各クラスには試験専用のポイントが支給される。
食料、水、簡易トイレ、その他生活に必要な物資は、そのポイントを消費して購入する。
島内には指定されたスポットが存在し、占有することで追加のポイントを得られる。
各クラスはリーダーを一名定める。
リーダーの情報は秘匿され、最終日に他クラスのリーダーを看破できれば加点。
逆に見破られれば失点。
試験終了時、残ったポイントはクラス評価に反映される。
聞けば聞くほど、単純なキャンプではない。
これは総力戦だ。
しかも、一週間。
俺は即座に頭の中で計算を始める。
食料。
水。
寝具。
衛生管理。
トイレ。
見張り。
探索。
体力の消耗。
女子生徒への配慮。
スポットの確保。
他クラスへの警戒。
そして、リーダーを巡る情報戦。
横で戸塚が青ざめていた。
「む、無人島で一週間……本気ですか……?」
「本気でなければ、教師がここまで準備するはずがない」
「そ、それはそうですが……」
戸塚は周囲を見回す。
「葛城さん。坂柳は……」
「船に残留だ」
身体的事情により、坂柳有栖はこの試験に参加しない。
つまりこの場において、Aクラスを即座にまとめる役は実質的に俺しかいない。
自然と視線が集まり始めているのが分かる。
葛城派。
坂柳派。
どちらにも明確には属さない者。
全員がこちらの出方を見ていた。
面倒な話だ。
だが、今ここで指揮を執らなければ、Aクラスは最初の段階で瓦解する。
俺は一歩前へ出た。
「Aクラス、聞け」
ざわめきが少し静まる。
「まず、無駄な物資購入は控えろ。水、食料、寝具、衛生用品を最優先する。娯楽品は後回しだ」
数人が頷く。
「班を分ける。物資管理班、設営班、探索班、周辺警戒班。体力に自信のある者は探索と設営へ回れ。計算や記録に強い者は物資管理を担当する」
戸塚が慌てて一歩前へ出た。
「葛城さん、班分けなら俺がやります!」
「できるか」
「で、できます! 任せてください。Aクラスの足を引っ張るような奴は、俺がちゃんと――」
「戸塚」
「はい」
「感情で決めるな。葛城派だけで固める必要もない。坂柳派の生徒も各班に分散させろ」
「で、ですが、坂柳派を重要な班に入れるのは……」
「派閥で固めれば、それだけでこちらの弱みになる」
「……分かりました」
戸塚は渋々頷いた。
不満を隠しきれてはいない。
だが、俺の指示には従う。
「物資管理の記録は二重に確認する。お前一人で抱えるな」
「は、はい。もちろんです」
もちろんと言いながら、戸塚は明らかに不服そうだった。
自分が信用されていないと感じたのだろう。
そうではない。
お前一人に任せるには、視野が狭いというだけだ。
ふと視界の端に橋本が入った。
橋本は少し離れた場所で、坂柳派の数人と何かを話している。
こちらに加わろうとはしない。
だが、完全に無関心でもない。
こちらの指示を聞き、反応を見ている。
やはり、警戒は必要だ。
「リーダーについては、絶対に口外するな。誰がなっても同じだ。疑われるような行動を避け、他クラスに余計な情報を与えるな」
俺は全員を見渡す。
「この試験は持久戦だ。最初に浮ついた行動を取ったクラスから崩れる。Aクラスとしての自覚を持て」
悪くない。
少なくとも、初動としては。
そう思った矢先だった。
「……ふうん」
小さな声が耳に入る。
白峰だ。
輪の少し外側で、こちらを見ている。
俺は眉を寄せた。
「何か意見があるのか、白峰」
周囲の視線が一斉にそちらへ向く。
白峰は気まずそうな様子もなく、穏やかに言った。
「いや。悪くないと思うよ」
「なら従え」
「もちろん」
その返答に、妙な引っかかりを覚える。
悪くない。
だが、手放しで良いとは言っていない。
俺は一歩近づく。
「何か言いたげだな」
白峰は少しだけ笑った。
「いや、悪くないのと、足りてるのは別かなって」
周囲がざわつく。
戸塚がすぐに噛みついた。
「何だよそれ。葛城さんの指示に文句でもあるのか?」
「文句じゃないよ」
「だったら黙って従えよ。今は葛城さんがAクラスをまとめてるんだぞ」
「うん。だから言ってる」
「は?」
戸塚の声が尖る。
白峰は、それでも声を荒げなかった。
俺は低く問う。
「足りないものは何だ」
白峰は即答しなかった。
Aクラスの面々を一人ずつ見渡してから、静かに言う。
「まとまり」
空気がわずかに張る。
坂柳派の何人かが視線を逸らす。
俺の側についている生徒の数人が、不快そうに眉をひそめた。
図星だからこそ、誰もすぐには反論できない。
戸塚だけが、分かりやすく反応した。
「まとまりならあるだろ! Aクラスだぞ、俺たちは。下位クラスみたいにギャーギャー騒ぐ連中と一緒にするなよ!」
「戸塚」
「で、でも葛城さん、こいつは――」
「黙れ」
「……はい」
戸塚は悔しそうに口を閉じる。
俺は白峰を見る。
「そんなことは分かっている」
「うん」
「なら、わざわざ口にする必要はない」
白峰は肩をすくめる。
「口にしないと、見えないふりを始める人がいるから」
静かな声だった。
だが、妙に通る。
波音や生徒たちのざわめきの中でも、その言葉だけはまっすぐ耳に残った。
「葛城くんの指示は正しいと思う。水も食料も、寝る場所も必要だし、無駄遣いしないのも大事」
「なら問題ないだろう」
「うん。問題はそこじゃない」
白峰は視線を、俺から周囲へ移した。
「この試験、一週間あるんだよね」
「それがどうした」
「最初は指示で動ける。でも、疲れて、お腹が空いて、暑くて、眠れなくなったら……正しい指示だけじゃ、たぶん音が乱れる」
「音? ハッ、また妙なことを……」
戸塚が鼻で笑う。
「そんな曖昧な言い方で葛城さんを惑わせるなよ。言いたいことがあるなら、もっと分かるように言え」
白峰は少しだけ戸塚を見る。
「戸塚くん」
「な、何だよ」
「Aクラスって言葉、便利だね」
「あ?」
戸塚が眉を吊り上げる。
「どういう意味だよ」
「その言葉を使う時の戸塚くん、声が少し小さくなる」
「……意味分かんねえ」
「うん。たぶん、今はそれでいいよ」
「馬鹿にしてんのか?」
「してないよ」
白峰は穏やかに首を振った。
その態度が、かえって戸塚の神経を逆撫でする。
「今、Aクラスの音は揃ってる。でも揃ってるだけで、同じ方向を向いてるわけじゃない」
「だからその音って何だよ!」
戸塚が苛立つ。
白峰は困ったように少し笑うだけだった。
何人かが不満そうに顔をしかめる。
だが、俺は止めなかった。
白峰の言葉は曖昧だ。
理屈としては整いきっていない。
しかし、核心から外れているわけでもない。
Aクラスは強い。
だが、その強さは一体感によるものではない。
個々の能力と、Aクラスという立場への自負。
そして、負けるはずがないという慢心。
それらで辛うじて形を保っている。
だが無人島での一週間は、教室とは違う。
不満は溜まる。
疲労は判断を鈍らせる。
派閥のわずかな亀裂も、環境が悪くなれば広がっていく。
「……白峰」
「うん」
「お前は、それをどうしろと言うつもりだ」
「別に」
また、それだ。
責任を取る位置には立たない。
だが、見えているものだけは置いていく。
俺は少し苛立ちを覚える。
「指摘だけなら誰でもできる」
「そうだね」
「なら黙っていろ」
「でも、今のうちに聞こえてた方がいいと思った」
白峰は静かにそう言った。
「まだ小さい音だから」
言葉の意味は、完全には分からない。
だが、白峰が何を警戒しているのかは分かる。
今はまだ不満ではない。
不和でもない。
ただの小さな違和感。
だが、それを放置すれば、やがて形になる。
俺は短く息を吐いた。
「……戸塚」
「はい」
「班分けの際、派閥で固まらないよう調整しろ。俺の側の人間だけで要所を固めるな」
戸塚はぎょっとした顔をした。
「え、で、ですが……!」
「二度言わせるな」
「……分かりました」
戸塚は悔しげに頷いた。
白峰に言われたことが採用されたようで、気に入らないのだろう。
「物資管理の確認役も二名にする。片方はこちらで決めるが、もう片方は中立に近い者を置け」
「はい……」
俺は白峰へ視線を戻す。
「これで満足か」
「僕が満足するかどうかは関係ないよ」
「お前は本当に面倒な男だな」
「よく言われる」
白峰は悪びれもせずにそう言うと、海とは反対側、島の奥へ視線を向けた。
「僕は探索班でいい?」
「勝手に決めるな」
「じゃあ、探索班に入れてほしい」
「……好きにしろ。ただし単独行動は許可しない。最低二人以上で動け」
「分かったよ」
白峰は軽く頷く。
戸塚がすぐに俺へ顔を向ける。
「葛城さん、本当に白峰を探索班に入れるんですか?」
「能力はある。使えるものは使う」
「ですが、あいつはさっきから余計なことばかり……」
「信用はしない。だが排除する理由もない」
「……分かりました」
戸塚はまだ納得していないようだったが、従った。
ふと、少し離れた場所で橋本がこちらを見ているのに気づく。
橋本は面白がるように口角を上げていた。
こちらに声はかけない。
手も貸さない。
ただ見ている。
まるで、葛城派がどこで綻びを見せるのかを待っているように。
やはり、橋本は駒だ。
坂柳の駒。
今はまだ、盤上で動いていないだけにすぎない。
俺は視線を外し、島の奥へ向けた。
広く、何もない島。
いや、何もないように見えるだけだ。
この島には、すでにいくつもの争点がある。
水源。
食料。
スポット。
リーダー。
他クラスの動向。
そして、Aクラス内部の亀裂。
これは他クラスとの戦いだけでは終わらない。
そんな予感がしてならなかった。
潮風がまた強く吹く。
船上で浮かれていた時間は、もう終わった。
目の前にあるのは、空白の島。
そこに何を築くかで、Aクラスの形が試される。
俺はもう一度、クラス全体を見渡した。
「各自、動け。最初の一時間で初期配置を決める。遅れた者から、この試験では足を引っ張ることになる」
返事がいくつも返ってくる。
まだ揃っている。
まだ、崩れてはいない。
だが白峰の言葉が、耳の奥に残っていた。
まとまり。
そんなものは、俺が一番分かっている。
分かっているはずだった。
それでも、ああして他人の口から言われると、まるで最初から敗着が見えているようで気分が悪い。
だが、気分が悪いからといって無視できるほど、俺は愚かではない。
この一週間。
勝つためには、敵を見るだけでは足りない。
味方の中にある小さな亀裂も、見落としてはならない。
白峰奏。
あの男は相変わらず掴めない。
だが今だけは、その掴めなさが、わずかに役立ったのかもしれない。