『スーパーで売られている寿司を生み出す能力』をもって忍殺世界に飛ばされた男の話

※某掲示板のスレを見て書きたくなったので初投稿です

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ニンジャ・スーパースシ・エンカウント

ここはネオサイタマ某所、市街地から少し外れたところに存在するスシ・バーである。 『スーパー・スシ』の看板が掲げられた店の扉には『本日定休日』の札がかかっている。

そんなスーパー・スシの店内にて二人の男が対面していた。

 

「ドーモ、初めまして。チェインボルトです」

教育のカンジ・ホログラフィが輝く兜をかぶった大柄な大柄な男が丁寧にアイサツをする。

「アッドーモ、初めまして、スシモブです」

もう1人の男がややぎこちなくもアイサツを返す。

 

決して小柄なわけではないのだが大柄な男…チェインボルトに比べれば小さく見えてしまうこの男はスシモブ。スーパー・スシの店長にしてイタマエである。

 

「そう緊張せずともよい、俺がこうしてきたのはグランドマスター、パーガトリー=サンの命を受けオヌシに礼儀作法をインストラクションを授けるため。そう緊張していては覚えられるものも覚えられんわ」

「ええと…グランドマスター?インストラクション?」

スシモブが困惑の言葉をこぼす

 

「ウム、グランドマスターというのは俺やワイルドハント=サンの所属する組織、ザイバツ・シャドーギルドの最高幹部よ」

「えっワイルドハントさんの同僚なんですか」

ワイルドハントはスーパー・スシの常連である。疲れた顔で毎日のように来店しており最近は大量に持ち帰り用のパック・スシを購入してくれるお得意様である。

 

「そういえば先日も上司っぽい人と店に来ていましたねえ」

「その時に来店なされたのがグランドマスターのイグゾーション=サン。グランドマスターにしてキョート貴族という大変高貴なお方である。パーガトリー=サンも同様よ」

「イグゾーション=サンがオミヤゲに持ち帰ってきたスシの味にパーガトリー=サンをはじめ多くの者が感銘を受けてな、今後オヌシの店に来るものも増えよう。だがザイバツには礼儀作法に厳しい者も多く、シツレイしたものをその場で殺しかねん者もいる。…で そういったことが起こらぬようオヌシに礼儀作法を教えることになったのがこの俺…!!ザイバツ幹部、マスター位階のチェインボルトよ。」

「ウム…礼儀作法は実際大事なんだなぁ…ワシ滅茶苦茶そういうのに疎いしこうして教えに来てくれてありがとうって思ったね」

 

スシモブはこの世界の人間ではない。ある日突然平和な現代日本からこのマッポー世界へと飛ばされたのだ。その後は元の世界のスーパーで売られているパック・スシを召喚できる能力に気づいたり面倒見のいいオカマに拾われてこの世界について教わったりとスーパー・スシ開店に至るまで色々とあったのだ。

 

「その顔つき、その目、本心からの言葉と断定!なかなか分かっておるではないかスシモブ=サン!今日はブレイコ!先ほども言ったように気負わず覚えるべし!」

「あざーす!」

チェインボルトは上下関係を重んじるニンジャである。単純な強さだけでなく礼儀作法や組織内での政治力が重要視されるザイバツで幹部職であるマスター位階へと上り詰めたことからもそれがうかがえる。

そんな彼は自身の部下でない後輩たちにも善意から自発的に礼儀作法を教えて回っているのだが、今どきの若者からは煙たがられることも多い。そんな中で積極的に礼儀作法を覚えようとするスシモブの姿は好意的に映ったのだろう。

「早速インストラクションと行きたいところだが俺はキョートから来たばかりで疲れていてな。このままでは何か教え忘れてしまうこともあるかもしれん。事前にしっかりと休養を挟みたいのだが…よろしいか」

読者諸君はご存じの通りネオサイタマとキョートは数千キロも離れており飛行機でも7時間、新幹線では1日近くかかるのだ。ニンジャ耐久力を持つチェインボルトであってもさすがに堪えたのだろう。

 

「それでは一度解散してお休みになられますか?よろしければ来客用にといくつかスシを常備しているのですが、ご一緒に食べませんか?」

実際これまでにもムッハハハという笑い声が特徴的なCEOだの豊かな体つきのボンズだのとお偉いさんが営業時間外や提供日にお忍びで来店する事態があったのである程度の数のスシは事前に用意しているのだ。

 

「おおっありがたい!なんだか催促したみたいで悪いのぉ」

「いえいえ、私もチェインボルト=サンとお食事でもしながらお話ししたいと思っていましたから。では早速用意いたしますね」

そういってスシモブは厨房へと引っ込む

 

(いやーパーガトリー=サンがあれほど絶賛していたスシ、楽しみやのぉ)

実はチェインボルトはまだスーパー・スシを食べたことがない。イグゾーションが持ち込んだ分はロード・オブ・ザイバツとグランドマスターのみで行われる茶会で食べられてしまったためだ。

 

(『ダークドメインのヤツがスーパー・スシに行ってイタマエを殺すようなことがあれば世界の損失。そうならぬようイタマエにキョート流の礼儀作法を教え必要であれば護衛するよう』というのがパーガトリー=サンからの指示であったが…はたして)

組織全体の慎重かつ1つ1つの動きが遅いザイバツにおいてもパーガトリーの腰の重さは随一だ。ほかの派閥の者から『愚鈍な暗君』と陰口を叩かれる程に。そんなパーガトリーが今回に関しての動きは速かった、部下である自身も驚くほどに。必然的にそのきっかけとなったスシへの期待も高まる。

 

「お待たせしました、スシ・セットです」

戻ってきたスシモブの差し出したスシにチェインボルトは目を奪われ、言葉を失う。

自らがこれまで食べてきたどんなスシよりもウマいのだと、美味いのだと、『美』しい『味』とはこのスシのためにある言葉だと。 そう確信させるだけの輝きがそこにはあった

 

「それでですね…そのう…ルールというほどではないのですが、初めてのお客様にお願いしていることがあるのですが…」

「…… ムッなんだ申してみよ」

スシモブが言いづらそうに話し、スシに目を奪われていたチェインボルトが少しの間の後聞き返す

 

「始めてのお客様にはカッパやカンピョを最初に食べてから、味の薄いネタから徐々に濃いネタを食べていただく用にお願いしているんです。いきなりトロやウニを食べた方が、エート…驚かれることが多くありまして。いつからかSRS(スシリアリティショック)なんて呼んでる常連さんもいますが」

「で、あろうな」

これほどのスシ、モータルはおろか生半可なニンジャであってもあまりの美味さにニューロンをやられてブザマを晒してしまうだろう

チェインボルトもまた万が一にもSRSを発症しないよう、そして礼儀作法を教えに来た自分が店のルールを破っては道理が通らないと考えそのルールに従うことにした

 

「『キョートと日本の法律は違う』とも言う。喜んで従おうではないか」

「恐れ入ります」

 

「イタダキマス」

チェインボルトがアイサツをする。手を合わせ、頭を下げる。丁寧なオジギだ

 

ハシを手に取りカッパ巻きへと伸ばす。大粒のエメラルドめいたキューリとオイランの柔肌よりも白く美しいコメをノリで巻いた巻きスシ。キューリ、コメ、ノリ、そしてショーユとワサビ。そのどれもが自分がこれまで食べてきた最上級品をはるかに上回ると確信し、ショーユにつけて口に入れる。

 

ウ・ウマーイ!!

絶品

チェインボルトの全身に圧倒的なうま味が駆け巡り活力がみなぎる!!

サイバネ置換した箇所にさえカラテが満ち、ニューロンは大トロ粉末を吸入した時よりも活性化!!

その高速化した思考の中でチェインボルトはカッパ巻きを存分に堪能する。

(感動するほど/実際ウマイ・・・パーガトリー=サン達グランドマスターが俺達を派遣したのもうなずける)

 

ザイバツからネオサイタマへと新たに派遣されたのはチェインボルトだけではない。パーガトリーを始めイグゾーション、サラマンダーがキョートへのスーパー・スシの確保やデリバリー、店の監視及び警護のために自身の部下を送り込んでいる。チェインボルトもその一人だ。

 

(派閥を持たないニーズへグ=サンとダークドメイン=サン、部下が少なくネオサイタマに派遣する余裕のないスローハンド=サンは直接本人が来るだろう。仕事上部下を含めキョート城から離れられんパラゴン=サン、ケイビイン=サン、ヴィジランス=サンはどうするのか…まあ俺が考えることではないか)

ニーズへグとスローハンドは問題ない。問題なのはダークドメインだ。モータルを理由なく殺すこともある彼は味方であるはずの自分達からも恐れられている。 そんな彼にスシモブがシツレイをして殺されてしまわぬように礼儀作法を教え、場合によってはフォローするのがチェインボルトに任された仕事である

 

「…ウマイスシだ。それ以上の言葉が見つからん」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェインボルトはその後ゆっくりと時間をかけ残りのスシを完食し、上機嫌でスシモブに礼儀作法を教えこんだ

 

「本日はありがとうございました!」

「礼はいらん。こちらもウマイスシをごちそうになったしな。では本日は失礼する」

「またいつでもいらしてください。ワシまだ滅茶苦茶礼儀作法に不安があるし」

 

チェインボルトは上機嫌で帰路に就く。次来たときは何のネタを食べようか、早く礼儀作法をマスターさせてやらねば、などと考えながら

 

(…あれほど熱心に教わる若者はザイバツにもそうおらんからな。仕事抜きでも仲良くしたいものだ)

 

…なおスシモブとは仲良くなれるのだがそれとは反比例するようにパーガトリーからの好感度が下がっていく未来が訪れることをこの時のチェインボルトは知る由がない


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