ゴム人間になってブルアカ世界に来ちゃった…… 作:わっきょうらん
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更新遅れてしまい本当に申し訳ないです。
よお、おれだよ。おれおれ。今ハスミに見聞色の覇気を教えてるんだ。ツルギが突然使い出したからハスミもいけるだろって思ってな。
練習方法は目隠しをつけた状態で少し離れた位置にいるおれをタッチするというもの。スイカ割りのスイカをおれに置き換えたバージョンって感じだ ! おれひとばしらだな !! でもまあこれが気配を感じ取る練習にはいいかなって思ったからな。
「ハスミ ! そっちじゃねェ右だ右 !!」
「み、右ですか ? 分かりました」
棒立ちするルフィがハスミに指示を飛ばし、ハスミがそれに従って数歩だけ右へ移動する。
「違う違う行き過ぎだ !! 左いけ左 !!」
右だ左だ前だと何度も指示を出して位置を微調整していく。
「よし、そこら辺だ ! そこでジャンプだ !!」
「じゃ、じゃんぷ…… ? 」
困惑しつつも、ハスミは馬鹿正直にその場でジャンプする。これを目隠ししながらやってる様子は他人から見たら奇行か恐怖映像か何かだろう。
「次にグリコポーズ !!」
「こ、こうですか ?」
「そうそう、それで次はコサックを……」
「あなた絶対遊んでますよね !?」
「あバレたか、わりぃわりぃ」
いやー全然ダメだな !! じゃあツルギが凄すぎるだけかぁ。おれも最初の方はこんな感じだったし。そう考えると今はオンオフの切り替えも自由自在にできるようになったってのはかんがいぶかいな。
「これじゃあ私ただ醜態を晒しただけなんですが……」
「あたりめェだろ何言ってんだ」
「その返答はぶん殴られたいと解釈してよろしいですか ?」
「え、えーっと……お二人とも何やってたんすか ? 主にハスミ先輩っすけど……」
「い、イチカ !? 違うんです ! これは……」
「見ての通りハスミが目隠ししながら奇行してたぞ、おもしれェよな」
「あなたは黙ってなさい !!」
「ゴブゥ !?」
言論弾圧ストレートがルフィの顔面ど真ん中をぶち抜き、鼻を中心に大きくへこませて前が見えねェ……状態にする。
ルフィを黙らせた後、ハスミはイチカに何故そのような奇行をとっていたのか理由を説明した。一般人に見聞色の覇気が〜などと説明しても何言ってんだコイツ案件であるが、イチカは正義実現委員会。ルフィとツルギが戦う様子何度か見ておりその度にルフィがする先読みのような行動も観測していたためハスミの事情をすぐに飲み込んだ。
「あー、あの先読みみたいなのって名称あったんっすね」
「うん、修行すれば使えるようになるぞ。ただ、どんくらい修行がいるかは人によるけどな」
我らがレイリー先生によると覇気ってのは皆んな内に秘めてる力らしいからな。でもその力を引き出すのに掛かる時間はみんな一緒じゃねェからなぁ。おれは比較的早く身につけれたけど、100年修行しても修得できねェ奴だっているんだろうなぁ。そう考えると運がいいなおれは !!
「修行すればっすか……ちょっと一回やってみていいっすか ?」
「おう、別にいいぞ」
「 イチカで遊んだら後輩イジメとして上に報告しますからね」
「ハスミ以外にやるわけねェだろ」
「オイ」
あまりにも雑な扱いを受けたハスミはコントや漫才のツッコミのようにビシッとルフィを叩く。
そんなやりとりが行われている傍らで、イチカは鉢巻を目元に巻いて自らの視界を塞ぐ。
「これでいいんすかね……?」
「うんそうそう。んじゃおれ適当な位置に移動すっから、頑張って気配感じてみてくれ」
数歩分元いた位置からズレてそのまま棒立ちする。(1分くらい経ってたどり着く気配が無かったらハスミの時みたいに位置教えようかな)などとルフィは考えていたが、イチカは多少移動方向がフラフラと定まっていないものの、着実にルフィの方へと近づいてくる。
そしてイチカはそのまま外れた方向に行くことなくルフィの元まで辿り着き、肩をポンと叩く。
「今私が触ったのってルフィ先輩っすか ?」
「そうだぞ ! すげェなイチカ ! 気配分かったのか !!」
「よくわかんないんすけど、なんかこっちに進んだら人がいるなー。みたいな感じがしたっす」
「それが見聞色の覇気だ ! 鍛えるともっとはっきり分かるようになるぞ !! しっかしまさか一発で兆しが見えるなんてすげェな〜。やっぱ普段から目瞑ってるからか ?」
「目を瞑ってる訳じゃないっすからね !? ちゃんと見えてますよ !?」
「不思議な身体してんなぁ」
「ルフィ先輩には絶対に言われたくないっす」
全身伸びたり膨らんだりするような体を持っている人間に比べれば糸目なんて些細なものである。
「しかし、イチカは一回で兆しが見えたのですね。私は10回回以上やってもダメでしたのに……頼もしい後輩がいることを喜ぶべきか、自分の実力不足を嘆くべきか…………」
笑いつつもトホホ……と肩を落とすハスミ。そんな彼女を慰めるようにルフィは肩を叩く。
「おれも最初はそんなもんだったから気にすんなって !! まずはグリコから練習しようぜ !!」
「それ練習するぐらいだったら習得できない方がマシです」
「あ〜暇だなぁ〜」
今日は平和だなぁ〜爆発音とかもあんましねェし、このまま下校時間まで何にも起こらなそうだ。暴動やら暴力沙汰で忙しいよりかは暇のほうがずっといいよなぁ。
結局、今日は寝っ転がりながら待機してたらそのまま下校時間になった。たまにはこんな日があってもいいよな。よし、帰ろう !
「あの……ルフィ先輩、帰り際なのにも関わらず申し訳ありませんが……お時間よろしいでしょうか……?」
みんなに〝また明日〟と別れの挨拶を済ませ、正義実現委員会の待機所を抜けて下校しようとするルフィを1人の生徒が呼び止めた。
「ん ? おぉスズミか、どうしたんだ ?」
「相談したいことがあって……」
「相談かぁ……」
あんましいいこと言える自信ねェぞおれ。気遣いとかそういうのわかんねェし……。ツルギやハスミのが向いてる気がすんだけどな。
あ、ひょっとしてゲヘナ関連かな ? それだったらツルギはともかくハスミに相談していいわけねェしな !
「その…………ここだと話しづらいので、場所を移してもよろしいでしょうか ?」
「うん、いいぞ」
そうしてスズミに連れられて人気のない公園まで移動した。移動中のスズミの顔や雰囲気からして、あんまし明るい話じゃ無さそうだな……。まあ相談で明るい内容のもののほうが珍しいか。
公園にたどり着いた2人は、そのまますぐそこにあったボロくなっている木のベンチに座る。
「んで、相談ってなんだ ?」
「はい、私は…………正義実現委員会を、辞めようと思います」
「やめる…………か……」
四文字。小さな声でたった四文字漏らした後、ルフィさんは腕を組んで口を開かなくなった。考え込んでいる様子だ。
……静かな様子の彼を見るのは、今日が初めてだ。普段は誰かと話していたり、笑い声を上げていたり、調子に乗りすぎてハスミさんに絞められているなどの行動で、常に音を奏でていたから。そしてその音はどれも愉快で、明るくて、周りにいる人を自然と笑顔にしていた。先輩、同級生、後輩……年齢に関わらず彼の周りにいる人は笑顔で、そしてそれに囲まれた彼もまたくっきりとした笑顔を浮かべていた。
……でも、私にはそれが苦しかった。彼が話しかけに来てくれるたびに、いくら言葉を紡ごうとしても、せいぜい数単語で成り立つような会話しか返せない。彼がみんなを笑顔にさせていても、私は口角を数度上げることしかできない。
たった1人だけの空間に居続けて、何度も差し伸べてくれた手を掴んで、手放して、また掴んで、また手放してを繰り返している。そんな自分が嫌で、私は正義実現委員会を離れようと決心した。
…………はずだった。はずだったのに、私は今正義実現委員会の先輩という存在に頼っている。
ああ、結局私は自分で決断することは愚か、手を差し伸べ続けてくれた人に縋ることしかできない。ましてやその縋った内容は〝正義実現委員会の環境から逃げたい〟なんてもの。そんな内容を正義実現委員会を引っ張っている存在の内の1人に伝えるなんて、どれほどふざけた話なのだろうか。
自らの行動に対してそう感じた瞬間、沈黙した彼の顔が無性に気になり始めた。少し眉を吊り上げた真顔の中にはどんな感情が含まれているのだろう。怒り ? 失望や落胆 ? それとも嘲笑だろうか ?
だめだ、明るい感情なんて見つけられない。負の感情ばかりが脳裏に過ぎる。彼の口が開かれた時、どんな言葉が放たれるのだろうか。それが分かる瞬間が来るのが怖くて、私はまた逃げ出そうとした。
「あ、あの…… ! いきなり変なことを言ってごめんなさい ! 無茶苦茶なことも、荒唐無稽なのも分かっていますが、どうか今日の件はなかったことに……」
「スズミ !!!」
彼に名前を叫ばれると同時に、自分の体がビクッと震える。逃げ出すことは許されないようだ。だが、それも当然だろう。あまりにも虫が良すぎる行動をしたんだ。どんな言葉であっても、私は彼の言葉を受け止めなければならない。
身体に圧迫感を感じる程に心臓をドクドクと強く鳴らし、下を向きながら私は彼の言葉を待った。
「今から遊びに行こう !! 学校終わったからいけるよな ? いけなくても先輩からの命令だ !! ついてこい !!!」
「………………え ??」
まさかすぎる言葉に、思考が止まる。ルフィさんはそんな私の腕を掴んで私をどこかへと引き連れて行った。
「ついたぞ〜 !! 遊園地〜 !!!!」
連れて行かれた先は遊園地だった。それもかなり大きい場所だ。放課後というのもあってか、私たち以外にも多くの生徒さんが見える。
……正直に言って、悩み事を抱えた状態で来るような場所ではない。自分で何かしらの指針を決めて、踏ん切りをつけた後にこそ行くべき場所のはずだ。
「その……言える立場では無いのですが……今の状況で行くような所ではないんじゃ……」
「いいかスズミ、おれは暗いのは嫌いだ ! けど何も考えないってのもダメだ」
「だからおれは楽しいことをしながら考えることにした !! これなら暗い考えでもプラマイテロだ !!」
「それを言うのならゼロかと……」
「そ、そうとも言う。とにかく !! 遊びながら考えるぞ ! まずはあのデッケェジェットコースターから乗ろう !!」
勢いそのままにジェットコースターまで連れられて、並び口に立つ。並んでいる人数は多かったものの、大規模なのもあってか一度に乗る人数が多く、回転が早かったためすぐに順番が来た。
スタッフの案内で座席に座り、安全レバーを降ろしてからしばらくすると、放送が流れた後に台車がどんどん上へと運ばれていく。
「いや〜ジェットコースターで一番怖ェ瞬間はこの登ってる時間だよなぁ〜…………ん ?」
「どうしましたか ? ルフィ先輩」
「このジェットコースター……途中でレールが途切れてる…………」
「え……えぇ !?」
あとほんの数秒で降り始めるというタイミングで知ってしまった衝撃の事実、確かにルフィさんの指差す方向のレールが途中で途切れている。あまりにも綺麗に途切れていることからそういうギミックなのだろうけど、一体どうなってしまうのか……。
そう考えていると、ジェットコースターから〝ガチャッ〟と上まで運んでいたコンベアから解放される音が鳴り、垂直落下しているのでは無いかと思うような角度で降下し始めた。
「うっひょぉ〜 !!! 速ェ〜 !!!」
ここまでの規模だと、何がどうなっているのかよくわからない。私たちが乗っている台車がどんな機動をしているのか、自分が今どの位置にいるのかも。
でも、一つだけ分かった瞬間があった。台車が明確に浮いた感覚がした瞬間だ。あの途切れたレールを通過したんだ。
数秒の浮遊感が続いた後、突如ジェットコースターからメカメカしい変形音が鳴り響いた。後に釣られて横を見ると、そこにはロケットエンジンがあった。
「え……えぇ…………?」
そのままロケットエンジンは勢いよく炎を吹き出し、台車は暴れ馬のような軌道で空を飛び始めた。
「こ、これってジェットコースターではなくないですか…… !?」
「ダッハッハッハッ !!! こんな乗り物もあるんだなおもしれェ〜 !!!」
台車は数十秒程飛行した後、途切れていた先にあるレールに乗りそのまま終了地点まで突き抜けて行った。
ルフィさんはずっと笑っていたけど、私は生きた心地がしなかった。絶叫系が苦手というわけでは無いが、いくらなんでも限度があると思う。
「いや〜面白かった !! スズミはどうだった ?」
「その……怖かったです」
「そりゃジェットコースターだからな !!」
「あ、あれはジェットコースターとは呼んではいけないような気がします……」
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「このゴーカート時速150キロ出るらしいぞ」
「電車以上じゃないですか……」
2人乗りで乗ってみたが、免許も持っていない私たちではまず制御すらできなかった。
「面白かった面白かった !! スズミはどうだった ?」
「その……速かったです」
「そりゃ時速150キロだからな !!」
その後もルフィさんと色んなアトラクションに乗った。竜巻を動力にして回すメリーゴーランドや、途中でドリフトを始める機関車。どれも無茶苦茶なものだったけど、隣でずっと笑っている彼がいるからか、それを楽しく感じている自分がいた。
……でも、言葉を紡ぐことはできなかった。『楽しかった』『すごかった』『びっくりした』そんな数個の単語で終わってしまうような感想しか吐けなかった。けど……彼はずっと笑顔だった。
「あの……ルフィ先輩はなんでそんなに楽しそうなんですか !?」
「なんで…… ?」
「まともな返答も出来ず、すぐに会話を終わらせてしまうような私に、なんで話しかけ続けてくれるんですか !? なんでここまでしてくれるんですか !?」
詰まっていた感情を、爆発させるように全て吐き出した。……いや、吐き出してしまった。
「あ……その……ごめんなさ……」
「なんでって、そりゃスズミと遊ぶのが楽しいからだろ。当たり前すぎること言われたからびっくりしたぞ」
「え……?」
「一緒にいて楽しいから、つい沢山話しかけちまうんだよなぁ〜 !! おかげで暗い考えなんて一個も浮かばなかったぞ !! ゼロどころかプラスだったな ! ハハハ !!」
彼はそう言いながら口を大きく開けて笑った。……顔を見れば分かる、あまりにも真っ直ぐで、純粋な嘘偽りのない本心だ。
「一緒に遊んで分かったんだ。スズミ、
お前は────」
ルフィさんの言葉を、突如として鳴り響いた銃声が遮った。音の大きさ的に、そう遠くはない。すぐに音の方向へと全速力で向かった。
「お前ら全員財布置いてけぇ !!!」
「ひぃっ ! だ、誰か !!」
銃を乱射しながら遊園地の客を脅す不良生徒。そんな奴の足元に閃光弾が転がされた。
「あ ? こ、これは閃光ッ……ぐわああああ」
ダイレクトに喰らった不良は目を抑えながら悶え、そこをルフィが殴ってノックダウンさせた。
「暴れていたのは、彼女1人のようですね」
「あ、ありがとうございます !! 助かりました !!」
「いえ、それよりも、閃光弾の巻き添えは大丈夫でしたか ? 咄嗟に投げてしまったものでしたので……」
「はい ! 大丈夫です !! 助けていただき本当にありがとうございました !!」
スズミに助けられた者は、何度もお礼を言いながら頭を下げた後、その場を去って行った。
「やっぱ、おれの思った通りだ」
「思った通り…… ?」
「そうだ、スズミ。お前はな、真面目でいいやつで、ちゃんと人の話を聞いてくれて、助けを求めている人がいたら助けようとする。すっげェかっこいいやつだ !!」
「かっこ……いい ?」
「そうだ !! お前銃声が聞こえたから動き出すまでがおれよりずっと速かったからな !! 助けを求める奴の元にすぐに向かうことができる奴はかっこいいんだ !!」
「だからスズミ、お前が正義実現委員会じゃなくなったとしても、どこの所属になったとしても、お前はヒーローだ !!」
「ヒーロー…… ?」
初めて言われた。そしてずっと言われることのない言葉だと思ってた。でも彼は、嘘偽りない真っ直ぐとした瞳でヒーローだと言ってくれた。その事実に、どうしようもないくらい目頭が熱くなった。
「え !? お前泣いてんのか !? ヒーロー嫌だったか !?!?」
「い、いえ……違います……その、こんなこと言われたの初めてで……涙が…………」
「そっか、嫌がってるわけじゃねェならいいんだ !」
ルフィさんは私が涙が止まって落ち着くまでただ笑顔で見守ってくれた。その事実にさらに泣きそうになり、涙を止めるのに苦労した。
「私は……まだ自分でどうするべきなのか分かりません。……でも、ルフィ先輩のおかげで、先が見えたような気がします。ありがとうございます」
「おれはただお前と遊んだだけでなにもしてねーよ !」
泣き止んでから数分経ったくらいだろうか、閉園の音楽が鳴り始めた。
「ん ? おぉもうこんな時間か。んじゃ帰るか」
「はい、帰りましょう」
そのまま2人で遊園地を出た。出るまでの道中でも、彼はとても楽しそうで、眩しかった。
「それでは、また……。今日は本当にありがとうございました」
「気にすんな !! 楽に行こう !!!」
ルフィさんはそう言いながら満面の笑みで大きく手を振ってくれた。
……彼は私のことをヒーローだと言ってくれたが、今もこの先もずっと、私のヒーローはルフィさんだ。
更新が遅れた見苦しい言い訳をしますと。スズミのエミュに頭を抱え続けていました。面目ないです。
次回から3年生編ですよろしくお願いします