ゴム人間になってブルアカ世界に来ちゃった……   作:わっきょうらん

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その男『麦わら』のルフィ

 

麦わら帽子と黒のマントをたなびかせながら地面へと着地した少年は、自身の麦わら帽子を深く被り直す。いつの間にか彼の全身から噴き出ていた蒸気は消えており、彼の全体像がはっきりと映る。

 

「あの人は……『麦わら』のルフィさん !!」

 

チナツは彼を知っているようだ。『麦わら』が彼の通り名なのかな ? わざわざ通り名が用意されているということは、もしかして結構有名人なのだろうか。

 

“知り合いかい ? ”

 

「いえ、私個人として接点があるわけではありません。ただ、正義実現委員会所属なのにもかかわらずトリニティ以外の三大学園にも高頻度で出没し、その自由奔放さとキヴォトストップクラスの実力から『トリニティの歩く戦略兵器』と呼ばれる〝剣先ツルギ〟さんと並んで『トリニティの暴走兵器』または『ただのバカ』とも呼ばれています」

 

「うちの学校でもしょっちゅうC&Cと衝突してるの!*1

 

「ルフィさん……そんな認識されていたんですね……」

 

チナツとユウカの話を聞いたスズミが小さく声を漏らした。『トリニティの歩く戦略兵器』と呼ばれているツルギという子も気になるけど、やはり『トリニティの暴走兵器』というのは中々印象に残る異名だ……『ただのバカ』に関してはもうシンプルな罵倒だし。

 

私はこのキヴォトスという場所に来たばかりで生徒に関する知識はほとんど持ち合わせていないし、格闘技とかに精通しているわけでもないが、断言できる。彼は強い。強者のオーラというものなのだろうか、そんな感じの雰囲気が肌で感じられる。

 

実際素手で戦車を破壊していたし、実力者なのはその時点で明白だ。…そもそもあんな上空からどうやって腕を届かせたのだろう。腕を動かしているのがほんの一瞬だけ見えたが、速すぎて分からなかった。

 

それに、先ほどまで体から噴き出ていた蒸気も気になる。彼以外で蒸気を発していた子はいないし、彼特有の体質なのかな。

 

いずれにせよ今分かっていることは、彼は愉快な子であり、とても強いこと。………そう、強い。強いはずなんだ。

 

“………ルフィっていう子は、とても強いんだよね… ?”

 

「はい、剣先ツルギさんと同様、トリニティの最高戦力の一角として数えられています」

 

「………その子、今ボコボコにされてるんだけど……」

 

「「「え ??」」」

 

先生が苦笑いを浮かべながら向く方向にチナツ、ユウカ、スズミの3人も顔の向きを合わせる。そこにはハスミが百烈ビンタでルフィの顔を滅多打ちにしている様子があった。

 

「2週間ほど前に万魔殿の勢力と衝突した罰で1ヶ月間待機所の掃除ワンオペの刑に処したばかりだと言うのに !! ちっとも反省していないようですね !!!」

 

「で、でほよ…あんほひはほはえも………(で、でもよ…あん時はお前も………)」

「文句は受け付けません !!!」

 

「すぴぱへん !!!」

 

フィニッシュと言わんばかりに大きく振りかぶられた腕からのビンタがルフィの頬のど真ん中にクリーンヒットし、その勢いで彼はグルグルと高速回転し、そのままフラフラと地面に倒れる。

 

“や、やりすぎじゃない… ?”

 

「いえ、いつものことですので大丈夫です」

 

“そ、そっかぁ……”

 

ハスミの言っていることは何も間違ってはいなかった。ビンタを喰らったルフィは数秒倒れ伏したままであったが、すぐに飛び上がるように起き上がって先生たちの方へと顔を向ける。

 

「お前が先生か〜 !! おれはルフィ !! 正義実現委員会だ !!」

 

“うん、よろしくね。ルフィ。……あれ ? なんで私が先生だって分かったの ?”

 

「ん ? あーそれは〜……なんとなく !!」

 

彼はブルーアーカイブの世界に来る前のわずかな知識として先生が物語の主人公であることは知っている。そのためついぽろっとボロを出してしまったのだ。だが、なんとなく分かったという発言を誰かが疑うことはなかった。仮に事前知識がなかったとしても、今いる中で唯一の大人の男性という要素で判断できるからだろう。

 

先生と軽く話した後、ルフィは再び周辺を見回す。そしてスズミを見つけたと同時に表情が元よりもさらに満面の笑みへと変化する。

 

「スッズミ〜 !!! お前も来てたんだな〜 !! 元気してたか〜 !?!?」

 

「はい、お久しぶりです。ルフィさん」

 

飛びつくような距離感で話すルフィをスズミは微笑みながら対応する。先程まで広げられていた頭の羽が顔を隠すように縮こまっているため、彼の距離感に慣れきっているという訳ではなさそうだ。

 

とちょうどその時、リンちゃんから渡されていた通信機から着信があったため応答する。『もうすぐ到着するため、建物の地下で落ち合おう』とのこと。

 

“みんな、ここの制圧は完全に終わったみたいだ。本当にありがとう ! とても助かったよ”

 

「こちらこそ、戦術の指揮等、とても助かりました ! ありがとうございました ! 」

 

「十分にお気をつけて下さい」

 

ユウカ、チナツ、そしてスズミとハスミが感謝の念を込めて頭を下げる。ルフィもなんとなく周りの状況に合わせて頭を下げる。

 

「あの建物、地下室があんのか ? 面白そうだしついて行ってみてェなぁ〜」

 

「ダメです !! 私たちはワカモを追いますよ」

 

「え〜…わかったよ……

んじゃとっとと終わらすかぁ」ドルルンッ

 

一瞬だけ浮き出た血管が全身を走ったと同時に、再び彼の体から蒸気が出始め、全身が紅潮していく。

 

「んじゃ先生、スズミ !! また会おう !!」

 

そう言うと、彼は建物を飛び越えたり瓦礫を蹴って飛びながらあっという間に遠くへ行ってしまった。

 

「あ ! まだ方向も伝えていないというのに !! あぁもうっ !! ルフィ !! 待ちなさーい !!!」

 

彼を追うべくハスミも走り出す。…がしかし、途中で足を止めてスズミの方へと振り返る。

 

「…スズミさん、あなたに言っておきたいことがあります」

 

「はい……なんでしょうか…」

 

「本当は、スズミさんが正義実現委員会を辞めたあの日に言いたかった言葉だったのですが…言いそびれてしまいましたから……」

「スズミさん。風邪、引かないでくださいね

 

「… !!! ………ッはいっ !! ありがとうございます。

ハスミ()() !」

 

………何故だろう、彼女ら2人がどんな関係なのかは知らないが、感動で涙が出てきた。

 

 

 

 


 

 

 

 

私がシャーレの先生として赴任してから大体1週間以上経過した。基本的にはリンちゃんから来る膨大な量の書類を捌いたり、生徒からのお悩み相談に乗ったり、ボランティアしたりと、忙しいながらも中々充実しているのではなかろうか。

 

シャーレのことは生徒たちの間でも噂になっているらしく、最近では依頼の数も増えてきた。依頼とはいっても、猫探しだったり、授業で分からなかったとこを教えるなどの日常の手助け的なもので、大規模なものはまだない。

 

だが、その数ある依頼の中に少し奇妙な依頼が届いたらしい。〝アロナ〟よると、内容が少し不穏そうなんだとか。

 

依頼の主は『アビドス高校』アロナによる情報からだと昔はとても大きな力を持っている自治区だったそうなのだが、1、2年ほど前までは砂嵐などの厳しい気候に晒されており、現在も砂漠が広がる程に気温が熱い場所とのこと。

 

そんなアビドス高校の依頼内容は地元の暴力組織によって窮地に立たされているため、力を貸して欲しい。というもの。どうやら連日してその暴力組織に攻められているらしく、弾薬や補給品が尽きかけてしまっているようだ。

 

それと、依頼の内容はデジタルだけで無く、手紙にしたバージョンも今日中にわざわざこちらまで届けてくれるのだそう。……大変じゃない ? デジタルメールだけくれれば十分なのだが、まあこういうのは直接会った方が気持ちが伝わるというやつなのだろう。

 

本当は今すぐにでもアビドスに出発したいが、とりあえずは手紙を届けにきてくれる子を待たねばならない。その子が来たらすぐにでも出発できるように、今のうちに出発の準備だけしてしまっておこう。

 

「おーい先生〜 !! 来たぞー !!」

 

シャーレの自動ドアが開き活発な声が耳に届く。声の主は手紙を届けに来た人……ではなくルフィだった。彼は高頻度でシャーレの部室に遊びに来てくれる生徒だ。サンクトゥムタワーの制御権が回復したことで、トリニティ自治区だけで見れば治安が大幅に改善されたらしく、それによって空き時間が出来たらしい。

 

思ったことを全部そのまま言う子だが、フレンドリーで親しみやすい。そして最大の特徴としてゴムのような体を持っているという点がある。彼が初めてシャーレに来た時に、飲み物を渡そうとしたら腕を伸ばして受け取られた時には驚きのあまりひっくり返りそうになったのは今でも覚えている。

 

“やあルフィ、飲み物いるかい ? 昨日生徒さんからいい紅茶を貰ってね”

 

『紅茶』というワードが耳に入った瞬間、彼は眉を下げて首を振った。

 

「いや…紅茶はいいや……」

 

“もしかして嫌いだったかい ?”

 

「嫌いというか……トラウマと言うか……」*2

 

紅茶でトラウマ… !? 一体彼に何があったのだろうか………。

 

“そ、そっか…じゃあ冷蔵庫の中にあるものから好きなのを選んでくれていいよ”

 

「いいのか !? ありがとう !! …しっかし、今日も山みてェな高さの書類があるな〜。どうなってんだ ?」

 

“あ、あはは……サンクトゥムタワーの制御権が回復するまでに溜まり溜まってた仕事が来ているみたい…リンちゃん曰く『これでも何とか減らした方です』らしいよ……”

 

「ヘェ〜苦労してんなァ…。ハンコ押すくらいだったら手伝えるぞ ?」

 

“うーん、それじゃあお願いしちゃおうかな。実はちょっと大変そうな依頼が来ててね。これからしばらくシャーレを離れないといけないんだ”

“そろそろ手紙を届けにきてくれる筈だから……”

 

「そうなのか、今時手紙なんてめずらしいなァ」

 

そう言うと、ルフィは冷蔵庫からジュースを一本取り出してゴクゴクと口に含み始める。そしてその様子を見た先生はハッと思い出したように口を開いた。

 

“あ ! 水分も持っていかなきゃだね !! アビドス高校は暑いらしいから……”

 

「ぶぅーっ !?!?!?」

 

アビドス高校。その言葉が耳に入った瞬間口いっぱいに入っていたジュースを盛大に吹き出して咽せるルフィ。まさかすぎるリアクションに先生も驚いて体をビクつかせる。

 

“えぇっ !? ど、どうしたの !? 大丈夫 !?!?”

 

「ゲホッゲホッ、あ、ああああアビドスかぁ〜そ、そそそそっかぁそっかぁ〜。は、はハは…ははハハはハ………」

 

彼と関わってきた中で初めて聞くような乾いた笑いに、初めて見るような無理やり浮かべているとすぐに分かる笑顔。…アビドス高校になにか大きな因縁でもあるのだろうか ?

 

本人が許してくれるのなら何があったのか聞いてみようとしたその時、シャーレの自動ドアが再び開いた。

 

「せんせーい !! お手紙お待ちしてまいりました〜 !! アビドス卒業生梔子ユメで〜………す………」

 

普段のルフィに負けないほどの元気溌剌な声と笑顔で勢いよく入ってきた〝梔子ユメ〟と言う名の子はルフィを視界に入れた瞬間先程までの勢いが嘘かのように静まり固まってしまった。

 

「ん !? あぁユメか !! よかっったぁ〜 !! ホシノだったらおれ殺されてたかもしれねェからなぁ〜 !!!」

 

 

 

 

 

 

 

「────────え、夢………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
全部ネルとです。

*2
ナギサ・ナギサ・ナギサ





ルピー君はスズミに対する評価はバカ高いです。理由はヒーローみたいだから。

そして一年生時のホシノブチギレの件は彼にとって冗談抜きでガチのトラウマと化してます。あの時のキレ具合で彼は次ホシノにあったら自分は殺されると思ってます。

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