ゴム人間になってブルアカ世界に来ちゃった…… 作:わっきょうらん
皆様いつも誤字報告、お気に入り登録、しおり、ご評価、ご感想本当にありがとうございます。遅れになってしまいましたが皆様のおかげで日間ランキング11位を達成できました。本当にありがとうございます。これからも頑張っていくので何卒よろしくお願いします。
そしてやっとこの小説の主人公アビドスにくるよ。
それと先に謝罪させて下さい今回バカ長いです。書きたいこと全部詰め込んだらこうなっちゃいました。お許しください。
今回もホシノ視点からスタートです。よろしくお願いします。
ピピピピピピピピ !!!
「 !! ……もう朝かぁ…」
自身の真横で鳴動している目覚まし時計を止める。……目覚まし時計で目を覚ますのなんていつ以来だろう。それどころか、夜があっという間に感じるくらい深く眠れたのも、随分と久しぶりだ。……あの悪魔も、出てこなかった。
「とりあえず、準備しないといけないね。……身体が軽いや、うへへ」
昨日は……なんて言えばいいかな、本当、奇想天外な1日だった気がする。
ブラックマーケットに行って、ヒフミちゃんと仲良くなって、銀行強盗して……うーん、こうして振り返ってみるとなかなか凄いことやっちゃったね。
ユメ先輩がルフィに銀行強盗のこと伝えたらしいけど、『なにやってんだお前ェっ !!』て返されたらしくて「ひぃん……」て鳴いてたよ。まぁ、いきなりそんなこと言われたら誰だって困惑するよね。寧ろ返してくれただけでも奇跡なのかもしれない。
それと、ユメ先輩が言うにはルフィはもうすぐアビドスに来てくれるらしい。始末書 ? がようやく片付くんだって。何かやらかしそうなところは1年生の時から変わってなさそうで、ちょっと安心した。
「あとは着替えて……そういえばこのマフラーどうしようかなぁ。本人に見せるのは……ちょっと気恥ずかしいよね。…でもまぁ、せっかくならつけていこうかな、1年以上お世話になってるからね」
銀行強盗で手に入れた書類で、カイザーは完全に敵だという証拠も掴んだ。先生も…ユメ先輩は騙されやすいから、最初のやってきた時はあまり信用してなかったけど、先生はアビドスの為に一生懸命に尽くしてくれてる。ルフィだって戻ってきてくれる。
だから────────
──────だから私も、
アビドス高校の門をくぐり、対策委員会の教室に入り、一足先にいたユメとノノミの2人と時間を共にする。その後から対策委員会の教室を訪れた先生の目に映ったホシノの姿は、ノノミとユメを存分に堪能している様子でとてもリラックスしているように見えた。
……だが、それは彼女にとって覚悟を決めるためのモラトリアムだったのかもしれない。
しばらく先生たち3人と話した後、ホシノは「用事があるから」と少し足早に教室を離れた。
そして、人気を感じない場所へと歩いていき、そこに立っている一つの建物のオフィスに入室した。
「……お待ちしておりました、暁のホルス……いえ、失礼しました。小鳥遊ホシノさん」
「今度はなんの用なのさ、黒服」
薄暗い部屋に一つあるデスクに肘を付き、腕をハの字に組んだ状態で黒服は私を待ち構えていた。
こいつには私の力の研究を目的に何度も何度も契約を迫られていた。けど、それももう終わりだ。ここで奴との縁を切る。
「いやはや状況が変わりましてねこの度は再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案をしようと思いまして」
「ッッ ! ふざけるな ! もう私はお前の口八丁には乗せられない !! お前との縁を完全に断ちに来た !!」
「ふむ…契約の内容もお聞きにならないので ?」
「そんなものは必要ない」
ホシノは数秒黒服を睨みつけ、そのままオフィスを跡にしようとする。
「なるほど、契約のつもりは一切無いと……ホシノさん側に応じる意思がないのなら、私も諦めざるおえませんね」
「…………」
ホシノは黒服の言葉を無視し、出口のドアノブを握る。
「致し方がありません。ターゲットを変えるとしましょう」
「──────モンキー・D・ルフィさんに」
「────は ?」
握っていたドアノブを離し、ホシノは自身の愛銃〝Eye_of_Horus〟のグリップを握り締め、黒服に銃口を向ける。
「なんでお前の口からルフィの名前が出てくる」
「なんで、と言われましてもね。以前から彼の特異性には興味を持っていたというだけですよ。ただ、あまりにも存在的にイレギュラーでしたので、こちらの知見が通用するホシノさんの契約を優先していたまでです」
「ルフィに何をするつもりだ !!」
「おおよそはあなたと同じ、契約を持ちかけるだけです。内容は……そうですね、『身体の研究をさせる代わりにアビドスの借金を一部こちらが負担する』と言えば乗ってくれるでしょうか」
契約内容を聞いたホシノの眼孔が開き、怒りのあまり銃を持つ手が震える。
「もう黙れ…… !! 何も知らない彼をこれ以上巻き込むな !!」
「それはあなたが決めることではありませんよ。……しかしそうですね……」
黒服はわざとらしく顎に手を置いて考える素振りをした後、一枚の契約書をホシノへ提示する。
「……もしあなたがこの契約書に記されている内容に同意するというのなら、私はルフィさんに手を出す可能性は低くなるでしょうねぇ。大きな実験対象を二つも抱えてはパンクしてしまう恐れがありますから」
「言わせておけばッ…… !!」
ホシノの銃のトリガーに力がこもる。あとほんの数ミリ指が動けば、銃弾が発射されるだろう。
「私を撃つ、それもいいでしょう。ですが既に存じ上げている思いますが私とカイザーは現在業務提携を結んでおります。もし、提携相手がアビドスの生徒に危害を加えられたと知った時、カイザーがそれをどう利用するかは想像に容易いでしょう」
「ッッ !!」
ホシノの脳裏によぎったのはアビドスの借金、それは利子も返済期限も全てカイザー側の意のままの物。もしカイザーが立場を利用してアビドスをさらに追い詰めることがあれば、その時は完全に打つ手なくなる。
「お前らはッ…… !! どこまで汚く…… !!」
声量が大きいわけではない、しかしそれは、間違いなくホシノの心からの叫び声だった。
「それが『大人』というものですから。契約書は渡しておきます、どうぞご自由に〝選択〟してください。クックックッ………」
黒服から渡された契約書を強引に受け取り、ホシノはオフィスを出る。
「私は………私は────── !!」
自身が閉じたオフィス扉の前で俯きながら放たれた声にならない叫びは、誰にも届くことはなかった。
────ルフィside────
ゆっくりと動かしていた手を止め、ルフィはペンをぽいっと投げるように置くと、両手を思いっきり突き上げる。
「終わったァ〜〜!!!!!」
飛び上がるかの勢いで席を立ち、一瞬で待機所の出口まで移動する。
「行ってきま〜す !!」
「速っ !? ちょ、待ちなさいルフィ ! 外交問題だけは絶対に起こさないで下さいねー !!!」
ほんの数秒で、彼はハスミの声も届かない位置にまで移動してしまった。
やっとだ ! やっとだぞ !! たっのしみだなぁ〜 !! ホシノ元気にしてっかな〜 !!!
ああもう移動してる時間がもったいねェな !! 1秒でも早く着きたいし全速力で行くか !!
「〝ギア
えーっとなんかいい感じの建物…あ、あったあった !!
目の前にちょうどいい高さの建物があったので両腕も伸ばして掴む。
「ゴムゴムの〜〝
まずはアビドスのどこに行こうかな…そうだ !! 腹も減ってきたしひっさびさに犬のおっさんのラーメン屋に行くか !! 元気してっかな〜 !!!
「待ってろよ〜 !! 先生 ! ユメ !! ホシノー !!!」
「はいよ、ラーメンお待ち」
「お、きたきた〜 !」
ムツキ、アル、カヨコ、ハルカへと順々にラーメンが置かれて行く。彼女らは現在、柴崎ラーメンにて昼食をとっている真っ最中であった。
「勝手に大盛りにしちまったが、よかったかな ? 替え玉もじゃんじゃん頼んでくれよな」
「あ、ありがとうございます、ありがとうございます…」
「なあにお礼は結構、いっぱい食べてくれる姿が見れりゃいいんだ」
「そうだ大将さん、一個質問良い ?」
何度も頭を下げるハルカの横でムツキがはーいと手を上げながら柴大将を呼び止める。
「ん ? なんだい嬢ちゃん」
「前に話してたいっぱい食べる子ってさー、もしかして黒ベースのマントと麦わら帽子身につけてた ?」
「麦わら帽子はつけてなかったが…おんなじ特徴のマントはいつも付けてたよ。暑い環境のアビドスでああいったもんをつけてる人は珍しかったから、印象に残ってるな」
「ありゃ ? 帽子かぶってないなら違うのかな」
「このラーメン屋を訪れなくなってから購入したってこともあるんじゃない ? 大将さんが言うには来てたの随分前みたいだし」
「え ? なになに ? ムツキは誰のことを聞いているの ?? カヨコはなんで分かってるの ??」
ムツキの質問内容から、カヨコは誰について聞いているのかすぐに察したようだが、社長であるアルはちんぷんかんぷんのようだ。
「いや……ムツキが言った特徴で分からないことってあるの ? ほぼ唯一無二なんだけど……」
「え ? え ?」
「えっと…私も分かりました……」
「えぇ !? そんなぁ !!」
自分1人取り残されているという現状に、アルはショックで白目になる。哀れなり、弱気アルよ。
「ご、ごめんなさいごめんなさい ! でしゃばってすみません ! 死にます……」
「それはダメよ !! 私が分かってないだけなんだから !!」
銃口を自身に向けるハルカを必死に止めるアルの姿をクフフと笑いながらムツキは再び柴大将の方へと向く。
「じゃあアルちゃんへの答え合わせも兼ねてさらに質問させてもらうよっ、片方の目元に縫い跡ってあった ?」
「あぁ ! あったよあったよ ! 切り傷を縫って治したような跡が !」
「クフフ、そっかぁ〜。ありがとねん大将さん」
「おうよ、こんくらいお安い御用だ」
「これは……確定だね」
カヨコはため息を漏らしながらそう呟く、ため息の理由は自身の社長がこれからどんな反応をするのか予測できてしまったからだろう。
「え ? だれ ? 一体誰なの !?」
「大将さんが言ってた人ね、ほぼ確実にルフィくんだよ」
「な、なな…ななな……
なんですってー !!??」
「あははっ ! 予想通りの反応でウケる !」
「はぁ…まさか本当に見当もついてなかったんだね」
「あ、アル様……」
「じゃ、じゃじゃじゃじゃあ……ルフィさんはアビドスに訪れた事があるってこと… ?」
「そうだね、あの子のことだし、アビドス高校の子たちとも関わりがあるんじゃない ?」
「で、でも……私たちのターゲットはまだアビドスで……もしこのまま攻撃を続けたら……」
「いつか気づかれて、本気100%のルフィくんとマジバトルになっちゃうかもね」
「う、嘘でしょ !?」
ムツキの言葉によってアルの脳内に数々の苦い記憶が駆け巡り顔が青くなる。普段便利屋を追っかける時のルフィの様子は、友達よしみからか鬼ごっこで逃げる側を追いかける鬼のようなテンションであり、それでも尚便利屋側はなかなかコテンパンにやられている事が多数だったため、本気の彼を相手にした時どんな惨状になるかはアルにも容易に想像できた。
しかし、『怖いんで依頼降りるっす』なんて言おうものなら次は依頼主であるカイザーが襲いかかってくるだろう。なにより彼女のアウトローとしての信念がそんな情けない真似は許さない。
「だ、大丈夫ですアル様 !! いざとなったら私が刺し違える覚悟で殺しに行きます…… !!」
「いや…不意打ちでも厳しいんじゃないかな……そもそも不意打ちが通用するかもわからないし「やってやるわよ……」社長……?」
「やってやるわよっ !!」
「ちょ、社長、いきなり大声出さないで……」
「ルフィさんがなによっ ! やってやろうじゃない !! 考えてみれば私もあの人と戦う時本気出してないような気がしてきたわ !! うんきっとそうよ !!!」
「そ、そんな空虚な自信で……」
「クフフっ、あくまで逃げはしないんだね〜」
「わ、私はアル様にどこまでもついて行きます !!」
空虚、というよりやけっぱちのような自信を纏うアルにカヨコは思わず圧倒され、ムツキは面白がる。
そんなカヨコたちの様子も意に介さず、アルは立ち上がって片腕を天へと突き上げる。
「行くわよ便利屋68 !!! 目標はアビドス !! 打倒ルフィさ────」
瞬間、彼女の口を遮るかのように多数の砲撃が柴関ラーメンを襲った。
────先生side────
「前方10km以内にて爆発を検知 ! 近いです !」
今日はオフの日らしいので、これまでの活動で溜まった疲労を落とすために対策委員会の教室でのんびりとしていると、突如としてアヤネが声を上げた。どうやら和やかな時間は終わってしまったらしい。しかし爆発か……しかも10km……一体なにが……。
「10kmってことは……市街地 ? まさか襲撃 !?」
シロコはすぐさま銃を手に持ち臨戦態勢へと移行する。
「衝撃波の形からすると榴弾砲、もしくは迫撃砲が連続して放たれたのかと……さらに詳しく確認してみます !!……爆発地点は市街地……うそ……柴関ラーメン…… !? 柴関ラーメンが跡形もなく消えてしまいました !!」
“それは本当かい !? ”
「そんな……柴崎ラーメンがなくなっちゃったの…… ?」
「はあ !? どういうこと !? なんであの店が狙われるのよ !!」
セリカの声からは、怒りと驚きが交差しているのがよく分かる。よくしてもらっているバイト先なのだから当然だ。ユメの方も、ショックはかなり大きいだろう。おそらくこの中で1番柴関ラーメンを利用していた期間が長いはずだから。
「需要拠点でもない場所をどうして……」
「まさか私を狙って !?」
「思考を巡らせてても仕方ない。とにかく対応しないと !!」
「そうですね ! 今はそれどころじゃありません !! 向かいましょう !」
「ホシノ先輩には私から連絡しておきます !! 出動を !!」
“そうだね、行こうか !!”
真っ先に駆け出すシロコに続く形で、私たちは柴関ラーメンへと急行した。
──────────
────────
──────
────
──
「ゲホッゲホッ、なにが起こったの !?」
「私にも分からない……なんでいきなり……」
突然すぎる事態に、ムツキとカヨコは困惑し、ひたすらに周囲を見回す。
「ゲホッゴホッ……一体なにが…ってそうよ !! 大将さんは !?」
「こ、ここです !!」
アルの声に反応して瓦礫がどかされる。そこには柴大将を肩で支えるハルカの姿があった。
「悪いな嬢ちゃん…肩かりちまって……」
「よくやったわハルカ !! ひとまずみんな無事でよかったわ……」
「悪いけど、安心してる暇はないよ社長。どこからの攻撃かを確認しないと」
引き続き辺りを探るカヨコ、そこにアビドスの生徒たちとユメ、先生が到着する。
「あんたたちは…… !! あの時の恩知らず達 !! まさかあんたたちがやったの !?」
セリカは便利屋一同を睨みつけるが、アルは強い勢いでそれを否定する。
「ち、違うわ !! 私たちの方もなにが起きたのかさっぱりで……」
彼女の様子から、どうやら犯人は別人らしい、一体誰が……。
『攻撃の相手が分かりました !! ゲヘナ風紀委員会です !!』
ゲヘナ風紀委員会……たしかチナツがいた…… !!
「相手は一学園の治安維持組織……強さはヘルメット団の比較にはならないでしょうし、何より政治的な紛争になりかねません……アヤネちゃん、ホシノ先輩にはまだ連絡がつきませんか… !?」
『それが…普段ならここまで連絡が取れないなんてことはないはずなのに……繋がりません……』
「ホシノちゃん……と、とりあえず風紀委員会の子たちとは話し合いでなんとかできないかな…… ?」
「……いや、ダメみたい。相手は武力行使する気満々」
シロコが向いた先には、100を超える風紀委員の部隊が隊列を成し、接近してきていた。隊を引いているのは〝銀鏡イオリ〟風紀委員会の切り込み隊長だ。
「なんて数なの……あれと戦わなきゃいけないなんて……」
「加勢する」
「 !! あんたは…… !」
「便利屋68、鬼方カヨコ。カヨコでいい。今の状況的に、あなたたちと私たちにとって風紀委員会は共通の敵、手を組むべきだと思う」
「派手にやられちゃったからさー、私たちもやり返さないとだよねんっ」
「大将さんはハルカが安全なところへ避難させてるわ、だから大丈夫」
カヨコに続いてムツキ、アルもセリカの横に並び立つ。
「便利屋ちゃん達、ありがとうね !!」
「(便利屋ちゃん…… ? )お礼はここを切り抜けてからだよ」
謎の呼び方に困惑しながらも、カヨコはサップレッサー付きの銃を風紀委員会に向ける。
「……アビドス生徒、及び便利屋68、戦闘体勢に移行しました」
「アビドス…便利屋と手を組む気か ? まあどちらも叩きのめしていいなら話は早いけど……」
「しかしイオリ……先程の砲撃はいくらなんでも手荒過ぎます。付近にはシャーレの先生もいるのですから、もう少し慎重に……」
「あの中に便利屋がいるって情報があったんだから、仕方無いだろチナツ。それにアコちゃんは『ここら一帯には既に退去命令が出されているから問題ない』って言ってたし」
「だとしても……」
チナツの制止を振り払い、イオリは便利屋、アビドスの面々に銃を向ける、そしてそれに合わせて、風紀委員の部隊も一斉に銃を構え、ジリジリと接近していく。
“………チナツ……”
「……お久しぶりです、先生。……こんな形でお会いすることは、望んでいませんでしたが……」
“どうにか穏便には済ませられないかな… ?”
「……………申し訳ありません」
風紀委員会の照準は以前、構えられたままだ。
そんな状況の中、風紀委員の前にアヤネの姿が映ったホログラムが投影される。
『アビドス対策委員会の奥空アヤネです ! アビドス自治区での砲撃……一体どういうつもりですか !? まだ民間人がいたというのに !!』
「なっ…… !!」
情報とは違う事実にイオリは動揺する。そう、柴関ラーメンには店主の柴大将がまだ残っていたのだ。
『アビドス生徒の1人として、説明を求めま『それについては私から説明させていただきます』ッ !?』
突然として映し出されたホログラムに映っていたのは、水色の髪、そして奇抜な格好が特徴の生徒だった。
『こんにちは、アビドスの皆様。ゲヘナ学園所属の行政官、天雨アコと申します』
以後お見知り置きを、と頭を下げたのち、アコは話を続ける。
『さて、今回の件に関してですが、先程までの愚行は私の方から謝罪させていただきます』
「なっ、私は命令通りにやっただけなんだけど !? アコちゃん !!」
『誰が無差別に砲撃しろだなんていいましたか ? おかげで民間人の方で怪我人が出たそうじゃないですか』
「うっ…… !!」
『………全員、銃を下ろしてください』
アコの声に合わせて、一斉に照準が下へと向く。
「あ ! やったぁ、平和的に終わりそう !!」
「いや、どうみても穏やかな様子ではないでしょ……」
「ひぃん……」
あまりにも頓珍漢な発言だったがために、ほぼ初対面に等しいカヨコにユメはツッコまれてしまう。
『話を続けさせていただきます。私たちゲヘナ風紀委員会はあくまで、私たちの学園の校則違反者を逮捕するために来ました』
『怪我人については、退去命令が上手く行き届いてなかったようでして、望まぬ形にはなってしまいましたが何卒ご理解していただけると……まだ違法行為とは言い切れませんしね』
『そうは行きません !!』
2つ分の学年差に臆することなく、アヤネは声を上げる。
『先程と言いましたがアビドスの自治区内で堂々と戦闘行為をし……ましてや民間人を巻き込んでおいて望まぬ形という言葉だけで済ませるなど断じて容認できません !!』
「そうですよ ! ここは私たちの土地です ! こんな暴挙認められません !!」
アヤネの言葉に賛同し、ノノミも加勢する。
『なるほど……譲る気は一切無いと……これほどの兵力差に怯まないだなんて……これだけ自信に満ち溢れているのは、やはり信頼できるいるからでしょうか。ねぇ ? 先生 ?』
“……私がいなくても、彼女らは同じ選択をしたと思うよ。たからごめんね。ここは譲ることはできないかな”
『これが私たちの総意です ! 即刻退去を要求します』
『……そうですか、これは困りましたね……できれば穏便に済ませたかったのですが……』
『────ヤるしかなさそうですね ?』
「総員構え !!」
イオリの掛け声で風紀委員が再び一斉に銃を構える。そしてそれに応じるかの如く、アビドスの面々も一斉に構える。
“行こうみんな !!”
「大将の痛みを味合わせてあげる !!」
「おしおきのじかんです⭐︎」
「ここは私たちの場所、これ以上暴れさせない」
「平和に終わると思ったのに……」
『ドローンでサポート体制に入ります !!』
「行くわよ便利屋68 !!」
「やっぱりこうなるか…ま、どのみちやらなきゃ捕まるしね」
「ドカンと1発やっちゃおうか !」
まさに両者弾丸が飛び交おうとするその瞬間────
突如として両者から少し離れた位置で爆発が起こった。
“この爆発は…… !!”
少しずつ煙が晴れてきた……あのシルエットは………
「着いた着いた〜 !! ひとっ飛びだぁ〜 !!! 腹へっちまったなぁ〜 !!!」
“ルフィ !! 来てくれたんだね !!”
「お ? おー先生ー !! 待たせたなぁ〜 !! やーっと片付いたからよ ! これでもうアビドスに居れるぞ !! ……あれ ? なんでアルたちもいるんだ ??」
「ルフィさん !?!?」
突然の訪問者に驚きを隠せないアル。風紀委員をガン無視してルフィの方を向いている。
「それに……風紀委員会 ? モニターに映ってるのは……えーっとちょっと待てよ思い出すから !! 確か3年生の……変態の……」
「思い出した !! 松尾芭蕉 !!!」
『天雨アコですッ !! 一文字もあってないじゃないですかぶっ殺しますよ !?!?』
「惜しかったなぁ……」
『少しも惜しくないですが !?!?』
漫才みたいなことをやっているアコの横で、イオリはルフィを睨む。
「あいつは、『麦わら』のルフィ… !! 正義実現委員会の癖してゲヘナにも出没する暴走兵器…… !!」
「あの人がホシノ先輩の言っていた人……」
『風紀委員の1人が正義実現委員会だと言っていました。となると彼はトリニティの治安維持組織
です…… !!』
「ゲヘナだけじゃなくてトリニティまで来たってこと !? 何がどうなってんのよ……」
「おれは来てェから来た !! 風紀委員の奴らはなんでここまで来たんだ ? ……ハッ !! まさか…… !!」
ルフィは何かを察したような顔をする。もしかして、この僅かな時間で状況を察したのだろうか ?
「ユメお前… !! 銀行強盗したのがバレちまって風紀委員会に追われてるのか…… !! お前のこどわずれねェがらな"…… !!」
何一つ察してなかった。
「ひぃん違うよ !? 」
「なんだ違ェのか」
「急に落ち着かないで !?」
「ねぇアコちゃん、今あいつ銀行強盗って……」
『追及すると疲れることになりそうなのでやめておきましょう』
「ん ? じゃあ待てよ、なんでアビドスのみんなが銃向けられてるんだ !! アビドスのみんなに手ェ出すな !!!」
『……それは便利屋68を逮捕するためです』
「それはアビドスのみんなが銃を向けられる理由にはならねェだろ !! それだけじゃねェ、便利屋捕まえるんならこんな大人数用意しなくてもヒナ1人引っ張ってこればいい話だ !!」
『ヒナ委員長はあなたと違って忙しいのですよ、あ な た と違って』
「ヒナが忙しいなら尚更こんな大規模な部隊をゲヘナから離れされる場合じゃねェだろ !!! おい !! 先生 !! アビドスのみんな !! こんなやつらの言うこと聞くことはねェぞ !! こいつら規則違反者の便利屋68を捉えようとしてる風紀委員会なんだ !!!!」
「『『“……………………………………………”』』」
“………それ自体は別に……立派なことじゃない
のかい ?”
「…………………」
ルフィは数秒間沈黙した後、手をポンともう片方の手のひらへと乗せる。
「いーんだよそーだよいーんだ。普通便利屋68が悪くて風紀委員会が正しいよ。ハハハハハハ」
ズコーッ !!!!
ルフィのアホみたいな発言にその場にいた全員がひっくり返る。
『相変わらずバカなことばかり言いますね』
「バカなことだなんてよく言えたね。図星な癖に」
『………随分と面白いことを言いますね。カヨコさん』
「ルフィの言う通り……この部隊運用はあまりにも非合理的すぎる。他自治区へ大部隊で侵入 ? それも少人数の私たちの為だけに… ? こんな荒唐無稽な方法、風紀委員長がやる筈がない。だからこれはアコ、あなたの独断専行に違いない」
「え ? じゃあ風紀委員が悪りぃ奴らなのか ?」
「………まあそういう感じ」
『……仮に私の独断専行だとして、私がそれを行う目的は ?』
「……ここまでの大規模な部隊、何かしらの多数の集団との戦闘を想定しているとしか思えない。この場で多数の集団を動かせる存在は1人しかいない」
「アコ、あんたは最初からシャーレの先生を目的としてここまで来たんだ」
「先生が… !?」
「先生ですか… !?」
「先生かァ……」
“私 !?”
ユメ、ノノミ、そして当の本人である先生もその事実に驚く。ルフィはノリで呟く。
『ふふっそうですか、便利屋にあなたがいることをすっかり忘れていました。のんきに雑談している場合ではありませんでしたね……その通りです、正解、と言っていいでしょう』
『────きっかけはティーパーティ、そして『麦わら』のルフィ、あなたでした』
「え ? おれ ?」
アコの話によると、どうやらティーパーティというトリニティの生徒会に位置する組織が、シャーレ…つまるところ私に関する報告書を手にしていると通達があったらしい。……おそらくヒフミがアビドスを助けるためにティーパーティに掛け合ってくれたのがきっかけだろう。そしてルフィの高頻度のシャーレの行き来、ゲヘナ側はこれをトリニティとシャーレとの実質的なパイプと捉えたというのが今回の行動の理由だそうだ。
……横でルフィが死ぬほどめんどくさそうな顔をしている。多分彼は政治とかそういう系の話は嫌いなんだろう。
あとチナツが不満げな顔をしている。多分チナツもシャーレに関する報告書を作っていたのにアコがそれの確認が遅かったのが原因だろう。彼女もかなり苦労しているようだ。
『連邦生徒会長が残した正体不明の組織……どう考えても怪しい匂いがしませんか ? シャーレは私たちにとって危険な不確定要素となり得ます。
「いやもうおれ腹へっちまったしそういう話聞きたくねェからさ、おれはおっさんのラーメン屋行きてェんだよ。確かここら辺だった筈だったんだけどなぁ〜どこだったっけ ?」
「る、ルフィくん……あのね……」
ユメは悲痛な顔で柴関ラーメンが
「な、なんで…… !! なんでおっさんのラーメン屋さんがッ…… !!」
先程とは様子を大きく変えてルフィは風紀委員の部隊に鋭い眼光を向ける。彼の視界には銃を構えている風紀委員のみならず、榴弾砲や迫撃砲がしっかりと映っていた。
「お前ら…… !! 冗談でしたじゃ済まされねェぞ !!!!」
『……ふむ、なるほど、どうやらあなたも敵に回ってしまうようですね ? ………イオリ』
アコの声に応じてイオリはルフィへと照準を向けようとするが……
「オイ、風紀委員会」
「ッッ !?!?」
先程までとは比べ物にならない程の気迫に、イオリは無意識的に銃を下す。
「次少しでも動いたら、潰す」
“ッッ…… !!!”
敵意を向けられたのは私じゃないのに……それでも反応してしまった。……そうだ、今更になって気づいた。彼がシャーレに来るようになってから、笑っている様子、落ち込んでいる様子、楽しそうな様子など沢山の彼を見てきた。
………だが、誰かに対して明確に敵意を向けている彼を見るのは今日が初めてだ。
『潰す……ですか………』
『この数をですか ?』
アコの指がパチンと鳴らされた瞬間、全方位から行進の足跡が響いてくる。
『12時、6時、3時、9時…… !! あらゆる方位から更なる兵力が集結しています !!』
「ッッ……二重包囲だったか……」
アヤネがモニター越しから叫び、カヨコは歯を噛み締める。
『ふふっ少々やりすぎかもしれませんが…まあ、大は小を兼ねると言いますしね ? それでは、攻撃──────』
アコはゆっくりと自身の片腕を挙げる。あげた片腕が振り下ろされたその時、風紀委員会の一斉攻撃が始まるのだろう。
しかし、その様子を見たルフィは特に焦ることもなく、無表情に心底呆れたようなため息をつくのみだった。
「警告はしたぞ行政官」
ルフィがそう言い終えた瞬間、風紀委員が1人、また1人と次々と倒れ始めた。意識を失っているのか…… ? そして、なんだろう、この押し潰されるような威圧感は…… !! もしこの威圧感が私に向けられていたら、私は風紀委員の子たちと同じようになす術なく気絶していただろう。
『なっ…… !! 一体なにが起きたというのです !?!?』
「アコちゃん……第二小隊全滅………」
『 !? 』
イオリからの報告にアコの首筋から冷や汗が垂れる。だが、悪夢の報告はまだ終わらない。
『天雨行政官 !! 第三中隊半壊…… !! 原因は不明 !!』
『第一中隊兵力の7割を喪失 !! 突如兵員が倒れ始めてッ…… !!』
『第五砲兵隊、兵員壊滅により部隊行動不能 !!!』
『そんな……バカなことが』
「アルたちから聞いたよ、犬のおっさんは無事なんだってな」
「やべ、やり過ぎた」
ルフィは〝腹へったな〜〟と呟きながら再び呑気な雰囲気に戻った。
……彼のさっきの力は、一体何だったのだろう………。
今回も閲覧いただきありがとうございました。
せっかくアビドス来訪したならちょっとIQ高めくらいがちょうどいいよね。うん !!!
ちなみにルピー君がブチギレだ理由はまだアビドスに手を出してないと思ってたらとっくに手を出してたのが分かったからですね。