転生先がゴブリンだった。   作:ひまなめこ

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一話 転生。

「おんぎゃ~!」

 

なんだ?

息が苦しい…。

 

俺はいきなり襲ってきた息苦しさから目を覚ます。

 

上手く息が吸えない…!

 

まるで赤ん坊の鳴き声の様に泣き叫ばないと、上手く息が出来ない…!

 

一体どうなっている?

俺はどんな状態なんだ?

 

困惑する中、俺は状況を確かめるために目を開き、首を動かそうとする。

 

しかし…。

 

首が動かねえ…。

力が入らない…麻痺しているのとは少し違うようだ。

まるで、元から動かせないみたいな…首の骨と筋肉が未発達な…そう、赤ん坊の様な…。

 

まるで俺の体が赤ん坊になったみたいだ…。

 

「ほう、元気な赤ん坊だな。この厳しい環境の中で元気に生まれたと言うことはこの子は将来きっと大きくて逞しい子に育つぞ。」

 

突然、俺の顔を覗き混むようによぼよぼな緑色のお爺さんが現れた。

 

生まれた?

今生まれたと言ったのか?

俺を見て、このじいさんは確かにそう口にしていた。

 

…つまり、俺はやはり赤ん坊になったと言うことか?

 

所謂転生と言うものをしてしまったと言うのだろうか?

 

突然の出来事に俺の頭は混乱に陥る。

 

何せ、俺に死んだ記憶はない。

死んだ自覚もない。

でも、目の前で起きているのは間違いなく転生だ。

 

しかも恐らく異世界。

だってさっきのお爺さん肌が緑色だったもん。

 

あんな人種は見たことがない。

 

死んだ自覚もないままの異世界転生なんて…一体俺はどうなるんだ?

_

__

___

 

あれから1ヶ月がたった。

 

たったの1ヶ月で俺は歩けるようになり、喋れるようになった。

驚きの成長だ。

 

この成長速度には訳がある。

 

それはどうやら俺が転生したのがゴブリンだったかららしい。

 

ゴブリンは極めて寿命が短いため、その分成長が早いようだ。

 

俺はジュラの森と言う広大な森林のとある小さなゴブリン集落の村長の娘として転生したようだ。

 

そう、娘だ。

因みに前世の俺は男だった…つまり、転生と同時に性別も転性してしまったらしい。

 

…グッパイ…マイサン…。

 

まあ、そんなこんなで俺は俺なりにゴブリンライフを満喫していたのだが、ある日を境に俺のゴブリン生は地獄と化してしまう。

 

お父さん…つまりこの集落の村長の話によると、このジュラの森には守り神と呼ばれる竜がいるのだとか…。

 

その竜がつい3日前に突然姿を消してしまい、ジュラの森全体は混乱に陥ってしまったのだ。

 

「我らが守り神。暴風竜ヴェルドラ様が忽然と姿をお消しになられた。このままではヴェルドラ様の瘴気を恐れて今までジュラの森に立ち入らなかった魔物達が続々と押し寄せてしまう…!」

 

つまり、今まで他の魔物達への牽制となっていた暴風竜ヴェルドラ様がいなくなってしまったせいで、他の魔物達が襲ってくるかも知れないと言うことらしい。

 

実際、ヴェルドラ様がいなくなってから、1日と経たないうちに、他の魔物の群れから宣戦布告されてしまったのだ。

 

その戦線布告とは狼型の魔物 牙狼族達によるものだ。

 

「まさか、あの獰猛と悪名高い牙狼族達から宣戦布告されるとは…。」

 

「どうするんだ?俺達ゴブリンってこのジュラの森の中でもかなり弱いんだろ?」

 

「ああ、牙狼族一匹に対してゴブリン10匹でも歯が立つかどうか…。」

 

絶望的な戦力差だな…。

 

「お父さん、私に任せてください。私が敵情視察に牙狼族の縄張りに出向いて参ります。」

 

俺とお父さんの会話に割って入ってきたのは俺の兄にして、この集落唯一の名持ちのゴブリン リグルだった。

 

この世界では魔物は名前を持たないのが普通らしい。

 

「それは危険だ!リグル。例えお前が名持ちでも相手は牙狼族。討ち死には免れん。」

 

「しかし、このまま相手の戦力も分からずに大人しく襲われる訳にはいかないでしょう。相手の居場所、数、それだけでも分かれば取れる対策はいくらでもあります!吉報をお待ちください!」

 

それだけ言い残して、リグルは複数のオスゴブリンの戦士を引き連れて集落を後にしようとする。

 

「待てよ!兄ちゃん!俺も行く!」

 

そんなリグル達を俺は必死に呼び止めた。

 

「妹、お前はまだ自分で立てるようになって日が浅い。それにメスだ。一緒に行ったところで無意味な犠牲が増えるだけだ。」

 

「でも!まだ俺兄ちゃんに死んで欲しくない…。」

 

この世界に転生してたったの1ヶ月だが、それでも俺はとっくにこの集落に愛着が湧いている。

 

お父さんもリグルももう一人のお兄ちゃんも皆俺の大切な家族なんだ。

 

…誰も失いたくない。

 

「…妹、こっちに来なさい。」

 

「え?うん…。」

 

俺は言われた通りにリグルに近寄る。

 

すると、突然リグルは俺の頭を撫で出した。

 

「うわっ!」

 

「ハハ!大きくなったな…妹。ついこの前まではこの腕に収まる程に小さかったのに…子供の成長は早いものだ。」

 

リグルは名持ちで既に進化を果たしており、体格は人間の成人男性と大差ない。

そんな大きなリグルのゴツくて立派な掌で頭を撫でられるのが、俺は凄く好きだった。

 

筋肉質で固いのに、優しくて暖かい…。

撫でられると落ち着くのだ。

 

「安心しろ!私はお前が結婚するまで死なん!お前の兄を信じろ!」

 

「兄ちゃん…。うん!信じるよ兄ちゃんの事。だから、絶対に生きて帰ってきて!」

 

そして、リグル達は牙狼族の視察に向かった。

_

__

___

 

あれから二週間が経ち、リグル率いる視察隊が帰ってきた。

但し満身創痍の状態で…。

 

「なんだ…これ…?」

 

戻ってきた視察隊の数はこの集落を出発した頃の半数にも満たない程に減っており、その殆んどが視察中に戦死したようだ。

 

それでも、彼らは仲間の死を乗り越えて何とかこの集落に戻ってきてくれた。

勿論リグルも貴重な牙狼族の情報を手に入れて帰ってきてくれたのだ。

 

だが…。

 

「ぐふっ!お父…さん…。お伝えしたいことが…。」

 

「止めろ!喋れるな!もう…何も話すな…。このままでは…お前は…。」

 

「話さなければ…私は…ただの犬死にになるだけです…。」

 

リグルはかなり大きな深手を負ってしまい、今にも死にそうだった。

 

「牙狼族の数は…100匹程、大森林の西側の…川辺に…縄張り…を構えて…おりました…。お父さん、まだ…間に合います…他の…集落に…避難を…。」

 

「ああ、分かった!分かったから…もう喋るな…!」

 

お父さんはリグルの手をぎゅっと握り締めて、涙を流す。

それを見ていた俺も目尻からドンドン涙が溢れて膝から崩れ落ちる。

 

「いいえ…最後に…家族に言いたい事…が…あり…ます…。お父さん…今まで…私を育ててくれてありがとう…ございます…。孫の顔も…拝ませて遣れず…あなたよりも先立つ…親不孝者で…ごめんなさい…。」

 

「そんな事はない…!お前は私の自慢の息子だ!リグル!死ぬな!まだ私はお前に親らしい事など一つもしてやれてない!いつも名持ちのお前にばかり頼ってばかりで…自分が情けない…!」

 

「産んで…貰えた…だけで…十分…です…。」

 

そう言って、リグルはもう一人の兄に向き直る。

 

「弟、不甲斐ない…兄ですまんな…。」

 

「兄さん…、そんなことありません…。兄さんは僕の自慢の兄です。」

 

「いつか…お前も…私のように名持ちになって、好きな…人が…できるかもしれない…。お前の…そんな…姿を…見れなくて…残念だ。」

 

「兄さん…。」

 

最後にリグルは俺に向き直って最後の力を振り絞って口を開く。

 

「妹、お前の…成長を…見守れ…ない事…を…何よりも悔いているぞ…。」

 

「嘘つき…生きて帰ってくるって約束したのに!俺が結婚するまで死なないって言ったのに…!」

 

「参ったな…。これでは…成仏できない…。妹よ…最後に…お前の…頭を…撫でさせてくれ…。」

 

俺はゆっくりとリグルに近付き、そっと頭を向ける。

 

「…大きくなるんだぞ…強く…逞しく…誰にも負けない…戦士になれ…。あまり…早…く…こっち…には…来る…なよ…。」

 

リグルの目からゆっくりと光が失われ、リグルの命は完全に尽きてしまった。

 

そして次の瞬間、俺の脳内にアナウンスのような声が響き渡った。

 

《確認しました。ユニークスキル【(あい)(される)(もの)】を獲得しました。》

 

ユニークスキル…。

それが俺が初めてこの世界で手に入れた…いや、最後に兄から貰った形見であった…。

 

それから、さらに一週間。

俺達は牙狼族からの魔の手から逃れる為に他の集落へ移住する事を決意し、近くの集落の村長達へ協力を要請して回った。

 

しかし、ゴブリンはこの大森林の中でもかなり下位の魔物。

他のゴブリン達を受け入れる程の余裕はなく、尽く協力を断られてしまった。

 

「くそ!どの集落も自分達の事ばかり…。このままでは牙狼族が来て皆喰われちまう!」

 

「落ち着け!娘よ!まだ時間はある。焦らずに考えるのだ。そうすれば突破口が…。」

 

「あるわけないだろ!」

 

楽観的な発言をするお父さんに俺は感情のまま怒鳴ってしまう。

 

しかし、その険悪な空気は突然このジュラの森中に漂い始めた濃密な魔素によって霧散してしまう。

 

魔素とは魔物が生きる為に必要な動力源であり、魔法やスキルを使用するためのエネルギーでもある。

 

「このオーラは!暴風竜様に匹敵する程の…。」

 

「洞窟の方向から感じるな…。ちょっと見てくる。」

 

「おい!娘!」

 

俺はお父さんの制止の声を振り切って、この濃密な魔素の発生源を探りに行く。

途中で兄さん率いる探検隊と合流し、やがてこの魔素の持ち主の影が露になる。

 

「…これはスライム?」

 

目の前にいるのは尋常じゃない量のオーラを放つスライムだった。

 

えーと!はじめまして!俺はスライムのリムルと言う!

 

…くっ!何てでけえ声だ…。鼓膜が破れそうだ…。

 

「声がでけえ!こっちにお前に対する敵意はない!もう少しボリュームを落としてくれ!」

 

「え?ごめん。あーあーこんな感じで良いか?」

 

目の前のリムルと名乗ったスライムは軽く発生練習をして普通の音量の声で話し掛ける。

 

「うん、今度は大丈夫だ。早速だが、お前に一つ聞きたい。この森に何の用だ?」

 

このスライムから敵意は感じない…。

…オーラはビンビンに感じるけど…。

 

取りあえず、こいつの目的を聞き出して、交渉の余地があるのなら、速やかにこの森から出てって貰おう。

 

「用はない。ただぶらぶらしてただけだ。」

 

「そうか、なら速やかにここから…「なら、あなたを見込んで頼みがあります!」なっ!?」

 

俺の声を遮って兄さんがスライムに頭を下げた。

 

「ん?頼み?」

 

「おい!どういうつもりだ?」

 

「落ち着いてください妹。このスライムがいれば、もしかしたら牙狼族に勝てるかもしれない。ここは一か八か賭けてみる価値はあると思います。お願いです、兄を信じて。」

 

「…分かった。」

 

それから兄さんはスライムを集落に案内して、村長の家…つまり、俺達の家に招き入れて、これまであった事を全て話した。

 

「成る程…牙狼族か…。」

 

「我々も応戦したのですが、戦力的に厳しく…。」

 

「それであなた様に…!」

 

「力になって欲しいと…。しかし自分スライムですので期待されている働きは出来ないと思うのですが…。」

 

ただのスライムがこんなオーラ出す訳ねえだろ…。

 

最早スライムの皮を被った新種の魔物かなんかだ。

 

「ハハ、ご謙遜を。ただのスライムにそこまでのオーラは出せませんよ、相当に名を馳せた魔物なのでしょう?」

 

「オーラ?」

 

それからスライムは少しの間黙り、やがてまるで社会の窓が全開だったことに気付いた社会人のように慌ててオーラを引っ込めた。

 

「おっお前達は中々見所があるようだな!」

 

「おお!我々を試していたのですな!」

 

「あっああ、俺の風格を見抜いて怯えずに話し掛けるとは相当に見所があるぞ。」

 

何の見所だ?

 

「それで、お前達の言うお願いの事だが…。」

 

「はい…。」

 

「聞いてやる前に一つ確認したい。俺がお前達を助けるに当たってお前達が差し出せる見返りはなんだ?」

 

「我々の忠誠を…。そして、私の娘をあなた様に捧げます。」

 

「「え?」」

 

俺とスライムの声が重なった。

 

「さすれば我々はあなた様に忠誠を誓います!」

 

「誓います!」

 

お父さんと兄さんがスライムの前で必死に頭を下げた。

 

緊急事態なのは分かるが、娘の俺を簡単にワケわからないスライムに差し出さないで欲しい…。

 

ーーーアオー!

 

次の瞬間、何処からか憎き牙狼族の雄叫びが響き渡った。

その声を聞いて集落中は混乱に陥る。

 

「ビビる必要はない。これから倒す相手だ。」

 

「でっでは…?」

 

「ああ、お前達のその願い。暴風竜ヴェルドラに代わり、このリムル=テンペストが引き受けよう!」

 

そこからはリムル様の快進撃が続いた。

 

まず、ヒポクテ草と呼ばれる魔素密度が高い場所でしか生えない薬草をふんだんに使った薬液を体内で生成した物を牙狼族との戦いで負傷したゴブリン達に掛けて傷を癒したり、蜘蛛の魔物が使うスキル【粘糸】と【鋼糸】を駆使してバリケードを建設したりと、スライムではあり得ない活躍で俺達ゴブリンの士気を上げて行った。

 

そんな時に俺はふと思った。

 

このスライム…やはり普通じゃないと。

 

元からあんな凄まじいオーラを出していたことからリムル様が普通じゃ無いことは察していたが、本来スライムが持つことの無い筈のスキルをバンバン制約無しで使っている様子を見てやっと確信した。

 

恐らくリムル様は特別な個体…もしくは俺と同じ転生者なのかもしれない。

 

仮にそうだとしたら、かなり凄い確率なのでは無いだろうか?

 

転生者が偶然にもこの広い世界で、よりにもよってこんな大きな森で巡り会うなんて。

 

一応まだ俺の憶測の域を出ない為、直接本人に聞いてみることにした。

 

「なあ、リムル様ちょっと良いか?」

 

「ん?お前は…確か村長の娘。俺に何か用か?」

 

俺は二人きりになれるタイミングを見計らってリムル様に話し掛ける。

すると、リムル様は俺に目を…目って何処だ?兎に角俺に向き直る。

 

「回りくどいのは嫌いだ。単刀直入に聞くぞ。あんたは転生者(?)なのか?」

 

「え?もしかして…お前も?」

 

この反応…どうやら、ビンゴのようだな。

 

「ああ、実はな今はメスゴブリンだが、前世は日本人男性だったんだ。」

 

「日本人!俺も!俺も日本の男のナイスガイだったんだよ!でも、後輩を庇って通り魔に刺されてこんな愛くるしいスライムボディに…。」

 

生前の死因まで分かるのか?

俺は…どうやって死んだんだっけ…?

全く覚えてない…。

 

「それにしても良く俺が転生者だって分かったな!ただの無害なスライムを演じていたのに。」

 

「いや、あれでただのスライムは無理があるだろう。アンパンマンワールドの住人がバイキンマンの変装を見破れない事くらい無理がある。」

 

「…やっぱり、結構やり過ぎだった?」

 

やり過ぎなんてもんじゃないだろ…。

あんなデタラメが出来るスライムがいてたまるか…。

 

「まっまあ、何はともあれこれからよろしくな!正直異世界転生って最初はワクワクしたんだが、だんだんと心細くなってきてたんだよな…。お前がいてくれて良かったよ!」

 

「ああ、これからもよろしくなリムル様。」

 

「二人きりの時はリムルで良い。同郷のよしみだしな。」

 

こうして、リムルが転生者である事を知り、そのまま時間が経って迎えた夜。

 

ーーーアオーン!

 

牙狼族の雄叫び。

遂に決戦の時が訪れた。

 

「ゴブリン風情がバリケードとは小癪な。その貧弱な砦ごと貴様らを骨の髄まで噛み千切ってやろう!」

 

牙狼族の族長と思われる隻眼の狼はリムルが建設したバリケードを嘲笑いながら、満月の月光の下を獲物を狙う狩人の如く悠々と歩きながら雄叫びを上げる。

 

「お前達が牙狼族だな。殺されたくなかったら、逃げるなら今のうちだぞ。」

 

集落を囲むバリケードの外で堂々とした態度で牙狼族を迎え撃つのは俺達の主リムル。

 

「父上、あのスライムです。今朝我が見た、ただならぬオーラを放っていた魔物と言うのは…。」

 

「フンッたかだかスライムごとき恐るるに足らん!貴様も我が牙の血となり糧となるのだ!」

 

牙狼族の族長は勇猛果敢にリムルに向かって突貫する。

それに続いて他の牙狼族達も疾風のごときスピードで突き進んでくる。

 

しかし…。

 

「なっ!?同胞達が…。」

 

牙狼族達は見えない何かに切りつけられたかのように、身体がバラバラになる。

 

「スキル【鋼糸】だ。」

 

リムルが張り巡らした【鋼糸】の罠が迫りくる牙狼族達の群れを次々と切り捨てていたのだ。 

 

「矮小なスライム風情が…小細工など労するか…。その貧弱な糸屑ごと貴様の身体を噛み千切ってやろう!」

 

牙狼族の族長はリムルの【鋼糸】を次々と噛み千切って包囲網を突破する。

 

しかし、それでもうちの主の方が上手だった。

 

「なっ!体が…。」

 

「スキル【粘糸】だ。」

 

リムルのもう一つのスキル【粘糸】を使い、牙狼族の族長を見事捕縛した。

 

遂に兄ちゃんの仇を捕える事が出来たのだ。

 

「さて、止めに【水「待ってくれ!」え?」

 

俺は牙狼族の族長に止めを刺そうとするリムルを止める。

 

「俺に…やらせてくれないか?そいつは俺の兄ちゃんの仇なんだ!そいつの頸は俺が取りたい!」

 

こいつのせいで…牙狼族のせいで、俺の兄ちゃんも他のゴブリン達も殺された。

 

許せない!

今までその頸をこの手で討ち取る瞬間をどれだけ夢見たことか…。

 

こればかりは、流石のリムルでも譲れない。

 

「駄目だ。」

 

「なっ!?」

 

「復讐に囚われるな。復讐は何も生まない。憎しみの連鎖が何処までも続くだけだ。」

 

「でも!俺の兄ちゃんは…こいつらに…。」

 

「お前のお兄さんは復讐を願うようなやつなのか?自分の妹に仇を討って欲しいと思うようなやつなのか?」

 

その言葉に俺は何も言い返せなかった。

 

リムルの言う通り、兄ちゃんはそんな事望むようなゴブリンじゃない。

 

「この戦いが終われば俺はお前達(ゴブ)(リン)の忠誠を受け入れてお前達の主になる。でもな、俺の村に復讐鬼はいらない。」

 

「っ!…ごめん。もう、こんな馬鹿なお願いはしないよ…。」

 

俺はリムルに言われるがまま引き下がる。

 

そしてリムルは体内から射出した水の刃で牙狼族の族長の首を切断した。

 

更に、リムルは今しがた殺した牙狼族の族長を捕食し、擬態し、雄叫びを上げて生き残った牙狼族達を威嚇する。

 

「お前達の族長は死んだ!お前達に二つの選択肢をやろう!服従か死か!」

 

ーーーアオーン!

 

たった今獲得したばかりであろうリムルのスキル【威圧】により、牙狼族の生き残り達は怯みながらも、ゆっくりとリムルに近づく。

 

そして…。

 

「「「「「「我ら一同あなた様に従います!」」」」」」

 

牙狼族達はリムルの前にひれ伏し、忠誠を誓ったのだった。

 

 

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