転生先がゴブリンだった。   作:ひまなめこ

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10話 オーガ襲来。

「止まれ!貴様ら!」

 

オーガ達の真ん中に陣取り、リーダーの風格を持つ赤いオーガが俺達に向かってそう凄む。

 

「あなた方は我々に何用ですか?」

 

兄さんは冷静にオーガ達と会話を交わして、穏便に済ませようとしている。

 

赤、青、紫、白、黒、桃、全部でオーガは6人。

俺自身がオーガだからこそわかる。こんな数のオーガを今の戦力で相手するのは自殺行為だ。

 

兄さんの取った行動はこの場においては最善だと言えるかもしれない。

 

しかし…。

 

「黙れ!薄汚い豚どもと仮面の魔人の手下どもめ!ただのゴブリン達がこのような進化をするなど、ありえん。貴様らもあの怪しい仮面の魔人の仲間なのだろ!」

 

何か大きな誤解があるようだな。

交渉の余地は無さそうか…。

 

「落ち…着いて…くれないか?俺達はあんたらと何の接点もない。仮面の魔人と言うのも俺達は知らない。」

 

「貴様は…オーガでありながら、その者達の肩を持つのか!あの卑怯者どもに寝返ると言うのか!誇り高きオーガの風上にもおけん!オーガの里の若として、その汚れた命を葬ってやる!」

 

 

俺の言葉にも聞く耳を持たず、赤いオーガは懐に携えている刀を抜いて、俺に斬りかかる。

 

俺はその攻撃に瞬時に反応して、【守護者】で防御する。

 

ーーーガキンッ!

 

甲高い金属音が鳴り響くと同時に赤いオーガの体を仰け反らせる。

 

その隙に俺は赤いオーガから距離を取って、反撃を回避する。

 

しかし…。

 

ーーーザシュッ!

 

「ぐあっ!」

 

 

いつの間にか俺の背後に回っていた他のオーガ…白い老人オーガが俺の腕を切り落とした。

 

【守護者】で防御していたのに…!

この白い奴…相当強い!

 

そう思っている間にも状況は動き出す。

 

俺が腕を切られて怯んでいる隙に他のオーガ達も加勢に入る。

紫色のオーガと青いオーガが各々の獲物を俺に突き立てる。

 

なんとかそれを防御するが、追い討ちに黒いオーガが巨大な棍棒を持って現れ【守護者】による防御を破って俺の体を吹き飛ばした。

 

「がはっ!」

 

痛い…早く…超速再生…いや、駄目だ。

超速再生は俺のスキルじゃなくてリムルからコピーしたスキルだ。

つまり、発動するには【受愛者】を使わないといけない。

でも、それじゃあ生気を吸い取ってしまう。

誤って殺してしまうかもしれない…。

それは駄目だ!

 

殺しは駄目だ…。

 

きっと相手のオーガ達にも何か事情がある筈だ…それを知りもせずに殺すのは駄目だ。

 

俺には彼らの命を終わらせる事なんて出来ない…。

 

「貴様、何故反撃しない?俺達を舐めているのか!」

 

「殺したくない…戦いたくない!あんたらを無為に傷付けたくない。」

 

「この偽善者が!善人ぶるなよ!貴様らの仲間が俺達の同胞を殺した!ただ無為にお前達のせいで命を散らしたんだ!」

 

「俺達はそんな事してない!話を聞いてくれ…。俺は誰とも争いたくない…。お願いだ…。」

 

 

俺は激昂する赤いオーガの前で惨めに頭を下げる。

 

例え格好悪くても、惨めでも弱々しくても良い…。

誰も傷付けずに守れるのなら…。

 

「…くっ…!ふざけるな!戦場で敵に向かって頭を下げる戦士がどこにいる!お前達にもお前達なりの正義があり、守りたい物があるなら…譲れないものがあるのなら戦え!敵を葬れ!」

 

「…出来ないよ…。俺には命を奪う事なんて…。誰かの命を台無しにするなんて…。」

 

「腑抜けが…!貴様の言い分はわかった。貴様の信念は信念と呼べるものではない。それは慈悲でも優しさでもない!ただのヘタレだ!貴様は狩り取り、奪った命に対して果たすべき責任から逃げているだけだ!これまで奪った命これから奪う命を背負って生きていく覚悟がまるでない!」

 

 

…なんだよ…覚悟って…。

そんなものがあれば…殺しは肯定されるのか?

 

「便利なものだな…。覚悟ってのは。」

 

「っ!…貴様!【(オー)()()()(イム)】」

 

その瞬間、怒りが頂点に達した赤いオーガから天地を焦がすイフリートの炎を彷彿とさせる業火が放たれた。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

熱い…!…焦げる…!

 

焦土の臭い…!…命が燃え尽きる臭いがする…!

 

「いやだぁ!誰も死なないで!誰も殺さないで!俺の側から誰もいなくならないで…!消えないで燃えないで…。お願いだから…俺を置いて逝かないで…。」

 

俺の体は【守護者】も発動せずにただ生身で炎を受け続ける。

 

熱い…痛い…死にたくない…。

 

そんな苦しみを受け続けていると、当然俺を覆っていた炎が消えた。

 

「俺の大切な仲間を随分と可愛がってくれたようだな?」

 

リムルだ…。

 

リムルが炎を捕食して俺を助けてくれた。

 

「リムル…。」

 

「お前は休んでろ…。後は俺が何とかする。」

 

その言葉を聞いた俺は安堵して意識を手放すのだった。

 

___________________________________________________

 

リムルside

 

こんな時にリムルドが襲われるとはな…。

最悪なタイミングだ。

 

俺は洞窟で新しいスキルの練習をしている最中に突然、リグルから思念伝達で緊急要請が来たので、急いで空を飛んでやって来た。

 

そしたら、この有り様だ。

 

寄によって炎を使われたか…。

 

《告。個体名リムルドは炎に対して過剰なトラウマを抱いています。》

 

…見りゃ分かるよ。

 

目の前にはオーガの炎に炙られたことでトラウマが甦って泣き叫び、そのまま気絶したリムルドの姿があった。

 

「よもや黒幕自ら出向いてくるとはな。」

 

「黒幕だと?」

 

この口振りからして、何か大きな誤解をしている可能性は高い。

 

無益な殺傷はするつもりはないが、今の俺は虫の居所が悪い…。

 

勘違いで済まして良い範疇はもうとっくに過ぎてんだよ!

 

《告。怒りのボルテージの増加を検知。》

黙ってろ…!

 

「お前達に最後のチャンスをくれてやる。話し合いに応じる気はあるか?」

 

「フンッ!知れた事。話し合いなど必要ない!同胞の仇。その頸であがなってもらおう!」

 

赤いオーガは刀を構えて俺に向かって斬りかかる。

 

俺はその攻撃を最小限の動きで避けて、奴の腹にカウンターを食らわせる。

 

「がはっ!」

 

「若!」

 

赤いオーガに一撃をお見舞いした後、続くように紫色のオーガが俺の背後に回って武器を振り下ろす。

 

しかし、その動きは【魔力感知】で丸見えだ。

俺は紫オーガの体に【粘鋼糸】を巻き付け、身動きを封じる。そのままその体をモーニングスターのように振り回して他のオーガ…黒と青に向かってぶん投げる。

 

それによって一気に紫、青、黒のオーガが気絶した。

 

しかし…。

 

ーーーザシュッ!

 

白い老人オーガが俺の【魔力感知】の死角をついて俺の腕を切り落とした。

 

そう言えばリムルドの腕も切られていたな…。

こいつにやられたのか…。

待ってろリムルド、後で治してやる。

 

俺は瞬時に【超速再生】で腕を再生させる。

 

「なっ!」

 

再生した俺の腕を見て、怯む白オーガの隙をついて接近する。そして、俺は腕をアーマーサウルスのスキルで高質化させて奴の顔面を殴り、数m後方に吹き飛ばして後ろの木に激突させる。

 

これで残り二人。

 

「もう、そろそろ終わりにしないか?これ以上やっても結果は見えているだろ。」

 

「…くっ!確かにお前は強い。しかし、俺はオーガの里の次期頭領としてここで引くわけには行かない!」

 

まだ話し合いに応じる気ないか…。

なら、新しく得たスキル【黒炎】でこけおどしを…いや、止めておこう。

 

万が一【黒炎】を使っている最中に気絶しているリムルドが起きてしまったら、また取り乱しかねない…。

 

ここは【黒稲妻】にしよう。

 

「なら、少しだけ本気を見せてやろう。」

 

俺は今までずっとつけていた仮面を外して【黒稲妻】を近くの大岩に向かって放つ。

 

ーーードガンッ!

 

「なっ何だこの威力は…!」

 

「この力は周囲の魔素を取り込む妖術とは違い、純粋な術者本人の魔素で構成されたもの。つまりあの稲妻の力はそのままあの者の力。」

 

一瞬で砕かれた大岩を見て赤オーガと桃オーガが驚愕する。

 

「くっ!なんて凄まじい力だ。だが、せめて刺し違えてでも…!」

 

「お待ち下さい!お兄様!」

 

尚も食い下がろうとする赤オーガを桃オーガが止める。

 

「そこをどけ!妹!」

 

「退きません!この者達はあのオークどもとは無関係かも知れません!」

 

「しかし、あの仮面は!」

 

「お兄様も見たでしょう!あの者の力を…!あの者の実力ならば、一人だけで我らの里を滅ぼすことなど容易な筈。わざわざオークどもを差し向ける必要などない筈です!」

 

「…くっ!」

 

桃オーガの必死の説得により、赤オーガは武器を下ろす。

 

「漸く話をする気になったか?」

 

「ああ、お前の仲間をいきなり襲って悪かった。それにしてもお前は何者だ?」

 

「俺はただのスライムだよ。」

 

俺はオーガ達の目の前でスライムの姿になる。

 

「何と…!よもやスライムがあの様な力を…。」

 

「この仮面、俺達の大切な人の形見なんだが、気になるなら見てもらっても良いぞ。」

 

俺は仮面をオーガに渡す。

 

「どうだ?お前達の里を襲撃した奴と同じか?」

 

「いや、似ているが違う。それにこの仮面には魔素を抑える力があるようだ。」

 

「ですがお兄様、あの時の魔人は魔素を隠してませんでしたよ。」

 

「と言うことは…。すまなかった!我々の勘違いだったようだ。」

 

オーガ達は俺に向かって頭を下げる。

 

これで誤解が溶けて何よりだ。

だが…。

 

「…。」

 

俺は無言で気絶しているリムルドを見つめる。

気分転換にと狩りに行かせたのは間違いだったな…。

 

余計にトラウマを強くしてしまった。

すまない、リムルド…。

 

「スライム殿、あのオーガの事だが…。」

 

「…何も言うな、取りあえずお前達には俺の村に来てもらう。そこでじっくり話をしよう。」

 

俺はオーガ達を連れて村に戻るのだった。

 

 

 

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