転生先がゴブリンだった。   作:ひまなめこ

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3話 衣食住

リムルside

 

 

…リグルに…ゴブタ……ハルナ…それから…ランガと…最後にリムルド…。

 

ゴブタ以外は皆かなり姿が変わったようだな。

特にリムルド。

 

あの水浴び事件の後、俺はリムルドとランガと一緒に集落に戻って、広間に集まっている皆を見渡しながら進化前からの変化を観察していた

 

《告。オスのゴブリンは中鬼(ホブ・ゴブリン)に…メスゴブリンは中鬼(ゴブリナ)に…そして個体名リムルドのみ、大鬼(オーガ)に進化しています。》

 

 

あんなに貧弱だったゴブリン達がね…。

 

名付けって凄いな…魔物の殆どが名前を持たない理由が分かった気がする。

 

野生にあのレベルの魔物がゴロゴロいたら環境が壊れかねない。

 

俺達の村もなるべく生態系を崩さないように気を付けて行かないと…。

…となると、やっぱりルールは設けないとな。

 

「オホン!」

 

俺は広間に集まる皆の前に出て、わざとらしく咳払いをする。

 

すると、嵐牙狼族とホブ・ゴブリン達が一斉に俺に注目する。

 

「はい!皆が静かになるまで五分かかりました。」

 

ーーーしーん…。

 

「んふふっ…。」

 

皆このネタ知らないのか…リムルドしか笑ってない。

まあ、気を取り直して…。

 

「お前達は進化して見違える程に強くなった。でもな、それで調子に乗っちゃ意味が無い。調子に乗って取り返しのつかない過ちを犯してからじゃ遅いからな。だから、ルールを設ける事にした。」

 

俺は一度言葉を区切って皆がしっかり話を聞いているか確認して、再び口を開く。

 

「ルールは3つ。一つ、仲間内で争わないこと。二つ、多種族を見下さないこと。そして三つ、人間を襲わないこと。」

 

全て言い切ると、リムルド以外の奴は皆あまりピンと来てない様子だ。

 

「質問があるなら聞くぞ。」

 

「でしたら、なぜ人間を襲ってはならないのでしょうか?」

 

リグルが挙手して、その様な質問を投げ掛けてきた。

 

「簡単な話だ。俺が人間を好きだからだ。以上!」

 

「成る程、理解しました。」

 

あれ?そんなすんなり受け入れるの?

 

「ええとだな、人間には高度な技術がある。その上集団で行動している。だから、無暗矢鱈に襲ったら何かしらの反撃を受けるかもしれない。だから、人間を襲うのは禁止だ。但しあっちから襲ってきた場合は例外だ。その時は自分たちの命を優先してくれ。」

 

こんな感じでいいかな。

皆疑う事なく俺の言葉を純粋無垢な心で受け止めるから、少し調子が狂いそうだ…。

 

「はい!」

 

すると、リグルに続いてゴブタが手を挙げる。

 

「はい、ゴブタくん。」

 

「多種族を見下さない…と言うのは?」

 

「良い質問だ。これは人間を襲ってはならない理由と殆ど同じだ。お前達は進化して強くなったが、別に偉くなった訳じゃない。万が一お前達が虐めた魔物がお前達みたいに進化して報復なんてしてきたら目も当てられないだろ。」

 

「成る程、分かったっス!」

 

よし、これでルールの方は問題ないだろう。

 

後は生活に必要な衣食住だな。

 

「と言うことで大まかなルールが決まったので次は班分けをしよう。服を作る衣服班、食料を調達する食料班、家を建てる建築班の三つの班に別れて貰う。」

 

そんなこんなでこの村のルールと班分けが決まり、俺達の村の発展が本格的に始ま…らなかった…

 

あれから数日が経過し、食料班は嵐牙狼族とホブゴブリンのタッグで問題なく機能していたのだが、他の衣服班と建築班がかなりの難所だった。

 

そもそもゴブリン自体あまり器用な種族じゃない上に建築と衣服の知識も無い。

 

建築に関しては、前世ゼネコン勤務だった頃の知識がある程度残っているが、俺は現場仕事をあまりしない役職だったので、実際に建築するとなるとその手の知識には疎い。

 

衣服に関してはもうお手上げだ…。

俺の衣服に関する教養の九割は小学生の時にやった家庭科の裁縫が占めている。

 

「なんと言うか…ままならないな…。」

 

「本当に面目ありません…。」

 

支えを失ってドンドン崩れていく家を見て俺とリグルドはそう呟く。

 

「家も服も…かなりヤバイな。これじゃ雨も風も凌げないんじゃねえか?見ろよ俺の服、乳房が零れそう…。」

 

リムルドはこの村唯一のオーガだ。

その為、体の発育と言うか…成長度合いと言うか…まあ、取りあえず色々ご立派にご成長なされた。

 

他のゴブリナ達もそうだが、今着ている衣服では成長したリムルドのあれやこれやを隠しきるにはかなり心許ない。

 

「…うん、実にけしからん。」

 

「リムル様?」

 

うっリグルドから殺気が…。

 

「お、オホン!所でリグルドくん。今まではどうやって家を建てたり、衣服を調達していたんだい?」

 

「武装国家ドワルゴンより、たまに村を訪れる者がおりまして、物々交換で物資をほんの僅か譲って貰っていたのです。」

 

衣服は自作ではなく買い取り品と言うことか…。

 

「その武装国家ってどんな国なんだ?」

 

「ドワーフが治める国です。」

 

「ドワーフ!」

 

ファンタジー定番の鍛治職のエキスパートじゃないか!

手先が器用で、建築、鍛造、被服、何でもござれの村の発展には欠かせない人材だな。

 

「よし決めた!これからドワルゴンとやらに行って技術者をスカウトしてくるよ。」

 

「でしたら、案内役にゴブタを連れていくと良いでしょう。あいつは以前にもドワルゴンを訪れた事があります。」

 

「分かった。じゃあ早速準備を整えて…「ちょっと待った!」ん?」

 

これからドワルゴンへ行くための準備を整えようとした矢先に突然リムルドに呼び止められてしまった。

 

「俺も行きたい。ドワーフに会いたい!会ってみたい!」

 

そう子供のように駄々を捏ねるリムルド。

 

確かに、俺と同じ転生者であるリムルドならドワーフの国とか言うロマン溢れる話題に食い付くのも無理はないか…。

 

まあ、元々リムルドは連れて行くつもりだったし、問題無いだろ。

 

「良いぞ。それじゃあ一緒に「なりません!」…。」

 

親子揃って俺の話を遮りやがって…。

 

「リムル様、よーくお考え下さい!我が娘のリムルドはオーガ…つまり、リムル様の次に強いのです。リムル様がお留守になる間、娘にはリムル様の代役をやって頂きたい!」

 

「はあ?何それ!意味わかんない!リムル様!この石頭親父を説得して!」

 

…うーんリグルドの言ってること、普通に正論なんだよな…。

 

進化したとは言え、まだこの森にはボブ・ゴブリンよりも強い魔物は沢山いる。

 

それを考慮すると、村唯一のオーガであるリムルドを残した方が賢明だろ。

 

「お願い…リムル様…。」

 

「うっ!」

 

突然、リムルドは俺のスライムボディを持ち上げて、ローアングルから俺を見上げた。

 

俗に言う上目遣いである。

 

…こいつ…前世男なんだよな…?自分の容姿の良さを分かってて利用しているな?

 

はあ…仕方ない…なんやかんやで俺は頼み事に弱いのだ。

 

「リグルド、お前をゴブリン・ロードに任命する。この村の統治は全てお前に任せる。」

 

言葉にすれば聞こえは良いが、ぶっちゃけ丸投げである。

 

元々民主主義国家である日本出身の俺は、君臨はすれども統治はせずのスタンスであまり村の方針とかに口は出さないつもりでいたのだ。

 

「おお!リムル様!その様な大役を仰せつかれるとは!このリグルド感無量であります!」

 

良い感じにご機嫌を取れたな…。

 

これで自然な流れで村の統治をリグルドに丸投げ出来た。

だから、これでリムルドも一緒にドワルゴンに…。

 

「しかし、リムルドがドワルゴンへ行く事は許可致しかねます。」

 

「「なんで!?」」

 

頑なだな…そうまでして連れて行かせたくない理由は何だ?

 

「リムル様、よーく見てください!娘のこのふしだらな格好を。この様な格好で街を歩かせるわけには行かないでしょう!」

 

…確かに。

オスならまだしも、リムルドはメスだ。

しかもオーガに進化したことでかなり人間に近い容姿をしている。

その上かなりの美女。

それが、今にも破けてポロリしそうな原始人みたいな服を着て街を歩いていたら、問題になるだろう。

 

「仕方ない…。リムルド、お前お留守番な。」

 

「ノー!!リムルの役立たず!言いなり君主!」

 

「おい!聞き捨てならないぞ!もっと主を敬え!」

 

「うるせえ!配下に言いくるめられる主が何処にいるって言うんだよ!」

 

とまあ、そんなこんなでリムルドは村にお留守番、俺は案内役にゴブタ、護衛にリグルと数名のホブ・ゴブリンそして移動用にランガ達嵐牙狼族を連れて武装国家ドワルゴンへと向かうのだった。

 

因みに、リグルを連れていく時にリムルドとまたひと悶着あったのは別の話。

 

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