リムルドside
取り敢えず不本意ながら、先程助けたゴブリン達を村に案内して、ゴブリンの代表的な人だけ家の中に招き入れた。
「遠路はるばるよくぞ参られた。私がこの村の村長にしてリムル様よりゴブリン・ロードの任を仰せつかったリグルドだ。」
「おお!何と…。お名前をお持ちなのですね!」
リムルのせいで麻痺しがちだが、これが普通の反応だよな…。
普通名付けしたら、付けた側に何かしらのペナルティがある筈なんだが、あいつは3日寝込んだだけでピンピンしてる。
クマムシか何かなのかな?
「早速本題に入ろう。話は娘のリムルドから既に聞いている。貴公らは我らが主リムル様の庇護を得るためにこの村を訪れたのだとか。」
「え、ええ…そうですとも。知っての通り我々ゴブリンはこの大森林の中でも極めて矮小な種族です。牙狼族や先程そちらの娘君に追い払って頂いたジャイアントアントなど、天敵は多いこと多いこと…。ですので、強力な魔物の庇護が我々には必要なのです。」
「自分達で何とかしろ」と言ってやりたいがそうも行かない。
オーガやリザードマンの様な上位種族と違い、ゴブリンは手先が不器用な上知能が低い。
俺達にとってのリムルの様に導いてくれる者、護ってくれる者がいないと、天敵に対処する以前に、この大森林の環境に順応する事さえ難しい。
「何故わざわざこの村に?他にも庇護を得られそうな勢力など、この森にいくらでもあるだろう。」
「…オーラを感じ取ったのです。暴風竜様に匹敵する程の膨大なオーラを。そのオーラの出本を辿って、この村にたどり着きました。」
…あの時のリムルオーラ駄々漏れだったからな。
余計な奴を引き寄せてしまった訳か。
正に餌に群がる虫みたいだな。
まあ、オーラに引き寄せられた点は俺達も大概人の事は言えないけど。
「…ゴブリン・ロードと言う立場である以上、私は貴公らを見捨てる気はない。」
「っ!でしたら…「しかし!」え?」
「我々が先日、貴公らに協力を要請した際、貴公らがそれを断った事を忘れたとは言わせんぞ。」
語気から分かる通り、かなり怒っているな…。
実際俺も同じ気持ちだ。
同じゴブリンだった者として彼らの無力さには同情し、助けてあげたいと思う反面、一度見捨てられた事が許せないと思う気持ちもある。
「我らが主リムル様は寛容なお方だ。きっとあの方なら貴公らを見捨てるような事は決してなさらないだろう。我々もあの方の顔に泥を塗らないために貴公らをこの村に受け入れる所存ではある。だが!もし万が一リムル様に反旗を翻そうなんて馬鹿な真似をしようものなら……我々は貴公らを迷わず見捨てるぞ。」
「はっはいぃ!きっ肝に銘じますぅ!」
目の前のゴブリンは顔面蒼白の状態で小刻みに震えながら、地面を抉る勢いで土下座した。
こうして、俺達は他の集落のゴブリン達を受け入れる事になったのであった。
それにしても一気にゴブリンの数が増えてしまって、この村も狭くなったな…。
早く帰ってきて、リムル。
今頃どこで何してるの?
一方その頃、武装国家ドワルゴンにて ーーーーーーーー
リムルside
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エロフ!…エロフ!…エロフ!…エロフ!!
ああ…。
ここは天国だ…。
「旦那楽しんでるか?」
「おう!もう最高だよ!」
俺は今ドワルゴンの中でも指折りの凄腕鍛治職人 カイジンのちょっとした困り事を解決したお礼として、エロフ…じゃなかった…。エルフのお姉さん達がわんさかいるちょっと大人なお店に連れてきて貰っていた。
「エルフのお姉さん、お酒おかわり!」
「スライムさん、味分かるの?」
「味は感じないけど、お姉さん達みたいな綺麗な人達に注いで貰ったお酒は何でも美味しく感じるよ!」
酒は味わうものじゃない!感じるものなんだ!
「フフッスライムさんったらお口が上手いのね。あっそうだ。ねえスライムさん、私ね"これ"得意なんだ!やってあげようか?」
"これ"?
エルフのお姉さんは両手を使って丸の形を虚空に形作る。
何だろ?…やっぱりここは大人のお店ならではの"あっち"系のサービスですか?
「せ、折角だから、やって貰おうかな…。」
「分かったわ。少し待っててね。直ぐに占ってあげるから。」
そう言ってエルフのお姉さんは大きな水晶玉を取り出した。
「占い…。」
…うん、占いね。
いや、うん…分かってたよ。
今俺分かっててわざとエロい想像したまであるし。
「リクエストはある?何を占って欲しいとか。」
「うーん、占いはあんまり詳しくないから、お姉さんに任せるよ。」
「じゃあ、スライムさんの運命の人を占ってあげる!」
次の瞬間、水晶玉に二つの映像が同時に浮かび上がった。
「凄い!スライムさんの運命の人は二人もいるわ!」
え?二人も!
遂に俺にもモテ期が…。
「なんだ旦那!二人とは随分お盛んだな!」
「う、うるさい!」
それよりも俺の運命の人は…。
俺は水晶に写し出されている映像に視線を飛ばす。
二つの映像は左右に綺麗に別れており、右と左で別の人が写し出されている。
…先に右の方から見るか。
右には沢山の子供達に囲まれている黒髪黒目の綺麗な女性が写し出されていた。
「右の女の人…もしかして爆炎の支配者 シズエ・イザワじゃねえか?」
と俺の隣に座っているカイジンが口にした。
「有名な人なのか?」
「自
「ふーん。」
シズエ・イザワねえ…。
イザワ…井沢…響き的に日本人だよな?
転生者…いや、以前ヴェルドラが言っていた異邦人か。
「旦那、もう片方は見なくても良いのかい?」
「ああ、見る見る。」
俺は一旦思考を切り上げて左に写っている運命の人を見る。
そこには黒曜石の様に黒く細長い二本の角を額から生やし、水色っぽい青銀色に新緑のメッシュが入っているショートボブの綺麗な髪、そして透き通る様な白い肌と目の回りに赤いアイラインが入っている物凄い美女が写し出されていた。
「リムルド?」
その女性は雰囲気と容姿がかなりリムルドに似ていた。
しかし違う点もある。
第一にリムルドの肌は褐色だ。
でも、映像の女性は白い。
第二にリムルドにアイラインは無い。
だから、別人なのか?
それとも、進化した姿なのか?
《告。映像上の個体の情報解析…不可。しかし、身体的特徴の一致率から個体名リムルドが進化した姿である可能性99.9%です。》
やっぱり、リムルド…なのか?
しかし、あいつが運命の人なのか?
確かにこの広い世界のあの広いジュラの森で偶然とんでもない確率の壁を乗り越えて運命的な出会いをした転生者仲間ではあるが、あいつの前世は男だ。
体は女でも心は男なのだ。
あいつが運命の人って言うのはあまり想像出来ないな…。
そんなこんなで俺は思考の海にどっぷり浸かりながら、酒を飲み続けるのだった。
この数分後にちょっとしたハプニングが起きるその時まで…。