リムルside
「オホンッ!」
俺はリムルドが滑った事でしーんとなった空気を変えるためにわざとらしく咳払いをする。
「改めてこの村の主のリムルだ。」
「スライムが…主?」
「あんな凄い魔物達を束ねていたのがスライムだっただなんて…。」
「あっしはそれよりスライムが喋る事に驚きでやす。」
仮面を着けた人以外の三人は正に三者三様の反応を示す。
「スライムが喋る光景は確かにショッキングだけど…。お前達、俺とリムル様が名乗ったんだからお前らも名乗るのが筋ってもんじゃないのか?」
「おっとこれは失礼。俺はこのパーティのリーダーを務めるカバルだ。」
「えっと、
「あっしは
「シズ。よろしくねスライムさんオーガさん。」
金髪の剣を持ってる男がカバル、金髪の女性がエレン、バンダナを着けた男がギドで、仮面の女性はシズさんか。
冒険者って事は恐らく自
「お前達の目的は何だ?何故この森に足を踏み入れた。」
「暴風竜が消えたとの情報があってギルドマスターからこの森周辺の調査を依頼されて来たんだ。」
確か…カバルだったけ?が何の躊躇いもなく目的を口にした。
ヴェルドラが消えたから…ってもしかして…こいつらがここに来た原因って俺じゃね…?
俺がヴェルドラを捕食したせいで人間の国々でもそれなりに騒ぎになってしまっているらしい。
何だか申し訳ない。
「ヴェ…暴風竜が消えた事については多分問題ないと思うぞ。少し魔物の動きが活発になっちゃいるが、状況はコントロール出来ているし。」
「なら、問題ないな。」
「そうね、問題無いから私達の仕事はもう終わり。ギルマスに何か文句言われても無視しましょう。」
「賛成でやす。あっしも流石にフラストレーションが溜まっていたでやすから。」
シズさん以外の三人…何か適当と言うか…大雑把で忙しないと言うか…。
こんなんでよく今まで生きてこられたな。
「あっそうだ。見ての通り、俺達はこのジュラの森に街を作ろうとしているんだが、そちらのギルド的に何か問題はあるか?」
これからも人間とは善き隣人的な関係性を築き上げたい。
その為には人間の国々にとって不都合な事は成るべく避けるべきだろう。
「これも別に問題ねえよな?」
「うん、私達人間が口出す事じゃないしね。」
「大森林は別にどこの国の領土でもありやせんし、ギルドにとやかく言う権利はないでやす。」
問題ないのならそれで良いのだが、こいつらそんなに情報をベラベラ話して大丈夫なのか?
「有益な情報ありがとな。暫くこの村で寛いでて貰って構わない。部下達には丁重にもてなす様に言っておくから。」
「「「アザっす!」」」
こうして、初めての人間達との邂逅は意外とカジュアルに済んだのであった。
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時計が無いので詳しい時間は分からないが、空が茜色に染まっているので、恐らく時刻は午後5時から6時の間程。
俺は運命の人…シズさんが一人で村外れの丘で黄昏ているのを目にしたので、話し掛ける為にリムルドを連れて近付く。
さっき俺のスライムネタに反応したことから十中八九シズさんも俺とリムルドと同じ日本人である可能性が高い。
だから、色々話がしたくて落ち着いて話せるタイミングを見計らっていたのだ。
「…シズさん。」
「ねえ、さっきのスライムじゃないよってやつ。ゲームのセリフでしょ?やった事は無かったんだけど知り合いが教えてくれたの。スライムさんも日本人なんだね。」
シズさんはまるで俺が話し掛ける事を予測してたかのように、仮面を外して微笑みながら、俺達に振り向いた。
「ああ、シズさんの言う通り俺は元日本人だよ。さっきドン滑りしてたリムルドもな。」
「おい!」
「ふふっ。私はあのネタ好きだよ。多分鬼と雷様をかけたネタだよね。」
「うおお!ネタの解説はしないでえ~!」
…うわ滑った後にされると一番嫌な奴だ。
リムルド、南無三。
「二人は"転生者"なんだね。」
「シズさんは違うのか?」
「私は"召喚者"だから。」
召喚者…。
洞窟でヴェルドラから聞いたことがあるな。
確か無理やりこの世界に召喚されたんだっけ?
俺やリムルドみたいに一度死んで転生なら、寧ろ第二の人生を得られてラッキーって感じだけど…。
シズさんは普通に日本で暮らしている時にいきなりこの世界に連れて来られたんだよな…。
「スライムさん達はどうやってこの世界に来たの?」
「俺は後輩を庇って通り魔に刺されて死んだ。」
「俺は覚えてない。気付いたらゴブリンに転生していた。」
ここが不思議な所なんだが、俺とリムルドの転生の仕方はかなり違う。
俺は前世の死因を覚えているし、転生する前に幾つかスキルを獲得していた。
対して、リムルドは前世の事を全く覚えてない上に転生直後はスキルを一つも持ってなかったそうだ。
ヴェルドラは俺達みたいな転生者や召喚者は皆この世界に来る際に強力なスキルを獲得するものだと言っていたから、恐らくリムルドのケースがかなり特殊なんだと思う。
「どうやって死んだのか覚えてないの?名前は?」
「名前?リムルドだけど…。」
「いや、そうじゃなくて。前世の名前。」
「前世…うーん、思い出せないな…。」
前世の名前も思い出せないのか…。
俺は今でもはっきり覚えてるのに。
この違いはなんだ?
《解。情報不足により、回答不可。》
今のところ知ってる転生者は俺とリムルドの二人だけ。
召喚者はともかく、今後俺達みたいな存在に会える可能性は極めて低いだろうから、この謎はお蔵入りだな
「俺の思い出せない前世よりも思い出せる思い出の話をしようぜ!シズさんは前世(?)…はちょっと違うか。召喚される前は何してたんだ?」
「…普通の女の子だったよ。多分スライムさん達が生きてた頃よりもちょっと前の時代の。」
無理やり話題を変えたリムルドに対してシズさんは少し表情を暗くする。
「私が生きていた時代はね。戦争の真っ最中で、私はお母さんと一緒に空襲によって巻き起こる炎の海の中、防空壕を目指して必死に焦土の上を走ってた。そんな時に突然足下に魔方陣が現れて、この世界に召喚されたの。」
「お母さんはどうなったんだ?」
「分からない…。」
余計な事を聞いてしまったな。
シズさんの表情が余計に暗くなってしまった。
…戦争か。
俺はおばあちゃんから聞いたくらいで実際に体験したことが無いから、シズさんの気持ちに完全に共感する事は出来ないが、相当辛い思いをしたことは彼女の表情から十分に伺える。
…そうだ。
大賢者、俺の記憶の一部を映像としてシズさんとリムルドの脳内に流せるか?
《了。記憶映像の再生を行います。》
次の瞬間、俺達三人の脳内にエロいエルフが川辺で服を脱ぐ瞬間の映像が流れる…。
…言わずもがなエロゲーの記憶である。
「これはエルフさん?何で裸なの?」
「おおう…。リムルこう言うのが好きなんだ…。」
「ちがーう!大賢者!そっちじゃない!」
俺は慌ててエルフのエロゲー映像を打ち切って、もう一つの映像を映し出す。
それは戦争が終結してからの日本が今に至るまでの発展の様子がダイジェストで流れる映像だった。
「凄い…綺麗。あんな高い建物見たこと無い。」
シズさんは星々を眺める子供の様にキラキラと目を輝かせて、映像内の東京タワーを見つめる。
「戦争は無事終わって、日本は大きな発展を遂げたんだ。どうだったかな?余計なお世話だったかもだけど、この光景をシズさんに見て貰いたかったんだ。」
「…ありがとうスライムさん。最後にこの世界で綺麗な思い出が出来たよ…。」
喜んでくれたようで何よりだ。
こうして俺達は三人で茜色の空の下で共通の故郷 日本について語り合ったのであった。
とても感動的な締めだな。
我ながら俺は心までもナイスガイだ。
「ねえねえ、大賢者さん。リムルの秘蔵コレクション、俺の脳内にインストールしてくれない?」
《了。》
了解すな!