逃げたい俺と勘違いする魔法少女と特攻したいAI   作:5th

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眼前に鎮座するのは、おぞましい数多の触手を蠢かせる、漆黒の巨大な球体。

 

その中央で不気味にぎょろりと剥き出しになった単眼が、こちらの存在を射抜いている。

 

……これ、生理的に無理なタイプだ。触手モノの映画を観てトラウマを植え付けられた人間なら、この光景を見ただけで泡を吹いて倒れるんじゃないだろうか。

 

そして後方――いつの間に回り込まれたのか、奴の分身とも言える触手の伏兵が退路を断っている。

 

まさに絶体絶命、文字通りの袋のネズミ。それなのに、俺の心は不思議と凪いでいた。

 

別に悟りを開いたわけでも、人生を投げ出したわけでもない。

 

ただ、この窮地を脱するための「武器」を持っているという事実が、俺を冷静にさせているのだ。

 

……というより、正直に言えば、目の前の化け物よりも今自分の手元にある「武器」の方が、あらゆる意味で恐ろしい。

 

『《指令》 マスター、起動シーケンスの詠唱を速やかに開始してください』

 

「い、いや、そもそも俺の低スペックな星辰力(エーテル)じゃ、この『星晶核(アストラル・ノード)』の暴走を止めることなんて土台無理な話だろ……」

 

右手に装着したリストバンド。その中央に埋め込まれた灰色の宝石が、電子的な鼓動のように明滅している。

 

まともな倫理観を持つ人間が聞けば腰を抜かすだろうが、今の機械音声はこのブレスレット――もとい、星導機(アストラル・ギア)が発したものだ。

 

コイツの名は『アクセル・コア』。

 

自称「長距離高速移動に特化した自律型演算機」とかいう、名前からして物騒極まりない機種らしい。

 

今思えば、バイトの帰り道に公園で「あ、綺麗な石落ちてる」とか思って拾っちまったのが、俺の人生最大の判断ミスだった。

 

なんでもこの星晶核(アストラル・ノード)というのは、本来なら持ち主の願いすら叶える途方もない遺物らしい。だが、未加工の力が周囲の生命体と共鳴して暴走している今の惨状を見る限り、その力は相当に厄介極まりないものだ。

 

『《反論》 ご謙遜を。確かにマスターの星辰力保有量は、測定可能な範囲における最低値を更新し続けています。しかし、あなたには幾多の死線を潜り抜けた者だけが纏う、底知れない戦闘センスが宿っています。収容(リカバリー)は不可能でも、物理的に粉砕・撃退することなど造作もないはずです』

 

「……最低値を更新って。それ、褒めてないからな。全然ダメだろ。大体、お前は致命的な勘違いをしてるみたいだけど、俺には実戦経験なんて微塵も無いんだよ。つい数日前まで、平穏と安寧を愛する善良な一般人として――」

 

『《急告》 敵性反応、加速。――来ます!』

 

「ちょっ、おい! だから少しは人の話を聞けって――! くそ、装甲展開(システム・ブート)ッ!!」

 

『――《起動完了》。《励起》 マスター、死して勝利を掴み取らんことを!』

 

またしても俺を過大評価……という名の「無茶振り」をかましてくる星導機(アストラル・ギア)に、物理的に背中を押される形で機動装甲(アーマー)を展開する。

 

この装甲、なんでも「使用者の自己イメージ」を基に構築されるらしいのだが、なぜか俺の場合は初期設定の時点でこの形が確定していた。

 

俺の全身を包み込んだのは、眩い白銀の輝きを放つ流線型の鋼。

 

客観的に見れば、魔法使いというよりは特撮ヒーローか、あるいは最新鋭のパワードスーツといった外見だ。

 

唯一の、そして最大の特徴を挙げるなら、背中に背負った不釣り合いなほど巨大なブースターだろう。

 

円筒形の――さながら宇宙ロケットのエンジンを思わせる形状。だがその中心部には、あろうことかリボルバーのシリンダーが埋め込まれているという、アンバランス極まりない代物だ。

 

アクセル・コア曰く、これは「非常時専用の過負荷運用モード」らしい。

 

できれば一生お目にかかりたくない、封印しておきたい装備の一つだ。あの見た目からして、まともな挙動をするはずがない。

 

『《警告》 マスター、回避行動を。直撃まで――0.8秒』

 

「――っ!?」

 

あまりの理不尽さに思考を奪われていたせいで、触手の接近を完全に忘れていた。

 

アクセル・コアの冷徹な警告にハッと我に返った瞬間、視界を埋め尽くしたのは槍のように鋭利に尖った無数の触手。

 

「当たったら痛そう」なんてレベルじゃない。問答無用で串刺し確定の密度だ。

 

「ぼ、防御! 防壁展開ッ!!」

 

『――《展開》。円環防壁(ラウンド・シールド)

 

俺の両腕を覆うように、半透明の星辰の膜が現出する。

 

星辰力が枯渇している俺では、バリアを張るにしてもこれが限界なのだという。

 

大抵の戦術士とやらは全身を包み込む球状の防御結界を張れるらしいが、俺は両腕を守るのが精一杯。情けなくて涙が出てくる。

 

これじゃ、ただの「頑丈な籠手」だ。

 

頭部を守るように両腕を交差し、そのまま後方へ大きく飛び退く。

 

だが、俺は致命的なミスを犯していた。

 

今俺が纏っているのは、分厚い装甲。見た目通りの、いや、それ以上の重量を誇る鋼の塊なのだ。

 

そんな重装備のデクの坊が、バックステップで敵の攻撃を華麗に、流麗に回避できるだろうか?

 

答えは否――断じて否である。

 

慣性と重力に抗えず、仰向けに無様にひっくり返る馬鹿が一人。俺だ。

 

おまけに背中の巨大なブースターが邪魔をして、完全に倒れることもできず、亀のように中途半端な姿勢で固まってしまう。

 

バイザーの内側に投影されているのは、無慈悲に降り注ごうとする触手の群れ。

 

あれだけの数だ。両手を守るだけのチンケなシールドじゃ、数発防げれば御の字だろう。

 

俺はあの不気味な槍に貫かれて、この地で果てるのか……。

 

どうせならもっとこう、大切な誰かを守るためとか、世界の平和を背負ってとか、そういう格好いい理由で散りたかった――って、なんで俺の思考は「散る」のが前提になってるんだよ!?

 

大体、こういう危機的状況では、眠れる潜在能力が覚醒したり、新たな呪文が閃いたりするのが創作物の常套手段じゃないか。

 

きっと、俺にも逆転の光明があるはず――!

 

その瞬間、脳裏に一列の文字列が閃光のように走った。

 

それは、アクセル・コアに初期実装されていた、いかにも怪しげなプログラム。

 

こいつの説明を信じるなら、これこそがアクセル・コアを「最速」たらしめる術式らしい。

 

本能が「やめておけ」と全力で叫んでいるが……迷っている暇はなかった。

 

「『絶閃・神速相転移(ゼロ・オーバードライブ)』――起動ッ!!」

 

『――《承認》、"Zero Overdrive"!!』

 

刹那――世界の音が消失した。

 

何が起きたのかすら認識できない。ただ、バイザー越しに見えたのは、眩いほどに輝く真っ青な空と太陽。

 

そして、直後に襲ってきたのは、暴力的なまでの激痛だ。痛い。どこがとかそういう話じゃない。全身の細胞一つ一つが余すところなく悲鳴を上げている。

 

泣きそうだ……。あ、バイザーの中で涙が頬を伝って流れていくのがわかる。

 

『《戦果確認》 マスター、実に見事な一撃でした。敵性体、星晶核(アストラル・ノード)の暴走体は一時的な機能停止を確認。収容(リカバリー)機能こそありませんが、今この瞬間であれば、核のエネルギーに巻き込まれている現地生命体を安全に分離できるはずです!』

 

アクセル・コアの無機質な音声が、ガンガンと脳を揺さぶる。

 

あまりのコンディションの悪さに、胃の中のものが逆流しそうだ。

 

「い、いや……俺には何が起きたのかサッパリなんだが。それより全身がバキバキに痛いんだけど」

 

何やら満足げに処理ログを流しているアクセル・コア。

 

彼女(声質からして女……だと思いたい)には、俺の身に起きた「事故」が、意図的な戦術に見えているらしい。

 

『《推論》 自身の星辰力の乏しさを逆手に取り、本来は移動用の術式である自分を、超至近距離からの自爆的衝撃波へと転用する……。流石です、マスター。その独創的な発想、畏敬の念を禁じ得ません』

 

「た、頼む。一回だけでいいから俺の話をまともに聞いてくれ……。で、結局何が起きたんだ?」

 

『《データ解析》 なるほど。マスターほどの高みに達した方は、己の直感のみを信じることなく、常に客観的な観測データをフィードバックとして要求するのですね。勉強になります。では、不詳アクセル・コア、マスターが演出した華麗な逆転劇を解説させていただきます』

 

「……ああ、頼むよ。早くしてくれ」

 

もう訂正するエネルギーも残っていない。

 

俺をどこぞの歴戦の傭兵か何かに仕立て上げたいこのAIは、どこか得意げな口調で解説を始めた。

 

『マスターが展開した事象改竄式(イーサ・コード)――"Zero Overdrive"は、アクセル・コアの中核を成す機関に燃料となる星辰力を注ぎ込み、瞬間的な推進力を得るためのものです。本来の用途であれば、星辰力を供給し続けることで持続的な超高速移動を実現する……いわば、燃費が極悪なターボエンジンのようなものです。しかし、マスターは自身の星辰力の低さを逆利用しました。瞬時に燃料を使い切り、機関の起動時に発生する指向性の衝撃波と爆発的な推進力を、ゼロ距離での攻撃へと昇華させたのです』

 

小難しい用語の羅列と、息つく暇もない機械音声。

 

要約すればこうだ。俺は背中の巨大なロケットエンジンを、あろうことか仰向けのまま起動させた。

 

その結果、あり得ない速度で前(つまり真上)に射出され、その時に発生した衝撃波が目の前の触手どもを木っ端微塵に吹き飛ばしたのだ。

 

……じゃあ、何か。

 

俺の体がガタガタなのは、星辰力が足りずにブースターが即座に停止し、その時に発生した凄まじいG(重力加速度)の反動をまともに食らったからか?

 

……うわ、思いっきり自業自得じゃないか。

 

『《推奨》 さあ、マスター。あの不届きな暴走体に、正義の鉄槌を叩き込みましょう!』

 

……お前、本当にただの機械か?

 

脂汗を流しながら空中でどうにか姿勢を立て直すと、眼下の地面には俺がいた場所を中心に濛々とした土煙が立ち込めていた。

 

バイザーが瞬き、煙の向こう側を鮮明に映し出す。

 

……無駄に高性能だな、おい。

 

というか、あのクレーターの原因、冗談抜きで俺なんだよな?

 

半径三メートル、深さ二メートル。不本意ながら巨大な落とし穴を掘ってしまった俺は、街の器物損壊的な意味で非常に肩身が狭い。

 

あの触手の化け物は、攻撃手段を失ったせいか、今は沈黙している。

 

中央の巨大な単眼も、今は力なく閉じられていた。

 

ああ、そうだ。言い忘れていたが、ここは俺の自宅近くにある神社だ。

 

普段は人も来ないから、アクセル・コアとの「内緒話」に丁度いいと思っていたんだが……まさかこんな大穴を空けることになるとは。

 

「攻撃しろって言われても、どうすんだよ。俺が使える術式なんて、このちっぽけなシールドと、さっきの自爆特攻だけだぞ? せめてあの特攻術式、危ないから機能停止しといてくれないか? 危なくて、あ――」

 

『――《承認》、"Zero Overdrive"!!』

 

――んしんできない、という俺の言葉は、爆音にかき消された。

 

気がついたとき、俺は自分で掘ったクレーターのど真ん中に……見事に「埋まって」いた。

 

某ミステリー小説の死体のように足だけ出ているわけじゃないが、右手が肩まで地面に深く突き刺さっており、抜こうにもピクリとも動かない。

 

そんな俺のすぐ脇には、小さな灰色の宝石と、うにょうにょと蠢く黒い毛玉のような生物が転がっていた。

 

アクセル・コアは『《走査完了》 巻き込まれていた生命体の反応を確認。主だった外傷はありません。おめでとうございます』とか言っている。

 

だが、俺は声を大にして言いたい。

 

――いないから! 例え小さかろうが、触手を出して街を破壊するような毛玉は、俺の近所には生息してないから!!

 

というか、こいつ、どっからどう見ても異世界の魔物だよな?

 

俺が必死に右腕を引き抜いたとき、すでにその毛玉はどこかへ姿を消した後だった。

 

きっと、今度は別の場所で不審者でも懲らしめに行くに違いない。

 

「で、どうするんだよ、これ。引き剥がすのは成功したみたいだけど、俺たちの力じゃこいつは無力化して収容(リカバリー)できないんだろ?」

 

地面に転がる『星晶核(アストラル・ノード)』を眺め、深くため息をつく。

 

あれだけ死ぬほど怖い思いをして、全身筋肉痛以上のダメージを負って得た成果が、これか。触ることすらできないなんて。

 

いや、下手に触れてさっきの化け物みたいに同化されるのは真っ平御免だが。

 

二度の突貫魔法(という名の事故)のせいで、俺のコンディションは最悪だ。

 

何より泣けるのは、術式の反動によるダメージよりも、勢い余って地面に激突した物理ダメージの方が遥かに大きいということだ。

 

痺れが取れない右腕、これ折れてないよな? 折れてないと思いたい。

 

……正直、このまま石を放置して家に帰りたい。

 

『《肯定》 左様です。マスターの星辰力では、収容プロセスへの移行など空想の域を出ません。また、私にもその機能は搭載されておりません。しかし、これを放置するのは次元汚染の観点から見て極めて危険です』

 

……今、遠回しに「無能」って言われた気がする。

 

「あー、じゃあ誰か他に収容できる専門家はいないのか? これ、一応『失われた遺物(ロストロギア)』とかいうヤバい代物なんだろ? 危険物処理班とか呼べないのかよ。早く来いよ、マジで」

 

重い腰を上げ、よっこらしょとクレーターから這い出る。

 

左手に星晶核(アストラル・ノード)を握っているせいで、重心が狂って登りづらい。

 

アクセル・コア曰く、今の星晶核(アストラル・ノード)はスリープ状態なので直接触れても無害らしいが……本当に大丈夫なんだろうな。

 

発動するなら、俺が手を離してからにしてくれ。いや、俺の近くでは二度と発動しないでくれ。

 

立て続けに無茶をしたせいか、精神的な疲労は限界に達していた。

 

肉体的な疲労は、とっくの昔にキャパシティを越えている。

 

背中のアクセル・コアが「プシュー、プシュー」と蒸気を吹き出し、異様に重い。

 

バイザーには『《警告》 強制冷却実行中。接近注意』の文字。

 

警告するくらいなら、最初からこんな排熱地獄を俺に背負わせるな。

 

大穴の脇にある手近な石に腰掛け、一息つく。

 

もちろん、星晶核(アストラル・ノード)は穴から出た瞬間に地面へ放り投げた。

 

普段なら心を洗ってくれるはずの夕焼け空が、今は憎たらしいほど綺麗に見える。

 

最初の特攻で意識を飛ばし、目覚めた時に見たのがこの空だったせいだろう。

 

さて、これからどうしたもんか。思案に暮れていると、アクセル・コアが不意に無機質な声を上げた。

 

『《急告》 マスター! こちらに急速接近する強力な星辰力反応を確認。この波形は……戦術士。それも、純粋な出力だけならランクAA以上に相当します。まあ、マスターほどの実力者であれば、例えマスター自身の登録ランクがFだとしても、何ら問題はありませんね!』

 

「……ああ、そう。俺、Fランクなんだ。へぇ。で、来てるのがAAランク? ……いや、算数ができる人間なら、俺に勝ち目が無いことくらい一瞬でわかるよな? どうなんだ、アクセル・コア」

 

そもそも魔力は底を突きかけている。

 

対するは、機械が感知するだけで「超ヤバい」と判別するほどの大物だ。

 

どんなポジティブな色眼鏡をかけたら、俺が勝つなんて結論に行き着くんだ?

 

だが、あろうことかこの曲解デバイスは、一点の曇りもない機械音声で言い切った。

 

『《論理構築》 マスターが先ほど打倒した暴走体の推定ランクはB+。全力を出していない状態のFランクであるマスターが、格上のBランクを撃破したのです。この事実から導き出される結論は一つ。真価を発揮したマスターにとって、AAランクの者など指先一つで沈める前座に過ぎません!』

 

「お前……さっきから俺の戦いをどの面で見てたんだよ……」

 

ボロボロになって、半泣きで、ただ地面に激突してただけなんだぞ。

 

『《記録照合》 勿論、マスターが敵を文字通り「瞬殺」した至高の戦闘ログを、最も近い特等席で拝見させていただきました!』

 

……まあ、時間だけ見れば「瞬」かもしれないけどさ。「殺」はしてないから。

 

そもそも、俺の唯一の攻撃手段が「高速移動による体当たり」なんだから、決着が早いのは当たり前だろうが。

 

たまたま勝てたのは、あの化け物がデカくて動きが鈍かったからに過ぎない。

 

二度と使いたくないんだよ、この技。

 

頑丈さだけが売りのこの装甲ですら、衝撃を殺しきれないんだぞ。一歩間違えたら俺、ミンチだぞ。怖すぎるだろ。

 

『《分析》 マスター、深刻に悩む必要はありません』

 

俺の心中にある「死への恐怖」を読み取ったのか、アクセル・コアが珍しく落ち着いたトーンで告げる。

 

このポンコツAIも、ようやく俺の人間的な苦悩を理解してくれたのか。

 

『あちらの者には、運が無かったと諦めてもらいましょう。いえ、むしろマスターのような至高の強者と手合わせできることは、彼らににとって得難い経験となるはず。ここは一つ、胸を貸すつもりで叩き落として(撃墜して)あげましょう!』

 

「ナ、ナノミクロンも伝わってねぇ……」

 

胸を貸すどころか、貸す胸が物理的に粉砕されるっつーの。

 

そもそも、向こうは味方かもしれないだろ?

 

「そうだ、アクセル・コア! そのAAランクの奴なら、この星晶核(アストラル・ノード)を安全に収容(リカバリー)できるんじゃないか?」

 

『《演算》 ……はい。理論上、十二分に可能と推測されますが』

 

「なら、俺たちは今すぐここからズラかるぞ! あとはそいつに押しつけ――もとい、バトンタッチすればいい!」

 

こっちは満身創痍なんだ。

 

アクセル・コアが『せっかくの功績を譲歩されるのですか!?』とか何とか喚いているが、「敵に塩を送るのも、また騎士道だ」とか適当なデタラメを並べて黙らせる。

 

アクセル・コアのバイザーに、何やら尊敬の色を含んだ文字列が高速で流れているが、全力で視界から外した。

 

「よし、全力で離脱だ! ただし、絶閃・神速相転移(ゼロ・オーバードライブ)は禁止な。絶対だぞ――」

 

『――《承認》、"ZeroOverdrive"!!』

 

「ちょ――おま――ッ!?」

 

そして、俺はその日、三度目の意識消失を体験した。

 

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