男の進む軌跡   作:泡泡

11 / 11

 約三年ぶり?少し話がぶれていたりしているので修正するかも。


11話

 

 孤児院の方向を見ながら敵意が見え隠れしているのも見逃さないようにする。人間とかかわり合いになると良いことばかりではないが、それでも知り合いが関わるとそれをそのままに放っておくことなどできない性分らしい。そのような傾向にあることを最近知った。

 

 孤児院のほうには町民が放水の手助けをしているし、子供らの気配もしっかりとしている。ということはこちらがするべきことは一つだけ。実行犯らしい気配はすでに薄くなっているので孤児院の方角から来た怪しい人を尋問する事。

 

 「何奴(なにやつ)?と聞いたとしてもそちらから返事をもらえるとは思ってもない」

 

 「・・・っ」

 

 無駄だとは思いつつも一言かけてみる。気配を隠したまま近づき声をかけたものだからそれ相応に驚いたようだ。暗闇で表情など見えない人影だが、驚いた時に出た息を飲む音が聞こえてきた。

 

 「孤児院の方向から来たということは無関係というわけでもなかろう。それに服からは微かに油の臭いもする。救助に当たったのであれば何も言わずにその場を立ち去るのも意味不明な行動である。目的は命を奪うことではなく、何かしらの警告と見ると救助して立ち去る・・・と言う行動にも理由が付くが・・・そのところどうだ?」 

 

 返事は得られないまま。その代わりに腰に帯びた剣を抜くことが返事となったようだ。抜いたままこちらの顔の高さまで上げられ、ピタリと止まる。これ以上調べることは無駄や叶わないと言わんばかりの仕草だった。

 

 「それがそちらの返事?相対してもこちらの強さが分からない時点でただが知れているが?」

 

 「っ!!」

 

 相手は黙っていられなくなったようだ。切っ先がこちらに飛んでくる。躱してもいいが面白そうなのでそのまま見ておく。ガキンと顔に当たった音ではない音がする。すると言うのは変な表現かもしれないが、そのままだ。剣が自分にあたってサックリ刺さるのかと思えばシールドでも張られているかのように顔の表面で停止したのだ。

 

 「ナゼ?」

 

 仮面をしている相手からこもった声が聞こえる。何げにこれが正体不明の相手が発した初めての声かも知れない。

 

 「それをそちらに教えるとでも?」

 

 少々あざ笑うかのように『ハッ』と声をかけてみる。これでキレてこちらに向かってくればいいのだが正体不明の相手は無言を貫いた。そして向かってくると思わせておきながらバックステップで間合いを離し、森の奥へと消えていった。ちょっと悔しかったので爪を振るっておく。力は入れていないはずなのにその行動は自分がいるところから海岸まで、三本の(わだち)より深めの道を造ってしまった。少し、いやかなり視界が開けていた。当然のように誰かがそれに巻き込まれているということもなさそうだ。

 

 「分け身?質量のある分身のようなものかな?どれ私も試してみようか・・・」

 

 早く戻らなければならないことは知っていたが、数分後には彼と同じような姿をした分け身が五体存在していた。

 

 「・・・割と簡単にできたな。ふむ、触ることができないのではなく触れることがちゃんとできるという事は戦闘を行なうときに便利だ。・・・少し手間取ってしまったが火の気が感じられなくなったな。孤児院の子供たちの気配も一つとして欠けてはいないし」

 

 これからどうするか、そして決断しようとしたとき学園長から念話が入る。もしもの時に渡しておいた自身の鱗から作った念話装置といったところだろうか。ギュッと握り締めて声に出さずに対象に話しかけると届くというもの。この場合は、鱗から作っているので使う人と届く人は限られているがなにげに使いやすいアイテムと言えるかもしれない。

 

 

 『今よろしいでしょうか?』

 

 『構わない。何か問題でも?』

 

 『ええ、クローゼさんなんですが取り乱して自分も現場に行くと言って聞かないんです。夜も更けていますし、朝になったら遊撃士が現場を訪れて原因を探るように遊撃士協会には言ったんですが・・・。状況が許すのであれば、こちらに戻っていただけないでしょうか?』

 

 『・・・分かった。数分後そちらに向かう。私の部屋にクローゼを連れてきてもらえないか?温かい飲み物と一緒に・・・』

 

 『お願いします』

 

 

 学園長からの連絡は多少なりとも予想できたものだった。クローゼにとって孤児院は意味を持つ場所であったからだ。一報が入った時、伝えない手もあったが朝になってから伝えたときのほうがショックが大きいと思ったからだ。グッと足に力を入れ、そのまま駆け出す。風を切って走るのは空を飛ぶときぐらい気持ちが良いものだが、今は良い気分にはなれない。数歩後には学園を囲む壁が見えてくる。そして自分が借りている部屋に明かりがついているのも見えた。

 

 少し手前でスピードを落とし降り立つ。クローゼと部屋が同じ子には学園長からの通達が行っているので今の心配はクローゼの事のみ。昔からアウスレーゼの名が付く者を見守ることはある程度決められていた。そしてクローゼは名前を隠してはいるが匂いが同じなのでアウスレーゼの名が本当は付いていることは確実。

 

 部屋の前で気配を探る。すすり泣きが聞こえてくるのでいることはいるが、学園長の指示がなければ多分と言うかおそらくすぐにでも現場に駆けつけようとするだろう。ノックをしてから部屋に入ることにしよう。

 

 「クローゼ?入るぞ・・・・・・」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。