ブラック・ブレット 贖罪の仮面   作:ジェイソン13

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ティナ・スプラウトのウワサ

モデル事務所に何度も声をかけられているが「天誅ガールズのBlu-rayBOXを買いに行くので」と断っているらしい。


殺戮の翼 後編

 ナイトメアイーグルの襲撃より2日前

 まだ西外周区が赤目ギャングの怒号と銃声で賑やかだった8月17日の夜。バンタウの一室に集まった壮助たちはプロジェクターで投影した壁に視線を集める。

 投影した画面は未織がティナに渡したUSBメモリの中身、五翔会残党が博多黒膂石重工から盗んだ次世代バラニウム兵器の設計書だ。常に後手に回っていた壮助たちは戦う前に敵の性能を知り、弱点を知り、先手を打てるようになると期待した。

 

 

■■■■■計画応用実験機

 

コードネーム『ナイトメアイーグル』

 

 一部が黒塗りされたタイトルから一同は嫌な予感がした。ティナがマウスを借りてページをスクロールさせると肝心な部分が黒塗りされたページが続く。PCの処理速度の問題でページの読み込みが追いついていない、という訳ではない。博多黒膂石重工が意図的に検閲目的で塗ったのだろう。

 見えている部分も難解な図面、専門用語だらけの文章、高等な教育を受けられた人間だけが理解できるように書かれている。嫌がらせと言うより、そういった知識を持つ人間向けに作られているのだろう。

 

「あの……誰かこれ理解できますか?」

 

 元医師の倉田、現役高校生の朝霞・鈴音・朱里、現役中学生の詩乃と美樹、中学校中退の常弘を除き、集まっている面々のほとんどが就学経験ゼロか小学校中退。「これを理解できる人間はいないだろう」と思いつつティナはちらりと()()勾田大学医学部卒の倉田を見る。

 

「ごめん。専門外過ぎて分かんない」と気弱な返答が来た。

 

 続いて東京エリア最難関校・美和女学院に進学した朝霞なら、淡い期待の眼差しを向ける。

 

「……面目ありません」

 

 朝霞の口から出た気まずそうな返答の次、コンピュータに詳しいナオに目を向けたが、彼女もお手上げのジェスチャーで返す。

 とりあえず、画面をスクロールさせ、先へ先へとページを進める。細かい図面、専門用語だらけの難解な文章、意味不明な数式、化学式、グラフetc……が続く。つまらない授業が続くクラスルームのように半分のメンバーは居眠りしかけている。

 最終ページを映し終えた後、ナオの指が止まり、PCのタッチパッドから離れた。

 

「とりあえず、理解できたのはこのページぐらいか」

 

 スクリーンに移されたのはナイトメアイーグル本体の三面図だった。両手を広げたバラニウム製の機械人間(アンドロイド)、隣にはオプション兵装のブレードとライフルが並べられ、各部に小さく説明が書かれている。本体と兵装のSFじみた見た目のせいか、一同はロボットアニメの設定画を見ているような気分だった。

 

「結局分かったのって『全高2.5m・重量1.8t。遠隔操作で動く人型兵器。武装はブレード8本とライフル8挺。斥力フィールドを装備』ってことぐらいかな」

 

 常弘はメモしていたビジネス手帳を閉じ、万年筆も手帳のホルダー入れた。

 

「また斥力フィールドかよ……どいつもこいつも俺の専売特許を標準装備しやがって……。『ぼくのかんがえた最強のガンダム』じゃねえんだぞ……」

 

 壮助が項垂れ、額をテーブルに付けた。嘆きの声もテーブルを伝って床へ落ちるように小さくなっていく。

 ニッキーが口元に手を当てて「ん~」と呻った後、指をパチンと鳴らす。

 

「遠隔操作ってことは、動かしている人見つけて倒せば良いのよね。楽勝じゃない」

 

 案外勝てるかもしれないという希望が湧き、場の空気が明るくなり始める。

 

「操縦者が海の向こう側にいる可能性もありますよ」

 

 一気に場の空気が沈み、全員が水を差した朝霞を睨む。

 

「その可能性は……無いんじゃない?」

 

 眠たげな顔で目を擦りながら、詩乃が口を開いた。全員は朝霞への対抗心でそう言ったのではないかと疑うが、彼女はナオにページを戻すよう指示する。

 

「このページ、ナイトメアイーグル運用の想定が書かれているんだけど、『エリア内部に侵入した敵対勢力との戦闘を想定』って書いてある。せっかく遠隔操作できるんだから、未踏査領域(エリア外部)のガストレア駆除や敵国への攻撃に使えば良いのにそこには不自然なくらい言及していない」

 

「黒塗りのところに書いてるんじゃねえか?」とエールが問う。

 

「可能性はあるけど……隠す意味が無い。公開されている部分を見れば、その運用は簡単に想像出来る。これは推測なんだけど、遠隔操作に使うネットワークは距離に制約があるか、もしくはモノリスの磁場に干渉される技術を使っているんだと思う。おやすみ」

 

 一通り喋り終えた詩乃はバッテリー切れのアンドロイドのように額をテーブルに落とし、そのまま眠りに入る。某国民的アニメの眼鏡の少年に匹敵する速度だったが、誰も驚くことは無かった。

 

「続きは明日にしようぜ。さすがに疲れた」

 

 全員、詩乃と同じ気持ちだったからだ。エールのセリフを皮切りに全員が一斉に脱力する。まだ目が冴えていたナオとティナも今日はここが潮時だと感じ取る。

 

「後はドクターに見せましょう。餅は餅屋。機械化兵士は彼女に任せるのが一番です」

 

 

 

 *

 

 

 

 8月19日

 

 東京エリア陸上自衛隊・神奈川駐屯地でそれは姿を現した。絵の具の滲んだ背景にペンキを落としたかのように――。

 8振の刃と8挺の銃を周囲に浮遊させる黒膂石の巨人は鴉の嘴のような頭部を上下左右に動かす。目に該当するパーツは無く、わざわざ首を動かさなくとも全身にあるセンサーで周囲の状況は把握出来る。明らかに動かしている人間の癖だった。

 ナイトメアイーグルが把握している敵の数は24。うち20は自衛隊だ。10式戦車3輌、16式機動戦闘車6輌、AH-64Dアパッチ5機、車両の陰には自衛隊員数名が潜んでいる。彼らはティナ達を救出するための要員だろう。

 緊急出動(スクランブル)とはいえ神奈川駐屯地の戦力としては非常に少ない。その上、不自然なほど距離を詰めている。おそらく自衛隊が表立って五翔会残党と敵対すること、ナイトメアイーグルを包囲していることを示すための配置だろう。

 イマジナリーギミックにより重力を無視して浮遊する12.7mm斥力加速砲(リフレクトガン)が一列に並び、各々の砲口がエネミーマークを付与した標的に向けられる。

 詩乃がニヤリと悪辣な笑みを浮かべる。壮助を写したかのように――

 

「撃って良いの? 戦車やヘリの中に鈴音と美樹がいるかもしれないよ」

 

そこの女(ティナ)の話では、一昨日ガストレアの餌になったようだが?≫

 

「そうだっけ? あ、でもそんな気もするし、生きているような気もする」

 

≪どっちかハッキリさせろ≫

 

 詩乃の三文芝居、もとい一文の価値すらない芝居にナイトメアイーグルは苛つき始めている。機械のように冷静な挙動とは裏腹に言葉は怒りが込み始めている。

 

「そんなに気になるなら自分の目で確かめなよ。まぁ――その前に粗大ゴミになって貰うけどね」

 

 詩乃の指さしと同時に一斉に砲が火を噴いた。10式戦車の44口径120mm滑腔砲、16式機動戦闘車の52口径105mmライフル砲、アパッチ・ロングボウの30mm機関砲が一斉掃射。鼓膜を塞いでも脳と内臓を揺さぶるソニックブームをまき散らし、鉄鋼の塊は秒速1500メートルで滑空。鉄と発砲炎の暴風雨(ストーム)が吹き荒れ、それらが生み出す硝煙がナイトメアイーグルを塗り潰す。

 砲撃の巻き添えにならないよう詩乃はナイトメアイーグルを注視しながら後退する。砲弾の爆発、巻き上げられた瓦礫の煙でその姿は全く見えなくなった。視界を潰されても音で敵の動きを把握できる彼女だが、今は至近距離で戦車砲を連発され鼓膜が破れてしまっている。一瞬の静寂、鼓膜の再生と共に聞こえ始める爆発音、そして再び鼓膜を破られ静寂が訪れる。

 アパッチに搭載したレーダーは斥力フィールドによる電波反射でナイトメアイーグルの健在を確認。その情報が部隊に共有されるが、全員が冷静に受け止め、砲撃を続ける。

 

≪救助隊の離脱を確認≫

 

≪イニシエーター後退≫

 

≪全車、射撃を継続。足止めは効いて――

 

 全員の耳に金属のひしゃげる音と砂嵐(ノイズ)が流れる。上空から状況報告していたアパッチの1機<バジリスク1>からの通信が途切れた。

 僚機<バジリスク2>の副操縦士は視線を射撃の目標地点に向けていた。それは、瞬きした一瞬のことだった。ナイトメアイーグルを包んでいた煙が消え、目標地点の視界はクリアになる。いる筈の敵がそこにはおらず、気づいた戦車隊も砲撃の手を止める。

 姿を消した敵、通信が途切れたバジリスク1。まさかと思い副操縦士は首を傾け、バジリスク1がホバリングしていた箇所を視界に入れる。

 

 黒鉄の巨人は空に浮いていた。

 

 背部と脚部に展開したノズルで推力を得たそれはホバリングし、バジリスク1の眼前で制止する。ジェットエンジンらしきものは見えるが、揚力を得るための翼も姿勢制御のための機構も見当たらない。その光景は航空力学を一切考慮しなかったSF映画のようだ。

 目の前に敵がいるにも関わらず、バジリスク1は銃撃しなかった。血塗れのコックピットにはもう操縦桿を握る者がいない。命の灯のようにメインローターは徐々に回転数が落ちていき……完全に停止。数トンの巨体を駐屯地に落とす。

 ナイトメアイーグルの右手に握られた高周波ブレードは高速で振動し、刃に纏わり付く血肉を地上へ振るい落とす。一切の穢れを纏わない黒膂石の刃がバジリスク2に向けられた。「次はお前だ」と宣言するように。

 

≪俺を狙え!!≫

 

 規定により指揮権を委譲されたバジリスク2の操縦士が操縦桿を深く傾け、ナイトメアイーグルから距離を取る。ヘルファイア対戦車ミサイルと機銃を一斉掃射。同時に高度を下げ、地上の戦車隊が仰角の取れる範囲内に誘導する。

 黒鉄の巨人は推力偏向ノズルで急加速し、バジリスク2を追う。銃弾もミサイルも斥力フィールドで防ぎ、爆炎を高周波ブレードで振り払う。

 

≪これもハズレか≫

 

 頭部のカメラでパイロット2名が日向姉妹ではないことを確認。高周波ブレードでキャノピーごとパイロット達を一閃。空を切るかのように刃は振り切られる。

 バジリスク2に照準を合わせていたヘリ部隊、地上の戦車隊による一斉攻撃がナイトメアイーグルを襲うが、自立飛行する斥力加速砲がヘルファイアや戦車砲の成形炸薬弾(HEAT弾)を迎撃し、メタルジェットを吹き散らす。

 インターバルという概念が無いのか、迎撃と同時に斥力加速砲は次弾を射出。秒速2000メートルの弾丸が戦車・機動戦闘車の車輪と砲身を撃ち抜き、無力化する。

 

 詩乃は地上から眺めることしか出来なかった。地上からAPFSDS弾を投げるという手もあったが、戦場があまりにも高すぎた。重力と空気抵抗で威力を削がれ、斥力フィールドで防御されるか斥力加速砲で撃ち落とされるのは目に見えていた。

 

 残った3機のアパッチは距離を取り一斉掃射。残り少ないミサイルと弾丸を撃ち尽くすが、それらは虚空で弧を描き、駐屯地に着弾する。自分達の命が尽きるまで数分もないだろう状況の中、パイロット達は冷静に且つ正しくナイトメアイーグルを捉えていた。

 話は単純だ。ナイトメアイーグルの機動がそれを遥かに上回っていた。

 足を揃え、両手を横に広げたナイトメアイーグルはそのフォルム通り、戦闘機の如く飛行する。その速度でミサイルも機銃も回避し、直撃コースに入ったミサイルも蜂矢の陣を作り渡り鳥の群れのように飛行する斥力加速砲が迎撃する。

 ナイトメアイーグルは両手に高周波ブレードを握り急速接近。キャノピーを覗き、日向姉妹が乗っていないことを確認して1機、2機、3機とヘリを斬り捨てていった。

 

 それは一方的な殺戮だった。

 

≪ネストだ。ナイトメアイーグル。聞こえるか?≫

 

≪問題ない≫

 

≪基地に潜伏させていた1枚羽根(奴隷)が日向美樹を捕らえて脱出した。陽動を終了し、直ちに撤退せよ≫

 

≪了解≫




オマケ 前回のアンケート結果

ナイトメアイーグル「日向姉妹はどこだ!!どこにいる!!」ティナ「 」

 (3) 友達とデ○ズニーランドへ行きました。
→(12) 2人でコミ○クマーケットへ行きました。
 (2) 夏休みの宿題を取りに家に戻りました。
 (3) 補修を受けに学校へ行きました。
 (5) ス○バの新作を飲みに行きました。

ナイトメアイーグル「日向姉妹はどこだ!!」

オタクA「あのコスプレ、レベル高ぇわ。元ネタなんだっけ?」
オタクB「ア●セルワールドのブラッ●ロータス?」
オタクC「いや、ガ●ダム00のオーバー●ラッグでしょ」
オタクD「オ●フェンズのグ●イズアインじゃね?」

その後、「30cm以上の長物持ち込み禁止」に抵触したため、ナイトメアイーグルはコミケスタッフに追い出された。

美樹「で、姉ちゃんは何買ったの?」←好きな漫画の二次創作(全年齢)を数冊購入。

鈴音「えーっと……

『東京エリアホームレスガイドブック 2037夏 決定版』
『建築工学から学ぶ理想の段ボールハウス』
『赤目ギャングの勢力図とその変遷 2037年夏期中間報告』

鈴音「またホームレスになっても大丈夫なように備えなきゃ」
美樹「自分の年収が一億越えたの忘れたの?」

次回「Highway Rage」

ティナ(この中で一番頭が良いのって誰でしょうか?)

  • 自称「勾田大学医学部卒」の倉田(山根)
  • 東京エリア最難関校・美和女学院在学の朝霞
  • ウィザード級ハッカーのナオ
  • 頭は良いらしいがそんな雰囲気皆無の詩乃
  • 見た目に反して中学校中退の常弘
  • 小学校中退の壮助
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